ちょっと前の話ですが、フジテレビの「とくダネ!」で、横浜のマンションの杭打ちデータ改ざん問題が取り上げられた際、なぜか最初に中国でマンションが倒壊した映像が流れたのです。そして、そのあとに横浜のマンションが傾いた問題を伝えたのでした。私はたまたま「どくダネ!」を見ていたのですが、不自然な感じがしてなりませんでした。要するに、(横浜のマンション傾斜問題は)「中国よりまだましだ」と言いたかったみたいで、冒頭の映像はそのための印象操作だったのです。それに対して司会の小倉智昭は、「中国よりましとは言っても、これはこれで大きな問題でしょう」と言ってました。

こういうところに、フジテレビの体質が如実に出ているように思います。韓流番組ばかり垂れ流しているとしてネトウヨたちの標的になり、デモまで起こされたので、フジテレビは”親韓”=”反日”のようなイメージがありますが、もともとはネトウヨまがいのヘイトな「愛国」主義を信奉するフジサンケイグループのテレビ局なのです。ネトウヨの反感を買ったのも、おれたちの味方のはずが裏切りやがってという気持があったからでしょう。

情報番組やニュースにおいても、まるでそれが役目であるかのように、ヘイトな印象操作をおこなうのがフジテレビの特徴です。フジテレビが視聴率で苦戦しているのも、最近特にそういった牽強付会さが鼻につくようになっているからではないでしょうか。視聴者は敏感なのです。「なにか変」「どこか古い」「ちょっとズレている」という”微妙な感覚”は侮れないのです。でも、それはフジサンケイグループである限り、逃れることのできない宿痾のようなものでしょう。

そんなフジテレビですが、先週から放送されている”月9ドラマ”「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(脚本・坂元裕二)は、久々に面白いドラマでした。まだ2回しか放送されていませんが、特に今週、舞台を東京に移してからは、ドラマの内容がより濃いものになったように思います。脚本の質の高さなのでしょう、主人公をとりまく人間たちも、彼らが働くブラックな職場も、とてもリアル感がありました。東京で生きる地方出身の若者たちの等身大の日常がよく描かれているように思いました。いい映画と同じで、ドラマのなかのディテールがすぐれているのです。私のような”元若者”でも引き込まれるところがありますので、同時代的に生きる若者たちは共感する部分が多いのではないでしょうか。

有村架純や高良健吾や高畑充希らのキャスティングもよかったように思います。なんの役をやっても同じ演技しかできないキムタクと比べれば、プロとアマほどの違いがあるでしょう。私は、彼らが演じる登場人物に、昔、親しくしていた取引先の会社で働いていた若者たちを重ねて見ていました。

その会社では、毎年、東北と九州から10名前後の高卒の若者を採用していて、その3分の2は女の子でした。彼女たちは、やがて東京の生活に慣れると、お決まりのように恋をして、そして、多くは失恋し、会社を辞めて田舎に帰ったり、転職したりと、”波乱万丈の人生”を送ることになるのです。彼女たちは、それぞれ夢を掴むために東京に来たのでしょうが、もちろん夢を掴むことなんかできません。今夜の第二話に出てきた「東京は夢を叶えるための場所じゃないよ。東京は夢が叶わなかったことに気づかずにいられる場所だよ」というセリフはとてもよくわかるのでした。ちなみに、その会社も10年近く前から新卒の採用をやめて、派遣やアルバイトを使うようになっています。

フジテレビの現場には、まだこういうドラマを創る感性が残っているのです。それだけにもったいないなと思います。
2016.01.26 Tue l 芸能 l top ▲