横浜市長選は、8月8日告示、22日投開票ですので、告示までちょうどひと月となりました。早いもので、私が横浜に住んでもう3回目の市長選です。前2回の市長選のときもこのブログで記事を書いていますので、僭越ですが最下部の関連記事をお読みいただければ幸いです。

今回の市長選が前2回と異なるのは、候補者が乱立していることです。そのため、どれが「本命」でどれが「当て馬」でどれが「泡沫」なのか(「対抗」がいないところがミソです)、わかりにくいということです。文字通りカオスと化しているのです。

もちろん、今回の市長選の大きなテーマはIR誘致に賛成か反対かです。選挙の争点はIRだけじゃない、ほかの市民生活に直結する問題も大事だという声もありますが、それはどちらかと言えば、IRを争点にしたくないIR賛成派からあがっている声です。今年の1月に、IRの是非を問う住民投票の条例案が提出されたのですが、議会で多数を占める自由民主党と公明党によって否決されたのでした。そのため、今回の市長選がIRの是非を問う場にならざるを得なくなった(なってしまった)というのが実情です。それをIRだけが争点じゃないというのは、居直り強盗のような言い草と言うべきでしょう。

とは言っても、立候補予定者の多くはIRに反対を表明しています。それは、IR反対が過半の市民の声でもあるからです。その意味でも、住民投票の条例案を否決した自公の罪は大きいのです。

それどころか、ここに来て、自民党神奈川県連の会長として、IR推進の先頭に立っていた小此木八郎氏(菅総理が秘書を務めた小此木彦三郎元建設相の三男)が、突然、国家公安委員会委員長を辞職して、「IR白紙撤回」を公約に立候補を表明するというちゃぶ台返しがあったのでした。そのため、メディアのことばを借りれば、市長選はいっそう「混迷を深める」ことになりました。ただ、小此木氏の出馬がホントにちゃぶ台返しなのか、疑問の声もあります。憲法改正&核武装を主張し、日本青年会議所のカルト的な極右思想を共有する典型的なおぼっちゃま議員が、一転してIR反対に寝返るなど俄かに信じられず、「白紙撤回」というのは山下埠頭に限った話ではないのかという見方も出ているのでした。

もちろん、反対が過半の市民の声であるとは言え、こんなに乱立すると反対派が共倒する懸念があります。知人(横浜市民)は、「見てみ、林文子が漁夫の利を狙って必ず出て来るよ」と言っていましたが、知人の言うとおり、態度をあきからにしなかった現職の林文子市長も、乱立で勝算ありと睨んだのか、どうやら立候補の意思を固めたようです。

自民党横浜市連は、ずっと前に林市長に対して、多選と高齢を理由に支持しないことを伝えているのですが、それはもしかしたら小此木氏出馬の伏線だったんじゃないかと思ったりもします。今回の市長選は何でもありなので、それも単に下衆の勘ぐりとは言えない気もするのでした。

一方で、関内や元町や中華街などの地元商店街や横浜市商工会議所や横浜建設業協会などは、「IR推進」の立場から林市政の継続を求めているそうです。

反対派のツイッターによれば、崎陽軒や元町のキタムラの社長と並んで、中華街組合(横浜中華街発展会協同組合)の理事長もカジノ推進だそうです。今の理事長は日本人のようですが、華僑たちのいつもながらのこずる賢く立ち回る向銭奴ぶりが連想され、私は、魯迅の「利口者と馬鹿と奴隷」のなかに出て来る「利口者」の話を思い出しました。現在、残っている応募業者は、シンガポールのカジノ会社&日本のゼネコンのグループ(共同企業体)と香港でカジノを運営する会社の2つだけで、いづれも華僑系もしくは中国系の業者なので、中華街のIR推進もその辺の絡みもあるのかもしれません。浮利を追うだけでなく、その前に香港の弾圧に声を上げろよと言いたくなります。

また、このブログでも何度も書いていますが、市関係4労組(自治労横浜・横浜交通労組・横浜水道労組・横浜市教職員組合)も、建前はともかく、本音では良好な関係にある林市政の継続を求めているはずです。前々回の市長選までは、彼らは公然と林市長を支持していたのです。

同様に前々回まで林市長を支持していた旧民主党(立憲民主党)は、今回は林市長に「裏切られた」として独自候補を擁立しました。住民投票を求める署名活動をしていた市民団体も、立憲の候補を支持することを決定してしています。しかし、今まで旧民主党が横浜でやって来たことを考えると、今更のように偽善者ぶっている立憲民主党に対して、眉に唾して見ている人は多いでしょう。それに、前回も林市長を推薦した連合神奈川の本音が、立憲の候補とは別のところにあるのは間違いないのです。立憲の候補者は横浜市立大医学部の”名物教授”だった人だそうですが、なんだか気の毒にすら思えてきます。

