先日のサッカーW杯・日本代表の壮行試合のキプロス戦を見るにつけ、テレビ解説者の能天気な”解説”とは裏腹に、「ホントに大丈夫なんだろうか」と思ったのは私だけではないでしょう。壮行試合の相手というのは、ボクシングで言えば「咬ませ(犬)」のはずです。それがあのドタバタでは不安にならざるをえません。

キプロス戦については、私の知るかぎり、スポーツライターの杉山茂樹氏の「本田圭佑主体の日本代表は限界である。キプロス戦全採点」という文章が唯一際立っていて、秀逸でした。

杉山氏は、UEFAチャンピオンズリーグの決勝と比べると、観客の質は「大人と子どもほどの差があった」と言います。

スタンドに駆けつけるべきは、良いプレイには拍手、悪いプレイにはブーイングができる、愛情溢れる目の肥えたファンだ。単純なクロスに大歓声をあげたり、大久保の登場に黄色い声援を送るファンではない。


 とても素人っぽい観衆に囲まれて、国内最後の試合に臨むことになったザックジャパン。試合内容も推して知るべし、だった。どんなに攻めあぐんでも、多くの観客は常にニコニコ。これでは選手は背中を押されない。


この夜郎自大な「自演乙」は、サッカーに限りません。今の「愛国」一色に染め抜かれた世論などもその最たるものでしょう。

改憲ムードを煽るためにふりまかれる嫌中嫌韓の空気。それに乗って坊主憎けりゃ袈裟まで憎い式に、来る日も来る日もヘイトな記事を流しつづけるマスコミ。そして、そのマスコミに煽られ、(中韓の)失策に「大歓声をあげたり」、政治家の挑発的な発言に「黄色い声援を送る」国民。

でも、それはどう考えても、昔「シナ人」や「鮮人」と呼んでいた頃の、自分たちは優秀な民族で「シナ人」や「鮮人」は劣等民族だという古い差別意識の蒸し返しにすぎません。

サッカーの場合、いくらお粗末な観客が「自演乙」しようとも、選手たちはその技能を否応なく世界基準に晒され、容赦ない評価が下されるのです。でも、政治の場合は、そういうわけにはいきません。「自演乙」によってカルトな妄想の「おれたちのニッポン」に自閉しているのが今のこの国ではないでしょうか。

そして、少しでも水を差すようなことを言おうものなら、「反日」だ「フザヨ」だと袋叩きに遭うのがオチです。そういった姿勢は、言い方に濃淡や強弱はあるものの、ネトウヨから新聞やテレビのマスコミまで本質的には同じです。サッカーならずともそれで「ホントに大丈夫か」と思ってしまいます。

韓国のフェリー事故に対しても、この国ではやっぱり韓国はどうしうようもない国で、韓国人は劣等民族だとでも言いたげな報道が蔓延していますが、先に朝日がスクープした「吉田調書」では、福島第一原発の事故の際、フェリーの船員たちと同じように、所員の9割が待機命令を無視して現場を離脱していたという事実があきらかになったのでした。にもかかわらずマスコミは、事故当時、彼らを日本を守る”英雄”だと美化していたのです。

また事故直後には、住民のパニックを怖れた政府と福島県は、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)によって予測された、放射性物質の拡散被害を表す「積算放射線量試算マップ」を隠蔽して、住民の被ばくを放置したのでした。そして、その政府と福島県は、今度は「美味しんぼ」に対して、「風評を煽る」として批判しているのです。要するに、韓国も日本も同じなのです。

人の振り見て我が振り直せと言いますが、自己を対象化する契機を失ってひたすら「自演乙」するだけのニッポン。そういった「カルト化したニッポン」がファシズムの謂いであるのは言うまでもありません。

その結果、韓国は中国と接近して対日包囲網を築こうとしています。安倍政権は、韓国を中国のほうに追いやったとも言えるのです。しかも、中国や韓国は、劣等民族どころか、今や政治的にも経済的にも日本と比肩する存在になっているのです。その事実から目をそらして夜郎自大に「自演乙」している限り、日本がアジアで孤立してますます落ちぶれて行くのは避けられないでしょう。

ウクライナの例をあげるまでもなく、アメリカが超大国の座から転落して世界が多極化しているのは、もはや誰の目にもあきらかです。とりわけ東アジアでは、中国を中心にしたあらたな秩序が生まれつつあるのは間違いありません。マスコミは、中国がアジアで孤立しているかのように言ってますが、それはパワーゲームとしての国際政治の現実を無視した、「そうなればいい」という”希望的観測”にすぎません。

拉致問題に関する日朝合意にしても、あらたな秩序からはじき出された北朝鮮と日本が、抜け駆け的に接近したにすぎないという見方があるくらいです。北朝鮮は、中国とのパイプ役であった張成沢一派を粛清したことによって、中国との関係も冷えきり、経済的にも逼迫しているというのは多くの人が指摘しているところです。

安倍政権にしても同じです。当初、集団的自衛権の”仮想敵”は北朝鮮だったはずで、安部首相は、第一次安倍政権のときから拉致問題に対しては制裁一本やりの強硬路線をとってきました。それが一転して、1兆円とも言われる「戦後補償(」植民地支配の賠償金)を含む大幅な譲歩には誰しもが驚いたはずですが、そこには手詰まりのアジア政策による安倍政権の焦りが投影されているような気がしてなりません。

