米朝首脳会談の日程や場所が具体的に決定しても、相変わらずこの国のメディアは、北朝鮮は信用できないので、会談が決裂する可能性があるというような記事ばかり流していますが、じゃあ、トランプは信用できるのか、と突っ込みを入れたくなりました。メディアが流しているのは、会談が決裂すればいいという希望的観測(対米従属の願望)の記事にすぎません。

先日、朝日新聞に出ていた、トランプ政権が金正恩が飲めないようなハードルの高い非核化プログラムを提示するので、会談が合意に達するか予断を許さないという記事なども、そのひとつです。トランプは不動産屋なので、最初は高くふっかけ、それから徐々にハードルを下げて妥協点を探るのが彼の交渉術だと言われます。朝日新聞は、そんなこともわからないのだろうかと思いました。

このように、「いざとなれば大本営」ではないですが、ここにきて政府と歩調を合わせたプロパガンダのような報道が目に付きます。この国の政府やメディアは、今に至ってもなお、トランプに(軍事行動という)一縷の望みを託しているかのようです。

田中宇氏も、「田中宇の国際ニュース解説」でつぎのように書いていました。

(略)今起きていることの全体を見ると、おそらく今年じゅうに朝鮮半島の対立が終わり、半島から米国勢が出て行き、在日米軍の縮小・撤退が取り沙汰されるところまで行く。マスコミや著名評論家たちは「米朝会談が必ず失敗し、トランプが再豹変して北を先制攻撃してくれるはず」といった「トランプ神風」への願掛けをお経のように唱えているが、彼らを信じるのはもうやめた方が良い。

田中宇の国際ニュース解説
朝鮮戦争が終わる(2)


イランの核合意からの離脱でも、アメリカがイランを軍事攻撃する可能性が出てきたとか、これで北朝鮮が震え上がったに違いないなどと妄想めいた記事が出ていましたが、私は、あのニュースを聞いて、アメリカ抜きで進められたTPP交渉を思い浮かべました。イランも、アメリカが離脱しても合意にとどまると表明しており、TPPと同じように、「非核化」のプロセスがアメリカ抜きで進められるのは間違いないでしょう。

アメリカ抜きで進められるTPPやイランの核合意が示しているのは、アメリカが超大国の座から下りて(転落して)世界が多極化する”世界史的転換”です。トランプの「アメリカ第一主義」も、その言い換えにすぎないのです。金正恩は、トランプの「アメリカ第一主義」をチャンスと見て、”賭け”に出たのでしょう。

何度も言いますが、好むと好まざるとにかかわらず、東アジアの覇権が中国に移るのは間違いないのです。それに伴い、いづれアメリカが(軍事的に)東アジアから手を引くのも間違いないのです。それが朝鮮半島の南北融和の先にある、東アジアの「あたらしい流れ」です。それは昨日今日はじまった話ではありません。アメリカの世界戦略にネオコンが影響力をもちはじめた頃から言われていたことです。

にもかかわらず、対米従属が国是のこの国のメディアは、アメリカがいない東アジアなんて想像すらできないみたいで、東アジアの「あたらしい流れ」から目を背け、前にも増して”アメリカ幻想”をふりまいているのでした。米朝首脳会談はトランプ(様)の胸ひとつと言わんばかりの報道などが、その最たるものです。メディアの言うことを真に受けると、Yahoo!ニュースのコメント欄に巣食うネトウヨのように、見えるものも見えなくなるのです。


追記:
 16日に突然、北朝鮮がマックス・サンダー(米韓の航空戦闘訓練)を理由に、南北閣僚級会談の中止を表明、併せて来月の米朝首脳会談の中止も仄めかしたことで、またぞろ会談が中止になってアメリカが軍事オプションを選択するのではないか(選択してほしい)、というような報道が流れていますが、北朝鮮の表明が「非核化」の落としどころをめぐる駆け引きにすぎないことぐらい、冷静に考えれば誰にでもわかる話です。たしかに朝鮮人は、激情に走って後先を考えずにものを言うところがありますが、これは外交なのです。北朝鮮の「強気」が計算ずくなのは言うまでもないでしょう。日本のメディアは、米朝の情報戦に踊らされているだけです。
 これから会談の当日まで、「延期」や「中止」を仄めかすような瀬戸際の駆け引きが、米朝双方によってくり広げられることでしょう。ついでに北朝鮮サイドに立って言えば、圧倒的な軍事力を誇る「超大国」を相手にするには、中国の後ろ盾も必要だし、「瀬戸際外交」と言われるこのような”ゆさぶり”も必要なのです。独裁政権にも三分の理はあるのです。(5/18)



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2018.05.14 Mon l 社会・メディア l top ▲