新型コロナウイルスは、アメリカやヨーロッパにまで拡散しはじめています。いよいよパンデミック(世界的大流行)の様相を呈して来たと言っていいでしょう。世界的な株価の暴落もむべなるかなと思います。

IOCの委員からは東京オリンピックの延期論まで出ていますが、安倍政権の場当たり的な彌縫策の背景に、開催まで半年に迫ったオリンピックに対する焦燥があるのはあきらかでしょう。政府の対応は、気温が上がればウイルスの感染力が弱まるので、それまでの時間稼ぎの色合いも濃いように思います。しかし、言うまでもなく、春になり気温が上がるのは日本とその周辺だけです。地球の反対側は、天候が逆なのです。

仮にトランプが言うように、「魔法のように」ウイルスが消えてなくなったとしても、感染源のアジアに対する風評は残るでしょうし、なにより観光地としてのイメージの低下は避けられないでしょう。ネトウヨや産経新聞や夕刊フジやフジテレビ(フジ・サンケイグループですが)のように、「日本は、中国や韓国と違うんだ」といくら言っても、世界から見れば、日本も中国も韓国も同じ穴のムジナなのです。アジア(あるいはアジア人)とひとくくりに見られるだけです。

これで安倍政権が掲げる「観光立国」も砂上の楼閣で終わるでしょう。アメリカと(見えない)戦争をしている中国と傍観者の日本の違いはあるにせよ、中国の毅然たる対応と右往左往するばかりの日本の差は、誰が見ても歴然としています。日本のメディアや国民は、そうは思いたくないのでかたくなに否定するでしょうが、これで中国の習近平の独裁体制はより強固なものになり、新型コロナウイルスをきっかけに、これからますますアジアの盟主としての地位を固めていくに違いありません。

一方、多極化でご主人様を失う日本は、中国の周辺国として、かつての「東夷」の国のような扱いに甘んじなければならないかもしれません。ネトウヨの中国人ヘイトも、単に負け犬の遠吠えにすぎないのです。

中国の習近平の指導者然とした強いリーダーシップには、一党独裁国家の”強み”が出ているように思います。それに対して、アメリカのトランプや日本の総理大臣の能天気な「バカっぽさ」には、民主主義国家の弱点が出ているような気がしてなりません。選挙で指導者を選ぶ民主主義国家の国民は、なにより聡明さと見識が求められるのですが、残念ながらそれは絵に描いた餅にすぎません。「バカっぽい」国民が選んだのは、同じように「バカっぽい」指導者だったのです。

新型コロナウイルスの報道で、私たちがあらためて目にしたのは、武漢の近代的な都市の風景であり、中国の病院の最新の設備でした。たしかに貧富の差はあるのかもしれませんが(それは日本だって同じです)、あれだけの人口を抱えながらめざましい経済発展を遂げた国力は、やはり認めざるを得ないでしょう。既に名目GDPでは、日本は中国にぬかれています。中国は、ネトウヨやフジ・サンケイグループやデーブ・スペクターの会社のスペクター・コミュニケーションズが言うような「野蛮で遅れた国」なんかではないのです。

それは中国だけではありません。OECD(経済協力開発機構)の発表によれば、2018年の1人当たりGDPでは、日本はとうとう韓国にもぬかれたのだそうです。2012年、経団連のシンクタンク「21世紀政策研究所」が、日本の1人当たりGDPが2030年までに韓国に抜かれ、「先進国から転落しかねない」という長期予測を発表したのですが、2030年どころか2018年にあっさりぬかれてしまったのです。テレビ東京の頭のハゲた株屋のおっさんのように、アベノミクスの上げ底の株価に浮かれている間に、ハイスピードで日本は先進国から転落していたのです。これほど「バカっぽい」話はありません。

21世紀の世界にとって、今回の新型コロナウイルスが、単に公衆衛生上の問題にとどまらず、多極化に伴う世界分割の軍事的経済的な意味においても、大きなメルクマールになるのは間違いないでしょう。「風邪と同じでたいしたことない」という、国民に思考停止を強いるような反動主義者のデマゴーグに、ゆめゆめ騙されてはならないのです。
2020.02.29 Sat l 新型コロナウイルス l top ▲
下記の時事通信の記事からの引用ですが、「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府の専門家会議は24日、緊急記者会見を開いて行事の自粛や風邪の症状が出た場合の自宅療養など、社会の協力を強く呼び掛けた」そうです。

その中で、「同会議の尾身茂・副座長は、現状は『一部の地域で感染の連鎖が起きているが、まだ急拡大には至っていない』との認識を示し、今後1、2週間が急拡大するか拡大を抑えられるかの分かれ道になると強調した」のだとか。

Yahoo!ニュース
時事通信
行事自粛や自宅療養を 新型ウイルスの感染拡大を受け、専門家会議が緊急会見

「なに寝ぼけたこと言ってるの?」と言いたくるような記事です。もうとっくに「感染の連鎖」は起きているでしょう。また、「感染の急拡大」も誰の目にもあきらかでしょう。

ただ、何度も言うように、一般市民の検査が行われていないので、政府が発表する感染者数が実態を反映していないだけです。実際は、政府が発表する数の数十倍も数百倍も(もしかしたら、数千倍も)感染者がいるのは間違いないでしょう。新型コロナウイルスの検査能力が低いのも、感染者数を少なく見せるために、意図的にそうしているのではないかという声がありますが、今の政府の不正・改ざん・隠蔽の体質を考えれば、あながち的外れとは言えないように思います。

メディアで報道されている「新たな感染者」というのも、大半は感染者に「濃厚接触」した人たちで、言うなれば彼らは検査対象として「選ばれた人たち」なのです。一部に、感染経路が不明な“市中感染"の感染者もいますが、それはよほど症状が重篤なのかはっきりしているかで、狭き門をくぐってたまたま検査を受けることができた「運のいい人たち」なのです。

インフルエンザのように、どこの病院でも検査が受けることができるのなら、この国は、内閣のひとつやふたつが吹っ飛ぶどころではない、それこそ大パニックに陥るに違いありません。政府は、そうなることを恐れているのではないか。

気温が上昇すればウイルスの感染力が弱くなるので、それまで時間稼ぎをしているという見方がありますが、もしかしたら、専門家会議の「今後1、2週間」というのは、天気(気温)の見通しのことなのかもしれません。それくらい(文字通り、天に運を任せるくらい)、政府もお手上げの状態なのではないか。ダイヤモンド・プリンセス号の水際作戦のあのお粗末さが、なにより今の政府の無能ぶりを表しているのです。「バカっぽい」というのは、決して誹謗中傷ではないのです。