ただ一方で、日本政府が拉致調査の進展に応じて制裁解除をおこなう意志を表明したのを尻目に、米国議会下院の外交委員会は、日朝合意の発表直後、北朝鮮に対する経済制裁を強化する法案を可決したのだそうです。安倍政権の命綱は、言うまでもなく対米従属ですので、今回の日朝合意が文言どおりに履行される保障はどこにもないのです。

田中宇氏は、今の手詰まりの状況について、最新記事(無料版)「拉致問題終結の意味」で、「このままだと、日本は無策のまま、唯一の依存先である米国をいずれ喪失し、中国沖の孤立した弱小島国に戻るしかない」と書いていましたが、そもそもの悲劇は、この国が安倍晋三氏のようなネトウヨまがいのカルトな指導者を戴いたことでしょう。すべてはそれに尽きるように思います。
2014.05.31 Sat l 社会・メディア l top ▲
2014年5月30日 031


ふと海を見たいと思い、夕方から大桟橋に行きました。こういった海辺の風景が身近にあるのが、なんと言っても横浜の魅力です。今日も「夏日」とかで暑い一日でしたが、埠頭に立つと海から吹く風が心地よく感じられました。

大桟橋の”くじらのせなか”でしばし海を眺めて時をすごしました。”くじらのせなか”のあちこちには、同じように飽くことなく海を眺めている人たちがいました。今日はなぜか若い女性のグループが目立ちました。

対岸に向かってカメラを構えていると、「すいません」という声が背後からするのです。うしろを振り返ると、若い女の子が立っていました。

「あのー、シャッターを押してくれませんか?」

見ると、若い女の子ばかりの4人連れです。

「いいですよ」
「じゃあ、これでお願いします」

そう言ってスマホを差し出すと、彼女たちはデッキの端に立ち、夕陽に向かっていっせいに両手を掲げ、そして両手を掲げたまま上半身を左のほうに傾けたのでした。いつもそうやって写真を撮っているのか、まるで申し合わせたかのように統制のとれたポーズでした。私は、彼女たちの背後からやや中腰の姿勢でシャッターのボタンを押しました。

聞けば、所沢から来た高校生のグループだそうです。「ありがとうございました!」とこれまた全員で統制のとれた挨拶をして、笑顔で去って行きました。

「若いっていいなぁ」

私は、その後ろ姿を見ながら、しみじみと思いました。もちろん、彼女たちにも苦悩はあるでしょう。でも、彼女たちには、その苦悩を背負うことのできる若さがあるのです。その若さが羨ましくてなりませんでした。


2014年5月30日 027

2014.05.30 Fri l 横浜 l top ▲
ASKAの覚せい剤事件ですが、その後、気になる展開を示しています。ASKAは、既に覚せい剤の使用も認めているそうですが、一緒に覚せい剤を使用したとして逮捕された栩内(とちない)香澄美容疑者は、未だに否認しているのだとか。そして、栩内容疑者に関して、つぎのような報道も出てきているのです。

警視庁によると、ASKA容疑者は覚せい剤所持の容疑を認めた上、「覚醒剤を使ったことがある」と供述している。これに対し、知人の栩内香澄美容疑者は否認を続けているが、その後の捜査関係者への取材で、「覚醒剤は使っていない」と供述していることが分かった。栩内容疑者の尿と毛髪からは覚醒剤の成分が検出されおり、警視庁は、ASKA容疑者が覚醒剤とは明確に伝えずに、栩内容疑者と覚醒剤を使用していた可能性もあるとみて、慎重に調べている。
ASKA容疑者の知人、覚醒剤知らず使用か
日テレNEWS24( 2014年5月26日 12:02)


もしこれがホントなら、ASKAは栩内容疑者をジャブ漬けにしたということになります。ヤクザ顔負けの鬼畜な所業と言わざるをえません。栩内容疑者は、ASKAによって地獄に落とされたとも言えるのです。

その筋に詳しい人間に聞くと、最初は「女性用のバイアグラ」だとかなんとか言って、覚せい剤入りの飲み物などを与え、徐々にシャブ漬けにしていくのだそうです。そういった誘惑は、私たちのすぐ近くにいくらでもあるのです。

ホテルの関係者に聞くと、部屋に1日も2日も閉じこもっている怪しいカップルがいて、カップルがチェックアウトしたあと、部屋の清掃に入ると、案の定、床などに白い粉がこぼれていることがあるそうです。しかし、警察に届けると、半日も1日も事情聴取を受け仕事にならないので、そのまま拭き取って終わりにするケースが大半なのだそうです。

そのように覚せい剤が私たちの日常にも浸透している現実があるのですが、にもかかわらず不思議なのは、今まで「入手ルート」が解明されたという話をほとんど聞いたことがないということです。「警察は入手ルートなどを詳しく調べることにしている」と決まり文句のように言うのですが、しかし、曖昧なまま捜査が終了するのが常です。酒井法子の場合も然りでした。

