角川書店とドワンゴの経営統合について、WEBRONZAに掲載されていた倉沢鉄也氏の「ネット業界の苦しい未来像が垣間見える『角ンゴ』」という記事が、このニュースの核心を衝いているように思いました。

倉沢氏は、「両社の組み合わせの妙は期待が持てる」という見方に「大筋賛成」しつつも、一方で、「今さら角川と組まねばならないほどドワンゴは苦しいのか」「オールドメディアの無形の資産に頼らねばならないほど、ネット業界の先行きは苦しいのか」という疑問を提示するのでした。

 すでにインターネットのメディアコンテンツビジネスとしてできることは、たぶん5年前くらいに全部出揃ってしまい、シンクタンクの目線で見ればそのラインナップは2000年を少し過ぎたあたりでもうほぼ全部わかってしまった。テキストから動画までを含めたソーシャルメディアの趨勢も、広告収入に頼らないと収益規模を維持できなくなることも、広告の呼び水になるコンテンツを自社企画する資質を失っていくことも、そのコンテンツを自社企画できるオールドメディアがリッチな職業でなくなりつつも持ちこたえてしまうであろうことも、すべて想定されたことの範囲内だ。


そして、つぎのようにつづけるのでした。

 この2、3年起きていることは単に競合プレイヤーの盛衰(グリー、モバゲー、ミクシィもその前はこの世の春を謳歌していた)であり、日本のネットビジネスの構造がじりじりと世界三大プラットフォーム(Google、Apple、Amazon)に収れんされていく中で、楽天やヤフージャパンが日本風土に合わせた対抗策を試行錯誤中、今回の「角ンゴ」もその一つと見る。


たしかに、私たちの目にも、ネット事業が企画面で「見た目にも苦しさを帯びてきている」のはよくわかります。

グリーは5月からコメ兵と組んでブランド品の買い取りビジネスをはじめたのだそうです。この事業は、ヤフーも既に先行してはじめています。

折しも今日、DeNAも、東京大学医科学研究所の協力を得て遺伝子検査サービスをはじめるというニュース(DeNAが遺伝子検査サービスに参入 東大医科研が協力)がありました。この遺伝子検査サービスも、既に先行する会社がいくつもあり、私も郵便局の窓口に、郵便による申し込み用紙が置かれているのを見たことがあります。

ドワンゴも事情は同じなのでしょう。ニコ動の三大コンテンツである「アニメ・政治・将棋だけでは近未来像が立ち行かなくなっている中」で、今回の統合は「一発逆転の策」ではないかという倉沢氏の見方には頷かざるをえません。

倉沢氏は、ドワンゴの川上氏のような「創業経営者」の多くは、「長期的投資に関心の薄い人たち」だと書いていましたが、もとより浮き沈みの激しいネット事業自体が、「長期的投資」に耐え得るようなビジネスではないのです。

もちろん、今回の統合もネット優位ではありません。ネットがリアルを呑み込んだのでは決してないのです。倉沢氏が言うように、ドワンゴの経営陣が新会社の経営の主導権を握ることもありえないでしょう。

ネットは所詮ネットなのです。グリーのブランド品の買い取りも、ヤフーがブックオフと組んでおこなう古本や中古DVDなどのヤフオク!での販売も、もちろんDeNAの遺伝子検査サービスも、あくまでリアルが前提で成り立つビジネスであり、言うなればリアルビジネスの「下請け」でしかありません。倉沢氏が言うように、ネットは「リアルビジネスのアウトレット先状態をかき集めないとやっていけなくなっている」のが実情なのでしょう。

極端なことを言えば、ネット(ビジネス)はものを売る道具・手段でしかないのです。夜店の屋台や移動販売の車のようなものです。それを商売を知らない人たちが、「すごい!」「すごい!」と言っているだけです。それは、屋台や移動販売車を「すごい!」「すごい!」と言っているのと同じです。

さらに話を飛躍させれば(暴論を承知で言えば)、私は、安倍政権がすすめる「集団的自衛権の行使」も、リアルとネットの関係という観点から考えれば、むしろいいことかもしれないと思ったりもするのです。「集団的自衛権の行使」というのは、要するに戦闘行為も厭わないということですから、当然死傷者も出てきます。自衛隊に入隊する若者も減るでしょう。そうなれば、自民党の石破幹事長も口を滑らせていましたが、徴兵制の導入も俎上にのぼってくるはずです。

これほどリアルなことがあるでしょうか。ネット住人たちがどうしようもないのは、自分たちが戦場に赴くことはないだろうとタカを括り、汚れ仕事は自衛隊にさせればいいというような卑怯な考えで、ネットのなかから鬼畜中韓を叫び、戦争を煽っていることです。すき家はブラックだと言いながら、じゃあストをやろうとネットで呼びかけても、実際にストに立ちあがったのは全国で一人だけだったという笑えない現実も同じです。

徴兵制が導入されれば、ヘタレなネット住人たちも否応なく”リアルな現実”と直面しなければならないのです。「承認」なんて悠長なものではなく、文字通り軍隊の(戦争の)「当事者」にならざるをえないのです。赤紙一枚で自分と国家が直結しているという容赦ない”現実”を知るはずです。ネット住人たちは、そこで初めてリアルな身体としての”自分”とも向き合うことができるはずです。

角川とドワンゴの統合は、「ネットとリアルの融合」でずらありません。もうネットを「すごい!」「すごい!」と言うような時代ではないのです。ネット業界の趨勢から言えば、今回の統合も当然の流れとも言えるのです。ドワンゴもまた、”リアルな現実”に身を晒され、ネット企業として正念場を迎えることになるのは間違いないでしょう。
2014.06.03 Tue l ネット・メディア l top ▲