今日、契約しているサーバー会社から、「サーバーに届いたEメールに、ウィルスを発見しました」というメールがたてつづけに届きました。「ウィルスを送信したアドレス」のドメインには、いづれも「uk」のカントリーコードが付いていました。これは、イギリスのEU離脱の呪いなのかと思いました。

イギリスのEU離脱については、文字通りブレイディみかこ氏の独壇場です。ブレイディみかこ氏のブログは、メディアの特派員や経済の専門家の解説などより、EU離脱に傾いたイギリスの現状を伝えているように思います。それは、地べたの人々の視点からとらえたイギリスの等身大の姿と言っていいでしょう。

イギリス政府は、2年間の猶予期間の間に離脱の手続きをのらりくらりと進め、結局、決定をウヤムヤにするのではないかという見方がありますが、あり得ない話ではないように思います。離脱を煽った右派のUKIP(イギリス独立党)も、早くもトーンダウンしはじめているようです。

ブレイディみかこ氏は、今回の国民投票で示された結果には、下層の労働者階級による既成政治に対するリベンジの色合いがあると言ってましたが、それは、離脱の背後にあるイギリス社会の矛盾を指摘しているように思いました。

UKIPは、同じ移民でも、EU圏外からの移民とEU圏内からの移民をご都合主義的に分けて主張しているのだそうです。そのため、かつてEU圏外からやってきた”旧移民”やその子どもたちは、EU圏内からの”新移民”によって、仕事だけでなく、自分たちの社会保障の既得権益が奪われるとして、移民排斥のUKIPを支持しているのです。そこには、EUが主導する市場原理主義や緊縮政策やグローバリズムが下層の地べたの人々の生活を直撃し、彼らが悲鳴を上げている現実があるからです。

一方、労働党の左派指導部は、「大企業や富裕層だけが富と力を独占するようになるグローバリゼーションやネオリベや緊縮は本当に悪いと思うけど、それを推進しているEUには残りましょう」(ブレイディみかこ氏)というようなトンチンカンなことしか言えず、「説得力のある残留の呼びかけができなかった」のです。ヨーロッパには「シャンパン社会主義」ということばがあるそうですが、ポデモスのイグレシアスが言うように、「左翼は庶民に語りかけていない。ワーキングクラスの人々を異星人のように扱っている」のです。

それは、日本も同じです。左派リベラルは、今やめぐまれた人々(ミドルクラス)の利益を代弁するクラスタになっているのです。左派リベラルが掲げる政策を見ても、「めぐまれた」サラリーマンや公務員の利益を代弁するものばかりです。たしかに、保活も大変でしょう。しかし、保活以前の人たちがいることも忘れてはならないのです。同じ「切実な声」でも、今の政治がくみ上げているのは、ミドルクラスの「まだめぐまれている」人々の声なのです。それでは、与党も野党も政策が似通ってしまうのは当然でしょう。それは、ある意味で、議会制民主主義というシステムの限界のようにも見えます。

 「“フェア”な移民制限や“レイシストでない”移民制限などない。我々は移民制限に反対する。我々は、我々の出自や、我々またはその親が何処の国で生まれたかということや、肌の色、何語を喋るかということで人間の存在を非合法にする全ての法律に反対する」
 ケン・ローチの政党レフト・ユニティのポリシーにはシンプルにそう書かれている。移民を一切制限するな。とは、このご時世にアナキーどころかキチガイ沙汰だ。
 が、このポリシーの後半部分には、移民として18年生きて来たわたしには打たれるものがある。
 政治というものは、本来、この「打たれるもの」がコアにあるべきではないのか。
 それは古い言葉で言えば「思想」でもいいし、「社会は、そして人間はこうあったほうがクールだ」という個人的な美意識でもいい。
 「弱者が可哀そう」とかいうヒューマニズムばかり強調しているから左翼はダメになったという定説がある。が、わたしは全くそうは思わない。寧ろ真逆で、誰もポリシーの根本にある揺るがぬもの、妥協など入る余地のない美意識を語らなくなったから政治は人を動かすことができなくなったのだ。
 UKのみならず欧州全体が右傾化しているのは、人々がそうした妥協しない何かを右翼の中に見たような気になっているからかもしれない。
 社会の右傾化は、思想なき政治への民衆のライオットである。

アナキズム・イン・ザ・UK
第19回:ウヨクとモリッシーとサヨク


2016.06.29 Wed l 社会・時事 l top ▲