商売人が政治と宗教の話をするのはタブーですが、また懲りずに床屋政談です。

参院選の結果は大方の予想どおりでしたが、私は、(反語的な言い方をすれば)はっきりしてよかったんじゃないかと思いました。

人間というのは、観念ではなく身体なのです。革命は胃袋の問題だと言ったのは故・竹中労ですが、多くの人たちはそれなりにものが食えてそれなりに幸せなのですから、消去法で自民党に票が集まるのは当然と言えば当然かもしれません。

「改革」なんて言っても、私たち自身のことを考えればわかりますが、せっぱつまった状態にならない限り、今日できることも明日に延ばし、今を糊塗してやりすごすのが人間の”習性”なのです。

とは言え、一方で、さまざまなハンディを背負って生きている人たちがいることも忘れてはならないでしょう。それはもしかしたら明日の自分の姿かもしれないのです。

自民党の麻生太郎副総理は、選挙期間中の街頭演説で、民主党の支持母体である連合(日本労働組合総連合会)を、こう揶揄していたそうです。

我々自民党は労働組合とぶつかる(組織の)はずだったのが、給与を上げてほしいと(企業に)言っている。連合の仕事じゃないの? 連合は非正規社員を正規にするという話を全然しない。それで、選挙は民主党、賃金の値上げは自民党。調子良すぎるんじゃないの?
(朝日新聞デジタル 2013年7月14日17時34分)
http://www.asahi.com/politics/update/0714/


傍から見ても、痛いところを衝いているように思います。

一方、連合は、「私たちはなぜ、民主党を応援するのか?」というパンフレットで、次のように訴えていました。

連合は基本的人権、労働基本権を守り、働く人々や生活者の生活向上を目指す団体であり、決して既得権益を代表する団体ではありません。


ホントにそうなのか。

連合の組合員数は、1989年の結成時に約800万人で、2013年2月現在で675万人です。一方、総務省統計局の「労働力調査」(基本集計)によれば、2013年5月分で、就業者数は6340万人、雇用者数は5554万人です。連合で組織されているのは全労働者の1割程度にすぎないのです。ちなみに、非正規雇用は、1891万人で、雇用者数(役員を除く)の36.3%、です。

実際に職場でも、組合が非正規社員の労働条件の改善を働きかけているなんて話は、一部の例外を除いてほとんど聞きません。むしろ会社と一体となって、非正規社員を差別してこき使っているのが実態ではないでしょうか。別の統計(国税庁の平成23年度「民間給与実態調査」)によれば、年収200万円以下の人たちが1069.3万人もいますが、その多くも非正規雇用なのでしょう。

昔からこの国の労働運動は本工主義で、本工・下請工・臨時工(期間工)の二重三重の差別構造の上に成り立っているという指摘がありましたが、その構造は今も変わらないのです。

ヘイトスピーチのネトウヨたちが、左翼や労働組合はめぐまれた既得権者で、彼らを攻撃する自分たちの運動はあらたな階級闘争だ、と主張する気持はわからないでもないのです。

それでも民主党には数百万票の連合の固定票があります。それが「サンクコストの呪縛」になり、自身の改革すらおぼつかないのが実情なのでしょう。でも、もう民主党なんてどうでもいいのです。民主党のことを語ること自体、トンチンカンな気がします。

そんななかで、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の後藤正文やいとうせいこう氏もエールを送っていましたが、選挙運動に”選挙フェス”というあたらしいスタイルを持ち込み注目された緑の党の三宅洋平氏のような、等身大のことばで政治を語り、困難に果敢に立ち向かう若者が出てきたことに、おじさんは一条の光を見た気がしました。

「ガーナでは、5才や8才や10才の少年たちが裸足でナタをもって一日10何時間もカカオを取る仕事をしている。しかし、やつらはチョコレートを食べたことがないんだって。明治や森永はそうやってチョコレートを作っている」
「あなたの財布のお金が3千円減るか5千円減るかは地球には関係ない。本質はそこにある」
「オーガニックのTシャツはユニクロのTシャツの倍くらいの値段がする。しかし、その背景の生産システムが人を傷つけてるか傷つけてないかを考えて選んでほしい」
「安倍さんは、10年間で年収を150万円アップすると言っている。しかし、おれたちが求めているのはそういうことではないんだよ」
「バブル以降に育ったおれたちは、お金や社会の恩恵に与かってこなかったから、違う豊かさを見つけられたんだよ」
「知らず知らずに買った家電製品や知らず知らずに預けたメガバンクの利益が、アフガンやイラクで人殺しに使われているような、そういうねじれを国会のねじれより先に解消しようではないか」
「もうボブ・マーリーもいらない。チェ・ゲバラもいらない。みんなフラットだ。ひとりの重さは変わらない」

こういったことばはおじさんの胸にも熱く響いたのでした。たまたま横浜と渋谷で”選挙フェス”を見ましたが、「ネットのバカ」だけではないこんな若者たちもいるんだと思うと、なんだか希望を見つけたような気がしました。公安に24時間監視されていると言ってましたが、それも勲章だと思えばいいのではないでしょうか。観念では政治は変わらないけど、そのうち彼らのような若者の出番がきっと来るはずです。「未来の子供たち」とつながっているのは、間違いなく彼らでしょう。

私にとっても、このような若者に遭遇できたのが、今回の選挙で唯一の収穫でした。
2013.07.22 Mon l 社会・時事 l top ▲