いわゆる「ナッツ・リターン」問題では、日本のマスコミも韓国のマスコミに負けず劣らず”加熱報道”をくりひろげています。日本のマスコミは、この事件は「世界中に論争を巻き起こした」と言ってますが、それはいくらなんでもオーバーで、騒いでいるのは韓国以外では日本だけだろうと言いたくなります。

日本のマスコミの”加熱報道”の背景にあるのは、Yahoo!の国際ニュースのあの異様なアクセスランキングに見られるようなネトウヨたちの”嫌韓シンドローム”とまったく同じ精神構造です。ライバル国のことが気になって気になって仕方ないのでしょう。そして、そんな”嫌韓シンドローム”が、日本(日本人)は世界中でリスペクトされているというような、”テレビ東京的慰撫史観”とパラレルな関係にあるのは言うまでもありません。日本のマスコミの「ざまあみろ」とでも言いたげな”加熱報道”からは、そんな歪んだ感情(昨今の偏狭な「愛国」心)が垣間見えて仕方ないのです。

ただ、一方で私自身も、日本のマスコミやネトウヨたちとは別に、この事件については、韓国社会に対する違和感を禁じえませんでした。

客室乗務員のナッツの出し方に怒り、機体を引きかえさせたとして航空保安法違反などの罪に問われた大韓航空前副社長・趙顕娥(チョ・ヒョナ)被告に対して、ソウル西部地裁は懲役1年の実刑判決を言い渡したのですが、私は、わずか10数メートル(?)動いた飛行機を引きかえさせただけで、それを「航路変更」と認定するのは、いくらなんでも「横暴」だろうと思いました。別に飛んでいる飛行機を引きかえさせたわけではないのです。滑走路に移動しようとした飛行機を引きかえさせたにすぎないのです。

財閥も「横暴」かもしれませんが、韓国の司法も負ける劣らず「横暴」と言わざるをえません。私は、韓国も「法の支配」が充分機能してない人治国家なのかと言いたくなりました。もちろん、解釈改憲を目論む安倍政権に対して批判を封印する日本のマスコミに、韓国のことを云々する資格はないでしょう。それどころか、民主国家の体裁を整えながら解釈ひとつで「法の支配」がなおざなりにされる風潮は、日韓共通しているように思いました。

また、取り調べのため検察当局に出頭する「ナッツ姫」をマスコミの前に晒したあの光景を見るにつけ、韓国には人権意識はないのかと思いました。あれでは東南アジアのどっかの国と同じで、おせいじにも「先進国」「民主主義国」とは言えないでしょう。

「国家の威信」を失墜させたのは、なにも「ナッツ姫」だけでないのです。事後の韓国社会の対応も同じです。「ナッツ姫」騒動には、財閥の「横暴」を許すような社会風土(韓国社会の体質)が別のかたちで出ているだけで、根本にあるのは同じなのです。まるで集団リンチのようなやり方で晒し者にして、それで溜飲を下げたつもりなのかもしれませんが、それは財閥に媚びへつらう卑しい心根の裏返しでしかありません。そこにあるのは、魯迅が反語的に描いた「アジア的」とも言えるような卑屈な精神です。もちろん、それは「東夷」の日本とて例外ではありません。

要するに、「ナッツ姫」騒動というのは、如何にも「アジア的」な目クソ鼻クソの話でしかないのです。「世界中に論争を巻き起こした」なんて片腹痛いのです。
2015.02.13 Fri l 東京 l top ▲