いつも摘発されるのは、シャブ漬けになった末端の人間ばかりで、売人やその元締めが摘発されることはめったにないのです。おそらく今回も「入手ルート」は曖昧なまま終わるのかもしれません。覚せい剤事件には、そんな不可解な部分がいつもつきまとうのです。そして、暴力団関係者でない限り、初犯で反省のポーズを示せば、執行猶予付きの判決で社会復帰して一件落着です。

ASKAの作品が出荷停止・回収の処置になったことに対して、疑問を呈する意見がありますが、たしかに出荷停止・回収こそ典型的な日本式建前主義と言うべきで、ややもすればそれが禊になる可能性だってありえます。それに、裁判では出荷停止・回収が「社会的制裁」を受けたと看做され、「情状酌量の余地がある」と判断される可能性は大です。極端なことを言えば(過去の事例から言えば)、出荷停止・回収の先に芸能界復帰が予定されているのかもしれないのです。「才能がもったいない」という言い方も、「金の成る木なのにもったいない」という意味に読めないこともありません。実際に、チャゲアスの利権を狙う芸能界のドンが、既に「復帰」を視野に裏工作をはじめたという噂さえあるのです。

でも、事件の一連の経緯を見ても、ASKAの罪はきわめて大きいのです。ASKAの芸能界復帰なんてとんでもない話です。
2014.05.28 Wed l 芸能・スポーツ l top ▲
ASKAの覚せい剤事件は、安倍政権がすすめる「解釈改憲による集団的自衛権の行使容認」への批判を避けるための”目くらまし”ではないかという見方が一部にありますが、そういった”妄想”を前提で言えば、私はむしろ逆のような気がしてなりません。

なぜなら、既にネットなどにも書かれていますが、ASKA と一緒に逮捕された栩内(とちない)香澄美容疑者をたどっていくと、アベノミクスの「成長戦略」を仕切る人脈に行き当たるからです。成り行き次第では、規制緩和を利権にする政商たちのスキャンダルが暴きだされる可能性さえあるのです。

栩内容疑者は、青森の高校を卒業後上京して職を転々とし、パソナグループの医療系人材派遣会社に勤務したのをきっかけに(逮捕時は別の関連会社に在籍)、パソナの創業者・南部康之氏の目にとまり、同グループが政財界のVIPを接待する際の「接待要員」に抜擢されたと言われています。

パソナグループは、現在、港区元麻布に「仁風林」という専用の迎賓館をもっていますが、「仁風林」には安倍首相や森喜朗元首相や前原誠司元民主党代表など、多くの政治家も訪れて「接待」を受けていたそうです。ちなみに、前原元代表の奥さんも、南部代表の「元秘書」と言われていますが、実際は「接待要員」で、パーティで知り合い結婚したという噂がもっぱらです(栩内容疑者も逮捕時の報道では「社長秘書」となっていました)。そして、ASKAと栩内容疑者が知り合ったのも、パソナのパーティだったのです。「接待要員」というのは、言わば北朝鮮の「喜び組」のようなものなのかもしれません。

現在、パソナグループの会長は、小泉政権で製造業派遣の解禁や郵政民営化で辣腕をふるった竹中平蔵氏ですが、竹中氏は安部首相とも親しく、アベノミクスの成長戦略を担う産業競争力会議のメンバー(民間議員)でもあります。同会議は、地域限定で大幅な規制緩和をおこなう「国家戦略特区」を提唱しており、そして、特区における「解雇ルール」「労働時間規制」「有期雇用制度」の見直しを提言しています。つまり、自由に解雇できて、残業手当は廃止して、派遣の期限も廃止するというものです。もちろん、そこには、「日本を、取り戻す!」(自民党のポスター)ならぬ「日本を、売り渡す!」TPPの受け皿作りという側面があることは間違いないでしょう。これが絶望的な格差社会をもたらすグローバル資本主義の本質であり、「愛国」を隠れ蓑にグローバル資本主義に拝跪して「国を売る」安倍政権の実態なのです。

マスコミは、ユニクロが1万6千人のアルバイトを正社員化するという話を大々的に報道して、あたかも安倍政権の経済政策によって正社員化が進んでいる(景気が回復している)かのような幻想をふりまいていますが、実際は、総務省が発表した労働力調査(基本集計)の2013年の平均でも、非正規雇用の割合は36.5%(正規労働3302万人、非正規労働1906万人)で、前年(2012年)より93万人増加し過去最高を更新しているのです(正規雇用は46万人減少)。

また、給与の面でも労働分配率は一貫して下がりつづけており、国税庁が発表した直近の民間給与実態統計調査(平成24年度)によれば、年収200万円以下の給与所得者は5年連続で1千万人を超えています(非正規雇用の平均年収は168万円)。特に女性が深刻で、200万円以下の割合は42.7%にのぼるそうです。

パソナの南部代表は、「派遣こそ終身雇用だ」とうそぶいていたそうですが、若い女の子を脇にはべらせ美酒に酔い痴れる私的なパーティで築かれた人脈を中心に、実際に(「成長戦略」の名のもとに)終身派遣(!)が現実になるような政策がすすめられているのです。

一方、昼のテレビでは、栩内容疑者が高校時代まですごした地元の青森を取材した模様が放送されていました。それによれば、栩内容疑者の一家は、お母さんが白血病にかかったため家計は苦しく、市営住宅で質素な生活を送っていたそうです。そして、高校生のときにお母さんが亡くなり、高校を卒業すると誰にも告げずにひとりで上京したということでした。

