朝日新聞デジタルに、牧内昇平記者の「隠れ貧困層の実態」という記事がアップされていました。

朝日新聞デジタル
「隠れ貧困層」推計2千万人 生活保護が届かぬ生活
生活保護受けず、車上生活2年 「隠れ貧困層」の実態

折しも、政府は、年金の納付期間を25年から10年に短縮する関連法案を今国会に提出することを決定したというニュースがありました。

Yahoo!ニュース
年金受給資格期間、10年に短縮=関連法案閣議決定

以前、このブログでも触れていますが、10年への短縮は、消費税の10%引き上げと引き換えに実施される「社会保障の充実」策のひとつでした。しかし、引き上げが延期されたため、この「無年金対策」の実施が危ぶまれていたのです。しかし、「安倍晋三首相が7月の会見で『無年金問題は喫緊の課題』と表明し、実現が決まった」そうです。これにより「新たに約64万人が年金を受け取れるようになる」そうです。

もっとも、10年納付してもらえる年金は、国民年金(基礎年金)の場合、月に1万6252円(25年納付しても4万630円)だそうです。それでも、「無年金」対策を「喫緊の課題」として、前倒しして実施した政府の姿勢は認めるべきでしょう。

上記の牧内記者の記事によれば、社会保障に詳しい都留文科大学の後藤道夫名誉教授の推計では、「世帯収入は生活保護の基準以下なのに実際には保護を受けていない人は、少なくとも2千万人を上回る」のだそうです。本年の7月時点で、生活保護を受給している人は216万人なので、いわゆる捕捉率は10%にすぎないということになります。これは、ほかの先進諸国に比べて著しく低い数字です。既出ですが、ドイツは64.6%、イギリスは47~90%、フランスは91.6%です。つまり、それだけ日本は社会保障後進国だということです。テレビ東京的慰撫史観で「惚れ惚れ日本」を自演乙している場合ではないのです。

このように、最低限の「文化的生活」を営むことさえままならない人が2千万人もいるというのは、あきらかに政治(経済政策)の問題であり、それに伴う社会構造の問題です。ところが、この国は、なぜかその問題が個人に向かい、「自己責任」の名のもと、生活保護などセーフティネットに頼る人たちをバッシングする風潮が常態化しています。また、Yahoo!ニュースなどネットメディアがそのお先棒を担ぎ、不正受給などを針小棒大に扱ってバッシングを煽っている問題もあります。バッシングが貧困の実態(構造)から目をそらす役割をはたしているのはあきらかでしょう。

牧内記者が書いているように、扶助のなかで、家賃(住宅扶助)や医療費(医療扶助)を柔軟に運用すれば、それだけでも世間で言う”生活保護”の手前で、貧困を食い止める手立てになるように思います。運用が硬直化し、「丸裸になるまでは自助努力に任せるのが、日本のセーフティーネットの現状」で、そのため「最後のセーフティーネットの網にかからず、福祉の手が届かない人々がたくさん存在している」(後藤教授)のが実情なのです。家賃や医療費だけでも援助してもらえば、どんなに助かるでしょう。

何度も言いますが、貧困は決して他人事ではないのです。それは、高齢者や失業者に限った話ではないのです。普通のサラリーマンやOLでも、いつ陥るかもしれない問題なのです。それが、生活保護基準以下の人が2千万人もいるという、この国の「底がぬけた」格差社会の現実なのです。


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2016.09.30 Fri l 社会・時事 l top ▲