海老蔵事件はマスコミの格好の餌食になっていますが、一連の報道を見て面白いなと思ったのは、週刊誌やスポーツ新聞などが「海老蔵事件」と呼び捨てしているのに対して、新聞やテレビなどは「海老蔵さん事件」と「さん」付けしていることです。海老蔵は被害者なので、「さん」付けしているのでしょうか。それにしても、ついこの前まで海老蔵を「平成の光源氏」なんてもてはやしていたマスコミが、途端に手の平をかえしたようにバッシングしているのは、いつものことながらあきれるばかりです。

ネットの掲示板を見ていたら、市川海老蔵を「林家海老蔵」と書き込んでいる人間がいました。落語家じゃないんだからと思いましたが、マスコミに比べればまだしもネットの方がほほえましく思えます。

海老蔵にはかつて元歌手との隠し子騒動もありましたが(市川染五郎にも同じような騒動がありましたが)、「女遊びも芸の肥やし」なんていう俗言をいいことに遊び呆けている、それこそテレビドラマなどに出てくるような典型的なバカ息子であるのは間違いないでしょう。あの(六本木界隈では有名な)米倉涼子とも一時つきあっていたようですが、六本木や麻布はその手の人間達が夜毎集まりバカ騒ぎする街なので、頬に傷があるような連中も彼らの周辺に自然と集まってくるのです。

今や「人間国宝」にまで祭り上げられるほど社会的に上昇した歌舞伎者に、「女遊びも芸の肥やし」なんて時代錯誤のようなことを言うからバカが勘違いして高のぼりするのでしょう。”河原乞食”として蔑まれていた芸能の民が、差別されていたがゆえにまつろわぬ者として「市民社会」の埒外にいたのはたしかでしょう。そして、そうやって「市民社会」の公序良俗とは真逆の”芸能の論理”が形成されていったのも事実でしょう。しかし、それはあくまで体制に順応しないマージナルな存在という意味であって、2億円だか3億円だかの豪邸(実は競売物件の中古で名義は松竹らしいけど)に住みセレブな生活を演じる一方で、六本木でバカ騒ぎして「オレは人間国宝だ」とか「おたく、給料いくら?」なんてほざくようなこととはまったく次元の異なる話です。

私は最初に勤めた会社が六本木にあった関係で、当時は芸能人にまつわるいろんな噂を耳にしました。行きつけの喫茶店で顔見知りになり、よく話をしていた(噂のネタ元の)自称「モデル」の女の子がいたのですが、店のマスターから「あの娘(こ)はクスリをやっているよ。気を付けた方がいいよ」と言われたことがあります。そして、ある日、麻布十番のレストランに行ったら、彼女が男と二人で食事をしているのに出くわしたのです。ところが、相手の男はどう見てもシロウトとは思えないヤバそうな感じで、「やっぱり」と思ったことがありました。

それから半年くらい経った頃、私は、偶然目にした週刊誌の記事を見てびっくり仰天しました。それは、彼女が超大物お笑いタレントの一夜妻だったというスキャンダラスな記事で、しかもグラビアにヌード写真まで掲載されていたからです。記事では彼女は「AV女優」となっていました。私はそれを見て「ああ、これが芸能界なんだな」とあらためて思ったものです。

村西とおる氏が言うように、芸能人というのはシロウトのお嬢様にはできないやくざな職業なのです。私は、今回の事件を見るにつけ、じゃあ、その「AV女優」と「恋のから騒ぎ」出身の小林麻央や米倉涼子にどれほどの違いがあるのかと思いました。上野千鶴子氏が言う「性の二重基準」ではないですが、ただ一流大卒でカマトトだったので正妻の座を射止めただけじゃないのか、なんて意地悪い見方をしたくなります。

歌舞伎ファンが言うように、市川海老蔵は歌舞伎俳優として魅力のある役者なのかもしれません(それを言うなら米倉涼子だっていい女優です)。しかし、今回海老蔵は、はからずも品性下劣で甘チャンな素の自分をさらけ出してしまったのです。これでは「海老さま」のイメージも台なしでしょう。中には「歌舞伎の名家に生まれた苦悩」なんてことを言うお人好しもいるようですが、それがどうして「恋のから騒ぎ」や六本木のバカ騒ぎになるんだ?と言いたいです。彼のやっていることはデカダンスとはまったく無縁なただのバカの高のぼりでしかありません。それを芸能マスコミが「平成の光源氏」ともてはやしてきただけです。

>>魔性
2010.12.12 Sun l 芸能 l top ▲