さすがに内閣支持率は急落しているようですが、それでもまだ40%前後の支持率を維持しています。私は、支持率は10%もないだろうと思っていたので、未だ40%前後の人たちが支持しているなんてとても信じられませんでした。彼らは、中学生レベルの漢字も読めない総理大臣や財務大臣に、逆に親近感を抱くような人たちなのかもしれません。こういう人たちには、なにを言っても無駄ではないのかと思います。

そんな40%の人たちを読者にする産経新聞には、次のような記事が出ていました。

産経新聞(THE SANKEI NEWS)
韓国の感染者763人、クルーズ船超え 死者は7人に

なんだか日本は韓国に勝ったとでも言いたげな、文字通り「バカっぽい」記事ですが、外国から見れば「目クソが鼻クソを嗤う」ような話にしか見えないでしょう。

こんな産経新聞のような姿勢をホントに「愛国」というのだろうかと思います。なんだか恥を晒しているような気さえします。「愛国」ではなく、「恥国」ではないのかと思ってしまいます。

同紙のサイトを見ればわかりますが、ここに至っても「韓国が・・・・」「韓国が・・・・」の記事のオンパレードです。その多くは、ネットのニュースと同じような“コタツ記事”です。経営不振に陥り全国紙の看板も降ろすような状態になってもなお、このあり様なのです。

まるでボロ隠しのように、自分たちの政府の不正・改ざん・隠蔽を覆い隠すことが「愛国」なのかと言いたくなります。

韓国と日本の感染者数に関して言えば、「モーニングショー」でコメンテーターの玉川徹氏が憤慨していたように、韓国の新型コロナウイルスの検査能力は「1日で5000件」で、検査済みの人も「2万6179人」もいるのです。一方、日本で検査済みの人は、「まだ千数百人」しかいないのです。

msn
サンスポ
玉川徹氏「日本が韓国以下の医療体制なわけがない、やってないだけ」新型コロナ検査の差に怒り

上記の記事が同じフジ・サンケイグループのサンスポの記事であるのはご愛敬ですが、そもそも検査済みの人数が違うのですから、感染者数に違いが出るのは当然で、それは子どもでもわかる話でしょう。むしろ、問題にすべきは、韓国の感染者数ではなく、日本のPCR検査の検査能力の低さ(検査済み人数の異常な少なさ)です。

韓国だけでなく、中国に至っては一日で2万件の検査が可能だそうです。一方、日本では一般市民が検査依頼しても、保健所からたらいまわしされた挙句、はじかれるのが常だそうです。どうして、日本は公的機関主導の検査にこだわり、民間で検査できないのか。”お役所仕事”の保健所を窓口にしたのも、なるべく感染者数を増やさないという”政治的配慮”によって、検査(検体数)をコントロールするためだったのではないか。それが、韓国や中国に比べて極端に検査済みの人が少ない理由ではないのか。そんな国民の疑問に答えるのがメディアの役割でしょう。

にもかかわらず、新型コロナウイルスの感染拡大さえも、牽強付会に“嫌韓”に結び付けることしか考えない産経新聞やフジテレビは、ネトウヨと同じで、もはや「ほとんどビョーキ」と言っていいかもしれません。その前に報道すべきことがあるだろうと言いたいけど、彼らには所詮馬の耳に念仏なのでしょう。

テレビで「ニッポン、凄い!」「あこがれのニッポンに行きたい!」と自演乙している間にも、世界各国から次々と日本への渡航自粛&日本人の入国禁止の処置が出ているのですから、マンガみたいな話です。

新型コロナウイルスで浮かび上がったのは、トンチンカンなこの国の姿なのでした。それもひとえに、産経新聞に象徴されるような、ボロ隠しと化した愛国ならぬ「愛国」がもたらしたものなのです。
2020.02.25 Tue l 新型コロナウイルス l top ▲
昨日、健康診断に行きました。いつも行く病院の健診センターです。

採血の際、担当の看護婦から「エエッ、この年齢ホントですか?」といきなり言われました。「肌の艶なんか全然若いですね」と。おせいじなのかと思ったけど、その驚きようは演技とは思えません。健診のカードを見やりながら、「年齢が10歳間違っているんじゃないかと思いましたよ」と言ってました。心の中ではニヤニヤしながら、「でも、中身はボロボロですよ」と言ったら、「アハハハ」と笑っていました。

「そうか、10歳サバを読むのもアリだな」と思って、すっかり気を良くして次の体重測定に進みました。すると、今度は別の看護婦から「あれっ、前回より6キロも増えていますね」と言われました。前回(半年前)は、山に登り始めたということもあって、10キロ以上いっきに体重が減ったのでした。しかし、その後、体重が戻ってきたことは自分でも感じていました。糖質を控えるどころか、運動にはエネルギーのもとになる糖質が大事だということがわかり、逆に積極的に糖質を摂るようになったからです。

とは言え、やはり体重増加の現実を突き付けられるとショックでした。しかし、山に行く身でダイエットはタブーです。ダイエットしながら山に行くのは、眠らないで山に行くのと同じで無謀な行為です。

少し落ち込んだまま健診は終了し、最後はドクターの問診です。問診の際には、血液検査の結果についての説明もあります。ドクターは、検査結果の用紙を見るなり、「すごいですね」「すべてA判定です」と言いました。今までE判定やD判定だったLDLコレステロール(悪玉コレストロール)や中性脂肪(TG)や血糖値も、すべて正常値に戻っていました。

やはり、運動は大事なんだあ、とあらためて思いました。と言っても、平地でのウォーキングレベルではあまり効果は期待できません。私は、山に行く前から毎日1万歩前後は歩いていましたが、ダイエットはもちろん、健診の数値にもなんら変化はありませんでした。また、筋力や心肺能力にしても、「やらないよりはマシかも」といった程度です。同じ運動でも、ある程度身体に負荷がかかるくらいでないと効果は表れないのです。

問診を終えて、一転気分上々になっている自分がいました。病院から出たとき、思わず口笛を吹いてスキップでもしそうな気分でした。いつも山に行ってヘロヘロになり、山に来たことを後悔している自分はどこかに行っていました。さらには、再び「紅の豚」のような醜い身体に戻りつつある自分のこともすっかり忘れていたのでした。
2020.02.23 Sun l 健康・ダイエット l top ▲
池袋駅 06:04~07:00 飯能 07:45~08:36 河又名栗湖入口バス停 08:46~09:20 白谷沢登山口 09:20~12:15 棒ノ折山 13:05~14:40 滝の平登山口 14::40~14:45 河又名栗湖入口バス停

