小保方さんの記者会見に対して、案の定、今日のマスコミ各社は、いっせいに「疑惑晴れず」の論調(というより言いがかり)で轡(くつわ)を並べていました。しかも今度は、「研究者」「専門家」「識者」の口を借りているのが特徴です。

研究者が見た小保方氏会見 「強引な主張」「証拠示して」「上司に説明責任」
産経ニュース

専門家「200回以上作製」信用できない
NHKニュース

同僚冷ややか、リケジョ後輩は理研の対応疑問視
YOMIURI ONLINE

STAP細胞:識者ら「科学のイメージダウン」懸念
毎日新聞

小保方氏説明会見、識者に聞く STAP問題
朝日新聞デジタル

でも、こういった発言の裏にあるのは、ムラ社会(象牙の塔)を牛耳る古狸たちが、若い研究者の手柄にケチをつけ、挙句の果てに手柄を横取りする、ムラ社会の悪しき因習ややっかみではないのか。それをもっともらしく言っているだけのようにしか思えません。小保方さんと上司とのただならぬ関係とか小保方さんの髪型や化粧や服装がどうのといった、スポーツ新聞や週刊誌のレベルとどう違うのでしょうか。

こんなはじめに「不正」ありきの”小保方叩き”は、袴田事件など冤罪を生んだ報道とまったく同じ構造です。再審で無罪判決が出るたびにマスコミの犯罪報道のあり方が問われてきましたが、しかし、彼らは反省することもなく、今に至るまで同じことをくり返してきたのです。そして、その構造は、原発の安全神話を喧伝し、福島第一原発の事故が起きてもなお、「ただちに健康に影響を及ぼすものではない」と言いつづけたあの”原発報道”にも通底するものです。

そんなマスコミの横並びの姿勢は、安倍政権の暴走に歯止めをかけるどころか、暴走に随伴し、時の政権に拝跪する姿勢と軌を一にしていると言えます。

いざとなればみんな同じなのです。「日本安倍放送協会」はNHKだけの問題ではありません。マスコミ報国は、産経も読売も毎日も東京も朝日も新潮も文春も日刊ゲンダイも東スポも同じです。何度もくり返しますが、”小保方叩き”の背後にあるのは、このような全体主義的な「空気」です。

”小保方叩き”もまた、宮崎学が言う「異物排除社会ニッポン」(新刊のタイトル)を象徴する光景と言えるでしょう。「異物」を排除するのに、右も左もネットもリアルもないのです。右も左もネットもリアルもみんな一緒になって「異物」を排除する。そうやって「おれたちのニッポン」が仮構されるのでしょう。

小保方さん自身、何回もSTAP細胞を確認したと言っているのですから、その検証結果を待てばいいだけの話です。小保方さんに実験室で証明させればいいのです。小保方さんもそう望んでいるのです。しかし、理研は検証作業から小保方さんを排除しているのでした。それも実におかしな話です。

「ネイチャー」誌の論文も同じです。間違っていれば訂正すればいいだけの話です(実際に訂正しているのです)。本でもブログでも、間違いや手違いはいくらでもあります。あるいは、論文の書き方に不慣れな場合だってあり、最初から完全なものなんてないでしょう。小保方さんが「自己流でやってきた」と言っていたのは、そういう意味でしょう。

そもそもSTAP細胞だって、小保方さんが言うように、まだ現象を見たにすぎず、これから理論的に詰めていくという段階なのでしょう。それを今すぐ完全な理論(作製法)を示せ、示せないのは怪しいというのは、言いがかかり以外のなにものでもありません。基礎研究の検証には何年も時間がかかる(場合がある)というのは、科学の常識だそうですが、科学者からそういった発言がまったく出てこないで、すぐ検証結果を出せ、不正でなければすぐ出せるはずだというような発言がさも正論のように飛び交っている光景こそ、常軌を逸しているとしか言いようがありません。

理研の調査に、拙速や杜撰さを指摘する声は多く、理研内部の派閥争いや「特定法人化」の問題などさまざまな背景があると言われていますが、調査チームに、内部の人間だけでなく外部の専門家を入れてほしいという小保方さんの主張は、誰が見てもごくごく真っ当なものです。

一方で、リケジョ(理系女子)に関して、唖然とするような「女性研究者」の発言もありました。

 女性研究者の先輩格に当たる東京大の大島まり教授(生体流体工学)は、「科学論争とは違う場外戦の様相を呈している」と指摘する。写真の取り違えなどのミスは認めつつ、捏造や改ざんは認めない小保方氏の姿勢については、「科学の世界では明白な不正。研究不正に関する理研の規定の文言を争っているのは違和感がある」と語った。

 「男性研究者ならこれほど注目されただろうか」とも語り、「理系の女性は少数派。全体に悪影響が及ばないだろうか」と心配を口にした。
(読売新聞・YOMIURI ONLINE リケジョへ悪影響心配・場外戦…小保方氏会見


小保方さんが若い女性研究者だから「注目」されている(叩かれている)というのは、そのとおりです。だから同じ女性研究者として、そのことに怒りを覚えるというならわかりますが、この教授は、小保方さんのためにリケジョに悪影響が出るのを「心配」すると言うのです。まるで小保方さんの対応は、女性研究者にとってはた迷惑だと言わんばかりです。それは、どう考えても本末転倒した考えであり、そこにはいみじくも象牙の塔を成り立たせているムラ社会の古いオキテが露呈されているように思えてなりません。聞きようによっては、どんな仕打ちを受けても文句を言わずに、男たちに唯々諾々と従えばいいんだ、それが女性研究者の生きる道だ、と言っているように受け取れないこともないのです。

STAP細胞問題は、このように翼賛的なマスコミの体質だけでなく、象牙の塔の旧態依然とした体質をも露呈させたと言えるのではないでしょうか。
2014.04.10 Thu l 社会・時事 l top ▲