
1998年9月7日、スタンフォード大学の学生であったラリー・ページとセルゲイ・ブリンが、シスコシステムズのゼネラルマネージャー兼副社長であったアンディ・ベクトルシャイムから渡された10万ドルの小切手を手に、カリフォルニア州メンロパークの住宅街にあるガレージで創業して10年、今やグーグルは年商2兆円・時価総額17兆円という、誰もが認めるインターネットの覇者となったのでした。ちなみに、ラリー・ページとセルゲイ・ブリンは当座預金口座を持ってなかったため、10万ドルの小切手は現金化できず数週間机の中で眠っていたという逸話まであります。
Googleが10年を迎えたということで、新聞や雑誌などでもGoogleの特集が相次いでいますが、しかし今までとはやや違ったトーンの論調が目に付き、Googleに対する風向きも若干変わりつつあるような気がします。
私の中でも、YouTubeやストリートビューなどをきっかけに、Googleに対する違和感が徐々に生まれています。それどころか、ときにアメリカの経済システムをグローバルスタンダードとして押し進めるあのグローバリズムの強引さがオーバラップすることさえあります。
シリコンバレーでGoogleを真近に見ている海部美知氏は、そのあたりの事情について、Tech Mom from Silicon Valleyの中で、Googleの新しいサービスはCEO(経営最高責任者)のエリック・シュミット主導による経営の多角化の表れだというようなことを書いていましたが(
Chromeは「エリックのおうち」の玄関か)、たしかに二桁の成長は維持しているもののその成長の伸びにもやや陰りが出ている現在、依然売上げの大半(97%)はアドワーズとアドセンスの広告に依存し新しい収益源を生み出してないという“焦り”も背景にはあるのかもしれません。

『週刊東洋経済』(9/27号)の特集「グーグル10年目の大変身」に掲載されていた
アーキタイプの中嶋淳氏と樋口理氏による対談(「グーグルはいい会社。だけど心配・・・」)によれば、アメリカでは最近、若者達がアンチグーグルみたいな感情を持つようになっており、「グーグルはアロガント(傲慢)だとしきりに言われている」のだそうです。二人は口を揃えて、最近のグーグルは「技術力ではなく、単なる力任せでやっているサービスが多い」と言ってましたが、とりわけYouTubeやストリートビューなどはその最たるものでしょう。
ストリートビューのようなサービスの発想は以前から他社にもあったようですが、収益とプライバシーの問題でどこも二の足を踏んでいたそうです。ところが、GoogleはYouTubeと同じで、見切り発車でやってしまうのです。Yahoo!にもパノラマ写真による駅の出入り口案内のサービスがありますが、Yahoo!の場合はなるべく人のいない時間帯に撮影し、人の顔が写った場合は画像処理で人影そのものを除去しているのだとか。また、動画投稿サイトに関しても、あらかじめJASRAC(日本音楽著作権協会)と提携し、著作権を確認、処理した上で公開しており、Googleのようにグレーなことには手を出さないというポリシーがあるのだそうです。このあたりがYahoo!が日本で圧倒的なシェアを維持している理由かもしれません。
いづれにしても現在の偏った収益構造から脱却しない限り、次の10年後にGoogleが単なる普通の会社になっている可能性もなきにしもあらずですが、もしかしたら、今、いろんな意味でその分岐点に差し掛かっているのかもしれません。たしかに、グーグルはすごいと思います。しかし、いつまでもただ「すごい」「すごい」と言っているだけでは肝心な点を見過ごしてしまうことになるような気がしてなりません。
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あらたな神>>
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