最近、都内ではイオンリテールが運営する都市型の小型スーパー「まいぱすけっと」がやたら目につくようになりました。これも都市部の住民の高齢化を見据えたイオンの戦略に基づくものなのでしょう。

前に広尾の記事でちょっと触れましたが、都心に住むお年寄りは、従来から日常の買い物をコンビニで済ませる傾向があったのですが、「まいぱすけっと」が狙っているのは、そういった都市部の「買物弱者」と言われる高齢者の取り込みなのでしょう。「まいぱすけっと」が競合するのは、既存のスーパーではなくコンビニなのです。

私も、近所だけでなく出先においても、いつの間にか「まいぱすけっと」を利用することが多くなりました。食品に関しては、コンビニより品揃えが充実しているし、価格も安いからです。

先日も都内のとある「まいぱすけっと」に行ったときのことです。商品を入れたカゴをレジに持って行くと、40~50才くらいの中年の男性がレジの奥に立っていました。私は何度かその店に行ってますが、行く度にいつも彼がレジに立っています。ほとんどフルタイムで働いているのでしょう。最近話題になっている「中年フリーター」なのかもしれないと私は思いました。

Yahoo!ニュース(東洋経済オンライン)
「中年フリーター」のあまりにも残酷な現実

レジに表示された金額を確認すると、984円でした。それで、私は、財布のなかから千円札1枚と84円の小銭を支払いの受け皿に入れました。小銭がかさばるので、100円玉でお釣りをもらおうと思ったのです。

ところが、レジの男性が差し出した釣銭を見た私は、思わず「エエッ!」と声をあげてしまいました。数えるのも面倒な50円玉と10円玉と5円玉と1円玉の小銭ばかりなのです。これじゃわざわざ端数を出した意味がありません。私は、「100円玉に替えてもらいますか?」と言いました。

すると、レジの男性は、「できません」と言うのです。それも市役所の窓口の職員のような実に無愛想なもの言いです。

「どうして?」
「・・・」
「だって、100円玉のお釣りをもらおうと思って、わざわざ小銭を出したんですよ」
「・・・」
「100円玉に両替してくださいよ」
「で、できません」
「わからないな。どうしてできないんですか?」
「・・・」

まさか100円のお釣りごときで、どこかのアホなおっさんみたいに「店長を出せ!」なんて言うわけにはいかないので、首をかしげながら店を出たのですが、近くにいたほかのお客たちもみんなキョトンとしていました。

あとで小銭と一緒にもらったレシートを確認したらお釣りが98円となっていました。私がもらった釣銭は100円です。どうしてレシートが98円なのか。

学生時代にスーパーでアルバイトをした経験がある女の子にその話をしたら、おそらくレジの機械にお金を全部入れるのを忘れたからではないかと言うのです。つまり、お札と小銭を入れると自動的に釣銭が出てくる仕組みになっている機械だと、小銭を入れ忘れると誤った釣銭が出てくるのです。

私の場合、1084円渡したにもかかわらず、レジの男性が1082円しか機械に入れなかったために釣銭が98円出てしまった。それに、入れ忘れた2円を足して小銭ばかりの釣銭を差し出したのだろうと言うのです。だから、レシートの釣銭が98円になっているのだと。

だったら、どうして小銭を100円玉に両替できなかったのか。それは、アルバイトが勝手にお金が入っているボックスを開けられないようになっているからではないかと言ってました。

聞けば、「まいばすけっと」の場合、一人の店長が二つの店を受け持っているのが普通だそうです。と言うことは、店長が不在の場合が多いわけで、実質的に店はアルバイトだけで運営していることになります。そうなれば、よけいお金の扱いにシビアにならざるを得ないのでしょう。うがった見方をすれば、両替ができないのは、アルバイトがレジのお金に手を出すのを防ぐ意味もあるのかもしれません。

そのため、今回のような”トラブル”があっても、臨機応変に対応することさえできないのです。ただ「できません」とつっぱねるしかないのです。アルバイトは泥棒という発想があるんじゃないかなんて意地の悪いことさえ考えました。非正規雇用の正社員化を主張する民主党の岡田代表の実家が経営するイオンは、それでもとにかく「安い人材」を使いたいのでしょう。

企業の利益のために「安い人材」を使う。それはもう当たり前のようになっています。しかも、資本家や曲学阿世の御用経済学者や池田某のような安手の新自由主義者だけでなく、使われる立場の人間たちでさえ一緒になって(まるでオウム返しのように)「安い人材」を使うのは当たり前だと主張するのです。「お前たちこそ『安い人材』じゃないか」と言いたいけど、そんな単純なことばさえ彼らには通用しないのです。

自分で計算して釣銭を出すことも、両替することもできない、ただレジの機械に使われるだけの人間。もしかしたら彼らの人件費は、レジの機械のメンテナンス料より安いのかもしれません。そういう仕事を若い人間だけでなく、中高年の立派な年齢の人間たちがフルタイムでやっているのです。

彼らの姿は、格差という問題だけにとどまらず、もっと大きな社会的な問題を含んでいるように思います。折しも今年度のブラック企業大賞がノミネートされたというニュースがありましたが、もはやセブンイレブンやユニクロやワタミやイオンだけではなく、社会全体がブラック化している現状があるのです。すべてを経済合理性でしか考えない風潮。「安い人材」が当たり前のように蔓延しているからと言って、それは当たり前のことではないでしょう。

第4回 ブラック企業大賞2015 ノミネート企業発表!
http://blackcorpaward.blogspot.jp/

旭化成建材のくい打ちデータ改ざんの問題も福島の除染廃棄物の不法投棄の問題も介護施設の入居者に対する暴行の問題も、その構造は同じです。末端の仕事を担っているのは、100円の釣銭も自分の意志で出せないような「安い人材」ばかりなのです。

私たちは今、たまたま彼らからサービスを受ける立場にいますが、私たち自身がいつ100円の釣銭も自分の意志で出せないような「安い人材」として、ブラック企業で働かざるを得ない立場になるかもしれないのです。社会のブラック化は、他人事ではないのです。
2015.10.29 Thu l 社会・時事 l top ▲