他に、田中康夫氏も立候補を表明しましたが、反IR候補の乱立に一本化を求める声があることに対しては、一本化は「開かれた談合」だと拒否しているそうです。私は、田中康夫氏が横浜に移住していたことも、FMヨコハマで7年前から番組を持っていたことも知りませんでした。ただ、田中氏のバックにはFMヨコハマのオーナーでもある”ハマのドン”がいると言われて、本人もそう仄めかしているようです。だったら、一本化に前向きであってもよさそうですが、そうではないのです。

田中氏は、2016年の参院選におおさか維新の会から立候補し、私もこのブログで「田中康夫の変節」と題して批判しましたが、記者からそのことを指摘された田中氏は、あれは自分にとって「黒歴史」だと言ったそうです。しかし、あのときの田中氏の選択は、そんなひと言で済まされるようなものではないでしょう。

関連記事:
田中康夫の変節

当初、自民党の候補者リストとして、タリーズコーヒーの松田公太や菅総理の子飼いの三原じゅん子参院議員や林市長と親しく柳美里とも親友だという八方美人の元TBSアナウンサー・渡辺真理などの名前があがっていましたが、その顔ぶれを見るにつけ、どれだけ人材がいないんだと呆れるばかりでした。三原じゅん子が市長候補だなんて悪い冗談だとしか思えませんが、横浜では「三原じゅん子市長」は冗談ではないのです。マジなのです。

メディアは「一部の女性経営者」と書いていましたが、既に支援者たちによって「三原氏を支援する会」が結成され、擁立に動いているというニュースもありました。ただ、三原参院議員の名誉のために言っておけば、三原議員は、本来横浜には何のゆかりもないにもかかわらず、神奈川選挙区でトップ当選を果たした実力者です。横浜では存在感のある立派な(!)政治家なのです。

言うなれば、それが横浜が横浜である所以です。常に「住みたい街」の上位に位置し、オシャレな街、あこがれの街として君臨する横浜も(でも住民税や国民健康保険料はバカ高い)、一皮むけば、そういった外から見れば目をシロクロさせるような光景が、なんの臆面もなく当たり前のように存在する街なのです。

こうして見ると、あたらめて横浜って田舎だなあと思います。それも今どきめずらしいようなド田舎です。子飼いにしても、その取り巻きにしても、面子があまりにもお粗末としか言いようがありません。誰かのセリフではないですが、お神輿はなるべくハリボテで軽い方がいいとでも言いたげです。むしろ、それしか考えてないような感じです。

もうひとり、出馬の噂が消えない元横浜DeNAベイスターズ球団社長の池田純氏は、下記の文春オンラインの記事で、横浜は「日本一大きな田舎」「限られた人たちだけの『村社会』」と言っていましたが、まったくそのとおりで、その認識は私が前に書いた記事とも一致します。ただ、そこが横浜が一筋縄ではいかないところですが、そう言う池田氏自身が「村社会」の住人でないという保証はないのです。”ハマのドン”ばかりが強調されるので誤解されているようですが、横浜は、イスラム世界と同じように、”ドン”と呼ばれる一握りの人間たちによって支配された田舎で、菅総理も新参者ながらそのひとりであることを忘れてはならないでしょう。

文春オンライン
“日本一大きな田舎”横浜の問題点…なぜ横浜市長選は盛り上がらないのか?

横浜市の人口は372.2万人(2015年現在)で、名目GDPは、2021年3月の推計で13兆8774億円(実質GDPは13兆3740億円)です。たとえば、ミャンマーのGDPは6兆6000億円ですから、ミャンマーの倍です。同じくらいのGDPの国を調べると、ハンガリーが12兆6000億円ですので、ハンガリーとほぼ同じです。当然ながら、横浜市には国家レベルの強大な”利権”が存在します。一にもニにも、それが横浜が田舎でありつづける(オシャレになれない)理由なのです。

林市長の前に市長だった中田宏氏は、女子大生とコンパをしたとか人妻と不倫しているとかいった週刊誌のスキャンダル記事によって失脚したのですが、それも、中田氏よる新自由主義的な市政運営が「村社会」の”利権”という虎の尾を踏んだからだと言われています。もちろん、全国でトップクラスの給与を得ていた市関係4労組も、歳出(人件費)削減を掲げる中田市長と激しく対立していたことは言うまでもありません。

別に中田氏の肩を持つわけではありませんが、中田氏が無所属で立候補するまでは横浜市長選は総じて各党相乗りの選挙でした。また、中田氏が辞任したあとの林現市長の時代になると、以前と同じように各党相乗りのオール与党体制に戻っています。中田氏が目の上のたん瘤だった理由がわかるような気がします。

