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新宿駅~立川駅~武蔵五日市駅~とうげん橋~【馬頭刈山】~和田向~武蔵五日市駅~青梅駅~立川駅~武蔵小杉駅

※山行時間:約5時間(休憩含む)
※山行距離:約8キロ
※標高差:650m
※山行歩数:約18,000歩
※交通費:3064円


一昨日(2日)、奥多摩の馬頭刈山(まずかりやま・884m)に登りました。馬頭刈山は前から気にはなっていたのですが、前の夜にふと思い付いて、あまり下調べもせずに行きました。

馬頭刈尾根について、山田哲哉氏は『奥多摩 山、谷、峠、そして人』(山と渓谷社)で、次のように書いています。

  東京都心から奥多摩を見ると、大岳山の左手に雄大に伸びる尾根がある。ひとつの山脈と言っても通じるほどに量感のある尾根は、武蔵五日市駅から近く、養沢川と秋川本流が合流する十里木(じゅうりき)に達している。この尾根の名は馬頭刈尾根。中間に馬頭狩山という展望に優れた山頂をもつ。


また、山田氏は、同書のなかで「この尾根からは、地図にもガイドブックにも書かれてない小さな道が、北秋川方向へ何本も分かれる」と書いていましたが、私はそのなかのひとつの千足尾根を登りました。この「千足尾根コース」(守屋地図)は、茅倉という集落から登るのですが、マイナーなコースなので、取りつきに行くにも道案内もないし、林道を登って集落の突端まで来たものの、すぐに登山口が見つからずあたりをウロウロしました。

一般的には、同じ千足でも隣の「千足沢コース」(同)と呼ばれる沢沿いのコースと、武蔵五日市駅に近い「軍道(ぐんどう)」や瀬音の湯、あるいは「十里木(じゅうりぎ)」に下る「馬頭刈尾根コース」(同)がよく使われているようです。

でも、私は、「千足沢コース」は長い林道歩きがあるみたいなので、あえてマイナーと言われている隣の「千足尾根コース」を歩くことにしたのでした。一応、地図にも登山道として記載されていますが、しかし、途中で「廃道」という表示もあったりして、一抹の不安を抱きながら登山口に向かいました。

新宿駅から6時12分発の快速高尾行きに乗り、途中の立川駅で青梅線の武蔵五日市行きに乗り換え、武蔵五日市駅に着いたのが7時36分でした。そして、駅前のバス停から7時43分発の「藤倉行き」のバスに乗り、「とうげん橋」というバス停で降りました。「とうげん橋」までは30分くらいでした。メインルートの「千足沢ルート」だとバス停は「千足」になりますが、「とうげん橋」はそのひとつ手前のバス停です(でも、林道の登り口は二つのバス停の中間にありどちらで降りても同じでした)。

バスには、途中の警察署や高校や小中学校などに出勤する人達が10数人が乗ってきました。しかし、それらをすぎると、バスのなかは私と同じ年恰好のハイカーの男性、通勤客とおぼしき男女二人、それと途中から乗って来た高齢の夫婦の6人になりました。バスは南秋川沿いの檜原街道をしばらく進み、やがて檜原村役場の前の橘橋を渡ると檜原街道から分かれ水根本宿線に入ります。ここからは川も分岐して、南秋川から北秋川になり、バスも北秋川沿いの都道を走ることになります。

やがて左上手に尖がり屋根が特徴の建物が見えてきました。「やすらぎの里」です。サイトを見ると、「やすらぎの里」は、「地域包括支援センター」「子ども家庭支援センター」「高齢者在宅サービスセンター」「老人福祉センター(ふれあいセンター)」「診療所」「保健センター」「福祉作業所」「児童館」の公共の複合施設だそうです。

バスは、北秋川にかかる橋を渡って「やすらぎの里」の構内に入って行きました。そのとき、私は、「あれっ、ここは前に来たことがあるな」と思いました。バスが構内に入って行ったのを覚えていたのです。でも、「藤倉行き」のバスに乗ったのは今回が初めてです。「いつ来たんだろう?」と考え込んでしまいました。

あとで調べたら、檜原街道を進んで行く「数馬行き」のバスのなかで、一日に何便か「やすらぎの里」を迂回する便があるみたいなのです。つまり、「やすらぎの里」でUターンして、再び橘橋から数馬に向かう便に乗ったことがあったのでしょう。

「やすらぎの里」で、通勤客と老夫婦が降車して、バスのなかはおっさんのハイカーふたりだけになりました。

私が降りるバス停の名前の「とうげん橋」というのは、「やすらぎの里」の構内に入るときに渡った橋のことでした。「やすらぎの里」の構内を出て再び橋を渡り、都道に出るとすぐにバスは停まりました。

