病気ついでにもうひとつ。

先日、旧知のドクターと話をしていたら、日本の医療費は「先進国最低」で、なおかつ医療費の国民負担は「世界最高」だと言うのです。私は「そんなバカな」と思いました。政府やマスコミは、常々、医療費が増加の一途をたどっているので、医療費を抑制しなければならないと言ってます。そのために、介護保険や後期高齢者医療制度などがあらたに設けられ、国民負担が増えているわけです。

そこで、ネットで調べてみました。医療費(対GDP比)の各国比較はOECD(経済開発協力機構)が発表しているデータで見ることができますが、それを見ると、たしかに日本は非常に少なく、先進国の中で「最低」という表現が決してオーバーではないことがわかりました。

さらに驚くべきことに、医療費に対する国民負担率は45%(本人負担15%・本人保険料25%)で「世界最高」なのです。国の負担率は25%で、国や事業主の負担率はむしろ下がっています。医療費そのもの(金額)の比較で言えば、国が負担している医療費はアメリカの10分の1にすぎません。

しかも、日本の医療費の特徴は薬と医療機器のウエートが高く、実際の医療行為にかかる費用(技術料)だけを比較すれば、文字通り「世界最低」と言っても過言ではないでしょう。なおかつ、医者の数もGDP比、あるいは人口比でみても、先進国中「最低」だそうです。

つまり、日本という国は、世界(先進国)最低の医療費で、国民は最高の負担を強いられ(国は最低の負担しかせず)、医者の数も最低であるにもかかわらず、世界一の長寿国だということです。

今まで私達が抱いていたイメージと大きく異なりますが、これをどう解釈すればいいのでしょうか。それだけ健康で病院にかかる患者も少ないパラダイスのような国だと考えればいいのでしょうか。でも、現実はとてもそうは言えないことは誰でも知っています。

つまり、日本の医療費が低いのは、病院にかかる人が少ないからではなく、診療報酬の算定基準が低いからです。しかも、大学病院などで高度な先進医療を受けようとすると、その多くは保険対象外で患者負担が大きくなるシステムになっています。入院費を何百万円も払ったなんていう話を聞くと、あたかも診療報酬が高いと思いがちですが、実際は診療報酬が高いのではなく、患者負担が高いからなのです。

医は算術だ(古い!)などとヤユされますが、病院が必要以上に計算高くなるのは、そうしなければ経営が成り立たないからです(病院の70%は赤字だそうです)。また、若い医者が産婦人科や小児科や外科や救急医などになりたがらないのも、訴訟リスクだけでなく、医者の数が少ないために負担があまりに大きすぎるからです。勤務医の加重労働の問題も同様です。

こう考えるとき、先進国最低の医療費であるにもかかわらず、高齢化社会をタテに医療費の増加をことさら誇張して宣伝し、さらなる国民負担を設け、新自由主義的な市場原理を医療の中に持ち込んだ小泉改革は正気の沙汰だとは思えませんね。これでは地域医療が崩壊するのは当然でしょう。

余談ですが、医療費とともによくとりだたされるのが「公務員問題」ですが、公務員に関してのOECDの各国比較を見ると、公務員の数(人口千人あたりの公務員数)については日本の場合、特に多いということはありません。意外に思われるかもしれませんが、むしろ少ないくらいです。ただ、(ややこしい統計なので説明しづらいのですが)、公務員1 人当り人件費の官民賃金格差は、日本は他国に比べて断トツといってもいいほど大きい(つまり、公務員の給与は民間に比べて高い)ことがわかりました。これが役人天国といわれる所以なのです。
2009.08.20 Thu l 社会・時事 l top ▲