その中田氏に対して「ハレンチ市長」のキャンペーンを張った某週刊誌が、今回も獲物を狙って横浜の街を嗅ぎまわっているそうです。どんなスキャンダルが飛び出してくるか知れたものではありません。このように、今回の市長選でも、”ドン”の息がかかった「村社会」の魑魅魍魎たちがあちこちで跋扈しているのです。

「こんなバカバカしい選挙なんか行ってもしょうがない」という知人の声は、民主主義を無定見に信奉する”良識派”(「負ける」という生暖かいお馴染みの場所でまどろむ勝てない左派)は眉をひそめるでしょうが、しかし、私は、その声が横浜に対するもっともリアルな批評であるように思えてなりません。


追記:(7/14)
その後、記事で触れた部分で動きがありましたので、一応追記しておきます。
①自民党横浜市連は、小此木支援で話がまとまらず「自主投票」になりました。一方で、小此木氏のちゃぶ台返しは菅総理との「出来レース」だという噂があります。それは、IRに反対する”ハマのドン”が90歳と高齢なので、とりあえずIR誘致は凍結して”ハマのドン”に花を持たせる(”状況”が変わるまで待つ)という、如何にも政治屋・菅義偉らしい話です。
②池田純氏は、出馬しないことをあきらかにしました。横浜市長選ではおなじみの週刊誌にDeNAとの金銭トラブルが報じられ、断念せざるを得なかったというのがどうやら真相のようです。ちなみに、女性初の経団連の副会長に就任したばかりのDeNAの南場智子会長は、横浜の再開発に深く関わっており、IR推進の代表的な人物です。
③三原じゅん子参院議員も、出馬しない意向を支援者に伝えたということです。
結局は、林VS小此木の事実上の一騎打ちという、大山鳴動して鼠一匹のような「村社会」が描く構図になってきました。さすが横浜で、「乱立」「混迷」のなかでも、「本命」「当て馬」「泡沫」の輪郭が徐々にはっきりしてきました。

追記:(7/29)
 神奈川県内に無料配布されるタウン紙・「タウンニュース」の最新号(7月29日号)の「意見広告」に、小此木氏と菅義偉首相の対談が掲載されていました。そのなかで菅首相は、「横浜の顔になれるこれ以上の人はほかにいない」「すべての横浜市民の未来のために、小此木さんの政治活動を全面的かつ全力で応援します」と小此木氏への支持を明言していました。
 上記に書いたとおり、これで小此木氏の出馬が「出来レース」であることがはっきりしました。林VS小此木の一騎打ちの色彩がより濃くなったとも言えますが、一方で、もう勝負は決まったも同然という声もあります。もっとも、林VS小此木と言っても、(ここが重要!)現状のまま話を進めて華僑・中国系にするのか、それともいったん「白紙撤回」してアメリカのIR業者の再登板を待つのかという違いにすぎないのです。このままでは候補者の乱立も茶番に終わりそうな気配ですが、口さがない街のスズメたちの間でも、選挙戦そのものより、「退路を断ってない」候補者のなかで誰が出馬をとりやめるかに関心が移っています。
 また、ここに来て、関内駅近くの一等地にある評価額 9億2千万円の旧市庁舎跡地が、7700万円で三井不動産やDeNAなどの企業グループに叩き売られた問題にも再度スポットが当てられています(実際は建物は売却だが土地は70年の定期借地権契約)。そのなかに突然、星野リゾートの関連会社が入ったことが物議を呼んだのでした。もちろん、その背後にIRの存在があるのは言うまでもありません。
 横浜市は直近のデータ(平成30年度)で市債発行残高が3兆1570 億円あり、しかも残高は右肩上がりで増え続ける一方です。それで、執行部や議会は、だから博打のテラ銭で借金を返済しなければならないのだ、と「チンビラの論理」で市民を脅すのですが、その一方で、昨年、917億円の巨費を投じて32階建ての新市庁舎を馬車道駅の近くの北仲通に新築・移転したのでした。ところが、完成した途端に雨漏りがしたとかで、「天下の笑いもの」と言われたり、全国でトップクラスの高給を誇る職員たちが32階の雲上から市民を睥睨するため、横浜名物の「三塔物語」をもじって「デビルの塔」とか「ドラキュラの塔」とヤユされる始末なのでした。いくら建物があたらしくなっても、市庁舎が伏魔殿であることには変わりがないのです。
 ともあれ、これで「村社会」の住人たちの狙いどおり、「日本一の大きな田舎」にふさわしい市長選になったと言えるでしょう。


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