今日、仕事で取引きがある会社から「『新型コロナウイルス』の感染拡大への対応についてのお知らせ」というタイトルで、次のようなメールがきました。

当社では、「新型コロナウイルス」の感染拡大を受け、当社従業員の安全確保および正確な環境状況の把握を目的に下記の期間中、電話でのサポート対応を一時休止いたします。


メールによれば、1月28日から2月7日まで10日間、電話サポートを休止すると言うのです。

私は、メールを読んで一瞬戸惑いました。まさかコロナウイルスが電話で感染するわけではないだろうに、この仰々しさはなんなんだと思いました。

でも、よく考えたら、これは日本国内の話ではないのかもしれません。電話サポートと言っても、専門性を要するようなものではなく単なる問合せにすぎませんので、そのための専門部署を持っているとは思えません。また、会社のサイトを見ても、会社自体が臨時休業するというような告知もありませんでした。

要するに、これは、電話サポートを委託先している中国のコールセンターの話ではないのか。中国政府が新型コロナウイルス対策で、春節の休暇を延長することを決定したというニュースがありましたが、そのために委託先が長期休業を余儀なくされた、その「お知らせ」なのではないか。それを「当社従業員の安全確保および正確な環境状況の把握」などと見栄を張るので、話がややこしくなるのです。

今回の新型コロナウイルスでは、ネットを中心に中国人に対するヘイトが沸き起こっているようですが、中国人に対するヘイトも、ウイルスという見えないものの”恐怖”だけでなく、空疎な愛国心から来る一種の見栄のようなものと言っていいかもしれません。ネトウヨは、韓国人や中国人が日本に来るのは迷惑なだけで、彼らが来なくても日本は困らないと言いますが、でも、実際は来ないと困るのです。このままでは倒産すると悲鳴を上げている観光業者さえいるくらいです。日本の観光業にとっては、新型コロナウイルスが日韓対立につづいて大きな痛手になるのは間違いないでしょう。

日本政府観光局(JNTO)が発表する「訪日外客数のシェア」によれば、日韓対立がはじまる前の2018年の年間シェアは、以下のとおりでした。

日本政府観光局(JNTO)出典
2018年 国籍別 / 目的別 訪日外客数 (確定値)

観光客全体27,766,112人のうち、アジアからの観光客が24,184,765人で87.71%を占めています。そのうち、韓国からは25.13%の6,977,812人、中国は26.74%の7,426,173人です。

日韓対立によって、外国人観光客の半分を占めていた韓国人観光客が激減したことで、大分県の観光業が苦境に陥っているという話は前に書いたとおりですが、今度は韓国人につづいて中国人観光客も激減することになるのです。韓国人観光客が来ないなら、中国や台湾や香港などからの観光客を呼び込めばいいなどと、ネトウヨばりに虚勢を張っていた大分県知事の涙目が目に浮かぶようです。

日本全体から言っても、外国人観光客の半分を占める韓国と中国からの観光客が激減するとなれば、その深刻度は今までの比ではないでしょう。と言うか、今の世界的な観光ブームは、中国をはじめとするアジアの「中進国」の経済発展(経済的な底上げによる中間層の増大)が背景にあるので、今の観光ブームにも翳りがもたらされる可能性があるでしょう。

新型コロナウイルスを持ち込むのではないかと、さも迷惑げにテレビカメラが中国人観光客を追いかけまわしていますが、やがてそのツケがみずからに跳ね返ってくるのは火を見るよりあきらかです。まるでヘイトによって、その現実から目を背けているかのようです。

空疎な愛国心で嫌中憎韓を煽りながら、一方で観光立国を目指す矛盾。この致し難い矛盾を矛盾として認識できないこの国にとって、観光立国なんて所詮は絵に描いた餅と言わねばならないでしょう。

上記の外国人観光客のシェアを見てもわかるとおり、日本にとって欧米はあまりに遠いのです。にもかかわらず、竹内好の「方法としてのアジア」ではないですが、日本にはアジアの一員として生きるという視点が決定的に欠けているのです。その危うさ(薄っぺらさ)が、アジアの経済発展に伴ってこれからますます露わになってくるのではないでしょうか。

韓国人や中国人は迷惑だと言いながら、その一方で韓国人観光客や中国人観光客に依存している日本の観光地のダブルスタンダード。またぞろ、タイやベトナムやフィリピンや欧米にシフトすればいいなんて気休めを言って、みずからの首を絞めていくのでしょうか。愛国心は、なんとトンチンカンで面倒くさいものなんだろうと思います。


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2020.01.27 Mon l 新柄コロナウイルス l top ▲