※登り:175分(休憩含む)
※下り:95分(休憩含む)
※山行距離:8.3 キロ
※標高差:745m
※山行歩数:23,000 歩
※交通費:3,471円

おととい(木曜日)、棒ノ折山に登りました。棒ノ折山は、東京都奥多摩町と埼玉県名栗村の境にある標高969mの山です。

棒ノ折山は、飯能の高校生を主人公にした「ヤマノススメ」というアニメに登場する山として有名で、そのため聖地巡礼(?)の若者の登山者が多い山でもあります。

埼玉側の登山口は名栗湖(有間ダム)にあり、ゴルジュ(狭い峡谷)を登る白谷沢コースは、特に人気のコースです。棒ノ折山は、標高が1000メートルも満たない低山ですが、標高差は700メートル強あり、結構登り応えのある山です。

山行時間だけで言えば、「初心者向け」と言えないこともありませんが、ただ、滑りやすい沢の中の岩歩きや、土が流出して段差ができた階段がつづいていたり、一面剥き出しになった木の根に覆われていたりとやっかいな急登もありますので、初心者だけで行くのはリスクがあると思います。ネットの「たいしたことない」自慢には、くれぐれも気を付けた方がいいでしょう。やはり、単独行の私が言うのもなんですが、経験者と一緒に行った方が安心だと思います。

飯能駅からは、登山口の最寄りのバス停に当たる「河又名栗湖入口」まで約50分バスに乗らなければなりません。尚、週末には「河又名栗湖入口」から数分のところにある「さわらびの湯」行きのバスが出ます。しかし、平日は本数が少ないので、時間帯によっては別の路線の「河又名栗湖入口」を利用しなければならないのです。

飯能駅に着いたのが思ったより早かったので、駅前の吉野家で、久し振りに「すき焼き御前」を食べました。朝からすき焼きとは「これ如何に」(なつかしいギャク)という感じです。

私は、前夜まったく寝ないで出かけたので、登りはじめからヘロヘロでやたら息が上がり、足が動きませんでした。沢歩きよりも、そのあとの急登の方がきつく、私にとっては苦行の山登りになりました。

ただ、前半の沢歩きは、子どもの頃を思い出してなつかしい気持になりました。子どもの頃、近所の友達とよく遊んだようなところを、この年になって登山と称し、重いザックを背負い、登山靴をはいて歩いているなんて、なんだか変な感じもしました。しかも、子どもの頃は平気だったのに、今はぜぇーぜぇー言いながら歩いているのです。

バス停には7~8人くらいが並んでいましたが、登山客は、夫婦とおぼしき40代くらいの男女とやはり30代後半くらいのソロの男性の3人だけでした。

「さわらびの湯」のバス停にもトイレがあるようですが、「河又名栗湖入口」の近くにも、ご丁寧にも登山客のための休憩所とトイレがありました。ご丁寧に衣類を干すポールまでありました。

登る準備をするために休憩所に行くと、同じバスで来たソロの男性もベンチに座って準備をしていました。私は、山に行くと異常に愛想がいいので、「こんにちわ」「棒ノ折山は初めてですか?」と話しかけました。しかし、男性の反応は「ハァ?」とつれないものでした。意外な反応に、休憩所は嫌な空気になりました。あわてた私は、「あっ、私も初めてなので‥‥」とどうでもいい言い訳をしたりして、よけい気まずい空気にしてしまいました。もちろん、腹の中では「なんだ、こいつは?」と悪態を吐いている自分がいました。「いい歳して挨拶もできないのか」と思いました。

ところが、棒ノ折山の山頂では、男性の違う一面を見ることになったのでした。

山頂にいると、次のバスで来たとおぼしき若い女性の二人組が登って来ました。若いと言っても、山ではありがちですが、30歳は優に超えています。すると、山頂の端にいた件の男性が、やにわに立ち上がって山頂をウロウロしはじめたのでした。そして、徐々に女性の方に近づいて行くではありませんか。あきらかに女性が目当ての様子です。

山頂ではよくあることですが、女性から「カメラのシャッターを押してもらえませんか?」と声をかけられるのを待っているのかもしれません。最近、山頂で山ガールと知り合って一緒に下山するナンパが一部で流行っているそうなので、それを狙っているのかもしれません。

私は、東屋の中で、登る途中で知り合った二人のおっさんと昼食を食べながら、山の話をしていました。ひとりは60歳を超えたばかりで、棒ノ折山には100回以上登っているというツワモノで、都心の高層ビルの26階にある勤務先のオフィスには、毎日エレベーターを使わずに階段を歩いて上っているそうです。他にジョギングもしているとかで、同じ“山好き”でも自分とは桁違いのレベルの人物です。

もうひとりは、50歳のトレランのランナーで、練習のために登ってきたそうです。体脂肪率を訊いたら、「測ったことがないのでわからない」と言ってましたが、見るからにアスリート向きの筋肉質の体形をしていました。「すごい体形していますね?」と言ったら、「でも、メタボでトレランしている人の方が、逆にすごいと思いますよ」と言っていました。

今はトレランは一大ブームになっています。家に帰ってから、ランナーの彼に教えてもらった下記のサイトを見たら、そこにびっしり記載されていた大会の日程にびっくりしました。毎月、日本各地でこんなに大会が行われているのかと思いました。

TrailRunner.jp
トレイルランニング大会情報

私が、不愛想な男を目で追いながら、「なんだ、あの男、ただの女好きだったんだ」と言ったら、「どうしたんですか?」と訊くので、登る前の休憩所でのいきさつを話しました。すると、「ああ、そういう男は山にはよくいますよ」「山で会う人間は善人が多いと思っている人が多いけど、山でも街でも同じですよ」と二人は口々に言っていました。「だから、女性がひとりで山に登るのは、ある意味すごいことですよ」と。

そもそも山登りが趣味の男が女性にモテるわけがないのです。「山ガール」はメディアが作ったイメージにすぎません。そのことがわかってないという点でも、ナンパ目的で山に来る男は(私から言わせれば)”変態”です。