東京に出てきた栩内容疑者は、この生き馬の目をぬくような大都会で、みずからが如何に非力な存在かということを思い知らされたのではないでしょうか。そんななかで、コネも学歴もなんにもない自分が、東京でのし上がっていくには(つまり、階層上昇を果たすには)、唯一のとりえである容姿を武器にするしかないという考えにたどり着いたとしても、誰も非難できないでしょう。

私も似たような女性を知っていますが、しかし、哀しいかな、若いときはまだしも、年を取ると往々にしてみじめな末路が待っていることが多いのも事実です。なぜなら、女を武器にする生き方は、所詮男社会を前提にした生き方にすぎないからです。容姿(美醜)が女性性の大きな要素であることは否定できませんが、世の中は残酷なもので、ときにそれが躓きの石になることもあるのです。

先日、都心の住宅街を車で走っていたら、前からベンツやBMWなど高級車がつぎつぎとやってくるのでした。しかも、運転しているのは、見るからに「女性偏差値」の高そうな女性が多いのです。まわりを見れば、家賃が何十万円もするような「高級マンション」ばかりです。私たちのような下層貧民からすると、どうしてあんな車に乗ることができるのか、なんの仕事をしているのか、不思議でなりません。普通の仕事では、とてもそんな生活はできないでしょう。でも、それが東京という街なのです。

栩内容疑者も、そんな東京という街に翻弄され、政財界のお歴々や芸能人と知り合うなかで、徐々に現実感覚を失っていったのかもしれません。ただ、ひとつだけ言えるのは、栩内容疑者が美人でなかったなら(南部代表の寵愛を受けていなかったら)、彼女もまた、年収200万以下の生活を余儀なくされた可能性が高いということです。それがコネも学歴もなんにもない多くの女性の現実なのです。

ASKAについては、早くも「才能がもったいない」とかなんとか言われていますので、ご多分に漏れず禊をすませたらまた芸能界に復帰するのでしょう。しかし、栩内容疑者は、南部代表が今後も面倒を見てくれるわけではないでしょうから(既に逮捕の翌日に会社は解雇されたようですし)、前科者として社会の底辺にいっきに落ちていくのは避けられないように思います。そして、ワルたちにボロボロにされて、「波乱万丈の女の一生」を終えるのではないでしょうか。そう思うと、自業自得とは言え、なんだかせつない気持にならざるをえません。

※下記は、この記事のあとにアップされたおすすめの「関連情報」です(5/29)。
参照
パソナ南部代表、女性スキャンダル&セクハラ疑惑 秘書の覚せい剤逮捕生む企業体質
栩内容疑者“学校1の美女”が覚せい剤に溺れるまで…
2014.05.23 Fri l 芸能・スポーツ l top ▲
糖質制限ダイエットをはじめてからちょうど1ヶ月が経過しました。只今の体重は、6.5キロ減です。

白米は1食に付きおにぎりを1個食べる程度で、あとはもっぱら魚と肉と野菜(サラダ)で腹を満たしています。

よく言われることですが、糖質制限ダイエットのメリットは、糖質=炭水化物さえ制限すれば、あとはいくらでも食べていいので(空腹とは無縁なので)、そんなにストイックにならずにつづけられることです。今までの経験から言っても、(極端なことを言えば)糖質制限ダイエットができなければ、もうなんのダイエットもできないような気がします。それくらいハードルの低いダイエットです。

ところで、ダイエットをはじめると、それは健康によくないとかなんとか必ず茶々を入れてくる人間がいますが、そんな人間に限って、なんのダイエットも自己管理もできない口先だけの人間と相場が決まっています。しかも、彼らが口にしているのは、ネットで仕入れたネガティブな似非知識でしかありません。

ニートやネトウヨの例をあげるまでもなく、ネットは必ずしもその人の人生を豊かにするわけではありません。類は友を呼ぶネットで自己を合理化する屁理屈を覚え、ますますリアル社会に適合できなくなる”不幸”だってあるのです。ネットのない時代であったなら、ニートやネトウヨも、妄想と現実をはき違えることなく、自己を対象化して現実を生きる術を身に付けることができたかもしれないのです。

そんな”不幸”は、パソコン遠隔操作事件の片山祐輔被告にも見てとれます。片山被告が、荒川の河川敷に埋めたスマホから送信した自作自演のメールを読みましたが、ネトウヨと見まごうようなひどいヘイト・スピーチの羅列で、彼もまた、妄想と現実をはき違え、ネットで得た”全能感”によって自分を見失った典型的なネット人間と言えます。もっとも、テレビに映った彼を見ると、とてもリアル社会に適合できるような人間とは思えません。はっきり言って、変なのです。おかしい。ネットが先かメンヘラが先かわかりませんが、常に生きづらさを抱えて生きてきたのではないでしょうか。イジメに遭っていたからかもしれませんが、あの薄笑いに相反してなんだかすごくつらそうに見えました。

