加藤和彦

加藤和彦の自殺はショックでした。もちろん、加藤和彦は私達より上の世代なので、「帰ってきたヨッパライ」も必ずしも同時代的に聴いていたわけではありません。しかし、フォークル(フォーク・クルセダーズ)の音楽が内包する社会性やその自由なスタイルをたどることで、来るべき大学生活に思いを馳せ、少し社会の窓がひらかれたような気がしたものです。フォークルが解散して、北山修が大学に戻り精神科医をめざしたというのもなんだか「カッコいいな」と思いました。

私達は全共闘運動に乗り遅れた世代なので、鴻上尚史の『ヘルメットをかぶった君に会いたい』(集英社)ではないですが、この一大ムーブメントから生まれた「旧来の文化的・思想的規範に対する、新たな対抗文化」(絓秀美著『1968』)によけいあこがれる気持がありました。自前のスタイルにこだわるというのは、既成の権威を否定し、与えられたレールには乗らないということで、それはそれで、当時としてはすごくラジカルなことだったのです。

そのあとのサディスティック・ミカ・バンドもカッコよかったし、また、二番目の奥さんの安井かずみが亡くなったとき、いかにも加藤さんらしい穏やかな語り口で、クリスチャンだった亡き妻のことを話していた姿が今でも印象に残っています。

私達にとっても、”うつ”も含めて加藤和彦が直面した問題は決して他人事ではありません。むしろ、ついにそこまできたかという感じさえあります。なんだか今までのように「死にたいやつは死なせておけ、俺はこれから朝飯だ」と言えない自分がいるのです。
2009.10.19 Mon l 訃報 l top ▲