ナンパではないですが、山にも「変な人間」はいます。以前、登山口近くまで下山したときでした。前から見るからに「変な人間」が登って来ました。挨拶しても返事はありません。「なんだ、挨拶もできないのか」と思いながらすれ違いました。ところが、気が付くと、いつの間にか男がUターンして私のあとを付いて来ていたのです。私は、嫌な予感がしました。それで、地面にあった拳大の石を拾いました。後ろから襲われたら、石で反撃しようと思ったのです。しばらくそんな緊張した状態がつづきましたが、足音が聞こえなくなったなと思ったら、どこに行ったのか男の姿が消えていました。

奥多摩では、実際に登山者が山中で襲われる強盗事件があったそうです。それどころか、30年以上前の話ですが、奥秩父の山小屋では、小屋番が宿泊していたソロの女性ハイカーを強姦して殺害し、その遺体を山に放置するという事件もあったくらいです。前も書きましたが、山には泥棒もいます。強盗だって性犯罪だってないとは言えないでしょう。おっさんたちが言うように、「山でも街でも同じ」なのです。

女性たちは、自分たちのまわりをうろつく男に何かを察したのか、わざわざ私たちの方にやって来て、「すいません、写真を撮ってもらえませんか?」と言うのです。それで、ツワモノのおっさんが、山頂標識の前で、慣れないスマホの操作に戸惑いながら、ピースサインをしている二人の写真を撮っていました。

今は山に行ったあとに、ヤマレコやヤマップのような山行記録を共有するサイトに自分の記録をアップする人間も多く、山頂で会った時間をヒントにすれば、あのときに会った人間がアップしたのだということがすぐわかります。私の経験でも、結構人物が特定できるケースが多いのです。中には、挨拶したとか写真を撮ってもらったと言った程度ですが、私のことに触れている記録もありました。

山行記録を見ると、山では不愛想で嫌な感じだった人間が、ネットでは反対に明るいおちゃらけな感じでコメントを書いている場合が多いのです(と言うか、ほとんどそうです)。私の知る範囲では、山行記録のサイトに書き込みをしているのは40代~50代が多く、ヤマレコよりヤマップの方が若い感じです。

共有サイトでは、男性に比べて女性の書き込みの方が「いいね」の数が多いのが普通で、中でも書き込んだ本人が映っている写真(目隠しをしているけど)が添付されていると、「いいね」が異常に多くなる傾向があります。なんのことはない、山行記録の共有サイトは、いい歳したおっさんたちが、「友達リスト」などを利用して、出会い目的で使っている一面もあるのです。共有サイトで自己承認を求めたり自己顕示欲を満足したりする心性のさらにその奥に、ドス黒い性的な欲望が伏在していることも忘れてはならないでしょう。もっとも、サイトを運営する側からすれば、そんなネット特有の(出会い目的の)要素を入れないとアクセスを稼げないという事情もあるのでしょう。

下りでは、主に下り専用で使われているコースを歩いたので、誰にも会いませんでした。2時間足らずのコースでしたが、木の根が剥き出しになった急坂がつづいたということもあって、やたら長く感じました。それどころか、途中で寝不足のために意識朦朧と言ったらオーバーですが、やや意識が散漫になって、霜が融けたドロドロの地面に足を取られ2メートルくらい滑り落ちました。片方のトレッキングポールは衝撃で折れて、下まで落ちて行きました。サックやズボンが泥だらけになり、泣きたいような気持になって、しばらくその場に座り込んでいました。

自分ではいつまでも若いと思っているけど、身体は正直なのです。眠らないまま山に行くなど、無謀以外のなにものでもないでしょう。

下りたあと、休憩所の洗面所でタオルを濡らし、泥を落としてからバスに乗って帰りました。さわらびの湯にも寄らないままでした。

帰りのバスは途中の東飯能駅で降りて、いつものように東飯能から八高線で八王子、八王子から横浜線に乗り換えて帰って来ました。電車の中では、幸いにも座ることができたので、ずっと爆睡していました。


※サムネイル画像をクリックすると拡大画像がご覧いただけます。

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河又名栗湖入口バス停

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看板の左側の橋を渡って行く。

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橋を渡った先にある休憩所とトイレ

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さわらびの湯の前を通り、坂道を登って行くと有間ダム(名栗湖)。

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ダムの周遊道路をしばらく進むと、登山口(白谷沢登山口)がありました。

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最初はこんなおだやかな登山道

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沢に近づくと徐々に岩が多くなる。

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渡渉

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沢歩きが始まる。

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何度も渡渉する。

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最初のゴルジュ

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上から振り返る

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滝の横を登って行く。

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次のゴルジュ

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ゴルジュの先には鎖場

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鎖場は、二~三歩腕を使って登らなければならない箇所がありますが、あとは足を掛けるところがあります。

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鎖場を上から見下ろす

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とは言え、足を滑らせると危険です。

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沢歩きも終わりで、沢から岩を登って行く。

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林道沿いの休憩場所に出ました。ここから「心臓破りの急登が始まる」と書いていたサイトがありましたが、その言葉に偽りはありませんでした。ここで途中で会った人と30分近く話し込みました。

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一旦「岩茸石」というポイントに着きます。

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さらに急登がつづく。土が流れ出た階段は落差が大きく、とてもまともに歩けません。

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今度は異様に張り出した木の根の上を歩く。

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山頂

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山頂の広場

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山頂標識は「棒の嶺」です。

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山頂は、北東側がひらけています。奥武蔵、栃木(谷川岳や日光)、茨城(筑波山)の山が同定できます。

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下山開始。滝ノ平尾根コースを歩きます。

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「岩茸石」まで戻り、今度は岩の横に回り込んで下山ルートを進みます。

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棒ノ折山は、ほかにもいろんな呼び方があります。「棒ノ峰」と書かれた古びた案内板。

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名栗湖が見える。

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下りでは、階段と木の根がやっかいです。
ネットの書き込みに、下山が大変だったという話がないのが不思議です。棒ノ折山のポイントは、ゴルジュだけではないのです。ヌカザス尾根のように距離は長くないけれど、急坂の下りも大きなポイントです。

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2020.02.22 Sat l l top ▲
新型コロナウイルスは、拡大の一途を辿っています。私たち日本人にとっても、新型コロナウイルスが「対岸の火事」「所詮は他人事」でなくなったのは、もはや誰の目にもあきらかでしょう。

まさに「バカっぽい」ということばがピッタリするような、幼児性丸出しの世襲議員が支配するこの国で(北朝鮮のことは笑えない)、まともな対応ができるんだろうか、私たちが今置かれている状況について、ホントのことを知らされているのだろうかという不安が常にあります。メディアが伝えるニュースも、どこも右へ倣えしたようなものばかりで、政府から発信される情報をただオウム返ししているだけです。

