イスラムの預言者・ムハンマドの風刺画を掲載した週刊誌の発行元のシャルリー・エブド社が、イスラム原理主義を信奉する若者に襲撃されのが今年の1月の初めでした。そして、それからひと月も経たずに、人質になっていた湯川遥菜さんと後藤健二さんが、イスラム国によって相次いで公開処刑されたのでした。個人的には年末に母を亡くし、ちょうど気分が落ち込んでいるときでした。

あれから10ヶ月。再びパリで連続テロが発生しました。しかも、今回は120名以上が犠牲になるという前代未聞の事件になり、オランド大統領が非常事態を宣言し国境を封鎖する事態にまで至ったのでした。オランド大統領は、「『我々は戦争に直面している』としたうえで、今回のテロをISによる『フランスや、私たちが世界中で守っている価値に対する戦争行為だ』と強く非難した」そうです。

朝日新聞デジタル
パリ同時テロ、127人が死亡 仏政府がIS犯行と断定

もちろん、今回の事件が1月のシャルリー・エブド襲撃事件の延長にあるのはあきらかでしょう。まさに「世界内戦」の時代を象徴する事件と言えます。宣戦布告もなしに、いつどこで戦争が起こるかわからないのです。私たちの日常が戦場になるのです。戦闘員も非戦闘員もないのです。それが対テロ戦争としての「世界内戦」の時代なのです。

戦争なんて所詮他人事だと思っているような平和ボケのネトウヨたちが、ネットで無責任に戦争を煽っていますが、彼らの万年床のゴミ屋敷もいつなんどき戦場になるかわからないのです。

よく知られていることですが、イスラム国(IS)のようなテロ組織は、もともとアメリカの中東政策によって生み出されたのです。アメリカは彼らを利用していたのです。しかし、シリア内戦に見られるように、アメリカの覇権が衰退するにつれコントロールが利かなくなり、西欧世界に牙をむくようになったのです。

その構図は今の日本もよく似ています。アメリカの対中国政策によって安倍政権の戦争政策が生まれたのですが、だからと言ってアメリカは中国と戦争をするつもりなどありません。南シナ海のイージス艦派遣が「茶番」であると言われるのも当然です。

dot.
週刊朝日
南シナ海にイージス艦 米中にらみ合いの「茶番」

むしろ逆に米中で覇権を分割する方向に進んでおり、その際、東アジアにおいて、外交上中国をけん制する役割を担っているのが日本です。日本のナショナリズムは、このようにアメリカに対する従属思想の所産でしかなく、「愛国」でもなんでもないのです。安倍らの戦前的価値への郷愁も、その従属思想に悪ノリしているだけです。

イスラム過激派のテロも、安倍政権の戦争政策も、背景にあるのはアメリカの覇権の衰退であり、それに伴う世界の多極化です。イスラム過激派はその間隙をぬって西欧的価値に矢を放っているのですが、日本は衰退するアメリカの肩代わりを引き受けようとしているのです。

オバマ大統領は、今回のテロに対して「人類や共通の価値への攻撃だ」と非難したそうですが、イスラム過激派はその価値を共有してないのですから、そういった非難も空しく響くばかりです。西欧的価値やアメリカンデモクラシーが、決して人類共通のものではないことをイスラムの台頭が示していると言えるでしょう。

「世界内戦」はますます苛烈化し、多大な犠牲を伴いながら世界は多極化する。それは間違いないのです。


関連記事:
西欧民主主義の二重底
連続テロ事件と「文明の衝突」
「世界内戦」の時代
2015.11.14 Sat l 社会・時事 l top ▲