ワールドカップですが、案の定、日本の決勝トーナメント進出はほぼ絶望的な状況になっています。このままでは1勝もできない可能性も大です。

グループリーグ最終戦のコロンビア戦を前に、主力選手たちは、記者会見で、「奇跡を信じている」(本田)「信じて戦うしかない」(長友)「無心でやるしかない」(岡崎)などと、およそスポーツ選手とも思えないような意味不明なことばを並べていますが、それは選手だけでなくマスコミも同様です。「前を向いて戦うしかない」「どれだけ心をひとつにできるかだ」「最後まであきらめない気持が大切だ」「選手たちを信じるしかない」などとこれまた言語明瞭意味不明な精神論のオンパレードです。

あの戦争のときもそうでしたが、戦況が不利になるとこのように精神論で現実から目をそらすのがこの国の特徴です。そして、竹槍で本土決戦に備えるなどという、カルトの妄想のような荒唐無稽な発想に対しても、誰も異をとなえることができず唯々諾々と従っていくのです。なかには竹槍でB29を撃ち落とすと本気で信じていた人もいたそうで、それが「愛国心」だと称賛されたのです。

この国ではサッカーファンも、ネトウヨと同じです。実際に、サッカーファンとネトウヨは重なる部分が大きく、前に触れた杉山茂樹氏に対しても、ネットでは「頭がおかしい」「反日スポーツライター」などとくそ散々な言われようでした。そして、案の定、「在日」認定までされる始末です。

杉山茂樹氏は、今大会の日本代表について、ブログで、つぎのように書いていました。

 メディアの商法として、手っ取り早いのは「がんばれ、ニッポン!」を煽ることだ。応援報道というヤツである。これを成立させるためには、日本がある程度、強い存在に見える必要がある。メディアのそうした願い、思惑と、日本サッカー協会の親善試合の組み方(ホーム戦過多)は実に相性がいい。それには負けにくい設定が施されている。
 しかもアジアの本大会出場枠は4.5。アジアの世界的なレベルを考えれば、緩すぎる設定だ。日本が予選落ちする可能性は10%程度。本当に接戦が期待できる試合は、せいぜい2試合ぐらいだ。他は楽勝して当たり前。平素の試合を通して問題点は露呈しにくいのだ。

 こうした環境の中に置かれていると、世界が狭く見えてくる。サッカー観戦に不可欠な世界観も生まれにくい。コートジボワール? ギリシャ? 馴染みのない集団に対して、畏敬の念を払えなくなる。相手をリスペクトする習慣が芽生えにくくなる。サッカーの試合を戦う上で、これは好ましくないスタンスだ。研究を怠り、毎度「我々のサッカーをすれば」と言っている国に、幸は訪れにくい。

杉山茂樹のBLOGマガジン
日本のサッカーを見ているのは、日本人だけではない」(2014 6/22)


杉山氏が言わんとすることも同じでしょう。「自演乙」して現実を直視しないメディアとサポーターのお粗末さ。

日本はすばらしい、日本は世界中からリスペクトされている、などいくら「自演乙」しようとも、サッカーの場合、相撲や野球と違って、世界の舞台で戦うことを宿命づけられているのです。そこで示される結果はごまかしようがない(「自演乙」のしようがない)のです。

テレビ解説者のなかで、杉山氏と同じように、この当然の結果(!)を事前に予想した人間がいるでしょうか。テレビ解説者の大半はJリーグ関係者で、ただ無用な期待を抱かせるためだけに存在している”茶坊主”と言っても過言ではありません。

私の知る限り、杉山氏以外では、あのセルジオ越後氏が辛辣なコメントを残していました。

「これが実力だ。結果は驚きでもなんでもない。今大会の他の試合を見れば一目瞭然だ。日本はどの国よりも未熟で、どの国よりも走っていないし、迫力がない。にも関わらず、一番期待されている国だ。海外組ブランドが喧伝され、選手たちは大スターのように扱われてきた。ヌルい親善試合と、本当のことを言おうとしないメディア。強化よりも興行に気を取られてきた結果、自分たちの実力が実態以上に大きく見えるようになってしまった。しかし、現実は隠せないということだ」
「『自分たちのサッカー』がどうこうというフレーズが騒がれているけど、一つ答えを出すとすれば、今日のこの試合で見せたプレーが、まさに『自分たちのサッカー』だよ。本来の力を出せていないのではなくて、これが世界における我々の本来の力なんだ。そこを見誤っては成長がない。他の試合をよく見てほしい」

サッカーキング
ギリシャ戦ドローにセルジオ越後氏『“自分たちのサッカー”とはこの程度。日本はどの国よりも未熟』


コロンビアは、ラテンアメリカの人間特有の気質から、既に決勝リーグ進出が決まっているので、日本戦は気を抜くのではないかとか、決勝トーナメントではイタリアよりコスタリカと戦いたいので、日本戦では負け試合をして2位通過を狙うのではないかなどという見方が一部にありますが、いづれにしても日本にはもうコロンビア頼みの「奇跡」しか残ってないのです。これがイタいサッカーファンやスポーツメディアが目をそむけている現実なのです。

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2014.06.23 Mon l 社会・時事 l top ▲