ニューヨーク・タイムズ紙は、ダイヤモンド・プリンセス号の日本政府の対応について、公衆衛生の危機管理において「『こうしてはいけない』と教科書に載る見本」のようだという専門家の辛辣な声を紹介した上で、「政府は一貫した情報を発信できておらず、検疫への信頼感を損なっている」(共同)と伝えていたそうです。また、ロシア外務省のザハロワ報道官も、「日本の対応はカオスで場当たり的だ」と批判したそうです。日本政府の対応は、ダメな見本だと言われているのです。

私も前に書きましたが、政府の対応は、素人目にも「場当たり的」に事態を後追いしているだけにしか見えません。しかし、日本のメディアで、政府の対応を正面から批判する姿勢は皆無です。菅官房長官の定例記者会見でも、政府の対応を追及する記者は誰もいません。当たり障りのない質問をするだけです。

そんな中で、日本においても、感染者と「濃厚接触」していない市民が感染する“市中感染”の実態が、徐々にあきらかになってきています。もっとも、感染経路が不明な“市中感染”は、ずっと前から発生していたのは間違いないのです。僭越ですが、私も先週(2/6)の記事で次のように書きました。

聞くところによれば、日本を旅行して帰国したタイの女性が帰国後感染していることがわかったそうです。これは、クルーズ船がどうのというレベルではない大きなニュースだと思いますが、メディアはほとんど報道していません。これが事実なら、旅行者が感染するくらい既に日本国内に新型コロナウイルスが蔓延していることになるのです。

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新型コロナウイルスの不思議


ここで忘れてはならないのは、新型コロナウイルスの検査能力は、一日に300~500件くらいしかないということです。政府は、それを1500件くらいまで増強する体制を早急に整えると言っています。インフルエンザのように、病院に行けば誰でもすぐに検査を受けられるわけではないのです。だから、厚労省も、感染の心配があってもすぐに病院に行かずに、まず厚労省や保健所の電話窓口に電話して相談してほしいと呼び掛けているのです。病院に行っても検査を受けられないからです。

検査のキャパを考えれば、感染者と「濃厚接触」した人間を優先的に検査するのは当然ですし、そうすれば感染経路が明らかな感染者ばかり出て来るのも当然です。

事実上、一般市民の検査が不可能な状況を考えれば、自覚症状のない人も含めて、感染者が今の10倍も100倍も、あるいはそれ以上いると考えてもおかしくないでしょう。むしろ、“市中感染”は常識とさえ言えるのです。

でも、政府もメディアもそういったことは言いません。あたかも、感染があきらかになった人たちの周辺にだけウイルスが存在しているかのようなイメージをふりまくだけです。中国の感染者は、公表された数字の10倍から20倍いると言われていますが、それは日本も同じなのです。「水際作戦」なんて最初から絵に描いた餅だったのです。

新型コロナウイルスが蔓延している隠しようのない(!)現実が、これから白日の下に晒されることになるでしょう。「所詮は他人事」で中国人ヘイトするしか能のないネトウヨだって、いつ感染するかもしれないのです(いや、既に感染しているかもしれないのです)。もちろん、私たちだって同じです。

検査を受けることができれば、私たちのまわりでも次々と感染者が出て来るのは間違いないでしょう。検査能力が低いので、それをいいことに、少ない数字で誤魔化されているだけです。

若者や体力がある人は、発症しても自然治癒したり軽症で済むかもしれません。重症化する懸念があるのは、体力のない高齢者や免疫が低下する抗がん剤などを服用している人、糖尿病やぜんそくなど基礎疾患のある人、喫煙者などだそうです。専門家のそういった指摘は、今後の事態の深刻さを予見させます。仮に1千万人発症して、その1%が重症化しても10万人です。

韓国の民間団体が、福島の原発事故をヤユして防護服を着た聖火ランナーをデザインしたポスターをネットに掲載したことに対して、菅官房長官やネトウヨが猛反発していましたが、長引けばホントに防護服を着て走らなければならないような状況が出てくるかもしれません(そうなる前に政府は終息宣言を出すでしょうが)。

もとより、私たちだってそんなに頭が良いわけではないし、国民の平均像も、間違っても優秀と言えるようなレベルではないでしょう。だから、国民にとって、バカな総理大臣の方がわかりやすく、ノリやすいという面はあるでしょう。しかし、国の指導者は、やはりバカでは困るのです。ましてや、平気で嘘を吐くような人間ではお話にならないでしょう。

前も取り上げましたが、下記のような記事が安倍政権の本質を突いているような気がします。

NEWSポストセブン
安倍内閣は立場弱い者に居丈高 根底に学歴コンプレックスか

隠蔽や改ざんは今の政府の”得意技”ですが、それも”魚の頭”が嘘ばかり吐くからでしょう。隠蔽や改ざんが、文字通り”総理大臣(夫妻)の嘘”を整合させるために行われているというのは、今や平均以上の国民なら誰でもわかっていることです。”安倍一強”のプチ独裁体制によって、そんな犯罪的な行為が正当化されているのです。権力を監視するはずのメディアが、逆に御用聞きのようになっているのも”安倍一強”ゆえでしょう。メディア全体が、フジ・サンケイグループ化しているのです。これでは、しっぽの先まで腐るのは当然でしょう。

私たちは、ホントのことを知らされないまま、ダイヤモンド・プリンセス号の乗客のように、災禍が我が身にふりかかるのをせいぜい手洗いとうがいをしながら、待つしかないのかと思います。子どもじみた「バカっぽい」政府を持ったのは私たちの責任で、自業自得と言われればそうかもしれませんが、なんだかすべてが手遅れになりつつあるような気がしてなりません。


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『宰相A』
2020.02.16 Sun l 新型コロナウイルス l top ▲
池袋駅07:30(特急レッドアロー号)~08:59西武秩父駅09:10~10:25三峯神社10:30~12:00妙法ヶ岳12:30~13:40三峯神社15:30~16:45西武秩父

※登り90分 下り70分
※山行距離 4.5キロ
※標高差:243m
※山行歩数 13000歩
※交通費 5094円

秩父の妙法ヶ岳(1332m)に登りました。妙法ヶ岳は、三峯神社の奥の院(奥宮)がある山です。

前回の御前山のミスを繰り返さないために、今回はカメラのメモリーカードを二枚(一枚は予備)持って行きました。山に行くときは万一のことを考えてスマホを2台持って行った方がいいんじゃないかと思っているほどの”予備がないと不安症候群”の私としては、前回は痛恨のミスと言うしかありません。未だそのショックを引き摺っていますので、今回は何度もカメラを開いてメモリーが入っていることを確認しました。

