吉本をめぐる騒動には、メディア(芸能マスコミ)やただメディアに踊らされるだけのネット民(“ぐみん”とルビ)のお粗末さが、これでもかと言わんばかりに露呈されているように思いました。

ご存知のとおり、当初、振り込め詐欺グループから「お金をもらってない」とウソを吐いた宮迫博之や田村亮は、メディアやネットで袋叩きに遭いました。特に、芸能マスコミにとって、謝罪会見もしない彼らは目の敵でした。

ところが、二人の捨て身の会見で、謝罪会見を吉本上層部から止められていたことが暴露されると、今度は“吉本叩き”に空気は一変したのでした。

二人の会見のあと、アクセスジャーナルの山岡俊介氏は、つぎのような記事をアップしていました。

アクセスジャーナル
<主張>「吉本興業に、反社会勢力からの謝礼を理由に宮迫らをクビにする資格なし」

現在、私は会員ではないので、記事の最後まで読むことができませんが、公開された部分にはつぎのように書かれていました。

そもそも「吉本興業」側にはそれを理由に所属芸人をクビにする資格はないのではないか。
なぜなら、未だに吉本興業自体、反社会勢力とのつきあいを絶てていないのではないかとの疑惑があるからだ。


裏事情にも精通するある芸能関係者は、20日の宮迫らの会見後、こんな電話を本紙に寄越した。
「宮迫らは会見では告発してたけど、数日もすれば口を噤むよ。見てな。


案の定、二人の会見から10日以上経った現在、「この問題の本筋は、宮迫らが反社グループからお金をもらったことだ」「宮迫らがウソを言わなければ、ここまで問題が大きくなることはなかった」などと、”吉本叩き”は問題のすり替えだと言わんばかりに、再び空気は変わりつつあります。

しかし、忘れてはならないのは、二人の捨て身の会見で、吉本興業に関して、看過できない二つの大きな問題が暴露されていたことです。

ひとつは、振り込め詐欺グループのパーティについて、田村亮が入江慎也に「大丈夫か?」と訊いたら、「吉本の会社を通したイベントについてくれているスポンサーなので安心です」と答えたという話です。それで、宮迫も「安心した」と言ってました。この「スポンサー」というのは、振り込め詐欺グループのフロント企業のようで、間接的であれ、吉本興業は振り込め詐欺グループのフロント企業と取引きをしていた疑惑があるのです。もっとも、入江は吉本公認で別会社を作って、今回のようなイベントなどの営業をしており、入江周辺では”闇営業”かそうではないのかという線引きも曖昧だったのかもしれません。

宮迫の契約解除の引き金になった(と言われている)金塊強奪事件の犯人たちとの写真についても、私はどこが問題なのかさっぱりわかりませんでした。たまたま飲み屋で一緒になり、トイレから出てきたら、彼らに囲まれて写真を撮らせてくれと言われて断りきれずに写真を撮った、「ただそれだけのことです」と宮迫は言ってましたが、芸能人の場合、こういったケースはよくあるのではないでしょうか。まして、相手が強面だったらよけい断ることはできないでしょう。それがどうして「ギャラ飲み」になるのか。

そもそもフライデーが一連の写真をどうやって手に入れたか、そっちの方が問題でしょう。反社周辺の人間がフライデーに写真を持ち込んだのは間違いなく、フライデーが謝礼を払って買取ったと考えるのが常識でしょう。反社からお金をもらったことと反社にお金を渡したことにどれほどの違いがあるんだろうかと思ってしまいます。考えてみれば、今回の騒動を仕掛けたのは、(写真を持ち込んだ)反社なのです。フライデーをはじめメディアは、反社に振りまわされているだけなのです。なんだか反社の連中の高笑いが聞こえるようです。

もうひとつは、岡本社長から「在京5社、在阪5社のテレビ局は吉本の株主だから大丈夫と言われた」という発言です。私は、なんだそういうことかと思いました。だから、テレビが吉本芸人に占められていたのかと合点がいきました。

能年玲奈(のん)や元SMAPのメンバーの例を上げるまでもなく、芸能人が独立するとどうして干されるのかという問題の根っこにあるのも同じでしょう。そこにあるのは、芸能プロダクションとテレビ局の共犯関係です。それは、芸能マスコミが華々しくぶち上げる芸能人のスキャンダルなるものも同じです。ターゲットになるのは、いつも弱小プロか個人事務所の人間ばかりなのです。

昔は、芸人の楽屋にまでヤクザが借金の取り立てに来ていたそうですが(タイガースの選手も、球場に取り立てに来ていたそうです)、それは芸人だけの話ではないのです。吉本自体も興行会社として闇社会と持ちつ持たれつの関係にあったというのは、多くの人が証言しています。

前に紹介しました森功著『大阪府警暴力団担当刑事』(講談社・2013年刊)では、わざわざ「吉本興行の深い闇」という章を設けて、吉本と闇社会の関係について書いていました。

昭和39年(1964年)の山口組に対する第一次頂上作戦を行った兵庫県警の捜査資料のなかには、舎弟7人衆のひとりとして、吉本興業元会長(社長)の林正之助の名前が載っていたそうです。

2006年、正之助の娘の林マサと大崎洋会長(当時副社長)&中田カウスの間で起きた内紛(子飼いの芸能マスコミを使った暴露合戦)は、私たちの記憶にも残っていますが、その背後にも裏社会の魑魅魍魎たちが跋扈していたと書いていました。本では具体的な名前まで上げて詳述していますが、巷間言われるような、裏と表、守旧派と開明派、創業家と幹部社員の対立というような単純なものではなかったのです。また、その対立は、2011年の島田紳助の唐突な引退にもつながっているそうですが、今回の騒動にもその影がチラついているように思えてなりません。

一方で、総合エンターテインメント企業を名乗る吉本興業は、テレビ局と癒着することで公序良俗の仮面をかぶり、さらには官邸と密接な関係を築いて国家の事業にまで触手を伸ばすようになったのでした。それが、今回のようなゴタゴタを招いた(謝罪会見を止めた)遠因であるのは間違いないでしょう。

それにしても、岡本社長の会見を見て、あんなボキャブラリーが貧しく如何にも頭の悪そうな人間がどうして社長になったのか不思議でなりませんが、それもひとえに岡本社長が大崎会長の操り人形だからなのでしょう。岡本社長のパワハラも、虎の威を借る狐だからなのでしょう。「大崎会長が辞めたら自分も辞める」という松本人志や、「大崎会長がいなくなったら吉本はもたない」という島田紳助の発言は、将軍様ならぬ会長様の意向を汲んだ(あるいは忖度した)、多分に政治的なものと考えるべきなのです。

ここにも怖い怖い芸能界のその一端が垣間見えているのです。


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