ヘイトクライムが当たり前のような時代。「トランプの時代」をひと言で言えば、そう言えるのかもしれません。小泉政権の頃、「扇動政治」ということばがさかんに使われましたが、ヘイトクライムで国民の負の感情を煽り国家主義的な運動に動員する手法は、ファシズムそのものでしょう。もちろん、それは、日本とて例外ではないのです。

そんななか、やっぱり「上か下か」ではなく「右か左か」が重要だという声があります。それを現実の政治に即してわかりやすく言えば、トランプやアベやハシシタ流のポピュリズムに、SEALDsや野党共闘の「左派リベラル」を対置するという考えでしょう。

しかし、私たちは、「左派リベラル」がまったく対抗勢力になり得てない現実をもう嫌になるほど見てきたのです。そもそも(何度も言いますが)、民進党なんて野党ではないのです。民進党を、野党と呼ばなければならない不幸をもっと深刻に受け止めるべきでしょう。民進党は自民党と中間層の奪い合いをしているだけです。

既存の「左派リベラル」が、大衆(特に下層の人々)から離反しているのはあきらかでしょう。彼らは、中間層の声を代弁しているにすぎないのです。(後述する記事にあるように)なにより大衆に語りかけることばをもってないのです。

ブレイディみかこ氏は、「ポピュリズムとポピュラリズム:トランプとスペインのポデモスは似ているのか」という記事で、「年収3万ドル以下の最低所得層では、(略)前回は初の黒人大統領をこぞって支持した人々の多くが、今回はレイシスト的発言をするトランプに入れたのだ」と書いていました。

Yahoo!ニュース
ポピュリズムとポピュラリズム:トランプとスペインのポデモスは似ているのか

そして、つぎのような『ガーディアン』紙のオーウェン・ジョーンズの文章を紹介していました。

ラディカルな左派のスタイルと文化は、大卒の若者(僕も含む)によって形成されることが多い。(中略)だが、その優先順位や、レトリックや、物の見方は、イングランドやフランスや米国の小さな町に住む年上のワーキングクラスの人々とは劇的に異なる。(中略)多様化したロンドンの街から、昔は工場が立ち並んでいた北部の街まで、左派がワーキングクラスのコミュニティーに根差さないことには、かつては左派の支持者だった人々に響く言葉を語らなければ、そして、労働者階級の人々の価値観や優先順位への侮蔑を取り除かなければ、左派に政治的な未来はない。


また、ブレイディみかこ氏もつぎのように書いていました。

エル・パイス紙(引用者注・スペインの新聞)は、ポデモスとトランプは3つのタイプの似たような支持者を獲得していると書いている。

1.グローバル危機の結果、負け犬にされたと感じている人々。

2.グローバリゼーションによって、自分たちの文化的、国家的アイデンティティが脅かされていると思う人々。

3.エスタブリッシュメントを罰したいと思っている人々。

「品がない」と言われるビジネスマンのトランプと、英国で言うならオックスフォードのような大学の教授だったイグレシアスが、同じ層を支持者に取り込むことに成功しているのは興味深い。


前も書きましたが、トランプに熱狂した下層の人々は、本来なら革命に熱狂する人々だったのかもしれないのです。まさにナチス(国家社会主義ドイツ労働者党!)のときと同じように、革命の「条件」がファシストに簒奪されているのです。

ネオコンの出自はトロッキズムだと言われるように、左翼のインターナショナリズムがグローバリゼーションと思想的に近しい関係にあるのは否定できないでしょう。左翼がグローバリゼーションを批判するのは、思想的に矛盾しているとさえ言えるのかもしれません。

「右派ポピュリズムを止められるのは左派ポピュリズムだけ」というのは、含蓄のあることばだと思います。生活保護の基準以下で生活している人が2千万人もいるこの日本でも、ポデモスやSNP(スコットランド独立党)のような、(”急進左派”と呼ばれる)下層の人々に立脚した政治が待たれますが、そのためにも、右か左かではなく、上か下かの視点が大事なのだと思います。


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2017.01.29 Sun l 社会・時事 l top ▲