ダイエットは誰のためでもなく自分のためです。ダイエットはごまかしようのないきわめてリアルで身体的な問題です。牽強付会な言い方になりますが、「ネットがすべて」「ネットこそ真実」の人間は、そんな自己を対象化する契機をもたない、文字通りダイエットなどとは対極にいるヘタレで”不幸”な人間と言えるのではないでしょうか。彼らが「カルト化」するのは理の当然なのです。
2014.05.21 Wed l 健康・ダイエット l top ▲
18日の朝日新聞に、『週刊ビッグコミックスピリッツ』編集部が、「『鼻血や疲労感はひばくしたから』という登場人物の発言がある12日発売号の『美味しんぼ』のゲラ(校正刷り)を、発売11日前に環境省にメールで送っていた」という記事が出ていました。

 環境省によると、1日に編集部から「被曝が原因で鼻血が出ることがあるか」といった内容の質問が電話とメールであった。その際、12日発売号の全ページが添付されたメールも担当者に送られてきた。

 同省は「こちらは求めていない。具体的な内容の訂正要求もしていない」としている。質問の回答期限は7日に設定されており、7日深夜にメールで回答したという。

 環境省は「他省庁にも関係する部分がある」として、復興庁や内閣府などに12日発売号の内容や編集部の質問内容を伝えた。だが、ゲラそのものについては「未発表の内容で慎重に扱う必要がある」として転送しなかったとしている。(以下略)

(朝日新聞デジタル 2014年5月18日07時07分)
美味しんぼ、発売11日前に環境省へゲラ送る 編集部


編集部は、「検閲」を求めたわけではないと釈明しているようですが、しかし、事前に環境省の意見を求めていることはたしかなのですから、「検閲」を求めたと解釈されても仕方ないように思います。なんのことはない、政府や自治体からの圧力にもひるむことなく、「福島の真実」を訴えている雁屋哲氏や井戸川前町長たちを尻目に、編集部は裏で当局にシッポを振って足を引っぱっていたのです。これじゃ環境省が「風評被害を煽る」として言論に介入してくるのは当然でしょう。

「風評被害」なるものが、安倍首相の「状況はコントロールされている」という壮大な嘘や未だに事故の収拾への目途さえ立ってない「福島の真実」を封印する方便に使われていることはあきらかですが、しかし、今回の問題についても、マスコミは、「ただちに健康に影響はない」と同じように、政府や自治体の「福島の復興に水を差す」式の問答無用の論理をただ代弁するだけなのです。

安倍政権は、特定秘密保護法の施行を先取りするかのように、メディア規制への布石をつぎつぎと打っていますが、『週刊ビッグコミックスピリッツ』の姿勢は、そういった政権の意向を反映したものと言えます。それは、コミック規制も然りです。いくら作者や読者たちがコミック規制に反対しても、発行元がこのテイタラクでは規制の流れを止めることができないのは当然です。そもそも『SAPIO』のような右翼的なカルト雑誌を発行している小学館に、「自由な言論」を求めること自体、八百屋で魚を求めるようなものでしょう。

「おじいちゃんは悪くないんだ」「おじいちゃんは正しかったんだ」という安倍晋三氏の個人的な感情によって突き進んでいる解釈改憲。そのためにふりまかれる嫌中嫌韓の空気。安倍政権が誕生した途端、その意向に沿うようにいっせいに右向け右したマスコミの姿勢は、見事としか言いようがありません。

今の状況を見るにつけ、「バカだ」「頭が悪い」「小心者だ」「臆病者だ」と言われていたひとりの男があれよあれよという間に権力を手中におさめ、気が付いたら恐怖政治が頭上をおおっていた、あのヒットラーとのアナロジーを考えないわけにはいきません。

「良心的」であるかどうかは別にして、辺見庸が言うように、今のマスコミが「ファシズムを誘導している」のは間違いないでしょう。
2014.05.21 Wed l 社会・メディア l top ▲
先日、レーザープリンタの印刷が急に薄くなりました。しかし、トナーやドラムの交換ランプは点灯していません。おかしいなと思いながら、トナーを交換してみました。しかし、状況は変わりません。ネットで調べたら、レーザー照射窓が汚れているとそういった現象が出ると書いていたので、レーザー照射窓を清掃してみましたが、やはり同じです。それで、今度はドラムを買って、ドラムも新品と交換してみました。しかし、それでも状況は改善しないのです。

となると、残るはプリンタ本体の故障しか考えられず、プリンタを買い替えるしかなさそうです。ただ、数カ月前にトナーを4個まとめ買いして、まだ未使用のものが2個残っているのです。そのトナーを生かすには、また同じプリンタを買うしかありません。そんなセコい理由で、同じプリンタを買うことにしました。

数日後、あたらしいプリンタが到着したので、ためしに前のプリンタに装着していたトナーとドラムをあたらしいプリンタに付替えて印刷してみました。すると、なんということでしょう、同じ現象が出るではあ~りませんか(財津一郎)。ということは、プリンタが原因ではない。ナンタルチア(大泉晃)という感じでした。

じゃあ、原因はなんなのか? ドラムとトナーをそれぞれ付替えて不良の原因をさぐることにしました。その結果、トナーが原因だったことが判明したのです。でも、トナーはあたらしいものと交換したばかりです。と、実はあたらしいと言っても、トナーは安さに釣られて買った再生品だったのです。やはり、再生品は不良が多いのか。

