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両国の江戸東京博物館で催されている「荒木経惟 -東京人生-」を観に行きたいと思っていたのですが、引越しの準備やらなんやらでとても行けそうもありません。

それで、パジリコ社から出ている同名の本『東京人生』を買いました。

ここにはいわゆる「エロ写真家」の荒木氏とは違うもうひとりの荒木経惟氏がいます。その心はセンチメンタリズムです。

私が最初に荒木経惟氏の写真と出会ったのは、作家の鈴木いづみさんの写真でした。鈴木いづみさんの大ファンだった私は、その官能的で存在感のある写真に圧倒されました。

当時は白夜書房から出ていた『写真時代』という雑誌に、毎号、荒木氏の写真が発表されていましたので、『写真時代』は欠かさず買っていました。

荒木氏の本には書名に「東京」と付くものが多いのですが、上京して20年近くになる私も最近、”東京で生きるということ”をしきりに考えるようになりました。

荒木氏は三ノ輪の下駄屋の息子ですが、私の知り合いにも神楽坂で生まれ育った人間がいます。彼らの目に映っているのは、私達地方出身者が見る東京とは全然違う東京なのです。

86年、鈴木いづみさんは自死し、荒木氏は彼女の写真を集めた『私小説』を出版しました。そして、90年、最愛の妻・陽子さんが病死して『センチメンタルな旅』は終わりました。

陽子さんが亡くなった日に自宅のバルコニーから撮った雪景色の写真が私は好きです。

5~6年前だったか、四谷三丁目の交差点で信号待ちをしているときでした。ふと、横を見ると、小柄な荒木氏が立っていました。思わず私は「こんにちわ」と挨拶しました。すると、「あっ、どうも」と言って頭をペコリと下げ、さもバツが悪そうな感じでした。

東京の人間というのはホントはシャイで律儀な人が多いのですが、『東京人生』に掲載されているのもそういった写真が多い気がします。
2006.10.20 Fri l 東京 l top ▲