バス停のなかで身支度をして、都道を「千足」のバス停の方に向かって歩きはじめました。しかし、登山口がある林道の入口らしきところに来たのですが、表示はなにもありません。あるのは「この先行き止まり」の看板だけです。

何度も言いますが、奥多摩の山は林道を登った先の集落のいちばん上の家の横に登山口がある場合が多いのです。そういった経験とGPSを頼りに林道を登って行きました。

15分くらい登ると林道のいちばん上まで来ました(ただ、左手では林道の延長工事が行われていました)。先端の家の周辺を見回しても登山口らしきものはありません。道標も見つかりません。延長工事をしている方向にあるのかと思いましたが、GPSを見るとルートを外れます。先端の家の人に訊こうかと思いましたが、わざわざ家を訪ねる勇気はありませんでした。

スマホにダウンロードした地図と見比べながら登山口の表示を探していたら、先端の家の上にある岩の影に古い道標を見つけたのでした。どうやらここが登山口のようです。マイナーなルートなので、よくある注意書きなどの類もいっさいありません。

それに、看板はあったものの道らしきものはありません。雑草の生えたところを恐る恐る入って行きました。すると、先の方に踏み跡が付いた登山道らしきものが出て来ました。

踏み跡はありましたが、道標は稜線に出るまでに古いものが二つあっただけでした。それで、GPSとピンクテープを頼りに、踏み跡を辿りながら登りました。しかし、道に迷うことはありませんでした。と言うのも、巻き道のようなものはほとんどなく、ただひたすら直登と言ってもいいような急登がつづいたからです。

馬頭刈山に関しては、標高がそんなに高くないし危険なところもないので、初心者向けのハイキングコースと紹介されているサイトもあれば、急登がつづくのである程度の経験と体力が必要と書いているサイトもあります。それはどちらもホントなのだろうと思います。選ぶコースによって難易度も違ってくるのです。それが山田哲哉氏も書いているように、馬頭刈山の特徴なのです。

どのルートを登っても、大岳山と馬頭刈山を結ぶ縦走路でもある稜線と合流します。あとは稜線を歩いて、どこまで行ってどこで下りるかなのです。それが山歩きの楽しみを味わえる馬頭刈尾根の魅力です。

稜線に出ると、やっと三本目の道標がありました。それに従って鶴脚山(つるあしやま)から馬頭刈山の方向に歩を進めました。20分くらい歩くと、鶴脚山(916m)に着きました。鶴脚山は稜線上にある小さな瘤のようなピークでベンチもありません。写真だけ撮ってさらに稜線を進みました。すると、今度は階段が現れていったん下りるようになっていました。この鞍部が馬頭刈山との境になるのでしょう。

その下りでこの日唯一のトレランの恰好をした若者と会いました。「軍道」から登って来て、これから大岳山まで走りますと言っていました。「がんばって」と言ったら、「はい、ありがとございます。お気を付けて」と言って頭をペコリと下げて登って行きました。グループで来るのはどうしようもない連中が多いけど、ソロで登って来る若者はホントに好青年が多いのです。

いったん下って再び登り返す途中に、下山に使う「泉沢尾根コース」(守屋地図)の道標がありました。やはりあまり使われてないみたいで、心細いほど薄い踏み跡しかありません。さらに「泉沢尾根コース」の道標から5分くらい登ると馬頭狩山の山頂に着きました。

山頂にはベンチが二つと、周辺の山名とハイキングコースが記載された案内板もありました。案内板を見ると、私が下山に使おうと思っているコースは記載されていませんでした。山田氏によれば、1970年頃まで馬頭刈山の山頂には「展望台というには立派すぎるコンクリートの見晴らし台があった」そうです。

ベンチに座っていつものようにどら焼きを食べて30分くらい休憩しました。この日は曇天で眺望はほとんどありませんでした。晴れた日には富士山を見ることもできるそうですが、厚い雲のカーテンに遮られてどこにあるのかさえわかりませんでした。もちろん、誰も登ってきません。

少し寒くなったので、引き返して「泉沢尾根コース」を下りました。このコースは、落ち葉も多くいっそう踏み跡がわかりにくくなっていました。ただ、途中には真新しい道標がいくつも立てられていました。踏み跡が消えたところでは、何度も立ち止まってGPSで確認しながら慎重に下りました。

一方、下っていると、木製の道標が至るところで噛み千切られているのに気づきました(下記写真)。人間がそんなご丁寧な悪戯をするわけがないので、野生動物の仕業なのでしょう。やはり、クマがいるのかと思いました。帰ってネットで調べたら、メインのルートの登山口には「クマ目撃情報あり」の注意書きが出ているそうです。また、新しい道標(指導標)がクマに齧られるのはめずらしくないのだとか。どうして新しい道標を齧るのかよくわかってないそうですが(塗料の臭いに惹かれるからではないかとか言われている)、どうやらクマの仕業に間違いないようです。

