今日の「モーニングショー」では、冒頭で“自粛警察”を取り上げていました。(マスクの紐が切れたため)マスクをすることができなかった通行人に、「近寄るな」と罵声を浴びせる犬の散歩中の男。仕事でやって来た他県ナンバーの車のフロントガラスに貼られた自粛要請の紙。バイクのナンバープレートに落書きされた「自粛しろ」の文字。中には、六甲山のベンチに、「山に来てないで家のかたずけをしろ」という落書きまでありました。

でも、そういった「ほとんどビョーキのような」”自粛警察“を生み出しているのは、他ならぬ「モーニングショー」などのメディアなのです。また、休業要請を守らないパチンコ店への”集団リンチ”の音頭取りをしたり、県境の国道で検問をしたり、大分県の別府市のように市営温泉の駐車場でナンバープレートをチェックして県外客の入浴を断ったりするなど、常軌を逸した自治体もメディアと同様、”自粛警察”の生みの母です。目に見えないウイルスに怯えることで、かように社会全体が病んでしまったのです。

メディアは、今度は西村経済再生大臣や小池東京都知事が唱える「気の緩み」という新しいスローガンに呼応して、“不心得者”をあぶり出すことにいそしんでいます。ヘリコプターや中継車を飛ばして、観光地や海岸や河原や公園や商店街などの「人波」を映し出しては、「気の緩み」の警告を発するとともに、ここに“不心得者”がいるぞと”自粛警察“を挑発しているのでした。

案の定、最近は「8割削減」という言葉が少なくなりましたが、しかし、今度は「気の緩み」という新しいスローガンで人々を縛ろうとしているのです。もっとも、「気の緩み」も、「8割削減」の“トンデモ科学”を前提にしたものであることは言うまでもありません。

先週の金曜日(5/15)の「モーニングショー」では、番組中に「速報」として、厚労省が、日赤が保管している1000人分の献血を使って抗体検査をした結果、東京都の陽性率が0.6%、東北地方が0.4%だったことがわかった、というニュースが流れました。それを受けて、コメンテーターの岡田晴恵氏と玉川徹氏は、「これは衝撃的な数字ですね」と口を揃えて言っていました。そして、このまま自粛を解除すると、とんでもない感染爆発が発生するかのように言っていました。

ところが、この検査では2019年に採取した検体からも0.4%の陽性率が出たことから、偽陽性の可能性が高く、市中の感染状況を知る上ではまったく参考にならないことが判明したのです。

こういったところにも、「モーニングショー」が囃し立てる「大変だ!大変だ!」のセンセーショナリズムの問題点が露呈しているように思います。

今、行われている都市封鎖や自粛などの(「モーニングショー」が言う)「閉じこもり戦略」は、ペストのときと同じです。ITとか人工頭脳とか言われている時代に、感染対策は旧態依然としたきわめてアナログなものです。

一方で、現代はグーグルやアップルが牽引するIT技術が社会全体を覆っています。同じ都市封鎖や自粛でも、私たちが持ち歩くスマホの通信データを使った監視の技術だけは進歩しているのです。そのため、IT技術と結び付いた「8割削減」なる“トンデモ科学”が、さも疫学上の新理論であるかのように流布されたのでした。しかも、その裏付けになっているドコモやauのスマホの通信データが、いつの間にか人出を計測し自粛の進捗具合を測るバロメーターになったのでした。でも、それは、前に紹介したような、ゴールデンウィーク中に別府温泉の駅前で人出が増えた(ゴールデンウィークで駅周辺の家に閉じこもる人が多くなったことを駅前の人出が増えたと勘違いした)というマンガみたいなレベルの話に過ぎないのです。

でも、そんなマンガみたいなレベルの話を指標にして、大塚英志が指摘したように、テレビなどの旧メディアとネットが密通することで、“不心得者”のあぶり出しやバッシングを益々エスカレートさせているのです。メディアに動員された「ほとんどビョーキのような人々」が、まだ斧や鉈は持ってないものの、関東大震災のときと同じように街頭に繰り出すまでになっているのです。

抗体を持った人が未だ6%や8%しかいないような状況では、第二派・第三派の感染爆発が起きる可能性が高いのは当然ですが、今のような「集団免疫」の戦略もない封じ込め一辺倒の感染対策を続けていると、感染爆発が起きるたびに大騒ぎして、再び都市封鎖や自粛を行わなければならないという場当たり的な対応をくり返すだけでしょう。そして、その監視にIT技術が使われることで、私たちは、医学の進歩によってウイルスの恐怖からいくらか解放されているにもかかわらず、カミュが描いたペストのときより、一挙手一投足までこと細かに監視された息苦しい日常を強いられることになるのです。

コロナ後の社会は、強権的な政治を求める声とIT技術による監視社会化がより強まるだろうと言われていますが、その兆候は既に表れているのでした。(IT技術という新しい衣装を着た)「ファシスト的公共」が日常化する時代がすぐそこまでやって来ているのです。
2020.05.19 Tue l 新型コロナウイルス l top ▲