昨日テレビを観ていたら、私の田舎が出てきたのでびっくりしました。折しも先日、田舎の同級生からも電話がかかってきて、最近、田舎が「すごいことになっている」話を聞かされたばかりでした。私の田舎は、九州の山間の温泉場なのですが、温泉の特徴である”炭酸泉”がにわかに注目され、若い女性の間に人気が出て、町も活況を呈しているのだそうです。

昔は文字通りひなびた温泉場で、10軒あまりある温泉旅館も、跡を継ぐ人間なんて誰もいませんでした。過疎化の速度もすさまじく、私たちが中学生の頃は1学年200人前後いましたが、20数年前、私が石もて追われ田舎を出る頃は(石川啄木か!)、20人くらいしかいませんでした。

ところが、私が田舎を出てから、このひなびた温泉場が脚光を浴びるようになり、跡を継ぐ者がいなかった旅館も、二代目三代目が帰って来て、建物もつぎつぎと建て替えられたのです。

先日の電話でも、「Tちゃん(私の名前)が東京に行っちから不思議とN(田舎の地名)が発展しだしたんだよな」と皮肉を言われ、おれは厄病神かと思いました。最近は都会からの「移住」にも力を入れていて、これがまた人気だと言うのです。「Tちゃんも帰って来ればいいだべ。田舎でんインターネットはできるだべ」(方言は創作デス)と言うので、「だからさぁ、前から言っているように、おれはさぁ、たとえ野垂れ死にしても帰るつもりはないのさ」と怪しい東京弁で返答しました。

で、そのテレビですが、通販の化粧品かなにかのCMでした。”炭酸泉”というのは非常にめずらしくて、”炭酸泉”には「美肌効果」があると言うのです。どこかの大学の先生も出てきて、「美肌効果」にお墨付けを与えるようなコメントを述べていました。一方、それを聞きながら私は、田舎の人たちのなつかしい顔を思い浮かべていました。

田舎では、町営の温泉があちこちにあったので、内風呂のある家なんてなく、みんな町営の温泉に行ってました。私は中学までしか親元にいませんでしたが、それまでは毎日温泉に入っていました。当時は町営の温泉場は24時間開放されていましたので、1日に2度も3度も入ることもありました。

でも、うちの家族でも、近所の人たちでも、同級生でも、役場の職員でも、旅館のおばさんたちでも、サメ肌のような人はいくらでもいましたが、美肌の人間なんてひとりもいませんでした。唯一、初恋の相手の女の子だけが「美肌」のように見えましたが、それも「あばたもえくぼ」の幻覚だった可能性が大です。私自身も、前に書いたように、花粉がくっついて困るくらいフランス人形のようにまつ毛が長いという自覚はありますが、美肌だという自覚はありません。実際に、「背が高いね」「足が大きいね」「お金がないね」「将来が不安ね」と言われたことはありますが、「肌がきれいね」と言われたことは一度もありません。母親なんておよそ60年間温泉に入っていますが、とても美肌だとは言い難い。そもそも昔は「美肌効果」なんて誰も言ってませんでした。

もっとも温泉というのは、テレビ東京の旅番組を観ればわかりますが、この手の”誇大広告”が付きものです。まあアベノミクスと同じで、一種のおまじないみたいなものかもしれません。

アベノミクスで再び日本にバブルが訪れるのではないかと言われていますが、田舎の活況も「美肌効果」なんて”誇大広告”に踊らされたバブルにすぎないのではないのかとちょっと不安になりました。
2013.03.17 Sun l 日常・その他 l top ▲