今日の昼間、引越し先の下見に行って渋谷に戻る電車の中でのことでした。

ドアの横に立っていた私は、乗ってきたおばあさんからいきなり質問されました。

「これは二子玉川に行くんですかね?」

私は一瞬戸惑い、ドアの上にある路線図に目をやりました。しかし、そこに”二子玉川”の駅名はありませんでした。

「えーと、東横線に二子玉川はないので、たしか自由ヶ丘で乗り換えなければならないんじゃないかと思いますが‥‥」
「エッ、そうなんですか?」
「多分‥‥」

と、そのときです。後ろの方で「二子玉川は自由ヶ丘で乗り換えですよ」と女性の声がしました。振り返ると、学生らしき若い女性がニコニコしながら立っていました。

「そうですよね。自由ヶ丘で大井町線に乗り換えですよね?」と私が言うと、「そうです」と首を縦に振っていました。

そして、次の田園調布の駅で彼女が降車しようとすると、何を思ったかおばあさんも一緒に降りようとするのです。

私は、「違いますよ! 自由ヶ丘は次ですよ!」とおばあさんに呼びかけました。すると、既にホームに降りていた彼女も「違いますよ」と言いながら、おばあさんの手を取って電車の中に誘導したのでした。

おばあさんは「いつからこうなってしまったんでしょうね」「すっかり変わってしまって」とさかんに私に話しかけていました。

「自由ヶ丘は次ですか?」
「そうです。自由ヶ丘で降りたら東急大井町線に乗り換えるんですよ」
と私。
「いくつ目の駅ですか?」
「えーと、たしか1つ目だったような‥‥」

そんな会話をしているうちに、自由ヶ丘の駅に到着しました。

「ここですよ」
「あっ、どうもありがとうございました」
と言っておばあさんが降りようとしたときです。やはり20代前半くらいの若い女性が私に向かって、「私もニコタマ(二子玉川のこと)に行きますので」と言ったのです。

そして、「私も二子玉川に行きますので大丈夫ですよ」と言っておばあさんの手を取ったのでした。私は思わず「お願いします」と言って二人を見送ったのでした。
2006.10.30 Mon l 日常・その他 l top ▲
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両国の江戸東京博物館で催されている「荒木経惟 -東京人生-」を観に行きたいと思っていたのですが、引越しの準備やらなんやらでとても行けそうもありません。

それで、パジリコ社から出ている同名の本『東京人生』を買いました。

ここにはいわゆる「エロ写真家」の荒木氏とは違うもうひとりの荒木経惟氏がいます。その心はセンチメンタリズムです。

私が最初に荒木経惟氏の写真と出会ったのは、作家の鈴木いづみさんの写真でした。鈴木いづみさんの大ファンだった私は、その官能的で存在感のある写真に圧倒されました。

当時は白夜書房から出ていた『写真時代』という雑誌に、毎号、荒木氏の写真が発表されていましたので、『写真時代』は欠かさず買っていました。

荒木氏の本には書名に「東京」と付くものが多いのですが、上京して20年近くになる私も最近、”東京で生きるということ”をしきりに考えるようになりました。

荒木氏は三ノ輪の下駄屋の息子ですが、私の知り合いにも神楽坂で生まれ育った人間がいます。彼らの目に映っているのは、私達地方出身者が見る東京とは全然違う東京なのです。

86年、鈴木いづみさんは自死し、荒木氏は彼女の写真を集めた『私小説』を出版しました。そして、90年、最愛の妻・陽子さんが病死して『センチメンタルな旅』は終わりました。

陽子さんが亡くなった日に自宅のバルコニーから撮った雪景色の写真が私は好きです。

5~6年前だったか、四谷三丁目の交差点で信号待ちをしているときでした。ふと、横を見ると、小柄な荒木氏が立っていました。思わず私は「こんにちわ」と挨拶しました。すると、「あっ、どうも」と言って頭をペコリと下げ、さもバツが悪そうな感じでした。

東京の人間というのはホントはシャイで律儀な人が多いのですが、『東京人生』に掲載されているのもそういった写真が多い気がします。
2006.10.20 Fri l 東京 l top ▲
私事ですが、今日は私の誕生日でした。

で、誕生日の日に何をやっていたかといえば、朝から粗大ゴミを車に積んで市のリサイクルセンターに運んでいました。要するにゴミ捨てです(笑)。

可燃物と不燃物の搬入先が違う上に、二つの場所がとんでもなく離れており、10数年住んでいるにもかかわらずこのあたりの地理にはまったく不案内なため、まずそれぞれの場所を探すのにひと苦労でした。

埼玉というのはメリハリがなくただのっぺらぼうにだだっ広いだけなので、国道など幹線道路から外れると、それこそ迷路の中を走っている感じで方向感覚を失ってしまいます。それに、後方から幅寄せするトラックがやたら多いので(埼玉名物?)、よけい気ばかり焦るのです。

