
連日、アメリカの金融危機に端を発した世界同時株安のニュースが飛び交っていますが、それを見るにつけ、「世界史的転換」という表現も決してオーバーではないのかもしれない、と思ったりします。
田中宇氏のメルマガの最新号(9/30)「
米経済の崩壊、世界の多極化」によれば、「9月25日、ドイツの財務大臣が独議会で『アメリカは国際金融システムにおける超大国の地位を失う。世界は、多極化する。アジアと欧州に、いくつかの新たな資本の極(センター)が台頭する。世界は二度と元の状態(米覇権体制)には戻らない』」と発言したそうです。
たしかに、『金融権力 ― グローバル経済とリスク・ビジネス』(岩波新書)の
本山美彦教授も書いているように、サブプライム問題は「単にアメリカに経済的停滞をもたらし、それによって、世界経済を不況に追いやるということ以外に、金融の世界地図を塗り替えつつあるという側面のあることを世界に示した」と言えるのかもしれません。本山教授は、「このことの世界経済に与える衝撃は巨大なものである」と書いていました。
グリーンスパン前FRB(米連邦準備制度理事会)議長も「(今回の金融危機は)百年に一度の危機だ」と言ったそうですが、今回の危機がアメリカが超大国の座から転落する過程の中で起きている、というのはもはや衆目の一致するところのようです。
マスコミは、金融安定化法案が議会で採決されれば危機を乗り切れるかのように言ってますが、もちろん、事態はそんな単純なものではなく、仮に成立しても、この大盤振る舞いでさらに財政赤字が拡大し、アメリカ経済が益々疲弊するのは明らかです。
世界は19世紀初頭以来200年間、英もしくは米英の覇権体制で回ってきた。世界の近代・現代は全期間が英米覇権体制だった。人類は、英米覇権以外の近現代を知らない。この200年、英米、特に英が演出(ねつ造や歪曲も含む)した価値観や発想法は、人類全体の知識や気持ちの中に深く根ざしており、簡単に変えられない。
しかし、この歴史が終焉し、今まさに世界史的転換を迎えつつあるのかもしれません。田中氏はさらに次のように書いていました。
米英中心の体制が崩れると、英が演出して全人類の頭の中に根ざしている人権や環境などの価値観に沿った国際政治がなされなくなるので、価値観的には「暗い時代」「悪がはびこる時代」となる。英米中心主義の残党は、米欧日のマスコミや官僚などの中に今後も居残り、しばらくは旧来の善悪観を扇動し続けるだろう。しかし、これらの価値観はそもそも英の都合に合わせて世界の人々を200年洗脳してきた成果でしかないのだから「善悪」の「悪」がはびこっても、実は大して悪いことではない。
これからはイスラムの台頭や大ロシア主義の復活も現実的な問題となるでしょう。とりわけアジアは、多くの人が指摘するように、中国とインドを中心にまわっていくのは間違いないでしょう。いづれにしても、金融危機→株価下落→不況という問題も切実ですが、同時にその先にあるものも視座に入れておく必要があるように思います。