あの北原みのり氏のツイッターに、つぎのようなツイートがありました。


今更の感がありますが、お粗末、あるいはトンチンカンとしか言いようがありません。

北原氏のなかには、前原氏の主張を「社会主義的政策」「『左』に振り切った政策」だと解釈するような薄っぺらな社会主義像しかなかったのでしょう。そして、彼女は、今度は立憲民主党の主張に、その薄っぺらな社会主義像を映しているのでした。

総選挙では自民党の圧勝が予想されていますが、モリ・カケ問題で苦境に陥っていた「アベ政治」にとって、「北朝鮮の脅威」は文字通り“神風”になったと言えるでしょう。換言すれば、安倍首相は、「北朝鮮の脅威」が“神風”になり得ると踏んだからこそ伝家の宝刀を抜いたとも言えるのです。

自民党から幸福実現党まで「北朝鮮の脅威」を喧伝するあらたな翼賛体制のなかで、リベラル左派は為す術もなく守勢に回らざるを得ない状況にあります。北原みのり氏のお粗末さが示しているように、リベラル左派は存在感さえ示すことができず、せいぜいが立憲民主党の「健闘」を慰めにするしかないのが現状です。

そこにあるのは、60年代後半の「反乱の時代」に否定された“古い政治”の風景です。北原みのり氏のようなリベラル左派は、とっくに終わったはずの“古い政治”に依拠しているにすぎないのです。

政党助成金とセットになった小選挙区比例代表並立制は、民主主義を偽装しながら(二大)保守政党が永遠に政権をたらい回しする(そうやって議会制民主主義を骨抜きにする)制度ですが、リベラル左派はその目論みに踊らされ、前原じゃなければ枝野、希望の党じゃなければ立憲民主党と、二者択一的に「よりましな党」を選んでいるだけです。

60年代後半の「反乱の時代」を支えたのは、日本共産党をスターリニズム=左翼全体主義、ソ連を社会帝国主義=社会主義の名を借りた帝国主義と断罪する「より左の思想」でした。「より左の思想」は、それまで左翼政党ではタブーとされていたトロッキーやローザ・ルクセンブルクやバクーニンなどの思想を援用して、堕落した既成左翼を批判したのでした。

ヨーロッパの若者たちを熱狂させているポデモスやシリザやSNP(スコットランド国民党)などの運動には、あきらかに60年代後半の「反乱の時代」の遺産が継承されています。それが彼らが「新左派」「急進左派」と呼ばれる所以です。

しかし、日本では、その遺産が継承されているとは言えません。それどころか、「反乱の時代」を担った”新左翼の思想”は、連合赤軍事件や内ゲバを生んだ忌々しい思想として総否定されているのが現状です。そのため、北原氏のように“古い政治”に先祖返りするのが当たり前になっているのです。

たしかに”新左翼の思想”が党派政治(セクト)に簒奪され歪められたのは事実ですが、しかし、”新左翼の思想”が提起した社民主義やリベラリズムの限界という問題は未だ手つかずのままなのです。もちろん、戦後のこの国をおおっている「アメリカの影」(加藤典洋)も大きな課題でしょう。

どの党に投票するかではなく、どの党もダメだという既成政党批判も、当然あり得るでしょう。『宰相A』ではないですが、投票することが翼賛体制にお墨付きを与えることになるという考えもアリでしょう。それに、坂口安吾が言うように、私たちは政治という粗い網の目から零れ落ちる存在なのです。支持する政党がないから投票に行かないという考えもひとつの見識と言えるでしょう。

佐藤優氏は、『文藝春秋』(11月号)で、「米朝間で始まるのは『戦争』ではなく『取引』」「米国は、先制攻撃を決断できない」と書いていました。

仮にアメリカが北朝鮮に先制攻撃をしても、北朝鮮を完全に制圧するのに2ヶ月かかるという日米政府のシュミレーションがあるそうです。ソウルはわずか2日で陥落し、制圧までに100万人以上の犠牲者が出ると予想されているのだとか。そのなかには、約4万人の在韓邦人や約20万人の在韓米人も含まれています。

それどころか、韓国経済が壊滅することによる世界経済への影響は計り知れず、1950年の朝鮮戦争のときとはまったく状況が異なるのです。

当時、韓国は、インフラのない貧しい農業国にすぎませんでしたが、今日の韓国の経済力、半導体生産などにおいて国際分業体制の中で占める位置は、当時と比較になりません。韓国経済が崩壊することになれば、東アジア全体が大きなダメージを被り、米国経済もその影響を免れません。
『文藝春秋』11月号・「トランプの『北の核容認』に備えよ」


一方で、核・ミサイル開発する北朝鮮の目的が「金王朝の維持=国体護持」である限り、「経済制裁によって北朝鮮が核・弾道ミサイル開発を放棄することはあり得ない」と言います。問題は、戦争ではなく、やがて始まるであろう米朝二国間交渉による「落としどころ」なのだと。今はそのための鞘当てがおこなわれているというわけです。佐藤氏は、「落としどころ」は「核容認とICBMの凍結になるはずだ」と書いていました。

(略)北朝鮮の核保有を阻止する手段をもたない日米韓は、すでにこの局面では「敗北」しています。しかし、「ゲーム・セット」ではありません。中長期的な視点から、このゲームに最終的な勝利するために、核をめぐる議論以上に、日本にできることが他にあります。
 まず、米朝交渉が始まれば、いづれ米朝国交正常化が進むでしょう。そうなれば、日本も日朝国交正常化を急ぐべきで、今から準備しておくべきです。
(同上)


北朝鮮問題解決のキーパーソンは、習近平ではなくプーチンだという見方がありますが、”対米従属愛国主義”に手足を縛られた日本は、トランプだけでなく、プーチンや金正恩にもいいように振り回されるのがオチでしょう。

この国のリベラル左派は、安倍政権が煽る「北朝鮮の脅威」に煽られているだけです。リベラル左派も「煽られる人」にすぎないのです。北朝鮮情勢が逼迫しているときに選挙などしている場合か、というもの言いなどはその最たるものでしょう。そうやってみんな「動員の思想」にひれ伏しているのです。これでは、いざとなったら(戦前の社会大衆党のように)「この国難に足の引っ張り合いをしている場合ではない。小異を捨てて大同につこう」なんて言い出しかねないでしょう。
2017.10.20 Fri l ネット・メディア l top ▲