ホントは奥多摩の六ッ石山に行く予定だったのですが、朝の出発が遅くなったので、予定を変更して妙法ヶ岳に行くことにしたのでした。

六ッ石山に登るには、遅くとも奥多摩駅から8時台のバスに乗らなければなりません。それには、新宿から6時台の電車に乗る必要があります。ただ、それでも、日没を考えると時間的にタイトなのでした。また、前夜に六ッ石山が奥多摩三大急登のひとつに数えられていることを知って、あまり寝ていないので尻ごみしたということもあります。

池袋駅7時30発の特急(レッドアロー号)に乗って秩父に行きました。秩父駅から三峯神社までは、さらにバスで1時間15分かかります。三峯神社に着いたのが10時半近くでした。ただ、妙法ヶ岳までは非常に近くて、往復でも3時間もかかりません。

三峯神社に関連して、三峰山(みつみねさん)という山名をよく耳にしますが、三峰山という単独の山はありません。三峰山というのは、妙法ヶ岳・白岩山・雲取山の三つの山の総称です。それにも、関東周辺の神社あるあるの日本武尊(ヤマトタケルノミコト)神話が関係しているのでした。

三峯神社も、日本武尊神話に基づいて創建された神社です。日本武尊を祭神として崇め、狛犬の代わりに狼が守護神という点も、青梅の御嶽神社(武蔵御嶽神社)などとまったく同じです。

日本武尊神話というのは、蝦夷(東日本)や熊襲(九州)など日本列島の原住民を「征伐」(討伐)して日本列島を支配せんとした、渡来人由来の天皇制権力を神話化したものにほかなりません。

狼が守護神なのは、東国征伐した日本武尊が武蔵の山に立ち寄った折に、狼が案内したからだそうです。その際、日本武尊が目の前にそびえる妙法ヶ岳・白岩山・雲取山の絶景に感銘して、三山を三峰山と命名したのだとか。ホンマかいなという話です。

中世のヨーロッパでは、山には悪魔が住んでいると言われたのですが、アフリカやラテンアメリカやアジアなどの農耕社会では、山に神が住んでいるという”山岳信仰”が総じて見られます。それは、大いなる自然を畏怖する古代人の観念の発露であって、“絶景”もそのひとつなのでしょう。絶景に感銘したのは、日本武尊ではなく当時その地域に住んでいた人々なのです。

妙法ヶ岳は、山行時間の短い”お手軽な山”ですが、しかし、山頂直下は岩場で、階段や鎖場もありました。また、途中、北側の斜面をトラバースする道には雪が残っており、しかも、ところどころ凍結しているので、安全に歩くにはアイゼンが必要でした。人がやっとひとり通ることができるような狭い道なので、滑って転ぶと斜面を滑落する危険があります。

”お手軽な山”だけに、大山などと同じように、三峯神社を訪れた観光客がついでに登るケースが多いのか、三峯ビジターセンターでもしつこいくらい警告を発していますが、しかし、登山の装備をしていない軽装で妙法ヶ岳に登る人が後を絶たないのが現実のようです。ネットでも、途中ですれ違った軽装の登山者に注意したという話がいくつも出ていました。

ただ、軽装で妙法ヶ岳に登るのは、「ついでに登る」人だけではないようです。奥の院の祠に説明文がありましたが、奥の院の御朱印は、奥の院=妙法ヶ岳に登らないと貰えないそうです(どう証明するのか知らないけど)。そのため、御朱印マニアなどが無理して登っているのかも知れません。なんのことはない、危険な軽装登山には三峯神社が一枚かんでいたのです。無粋な話ですが、ビジターセンターは、危険な登山に警鐘を鳴らす前に、三峯神社にクレームを入れるべきでしょう。

山頂に登って、奥の院をカメラで撮影していたら、後ろから女性が登って来ました。登る途中は誰とも会いませんでしたし、ときどき後ろを見ても下から登ってくる人影はなかったので、なんだか突然現れた感じでびっくりしました。40代くらいの暗い感じの女性で、街でよく見る白っぽいコートに黒い革靴のようなものを履いていました。スニーカーですらないのです。そんな恰好でよくあの雪道を歩いて来たなと思いました。

私は、山では愛想がよくて、誰でも気さくに話しかけるのですが、女性はそんな私でさえ話しかけずらい雰囲気を漂わせていました。私は、お参りを済ますと、山頂から一段下がったところにあるベンチに腰を降ろして、行動食のチョコレートを食べながら、目の前に広がる奥秩父の山々を眺めました。女性は、祠の後ろに行ったのか姿が見えません。妄想癖のある私は、まさか身投げするんじゃないだろうなと思いました。しかし、どうでもいいやと思いました。30分くらい休憩して下りたのですが、その間、女性の姿は見えないままでした。

下る途中では、おじいさんと孫とおぼしき男性の二人組とすれ違いました。二人ともリュックも背負ておらず、木の枝を杖代わりに持っていました。足元を見ると、普通のスニーカーです。それで、私は、途中150メートルくらい雪道があり、スニーカーでは滑って危ないですよと言いました。また、山頂直下の岩場のことも話しました。でも、「そうですかぁ」「参ったなぁ」と言うだけで、そのまま登って行きました。

なんだか登山の恰好をしている自分がバカみたいに思えてきました。しかし、臆病な私には、彼らの安易さはとても考えられません。山で遭難すると、事情がわかってないネットの「バカと暇人」が、「税金を使って」「迷惑をかけて」という常套句を使って、遭難者に罵声を浴びせるのが常ですが、軽装で安易に山に登る人間と運悪く遭難した登山者を一緒にしないでくれと言いたいです。

もっとも世の中には、山だけでなく、下界でも理解に苦しむ人間は多いのです。朝、池袋駅で特急電車を待っていたときのことでした。西武の池袋駅では、特急電車だけホームが別になっており、私は、特急用のホームに設置されている待合室で、出発を待っていました。到着した特急電車からも、多くの通勤客が降りてきました。特急だと座席が指定され座って来ることができるため、埼玉の奥から通勤するのに特急電車を利用する人も多いのでしょう。

電車から降りた乗客は、待合室の前を通って改札口に向かうのですが、一部の客が待合室の自動ドアを開けて中に入って来るのです。そして、空いた椅子に座るとそのまま目を瞑ってい居眠り(?)を始めるのでした。それもひとりやふたりではありません。空いている椅子がすべて埋まるくらいやって来るのでした。みんな、椅子に座るや決まって目を瞑るのでした。

