6月9日に、カイロ大学が突然(そして、奇妙な)声明を発表した裏には、どうやら都議会の動きが関係していたようです。私は知らなかったのですが、都議会の自民党を中心に、小池知事に対してカイロ大学の「卒業証明書」の提出を求める決議案が出されていて、10日に決議される予定だったとか。それで、カイロ大学の声明で機制を制したというのが、どうやら真相だったみたいです。決議案は、10日の議決寸前に取り下げられたそうですが、おそらく二階ら自民党本部の“小池人脈”による働きかけがあったと考えるのが自然でしょう。

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日刊スポーツ
小池氏への決議案取り下げ、カイロ大学の声明も一因

小池都知事は、12日の出馬会見の席で、学歴詐称疑惑について、「すでに原本も示し、カイロ大学も正式にお認めいただいているものと考えている」と答えたそうですが、「原本を示し」たというのは、前回(2017年)の都知事選の際、小池都知事お気に入りのフジテレビに「卒業証書」と「卒業証明書」を「貸し出した」ことを言っているのでしょう。フジテレビは、「とくダネ!」の中で、画面上に「卒業証書」と「卒業証明書」を映し出して、本人に代わって潔白を証明したのでした。しかし、『女帝 小池百合子』は、以前小池の自著に掲載されていた「卒業証書」と「とくダネ!」の「卒業証書」では、カイロ大学のロゴマークが違っていると書いていました。また、「卒業証明書」についても、写真の貼り方やカイロ大学の印鑑がホンモノと違うことを指摘していました。

考えてみれば、カイロ大学の声明などという面倒くさいことをせずに、手元にある「卒業証明書」を議会に提出して疑惑を晴らせばいいだけの話です。フジテレビで証明したからなどと言わずに、何度でも出せばいいのです。どうしてそんな簡単なことができないのか。何か「卒業証明書」を直接見せることができない理由があるのではないか、そう思われても仕方ないでしょう。

と思ったら、出馬会見でアクリル板に入れた「卒業証明書」を公開したそうです。しかし、公開した「卒業証明書」は、カイロ大学のロゴや学長のサインが違っているとか、通常の「卒業証明書」に押印されている外務省の印鑑がないとか、従来から指摘されていた疑問を解消するものではなかったようです。そもそもみずから1年落第したと言っているのに、どうして4年で卒業したことになっているのかという、小学生でも抱く疑問は今回も解明できていません。今回の行為を見ても、その厚顔さ=強心臓は常人の比ではないなとあらためて思いました。

6月11日に「東京アラート」が解除されましたが、ロックダウンだとか西浦博北大教授と一緒に「重篤患者86万人・死者42万人」だとか、散々“危機”を煽っておきながら、最後は何だか肩透かしを食ったようにあっけないものでした。これでは、自粛要請によって、破産か自殺かにまで追い詰められた自営業者はたまったもんじゃないでしょう。

でも、これが“小池劇場”と言われるいつものやり方です。築地市場の移転問題も然りで、水質汚染がどうだとか築地も残す(豊洲に移転しても将来築地に帰ることができるようにする)とか言いながら、いつの間にか全て曖昧になり、尻すぼみになってしまいましたが、そこにも小池都知事お得意の嘘とはったりと強心臓が遺憾なく発揮されているように思います。メディアがきちっと報道せず、都民が騙されたという自覚を持たない限り、小池都知事の嘘とはったりと強心臓の“小池劇場”はこれからも続くことでしょう。

それに、ひとつだけ言えるのは、小池都知事にとって、都政は国政復帰(それもステップアップした復帰)のためのあくまで踏み台に過ぎないということです。「小池さ~ん! 頑張って!」と手を振っている都民も、かつての細川護熙や小沢一郎と同じように、ただ踏み台にされているだけです。

ネットには、小池都知事が「甥」だとか「従弟」だとか言っていた、練馬区桜台の「エコだハウス」で一時同居していた元秘書に関する「不可解な融資」と、小池都知事自身の「“闇金業者”からの不正献金」の記事が出ていましたが、問題なのはこの秘書だけではありません。

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ディリー新潮
小池都知事が隠したい“金銭スキャンダル”
闇金業者から「違法献金」も


もうひとり、小池都知事の「懐刀」と言われ、前回の都知事選の選挙参謀を務めた秘書の存在が前から注目されていました。彼は、35歳で自民党公認で都議になったのですが、任期中に都議を辞任して日本維新の会から衆院選に出馬して落選。翌年、日本維新の会から再度都議選に立候補するものの落選して、アントニオ猪木氏の議員秘書などをしていたそうです。その頃に小池百合子が声をかけ、都知事選の選挙対策本部長を任せられ、都知事選に圧勝するのでした。それで、「永田町を回遊していた彼の人生は劇的に変わ」り、小池都知事の特別秘書になったのでした。

ちなみに、特別秘書の年収は1千4百万円で、当然都知事の秘書ですから給与は都(税金)から支給されます。さらに、運転手付きの公用車まで与えられていたそうです。

彼の行状について、『女帝 小池百合子』は、次のように書いていました。

  夜の豪遊ぶりは、つとに知られている。
  キャバクラやショーパブが好きで、特別秘書になってからも足しげく通っていた。そのハレンチな豪遊ぶりを『週刊ポスト』(二〇一七年六月二月号)が写真入りで報じている。
  記事によれば、ある店では、バケツに入れたチップを掴むとポールダンスをする女性のビキニの中に素手で押し込んでいたという。女性たちは気前のいい野田(引用者:秘書の姓)の前に列をつくる。ブラジャーを外すと野田は喜んで、「ウォー」と雄たけびを上げる。
   店が終わるまで粘り、ダンサーの外国人女性と腕を絡ませて歩き、タクシーに乗る。それが深夜二時過ぎ。この日、彼と連れ立っていたのは民進党から都民ファーストの会への移籍を望む都議たちであった。公認が欲しかったのだろう。


また、都議時代の彼についても、次のように書いていました。

  都議時代は石原慎太郎の価値観に強く共鳴していた。朝鮮学校補助金削減や尖閣諸島の購入を熱烈に支持し、激しい中国批判を繰り返した。「新しい歴史教科書をつくる会」に所属し、『WiLL』や『正論』といった雑誌にも、たびたび寄稿した。
  二〇一二年には自民党を離党し、日本維新の会に入党。九月十八日の都議会では、「占領期に制定された現行憲法は無効と確認し、大日本帝国憲法が現存すると決議がなされること。皇室典範は占領期に作られたものであり無効であって明治典範その他、宮務法体系を復活させるべき」だと請願した。つまりは現行憲法の否定者である。


しかし、2017年10月の衆院選で、小池率いる希望の党は大敗します。そのため、秘書のリストラが行われ、秘書の間でも齟齬が生じるようになり、彼も特別秘書を退任することになりました。ところが、なんと彼は、東京都水道局の外郭団体である東京水道サービス株式会社(TSS)の社長に就任したのです。

(略)水道に対する知識もなく、行政経験もなく、さらにいえば社会人経験もない、政界を暗躍して「小池の弾除け」と自称する四十六歳の男が、都知事の鶴の一声で特別秘書から、今度は外郭団体に天下って社長になるというのだ。
  小池が口封じのために高給の再就職先を用意したと批判の声が上がるのは当然だった。


都政の私物化はとっくにはじまっているのです。しかし、それでも小池都知事にとって都政は、あくまで国政にステップアップして復帰するための踏み台に過ぎないのです。小池都知事のパフォーマンスに右往左往している都民こそいい面(ツラ)の皮でしょう。
2020.06.13 Sat l 社会・メディア l top ▲