さる10日、沖縄県議会の臨時本会議で、仲井眞弘多知事が米軍普天間飛行場移設の前提となる名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認したのは公約違反だとして、知事の辞任要求決議を野党などの賛成多数で可決したというニュースがありました。

すると、その記事を掲載したYahoo!ニュースは、つぎのようなコメントであふれたのでした。

「そんなに中国の属国になりたいのか?」
「じゃあ、県議会だけで、沖縄を大陸から守ってみろよ!」
「大陸人と仲良くする・・・なんてのは、バカだよ(笑)」
「沖縄県議会は頭おかしい連中の集まりか」
「マスゴミはこういう時は数の暴力とは言わないのかね」
「中国人に買収された議員たちの行動です」
「中国から独立しようとする少数民族は知っているけど、自ら進んで中国に編入されようとするのは初めて見た」
「反対派って中国のスパイ?」

これがいわゆる「ネット世論」というやつです。

もっともYahoo!ニュースにしても、こういった「ネット世論」に対応するかのように、最近はとみに嫌中や嫌韓のゴシップ(まがいの)記事が目に付くようになっています。メディアが発信する多くの記事のなかから、どうしてわざわざそんなキワモノの記事ばかりをピックアップして掲載するのか。そこにはPV(ページビュー)至上主義というカラクリがあるからです。これはヤフーに限らずJ-CASTニュースなど、いわゆるセカンドメディアの特徴でもあるのですが、彼らにとってニュースの価値は、PVが唯一の基準なのです。つまり、多くのアクセスを稼ぐニュースが、ニュースとして価値があるというわけです。

でも、そのアクセスの中身は、上記のような脊髄反射のネトウヨたちなのです。なかには特定の政治的宗教的意図をもった人間たちが、複数のIDを使って組織的に書き込みをしているケースもあると言われています。

Yahoo!ニュースやJ-CASTニュースなどは、そんな声を唯一の基準にして、ニュースサイトの編集をおこなっているのです。それでは戦争や排外主義を煽るようないびつな編集になるのは当然でしょう。Yahoo!ニュースの担当者は元新聞記者などが多いそうですが、PV至上主義の編集であれば別に元新聞記者でなくても誰でもいいのではないかと言いたくなります。

ネットのニュース編集者であり、『ウェブはバカと暇人のもの』や『ネットのバカ』の著者でもある中川淳一郎氏は、『週刊東洋経済』のインタビュー(ページビュー至上主義にモノ申す!)で、PVには「悪魔の誘惑」があると言ってました。そして、「ネットは無法地帯です。何らかの規制をしないかぎり、勝つのはならずものと非紳士。それがPV争奪戦の真理です」と言ってました。

PVは言うまでもなく質より量の論理です。しかも、それは、お金のための指標でもあるのです。そのため、PVの質を問われることはないのです。PV至上主義にとって、質はまったく意味がないのです。

いつの時代でも戦争や排外主義を煽る者と煽られる者がいますが、Yahoo!ニュースやJ-CASTニュースなどにとって、戦争や排外主義も所詮はお金を稼ぐためのネタというわけなのでしょうか。腐ってもジャーナリズム、セカンドメディアもジャーナリズムです。ジャーナリズムとして最低限譲れないもの、踏み越えてはならないものがあるはずです。現代社会が幾多の戦争の果てに曲がりなりにも到達した(はずの)「平和」や「人権」や「共生」といった理念や見識を彼らに求めるのは、そんなに難しいことなのでしょうか。
2014.01.13 Mon l ネット・メディア l top ▲