私は、なんだかとても奇妙な気がしました。早く会社に行けばいいのにと思いました。そして、わけもなく”気持の悪さ”を覚えてなりませんでした。サラリーマンの頃、池袋駅で乗り換える際、駅の通路にある本屋で立ち読みをしている人たちを見るたびに、朝っぱらから立ち読みしているこの人たちは一体何なんだろうと思っていましたが、それを思い出しました。

妙法ヶ岳から下りたあとは、せっかくなので三峯神社に参拝しました。社殿の鮮やかな色使いに、私は朝鮮や中国などの神社仏閣を連想しました。三峯神社に行くバスの中では、神社の謂れを日本語と英語と中国語で説明するテープが流れていましたが、しかし、新型コロナウイルスの影響なのか、中国人観光客は見事なほどひとりも乗っていませんでした(と言うか、外国人観光客はひとりも見かけなかった)。もし、中国人観光客が三峯神社の社殿の色使いを見たら、「なぁんだ、オレたちと同じじゃん」と思ったことでしょう。このように、三峯神社でも、”日本的なもの”が実は中国的であり朝鮮的であるということにあらためて思い至ったのでした。

お参りしたあと、境内の茶店でわらじカツ丼を食べました。同じわらじカツ丼でも、秩父駅のフードコートのものと違って美味でした。しかし、なぜか食欲がなくてやっとの思いで完食しました。このところずっと胃の調子が悪く、胃薬ばかり飲んでいるのですが、私は自他ともに認める大食漢で、今まで「やっとの思いで完食した」ような経験がなかったので、少なからずショックを受けました。

それにしても、秩父は遠いのでした。妙法ヶ岳から下りたのは午後1時すぎなのに、帰宅したのは午後8時をすぎていました。妙法ヶ岳から雲取山への縦走路の途中にある霧藻ヶ峰までは往復2時間弱で行けるので、余裕があれば足を延ばそうかと思っていたのですが、行かなくて正解でした。ちなみに、雲取山までは三峯神社から6時間くらいかかります。雲取山にも登りたいけど、現実的には三峯神社からの日帰りは難しいのでした。

帰りは、いつものように西武秩父から東飯能で八高線に乗り換え、八王子からさらに横浜線に乗り換えて帰ってきました。


※何度も恐縮ですが、サムネイル画像をクリックすると拡大画像がご覧いただけます。

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駐車場
以前はロープウェイがありましたが(私はロープウェイが廃止になったことを知りませんでした)、今は1時間に1本のバスか車で来るしかありません。

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駐車場から見える奥秩父の山塊

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三峯ビジターセンター
写真に映っている人たちは、三峯神社に向かう人たちです。
妙法ヶ岳や雲取山に行くには、逆方向(手前)に進みます。

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三峯神社神領民家
三峯神社の神領の旧三峰村にあった民家を移築したもの。

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2000メートル級の山が連なる奥秩父の山塊
登山者あこがれの風景です。

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最初の鳥居
奥の院まで4つの鳥居をくぐらなければなりません。

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登山届投入箱

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軽装登山に対する警鐘

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ここから登山道に入ります。

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二つ目の鳥居

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妙法ヶ岳と雲取山方面の分岐
雲取山まで9.4キロ!

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ここが問題のトラバースの道

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三つ目の鳥居

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四つ目の鳥居

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山頂が近くなると、岩場に入ります。

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階段も始まります。

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注意書きがやたら多い。

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山頂直下の石段

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最後に鎖の付いた一枚岩を登ります。上から見たところ。

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奥の院(奥宮)の石祠

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白石山(その奥が雲取山)

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ここにもやむごとなき登山の痕跡が・・・・。

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いつかあの嶺を歩きたい。

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山頂直下の鎖場を下から見上げる。

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三峰神社の三ツ柱鳥居

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遥拝殿
正面にあるのが奥宮(妙法ヶ岳)
遥拝殿は、旧表参道を登り詰めたところにあります。

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遥拝殿から奥宮を遥拝する。
正面の突端が先程までいた妙法ヶ岳の山頂。

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三峯神社本殿

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西武秩父駅

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駅にある温浴施設・祭りの湯(宿泊も可)
9月27日から2月16日まで、露天風呂が「別府の湯」だそうです。でも、その仕組みがよくわからない。お湯を九州から運んで来るのか? それともバスクリンのようなものを入れるのか?
2020.02.12 Wed l l top ▲
やれやれ、今度のターゲットは鈴木杏樹のようです。鈴木杏樹を叩く“最低の世論”とそれに媚を売るメディアは、(いつも言ってますが)常軌を逸しているとしか思えません。

相模ゴム工業のアンケートだけでなく、(前も書きましたが)はるか昔に総理府だったかが「有職既婚女性」に対しておこなった調査でも、半数以上が「婚外性交渉」の経験があるという結果が出て、一時話題になったことがありました(調査対象の年齢層など細かいことは忘れました)。それは、金妻や失楽園のはるか前のことでした。

私たちのまわりでも、あるいは自分自身の胸に手を当てて考えてみれば、「不倫」が当たり前の現実があることは誰でもわかっているはずです。文藝春秋社の社員だってテレビ局の局員だって、実際に「不倫」をしている人間も、あるいはチャンスがあれば「不倫」をしたいと思っている人間も多いはずです。もとより、男と女が惹かれ合うのに、「不倫」もクソもないでしょう。恋愛に良いも悪いもないのです。たとえ「遊び」であってもです。

ネット民たちが、非モテのうっぷん晴らしで「不倫」を叩いているのはある程度想像できます。愛知トリエンナーレの電凸と同じように、ネトウヨ化した中高年のひきこもりが、ここでもまた中心的な役割を果たしているのかもしれません。でも、いちばん問題なのは、既存メディアがそんな“最低の世論”の片棒を担いでいることです。

今日のワイドショーでも、司会の坂上忍が、鈴木杏樹が千葉の海岸でデートしたあと、みずから運転する車でラブホに入ったことに対して、「あまりにも生々しすぎてショックでした」と、如何にも役者らしい大仰なもの言いでコメントしていました。