途中でウォーッという唸り声みたいものが聞こえてきたので、笛を吹きながら歩きました。また、途中で何度もクマの糞らしきものも見つけましたが(下記写真)、あとで調べたらクマではなくハクビシンの糞のようでした。

ハイカーの多くは、クマに遭遇したことがないと言いますが、実際はクマに遭遇しているのです。ただ、人間が気付いてないだけです。クマの方が先に人間に気付いて、笹の中に身を隠したり、逃げたりしているので、人間は遭遇したことがないと思っているだけです。クマに襲われるのは、不意に鉢合わせになってクマがパニックになるからです。それは、クマに限らず犬でも人間でも同じでしょう。だから、鉢合わせにならないように、見通しの悪い場所では音を立てて自分の存在を伝えなければならないのです。そのためには、熊鈴だけでは不充分で、声を出したり笛を吹いたりすることが必要だと言われています。熊鈴を鳴らすと、自分の存在をクマに伝えるので逆に危険だという話がありますが、それは山に登らない人間の無知蒙昧な”都市伝説”のようなものです。

下山したのは13時半すぎでした。入山したのが8時半頃でしたので、約5時間の山行でした。

下りたのは、檜原街道沿いの「和田向(わだむかい)」というバス停です。ここは笹尾根や浅間尾根や三頭山に行くときに何度も通ったことがあります。このバス停には、6千万円かけて作った総ヒノキ造りのトイレがあるのです。それで、やむごとなき方々と同じように、そのトイレで一度用を足してみたいと思っていたのです。

なかに入ると、ヒノキの臭いがして、とても快適に用を足すことができました。また、横には休憩室がありましたので、そこでバスを待ちました。

登りながら、馬頭刈山もやはり奥多摩の山なんだなあと思いました。標高が低くても、奥多摩特有の急登とは無縁ではないのです。六ッ石山や本仁田山や川苔山(鳩ノ巣駅からの舟井戸コース)に似ているなと思いました。山田氏も「馬頭刈尾根から北秋川へと向かうたくさんの踏み跡を、気ままに下ったことがある」と書いていましたが、私もまたひとつ楽しみを見つけたような気がしました。

また、田部井淳子さんではないですが、冬枯れの人のいない山を歩くのはいいなあとあらためて思いました。特にこの時期は、山を歩くのにいちばん好きな季節です。

帰りは、14時2分のバスに乗り、武蔵五日市から青梅、青梅から立川、立川から南武線で武蔵小杉、武蔵小杉から東横線で帰りました。最寄り駅に着いたとき、外はどじゃぶりの雨で、駅から自宅までは徒歩で7~8分ほどなのですが、あまりに雨脚が強いので駅前のドラッグストアでビニール傘を買いました。帰り着いたのは16時すぎでした。


※サムネイル画像をクリックすると拡大画像がご覧いただけます。

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とうげん橋バス停

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やすらぎの里

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都道の脇にあった茅倉の滝

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同上

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登山口までの林道

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登山口

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登山道

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同上

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最初の道標

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登山道

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クマの糞かと思った。

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こんな登りがずっとつづく

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登ってきた道を上から見下ろす

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笹尾根のような平坦な道になったが、すぐまた急登がはじまった。

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ようやく先に稜線が見えてきた。

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稜線上の三つ目の道標

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稜線を歩く

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同上

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同上

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日の出山

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御岳山(左奥に大岳山)

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鶴脚山山頂標識

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道標

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再び稜線を歩く

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階段をいったん下る

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稜線上は道標が多く出てきます。

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泉沢の下山ルート(道標は立派だけど、やはりマイナーなルートです)

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馬頭刈山に向けて登り返す

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本日の下山ルートの看板

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先に馬頭刈山の山頂

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馬頭刈山山頂標識

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山頂の様子

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ここから下山

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下ってすぐ。落ち葉が積もっているのでよく滑ります。尻もちをつきました。

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逆光で見えにくいのですが、道標の半分が折られています。

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ここも齧られている

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このあたりは落ち葉で踏み跡がわかりにくくなっており、慎重に下りました。

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山は下刈りがされて人の手が入っているのがよくわかるので、歩いていて不安はありませんでした。

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この道標も半分が折られています。

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これもハクビシン?

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下山口

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バス停に下りる林道の途中にあった貴布祢伊龍神社

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6千万円のトイレ外観(手前から休憩室、女子トイレ、男子トイレ)

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トイレのなかの休憩室

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和田向バス停

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同上(反対側)
2020.12.04 Fri l 山行 l top ▲