今日届いた田中宇氏のメルマガ(有料版)につぎのような記述がありました。

田中宇の国際ニュース解説 会員版(田中宇プラス)
パリのテロと追い込まれるISIS、イスラエル
http://tanakanews.com/

 フランス軍は報復のため、ISISの「首都」になっているシリア北部のラッカ周辺にある、ISISの司令部や弾薬庫、訓練施設などを12機の戦闘機で空爆した。仏軍は米軍と連携し、ISISへの空爆を強めるという。しかし、この話もよく考えると頓珍漢だ。仏軍が今回空爆したISISの司令部や弾薬庫、訓練施設などは、場所がわかりしだいすぐに空爆すべき地点だ。フランスは昨年9月から1年以上、米軍と一緒にISISの拠点を空爆し続けている。仏軍は、ISISの司令部や弾薬庫、訓練施設などの所在を、この数日間に発見したのか?。そうではないだろう。仏軍や米軍は、以前からそれらの所在を知っていたが、空爆していなかったと考えるのが自然だ。米国や英仏は、以前からISISなどテロ組織がアサド政権を倒すことを期待し、ISISなどを退治するふりをして温存(支援)してきた。


 パリテロ前日の11月12日には、米軍が、シリア上空に飛ばした無人戦闘機でISISの英語広報役の「聖戦士ジョン」(モハメド・エムワジ、英国人)を殺害したと発表した。ジョンは、外国人の人質を座らせ、殺害するぞと脅すISISの動画にいつも出てくる人物で、米欧日で有名だ。米軍は有名人を空爆で殺し、米国がISISと戦って成果を上げている印象を世界的に示したかったのだろう。だが、ジョンは単なる広報役であり、彼が死んでも代役はくさんいる。ジョン殺害は逆に、米国が本気でISISを潰すつもりがないことを示している。


たしかによく考えてみれば、おかしな話です。

奇々怪々な構図はそれだけではありません。田中宇氏も書いていますが、もうひとつ、親パレスチナ対反イスラエル、反パレスチナ対親イスラエルという構図もあるのです。とりわけヨーロッパにとって、イスラエルの存在は、過去のホロコーストの問題なども絡み一筋縄でいかないやっかいなものでもあるのです。

ロシアのプーチンが、フランスを「同盟国」と呼び、フランスに同調してイスラム国に対する空爆をさらに拡大すると表明したそうですが(それも多分にカマトトですが)、それは自国の航空機が標的になったからというだけでなく、イスラム国と対立するシリアのアサド政権を延命させる思惑もからんでいるのだとか。

イスラム教徒でもある常岡浩介氏は、反アサドなので当然反プーチンです。だから、必ずしも反米ではありません。ツイッターでも、まず反米ありきの日本の左派・リベラルを批判しています。大国の思惑だけでなく、イスラム内部の宗教対立もあり、それがまた大国に利用されているという側面もあるのです。このように、イスラムをめぐる政治の問題は、複雑怪奇で魑魅魍魎なのです。

そんなさまざまな政治的宗教的思惑に翻弄されるのが、「民間人」と称される無辜の民です。パリの129名の犠牲者に対して、世界中が哀悼の意を表明し、フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグが自分のプロフ写真にトリコロールのフランス国旗を付けたり、Google が検索ページに黒いリボンを掲げたりしていましたが、しかし、フランス軍の空爆によって犠牲になっているパレスチナの無辜の民衆に対しては、みんな知らんぷりです。

西欧のテロの犠牲者とは比べものにならないくらいの(おそらくその何百、何千倍もの)パレスチナの人々が有志国連合の空爆やシリア内戦で殺戮されている現実(シリア国内だけでも2011年の内戦以後、既に25万人以上が亡くなったと言われています)。でも、彼らはフェイスブックやGoogle で哀悼の意を表されることはありません。

しかし、15億人のイスラム教徒のかなりの部分は、パリの犠牲者より、空爆や内戦で犠牲になったムスリムの同胞のほうに心を寄せているはずです。そして、世界の不条理を痛感しているはずです。そんな不条理が存在する限り、ムスリムの若者が、狂信的なイスラム原理主義に走り、死をも厭わないテロリストになるのは避けられない現実であるとも言えるのです。空爆が憎悪の連鎖を生むだけなのは誰が見てもあきらかでしょう。
2015.11.19 Thu l 社会・時事 l top ▲