それで、別のものと交換しようとあたらしいトナーを箱から取り出そうとした際、私はある”異変”に気付いたのでした。残り2個のトナーは、いづれも包装してあるはずの黒色のビニール袋が最初から破れているのです。再生品でも、通常はちゃんと密封してあるはずです。ただ、トナーが入っていた箱は使い古しという感じではありません。嫌な予感を抱きながら、私は、残りの未使用のトナー2個をプリンタに装着して印刷してみました。案の定、同じ現象が出ます。

4個のうち、なんと3個が不良だったのです。袋が破れていて、印刷が薄いということは、最初からトナーが充填されてなかったのかもしれません。なんらかの手違いで、回収されたカートリッジをそのまま新しい箱に入れて出荷したのではないか。そうとしか考えられません。

それで、カートリッジの回収用の送り状に記載されていた「リサイクルセンター」に電話してみました。すると、そこはただの回収業者で、販売は別だと言うのです。委託先の業者はたくさんあるので、購入の際の伝票で確認してもらうしかないということでした。クレームもそっちに言ってくれと言うのです。

しょうがなく引き出しのなかから納品書を探し出し、販売業者に電話してみました。業者とはかなりエキサイティングなやり取りがあったのですが、業者は4個のうち3個も充填してない品物を送るなんて「考えれない」、「お客さんの勘違いじゃないですか」と言い張るばかりです。袋が破れていた件も同様でした。言われてみれば、トナーが充填されていないとか袋が破れていたとか言っても、それを証明するものはなにもないのです。自分で使ってあとからクレームを付けているんじゃないかと思われても仕方ないのです。しかも、購入から既に時間が経っています。

もちろん、私は、印刷する枚数から言って、そんなにトナーは使わないと説明したのですが、所詮は水かけ論で、「そう言われてもこっちは確認のしようがありませんしね」と言われるだけです。

結局、私は、ダチョウ倶楽部ではないですが、「訴えてやるっ!」と捨て台詞を残して電話を切るしかありませんでした。

おかげでドラムもプリンタ本体もまったく無駄買いになりました。「予備がないと不安症候群」の人間としては、かっこうの予備になった気がしないでもありませんが、さすがにプリンタは邪魔で仕方ありません。

後日、暇さえあれば2ちゃんねるやニコ動に張り付いている(プチ・ネトウヨの)知り合いの若者にこの話をしたら、「やっぱ、ネットは信用できないですね」「ネットは怖いですよ」といたく同情され、私はオヨヨ(桂三枝)と言いたくなりました。
2014.05.20 Tue l ネット l top ▲
いわゆる「美味しんぼ」問題に関して、ネットでもっとも的確にこの問題の本質を衝いていたのは、きっこのブログだったように思います。

きっこのブログ:
「美味しんぼ」の問題に関する個人的見解

『ビッグコミックスピリッツ』に連載中の「美味しんぼ・福島の真実編」で、福島第一原発を訪問 した主人公が鼻血を出す場面が描かれていたことや、実名で登場した双葉町の井戸川克隆前町長の「私も鼻血が出ます」「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」「今の福島に住んではいけないと言いたい」という発言や、同じく実名で登場した福島大の荒木田岳准教授の「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと思います」という発言が波紋を広げていると言うのです。地元の福島県や双葉町などは、「風評被害を増長させる」として、発行元の小学館に抗議したそうです。また、菅官房長官はじめ石原環境大臣・根本復興大臣・森消費者担当大臣など閣僚からも、同様に批判が相次いでいるそうです。

それに対して、井戸川前町長は、「『実際、鼻血が出る人の話を多く聞いている。私自身、毎日鼻血が出て、特に朝がひどい。発言の撤回はありえない』と反論して、自分が鼻血を出している写真まで公開」しているのだとか。

一方、「美味しんぼ」の作者の雁屋哲氏は、みずからのブログ「雁屋哲の今日もまた」で、「自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない。」と逆に反発していました。「真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか。『福島は安全』『福島は大丈夫』『福島の復興は前進している』などと書けばみんな喜んだのかも知れない。今度の『美味しんぼ』の副題は『福島の真実』である。私は真実しか書けない。」と書いていました。

井戸川前町長が言うように、福島の住民に「鼻血が出た」ことは事実なのです。現地で治療に当たった医療関係者たちも証言しています。それどころか、きっこがブログで書いているように、当時、自民党の熊谷大参院議員(宮城県選挙区)や山谷えり子参院議員、そして当の森まさこ参院議員(福島県選挙区)なども、多くの住民が鼻血を出している事例をあげて、「直ちに健康に影響はない」と言っていた当時の民主党政権を国会で追求し批判しているのです。山谷氏や森氏に至っては、井戸川町長(当時)の鼻血の件をとり上げて質問さえしているのです。

政権が変われば言うことが180度変わる。これほどのご都合主義、二枚舌があるでしょうか。原発の問題に対して、政治家が如何にいい加減かということをよく表しているのではないでしょうか。

