先日の『芸能人はなぜ干されるか?』の記事に対して、某固有名詞の部分をすべて削除するよう要求する正体不明のメールが届きました。それで、会社名と氏名をあきらかにしてくれれば対応を考えると返事しましたが、そのまま音沙汰なしでした。文面から察するに単なるイタズラとは思えず、なんだか芸能界の魑魅魍魎の一端を垣間見た気がしました。

芸能界の魑魅魍魎と言えば、今、たてつづけに大手週刊誌にスキャンダル記事が出ている安室奈美恵の場合も然りです。これほどわかりやすい話はないでしょう。たとえば、下記の記事などはその典型です。

安室奈美恵 懇意のPとToshl洗脳宗教団体トップとの関係
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140822-00000002-pseven-ent

これは、今までもいやになるほどくり返されてきたおなじみの光景です。タレントが独立すると、どうしてプロダクションとの間でトラブルが生じ、そして、芸能マスコミによってタレントのスキャンダルが報じられ、「タレント生命がピンチ」などと言われるのか。

あろうことか、こういったカラクリを熟知しているはずのあのアクセスジャーナルまでもが、ばらまかれたエサに飛びついているのです。アクセスジャーナルには、ご丁寧に2本の記事がアップされていました。

<芸能ミニ情報>第18回 安室奈美恵独立問題の核心(2014.08.17)
http://www.accessjournal.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=6982

これが安室奈美恵、“黒幕”、その家族が“同居”する超高級マンション(2014/08/21)
http://www.accessjournal.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=6986

愛人であろうがなんだろうが、そんなことはどうでもいいじゃないかと思います。みずから技芸で生きる芸能人であれば、「独立の思想」をもつのは当然です。パートナーがいれば、損得勘定も入れて、その「独立の思想」を共有するでしょう。それがどうして悪いこと、許されざることなのか。

笠井潔氏は、『日本劣化論』のなかで、「独立生産者の気概と誇り」について、つぎのように言ってました。

会社の一員として、組織を挟んで間接にしか市場と接触できない者は、決して自由になれない。会社の上下関係は恣意的で権力的ですが、市場の論理はより客観的です。市場と勝負しながら生き抜いていくところに、独立生産者の気概と誇りがあります。


それは芸能人とて同じです。フリーのジャーナリストであれば、この「独立生産者の気概と誇り」は痛いほどわかるはずです。なのにどうして、独立VSスキャンダルのミエミエな構図に、いともたやすく乗ってしまうのか。そこにあるのは、「俗情との結託」(大西巨人)であり、”劣化”としか言いようのない”おためごかしの常套句”です。

先日、たまたま目にしたある人気ブロガーのブログにも、同じようにこの”劣化”が露呈していました。彼は、例のNHK特集「STAP細胞 不正の深層」に対して、その内容の粗雑さをなんら検証することなく手放しで絶賛しているのでした。小保方氏が共著者の若山照彦山梨大教授の研究室からES細胞を盗んでSTAP幹細胞をデッチ上げたという、ネットでおなじみの窃盗・捏造説がその最大の根拠です。

彼は、小保方氏を擁護するのは「右翼カルト」で、安倍首相や下村文科相によって、小保方氏の不正を隠す工作がおこなわれていると主張します。さらに、STAP騒動の根本にあるのは、小保方氏と笹井氏の”ただならぬ関係”で、笹井氏は小保方氏との関係を問い詰められた結果、自殺に至ったと推理するのでした。小保方氏のプライバシーを暴くような記事に対しても、理研の職員は「準公務員」で、税金を使って研究をしている「公人」なので、プライバシーを暴かれて当然だというような言い方をしていました。

でも、このような彼の見方は、それこそ「右翼カルト」の週刊新潮や週刊文春や2ちゃんねるのネット住人などが言っていることとそっくり同じなのてす。

一方で、彼は、安倍政権の解釈改憲をファシズムだと批判し、原発再稼動にも反対し、反戦平和を訴えているのでした。もともと彼は、左派・リベラルの立ち位置で、多くの読者の支持を集めているブロガーです。

これこそ笠井潔氏が言う「倫理主義的倒錯」と言うべきでしょう。白井聡氏は、「共産党の体質と封建制の体質はそっくりだ」という堤清二氏のことばを紹介していましたが、左翼も右翼も根っこにあるものは同じなのです。それが白井氏が言う「永続敗戦レジーム」たる戦後の言語・思想空間の構造なのです。

安室奈美恵のスキャンダルも小保方問題も、いみじくもその”劣化”の構造を映し出しているような気がしてなりません。それは、決して大げさな話ではありません。
2014.08.22 Fri l 芸能 l top ▲