運んでいる間、上ははずっと白い下着のままで、なんだか典型的なオッサンという感じでした。

ついでに車の中も掃除したのですが、すると、コンソールボックスの奥の方からCDに混ざって1個のカセットテープが出てきました。

表に「赤ちょうちん」とボールペンで書かれていました。

それは、いわゆるニューミュージックのなつかしい曲を集めたテープで、昔のガールフレンドが私のために編集してくれたものです。

でも、どうしてそれが車の中にあるのか不思議でした。というのも、当時は別の車に乗っていたからです。

カセットテープを手に取ると、ちょっとせつない気持になりました。

なるべく後悔しないように生きてきたつもりですが、結局、人生というのは後悔することばかりですね。
2006.10.18 Wed l 日常・その他 l top ▲
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今日は朝から通勤ラッシュの電車に乗って浅草橋に行きました。

そして、文字通り浅草橋の上でとっても風情のある風景に遭遇しました。

この掘割をさらに下ってもうひとつ先の柳橋をくぐると隅田川に合流するのです。

浅草橋界隈にはまだこういった古い東京が点々と残っています。個人的には駅のガード下に軒を並べている食べ物屋が好きですが‥‥。

朝から浅草橋に出向いたのはほかでもなく、シールを送る際に使用するOPP(ポリ袋)をラッピング用品専門の問屋で調達するためでした。

ポリ袋といっても1000枚入りの束を3束、手に下げて持って帰るのはひと苦労でした。しかも、帰りの総武線は人身事故の影響で大幅に遅れて、駅のホームは人が溢れんばかりに混雑していました。

ところが、ところがです!

やっとの思いで埼玉に着いて、改札口を出たとき、ハッと気が付いたのです。な、な、なんと、そのポリ袋をまるごと電車の中に忘れてしまったのです。あんな大きくて重い紙袋を忘れるなんて、まったくどうかしていたとしか思えません。

すぐに駅の事務室で落し物の手続きをしました。

終点に着いてから車内を探して、その結果をすぐ電話で連絡してくれるというので、一旦帰宅しました。そして、ほどなく駅から電話がありましたが、非情にも落し物はなかったということでした。

あんなものを持ち帰った人間がいたのでしょうか。

おかげで朝からの買出しが全て徒労に終わってしまい、さすがに憂鬱にならざるを得ませんでした。
2006.10.10 Tue l 日常・その他 l top ▲
まだはっきりと決まったわけではありませんが、もしかしたら来月あたり引越しをするかもしれません。

新しい引越し先は、東急東横線沿線(横浜市)を予定しています。

現在は埼玉ですが、埼玉に住んでもう10数年になります。山に行くのに便利なので、ついつい長居してしまいましたが、都内に出るのに時間がかかりすぎるのが難点でした。

ただ、来月といえばちょうどクリスマス商戦の真っ只中なので、そのあたりをどうクリアすればいいのか、只今検討中です。国会答弁に倣えば、「前向きに検討している」といったところでしょうか。

それにしても、引っ越すのにこんなにお金がかかるとは思いませんでしたね。ハァ~(ため息)。
2006.10.02 Mon l 日常・その他 l top ▲
最近、ニ三のサンディライオンのシールを扱っているショップで気になることがありました。

いづれも「新しい商品が入荷しました」といって”新商品”が紹介されていたのですが、それらを見て、一瞬、我が目を疑いました。

”新商品”の中に10年近く前に発売された古いシールが含まれていたのです。シールマニアではかつておまけシールでお客様にプレゼントしたり、特売シールとして処分価格で販売したシールもありました。

だからといって悪意があったわけではないと思います。

シールを扱っているショップを見るにつけ、最近、シールを扱いはじめた方が大半で、業界事情も含めてそのあたりの知識に疎い方が多いように思います。要するに知らないだけなのだと思います。

安く仕入れればそれだけもうかるから、と単純に考えただけなのかもしれません。それに、ネットでは実際にお客様と対面することがないので、そうやってものごとを安易に考える傾向があるのかもしれません。

たしかに、ネットの普及で誰でも「簡単に」ショップを開くことができるようになり、(何度も繰り返しますが)それがインターネットが産業革命以来の新しいトレンドであるといわれる所以なのですが、だからといって「簡単に」商売ができるわけではありません。そのあたりを勘違いされている方が多いように思います。

マスコミも例によって例の如く、「ズブの素人がネットで大もうけ」みたいな”神話”をふりまいていますが、現実はそんな甘い世界ではないことは言うまでもありません。ネットであれどこであれ商売は商売なのです。商売のきびしさに変わりはありません。

同業の知人は、「ネットのショップを見ていると、実際に商売の経験があるかどうか、大体わかるよ」と言ってました。

ネットで成功したといわれる人たちを見ても、実際に商売を経験した人が圧倒的に多いという事実は、ある意味で当然かもしれません。

今話題の男前豆腐店にしても、社長はズブの素人ではなく、大豆メーカーの二代目として豆腐業界のことを知り尽くした人物だそうです。一見、キワモノのような商売に見えますが、実は経験に基づいたしっかりしたマーケティングと商品力の裏付けがあるのです。

また、我が世の春を謳歌しているIT企業の社長たちの多くも、かつては有能な営業マンでもあったという事実を忘れてはならないと思います。

要は、商売のきびしさがわかっているか、そういった自覚と緊張感を持っているかどうかではないでしょうか。
2006.10.01 Sun l 仕事 l top ▲