低線量被爆が人体にあたえる影響については、まだ解明されてないことが多いのは事実ですが、しかし、石原環境大臣が言う鼻血と被爆の因果関係を否定する専門家の「評価」なるものはデマゴギーの疑いが濃いのです。被爆と鼻血の関係については、チェルノブイリの事故の際も多くの事例が報告されているのです。それになにより福島県が実施した県民健康管理調査に、健康被害を出来るだけ小さく見せるため、多くの不正と改竄がおこなわれていたことが毎日新聞のスクープであきらかになっています(詳しくは、岩波新書『福島原発事故 県民健康管理調査の闇 』参照) 。既に福島県の子どもの甲状腺ガンの発生率は、異常に高い(通常の50倍以上)という調査結果が出ていますが、チェルノブイリの例では、甲状腺ガンの発生率が高くなるのはこれから(事故後4~5年)なのです。そう考えれば、「美味しんぼ」は、低線量被爆についての問題提起をおこなったとも言えるのです。

私は、今回の問題を見るにつけ、生活保護の”不正受給”問題がマスコミを賑わせた際、片山さつき参院議員が河本準一を名指しで批判したことが思い出されてなりませんでした。民主主義社会にあって、権力をもつ政治家が、民間人を名指しで批判するなどあってはならないことです。まして表現活動を名指しで批判するのは、自由な表現・言論への介入以外のなにものでもありません。

「風評被害」だなんだと言う前に、未だに13万人の人たちが避難生活を強いられている現実の重さを考えるべきでしょう。13万人の人たちは、「風評被害」以前の状態に置かれたままなのです。ただ水で洗い流し土を入れ替えるだけの除染なんて、素人目にも子どもだましのようにしか見えません。荒木田岳准教授が言うように、「人が住めるようにするなんて、できない」のがホントなのではないか。汚染水を海に放出しつづけている海洋汚染の問題にしても然りでしょう。

政治家やマスコミは、事故前は「安全だ」と言い、事故直後は「ただちに健康に影響はない」と言い、今は「科学的根拠はない(たいしたことではない)」と言っていますが、放射能汚染や被爆の問題は、そんなに簡単でたいしたことではない問題なのかという疑問があります。なんだか従軍慰安婦や南京大虐殺が、実はたいした問題ではなく韓国や中国が大騒ぎしているだけだという話と似ているような気がしないでもありません。

山岡俊介氏のアクセスジャーナルに、「安倍首相がTV界から批判的人物を追放!?」という記事が出ていましたが、NHKの人事に象徴されるように、この「美味しんぼ」問題も(「美味しんぼ」が原発問題とは別に安倍政権を痛烈に批判していたことを考えれば)、安倍政権による”言論封殺”という側面もあるように思えてならないのです。マスコミのなかで、この問題にいちばん最初に火を点けたのはどこなのか、それを調べてみるのも無駄ではないかもしれません。
2014.05.15 Thu l 社会・メディア l top ▲
今月3日放送のフジテレビ「めちゃ2イケてるッ!」で、小保方さんのパロディが見送られた件に関して、ナインティナインの岡村隆史は、ニッポン放送「ナインティナインのオールナイトニッポン」のなかで、つぎのように語っていたそうです。

 「オンエアしていない状態でダメやというのはちょっと」と納得できない様子の岡村。実際の内容については「ただのクイズコーナーだった」と説明し「おそらく小保方さんがこのコーナーを観たら多分笑ったと思う。放送されないなら(小保方さんが入院している)病院に持って行ったら笑顔も戻るのではないか」と小保方氏を元気づける内容であったことを強調した。
ナイナイ岡村 「阿呆方」見たら「小保方さん笑ったと思う」 スポニチアネックス 2014年5月9日)


「めちゃイケ」のサイトには、タレントの重盛さと美が扮する「小保方さん」が会見の場で「あります!」と言った瞬間、頭をスリッパで思い切り叩かれる次回の予告の映像がアップされていて、その映像には「阿呆方さんが緊急会見涙目で○○はあります」というスーパーが付けられていたそうです。

これがどうして小保方さんが見たら「笑ったと思う」のか。どうして(この映像を)「病院に持って行ったら笑顔も戻る」と言えるのか。もし、自分がメンヘラで休業していたとき、同じようなことをされたらどう思ったか。ホントに「笑った」か。

そもそもあの休業についても、業界で絶大な権力をもつ吉本興業の圧力で、芸能マスコミはどこも病気のことを書きませんでした。小保方さんと違って、岡村は手厚く保護されていたのです。メンヘラになるのは繊細な心の持ち主のようなイメージがありますが、岡村はデリカシーの欠片もない傲岸な人間のように見えて仕方ありません。岡村の発言は、思い上がりもはなはだしい詭弁だと言っていいでしょう。

小保方さんは、一般人です。権力をもつ政治家や官僚でもなく、プライバシーを切り売りする芸能人でもないのです。「めちゃイケ」の発想は、どう考えてもイジメのそれと同じでしょう。ここにも”小保方叩き”の本質が出ているように思います。

岡村には何様のつもりなんだと言いたい。たかが芸能人の分際で、なにを偉ぶっているんだと言いたい。そこにあるのは、テレビ局に揉み手して低劣な俗情に媚びを売る卑しい心根だけです。芸能人の風上にもおけないのです。

芸能人は、芸能人であると言うだけで差別される存在です。誤解を怖れずに言えば、世間に身を晒し自分のプライバシーを切り売りするような人間が差別されないわけがないのです。だから芸能人は芸能人たり得るのです。だからその差別を逆手にとって技芸に生きることができるのです。芸能人があこがれられたり拍手喝さいを浴びたりするのは、あくまでその技芸に対してなのです。

