ギリシャへの金融支援問題をめぐるユーロ圏財務相会合では結論が出ず、首脳会議に判断が委ねられました。しかし、世界が注視する首脳会議は、今の時点ではまだ開催中で、結論が出たという報道はありません。

21年前、マーストリヒト条約の発効でEUが誕生したとき、私たちは国家の枠にとらわれないあたらしい時代が登場したと思っていました。EUは、戦争やファシズムの母体である偏狭なナショナリズムを乗り越える“理性の具現化“(=民主主義のあらたなステージ)と思っていたのです。でも、実体は違っていたのです。

「2015年の欧州政治は右VS左の時代から、上VS下の時代に移行している感が」あるとブレイディみかこ氏が書いていましたが、EUは今や持てる国が持たざる国を搾取する、新自由主義の草刈り場と化しているのです。

ギリシャにとって、「EU離脱」はマスコミが言うように”絶望”を意味するのではなく、むしろギリシャの民衆が言うように”改革”や”希望”を意味するのです。「EU離脱」のダメージは、ギリシャよりEUのほうが大きいのは間違いなく、それをカードにしたチプラス政権のしたたかなチキンレースが今まさにブリュッセルでくり広げられているのです。

ギリシャ問題については、仲宗根雅則氏のブログ「ギリシャ危機の責任はEUにもある 」が問題の本質をわかりやすくまとめていました。

Yahoo!ニュース・個人
ギリシャ危機の責任はEUにもある

 財政破綻が明らかになってからは、ギリシャも緊縮政策を実施してギリシャなりに頑張った。ギリシャ人は怠け者、と決め付ける単細胞の人々は、ギリシャが頑張ったなどとは決して認めようとしないだろう。しかしギリシャも頑張ったのだ。
 
  ギリシャ国民の頑張りが見えづらいのは、ギリシャ人は怠け者という悪意ある先入観と、ドイツを筆頭にする成金国の主張ばかりがメディアに充満していたからだ。それに加えて-- 実はこれがもっとも重要なのだが-- 緊縮策によるギリシャ経済の疲弊があったから、ますます彼らの頑張りが見えにくくなった。
 
 それをいいことに、ギリシャ自身が頑張らないから財政難が少しも改善しない、と前述の成金たちはさらに執拗に主張しまくった。だが、そうではなく、彼らが債務の減免をしないでギリシャだけに節約を押し付け続けたから、同国の財政危機は一向に改善しなかったのだ。


 経済成長を無視した緊縮財政は、十中八九その国の経済を悪化させる。借金の返済のためにひたすら節約をし続ける家計には消費活動をする余裕はない。だから経済は沈滞する。沈滞する経済は税金も払えない。なのに国は払えない税金を無理に徴収する。だからさらに経済が落ち込むという悪循環に陥る。それがギリシャの状況だったのだ。
 
 EUの要求を達成しようと緊縮策を懸命に実行した結果、ギリシャの名目のGDPは、2011年から昨年までの3年間で約14%も減少した。当たり前だ。増税と緊縮策が同時進行したのだから経済が転ばない方がおかしい。それにもかかわらずにドイツを柱とするEUは、彼らが規定する「怠け者」のギリシャに、もっと節約しろ、年金をカットしろ、増税もしろ、そうやって財政を立て直せと言い続けた。


投入した資金も借金返済のために使われて「『EUに舞い戻り』、ギリシャ社会にはほとんど流通しなかった」のです。ここにあるのは、典型的な生かさず殺さずの金貸しのやり方です。

ギリシャなどヨーロッパ各国が、1953年に戦争で疲弊したドイツを救済するために借金を棒引きした事実については、トマ・ピケティも指摘しており、緊縮策に反対する他の経済学者とともに、緊縮策をやめ、負債の減免を要求する公開書簡をドイツのメルケル首相に送っています。昔、借金を棒引きしてもらった成金国が、恩義のある没落した国に、死んでもお金を返せと血も涙もない要求をおこなっているのです。

それなら破産して家を出て行ったほうがいいと考えるのは当然でしょう。仮に今回、「支援」の合意に至ったとしても、緊縮策がつづく限り、「EU離脱」の声はギリシャ国内から止むことはないでしょう。それが、マスコミ報道ではわからないギリシャ問題の本質なのです。

日本も同じですが、ブレイディみかこ氏が言うように、現代は右か左かではなく、上か下かの時代になっているのです。
2015.07.13 Mon l 社会・時事 l top ▲