先日、「STAP細胞論文を巡り、神戸市にある理化学研究所の研究室からES細胞(胚性幹細胞)が盗まれたとして理研OBが告発していた問題」で、神戸地検が不起訴を決定したというニュースがありました。

毎日新聞
理研ES細胞窃盗 神戸地検が不起訴「事件自体疑わしい」

言うまでもなく、これは、実際は小保方晴子さんを告発したものです。しかし、神戸地検は、「窃盗事件の発生自体が疑わしい」として不起訴処分にしたのです。

小保方さんの『あの日』(講談社)では、この「ES細胞混入ストーリー」は、研究のリーダーであった山梨大学の若山照彦教授や若山研に関係する理研関係者らによって巧妙に仕組まれたストーリー(要するに、責任逃れのストーリー)だと書かれていますが、今回の不起訴処分によってそれが証明されたとも言えます。しかし、記事にもあるように、このストーリーは既にひとり歩きしており、理研の調査委員会でも「混入説」が結論付けられているのです。でも、理研が調査をやり直すという話は聞きません。

あらためてあの小保方バッシングとはなんだったのかと思わずにはおれません。小保方さんならずとも、そら恐ろしいまでの報道犯罪と人権蹂躙だったのではないか。

本来科学論争であるべき問題が、理研の事なかれ主義や研究者間の足の引っ張り合いやマスコミの売らんかな主義とそのための「ネット世論への迎合」によって、研究者の人格攻撃へと暴走してしまったのです。その結果、「常に水は低いほうに流れる」ネットの格好の餌食になり、小保方さんがとんでもないウソ付きのとんでもない女性のように仕立てられたのです。

おそらくこのニュースを見ても、小保方さんをとんでもない女と信じ込んでいるネットのゲスたちは、ニュース自体を信じないのかもしれません。小保方バッシングは、それほどまでに「ほとんどビョーキ」と化しているのです。

もちろん、小保方さん自身が世間知らずの学者バカで、どこか的外れなところがあることは事実です。彼女が瀬戸内寂聴と対談している『婦人公論』(6/14号・中央公論社)も読みましたが、どうしてこんな対談に出たのか首をひねらざるをえませんでした。世間知らずなところをいいように利用されている気がしてならないのです。対談の内容も実に薄っぺらで、とりたてて書くほどのものはありません。瀬戸内寂聴にしても、バッシングのときは沈黙し見て見ぬふりをしていたくせに、今になって応援するはないだろうと思いました。グラビアもどきの写真といい、この対談に出た小保方さんの真意が私には理解できませんでした。こんな彼女の世間知らずなところがゲスたちの標的になったのは間違いないでしょう。

『あの日』については、複雑に入り組んだ人間関係や研究内容とその手順、あるいは各論文の撤回に至る経緯などが事細かに綴られていますが、素人にはわかりにくい部分も多く読むのに苦労しました。瀬戸内寂聴は、登場人物をひとりひとりノートに書き出して読んだそうですが、その気持がよくわかります。

そのため、若山教授の暗躍や毎日新聞の須田桃子記者やNHKの「Nスぺ」スタッフの傍若無人な取材や週刊文春のスキャンダルのでっち上げなど、わかりやすい部分だけがクローズアップされる結果になっているのです。もちろん、それらが小保方バッシングを構成する上で重要な役割を果たしたのは事実ですが、しかし、本来科学論争であるべき問題がどうして逸脱し暴走したのかというこの問題の本質を考えるとき、隔靴掻痒の感は否めませんでした。

外国では日本の報道は「クレージーだ」と言われていたそうですが、こんなバッシングが許されるなら、科学に限らずどんな問題でも、すべてが低劣なスキャンダルと化してしまうでしょう。それは、誤解を恐れずに言えば、今の舛添バッシングにも言えるのです。税金を食い物にしていると言うなら、舛添の背後にある東京都の役人たちの問題も取り上げるべきでしょう。それは、シャネル大好き市長の横浜も同じです。

小保方バッシングとはなんだったのか。あの狂気のようなバッシングをくり広げたマスゴミやジャーナリスト、それに与した科学者たち。朝日新聞のWEBRONZAには、最近も「なぜ小保方氏への同情論が消えないのか」というような記事が出ていましたが、これなどはバッシングに悪ノリした下劣な記事の好例と言えるでしょう。彼らに反知性主義を批判する資格はないのです。

マスゴミとネットが密通して作り上げる私刑の構造。それが現代の全体主義の姿です。「反戦平和」を謳い左派リベラルの立場に立つある有名ブログは、週刊文春の「乱倫研究室」のような記事を真に受けて、小保方さんと自殺した笹井芳樹教授の”道ならぬ関係”が騒動の根幹にあるような書き方をして小保方バッシングに与していましたが、それなども現代の全体主義を象徴していると言えるでしょう。


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2016.05.31 Tue l ネット・メディア l top ▲