芸能人は、市民社会の公序良俗の論理とは異なる論理で生きている「特殊××」の人間たちです。彼らには市民社会の埒外で生きる「河原乞食」としての矜持と覚悟があるはずです。芸能人に「在日」が多いのもヤンキー(不良)が多いのも家庭的に恵まれない人間が多いのもそれゆえです。

岡村隆史は勘違いをしているのではないか。それは、岡村が立命館大学(?)出身の”高学歴芸人”であることと関係があるのかもしれません。その高慢ちきな意識は、ビートたけしや爆笑問題の太田光などにも共通していますが、なにか出世して社会的な名声を得たつもりにでもなっているのではないか。

岡村もまた、「分をわきまえず偉ぶる芸人」(竹中労)と言うべきでしょう。

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2014.05.10 Sat l 芸能・スポーツ l top ▲
糖質制限ダイエットですが、ダイエットをはじめて20日が経過しようとしています。体重は、既に6キロ減になりました。順調と言えば、順調ですが、しかし、それでもちょっと体重の減りがはやいような気がしないでもありません。

食事は、1日に2食。ご飯は1日におにぎり2個。あとは、野菜や魚や肉を食べています。こういった食事をすると、いきおい野菜を多く食べるようになりますし、ドカ食いもなくなります。糖質制限ダイエットにはそういった”副産物”もあるように思います。

ダイエットをして気付いたことがふたつあります。ひとつは、腰が痛くならなくなったことです。別に腰痛持ちだったわけではありませんが、ちょっとでも腰を曲げて物を持ち上げたりすると、すぐ腰が痛くなっていました。しかし、不思議なことにそれがなくなったのです。もうひとつは、『炭水化物が人類を滅ぼす』の夏井ドクターも書いていましたが、朝目覚めたときの胃のもたれや不快感がなくなりました。

ただ、糖質制限ダイエットにもデメリットがあります。これも夏井ドクターが書いていましたが、エンゲル係数が高くなることです。いわゆる「おかず」中心の食事にして、「おかず」で腹を満たそうとすると、どうしても食費がかさむのです。炭水化物中心の食事が、労働者の腹を満たし、過酷な労働を維持するために普及したというのは、そのとおりかもしれません。極端なことを言えば、大盛りのご飯にふりかけをかけて食べれば、いちばん経済的で、腹も満たされるのです。テレビでやっている大盛り特集とかB級グルメとかラーメンブームとかいったものは、「庶民的」と言えば聞こえはいいですが、はっきり言って、貧困ビジネスの側面もあるように思えてなりません。吉野家と松屋とすき家の牛丼の違いについて、あれこれ蘊蓄を傾けているような人たちはどういうクラスの人間が多いのかを考えれば、よくわかるのではないでしょうか。

とは言え、たしかに、牛丼はウマいのです。昔、知り合いの人間が、牛丼には麻薬が含まれているのではないかと思うくらい、無性に牛丼を食べたくなるときがある、と言ってましたが、それはあながち的外れではないのかもしれません。牛丼には糖質という「麻薬」が含まれているのですから。私たちの食生活は、糖質の「甘さ」に依存した生活であると言ってもいいでしょう。今の私も、「甘さ」の禁断症状におそわれていますが、ただ糖質ダイエットの場合、空腹感と戦うことがないので、その点は他のダイエットよりハードルは低いように思います。

糖質ダイエットの要点は、ただひとつ、「主食」をやめることです。ヨーロッパには「主食」ということばがないそうですが、従来の「ご飯が主食」という考え方をやめなければならないのです。

日本が「豊葦原瑞穂の国」であると言うのも、ただの神話にすぎません。この国には、稲作文化を担う定住民とは別に、サンカ(山窩)と呼ばれる非定住の山岳民族がいました。サンカ文学で有名な三角寛氏(池袋の文芸坐を作った人でもある)は、私の郷里の先輩なのですが、そう言えば、子どもの頃、近所にいっさい米を食べないという老人がいました。老人の一家は、みすぼらしい小屋に住んでいて、田舎にあって山や田畑を所有してないので、よその家の山仕事を手伝ったり、カゴなどを編んでそれを売ったりして生活していました。また、子どもの名前にも、サンカの掟を思わせるような漢字が使われていました。私は、のちにサンカのことを知ったとき、あの老人はサンカの末裔だったのではないかと思ったものです。

『古事記』に、「八雲立つ 出雲八重垣 妻隠(つまご)みに 八重垣作る その八重垣を」という歌がありますが、この歌ももともとはサンカの作ではないかと言われているそうです。それが、いつの間にか中央の支配権力に剽窃され、彼らの正統性を捏造する神話のなかに取り込まれていったと言われているのです。(八雲立つ 出雲八重垣

この国には、つい最近まで稲作文化とは別の、単一民族神話の埒外に、いわば「日本」という国にまつろわぬ人たちが住んでいたのです。1952年の住民登録法の施行まで、彼らのなかには住民登録もしていない者もいたそうです。従って、納税や徴兵などの国民の義務とも無縁だったのです。

ご飯を食べない、「主食」をぬくということには、このように稲作文化にとらわれない豊饒な歴史への想像力をかき立てるものさえあるのでした。
2014.05.08 Thu l 健康・ダイエット l top ▲