このようにテレビは、手っ取り早く視聴率を稼ぐために、頭の中は空っぽなのに口だけ達者な芸能人に “道徳ズラ”させて、“最低の世論”に媚を売るのでした。

一方、同じ「不倫」でも、大御所の芸能人はあっさりとスルーされるのでした。ビートたけしが再婚した相手の女性とは、誰もが知る「不倫」でした。しかも、その前もグラビアアイドルと「不倫」していました。たけしが愛人にそそのかされてオフィス北野から「独立」した際、愛人と愛人の犬の名前の頭文字を新しい事務所名に付けて色ボケぶりを晒したのですが、しかし、たけしは、愛人ではなくビジネスパートナーだと強弁していました。それがミエミエの嘘であることはみんなわかっていました。しかし、芸能マスコミの中でそれ以上の追及を行うところはありませんでした。

「不倫」三昧のたけしは、「不倫」などどこ吹く風でふんぞり返って大口を叩き(ときにはニュース番組で「道徳」を説き)、ベッキーや唐田某や鈴木杏樹は番組を降板させられるのです。なんと理不尽な話だろうと思わずにはおれません。

女性芸能人が「不倫」したら、どうして「略奪愛」と呼ばれ、まるで犯罪者のように悪罵を浴びせられるのか。昔から色恋が「芸の肥やし」と言われたのは、男性芸能人だけでした。女性芸能人は、ふしだらな女と石を投げられたのです。

でも、そうやって女性に「貞操」を求める一方で、実際は働く女性の半分以上が「不倫」を経験しているのです。フェミニストの小倉千加子は、「女はすべて外見」がフェミニズムの「最終回答」だとあえて身も蓋もないことを言ったのですが、「モテる」「モテない」という暗黙の基準を考慮すれば、(仕事を持っていて)異性にモテる女性にとって、「不倫」はめずらしいことではないのです。

「不倫」はあくまで夫婦間の問題にすぎません。相手の喜多村某が家庭内で処理すべきことで、「まったく」とは言わないけど、鈴木杏樹には関係のない話でしょう。

私は、女性が50歳になってもなお、恋する気持を忘れずに、好きな人を思い胸を焦がすのは、むしろすばらしいことだと思います。女優としても、文字通り「芸の肥やし」になるでしょう。鈴木杏樹が「不倫」していたことを知って、逆に彼女の魅力を再発見したファンも多いはずです。それに、50歳の女性が恋をすれば、(ここでも「モテる」「モテない」の暗黙の基準を考慮すれば)相手に既婚者の割合が高くなるのは仕方ないことでしょう。

鈴木杏樹に比べて、厚労省の役人(文字通りの上級国民)が税金を使って「不倫」旅行をしたことに対しては、何故かメディアも国民も腰が引けています。ワイドショーでも、鈴木杏樹の10分の1も時間を割いていません。たけしのときと同じように、見て見ぬふりをしようとしているかのようです。ここにも、官尊民卑のこの国のヘタレな体質が出ているような気がしてなりません。要するに、芸能人の「不倫」は、叩きやすいところを叩いているだけなのです。

また(蛇足を承知で言えば)、「不倫」を叩く”最低の世論”の背後に、杉田水脈の”生産性発言”に象徴されるような、「伝統的家族」という戦前回帰の思想が伏在していることも忘れてはならないでしょう。
2020.02.08 Sat l 芸能・スポーツ l top ▲
新型コロナウイルスに関しては、「中国から迷惑をかけられている」みたいな報道ばかりですが、横浜に停泊するクルーズ船への対応を見てもわかるとおり、(厚労省の担当者が省内不倫で忙しいからなのか)政府の対策が場当たり的で後手にまわっているのは否めない事実でしょう。しかし、メディアも国民もみんな「自分たちは被害者」の立場を共有しているため、政府の対応に対して批判の声はほとんど聞かれません。

聞くところによれば、日本を旅行して帰国したタイの女性が帰国後感染していることがわかったそうです。これは、クルーズ船がどうのというレベルではない大きなニュースだと思いますが、メディアはほとんど報道していません。これが事実なら、旅行者が感染するくらい既に日本国内に新型コロナウイルスが蔓延していることになるのです。

それにしても、突然降って沸いたように発生し瞬く間に蔓延した新型コロナウイルスですが、どうして突然なのか、不思議な気がしないでもありません。

過去にも、中国の広東省で、同じコロナウイルスのSARSが発生していますが、感染経路等は今回の新型コロナウイルスと酷似しているそうです。新型コロナウイルスも、変異をくり返しながら、SARSと同じ哺乳類のコウモリからハクビシンを媒介にしてヒトに伝搬したと言われています。感染経路がまったく同じというのも気になります。

まあ当たり前の話ですが、ウイルスは、その性質上、宿主の生物が死ぬと自身も死滅するそうです。しかし、発生源の武漢の食肉市場では、野生のハクビシンが生きたまま売られていたために、市場関係者が感染し、そこから広がったと言われています。奥武蔵(埼玉)の山でも、ハクビシンが異常繁殖していて、駆除しても追いつかず、罠を仕掛けたら1週間に10匹以上かかったと地元の人が言っていましたが、実際に私も山行中に何度もハクビシンに遭遇しました(箱根の金時山に登っていたときも、前を横切って行った)。中国ではあんな猫のような狸のような動物が食されていたと知って、さすが中国人だなと思いましたが、何と日本でも、シビエと称してハクビシンの肉を食べる人たちがいるそうです。中国も日本も同じなのです。

もちろん、中国でハクビシンを食べていたのは武漢だけではないはずです。なのにどうして感染源が武漢なのかという疑問も残ります。

中国共産党が初動の対応の遅れを認めて謝罪したのも、プロレタリアート独裁の建前を掲げ無謬神話で権威付けられた絶対党では考えられない珍事でした。そこには、なにか切羽詰まった政治的な事情が伏在していたのではないかと勘繰りたくなりました。

アメリカと中国は、次の覇権をめぐって見えない戦争を行っています。それは、ファーウェイ副会長の逮捕や貿易摩擦などを見てもわかるとおり、熾烈を極めています。戦争なのですから、「なんでもあり」なのは当然でしょう。

まして、アメリカは“狂気”が支配する国です。今年の11月には再び大統領選挙が行われますが、トランプ大統領は前回の選挙のときは泡沫候補でした。それが、ヒットラーと同じように、大ドンデン返しの連続で大統領の階段を上って行ったのでした。それは、誰もが予想しなかったことでした。そして、アメリカは常識が通用しない“狂気”が支配する国になったのでした。

ウイルスの蔓延というのは、昔から陰謀説の恰好のターゲットですが、突然降って沸いたように発生した新型コロナウイルスの蔓延は、ホントに自然発生した公衆衛生上の問題なのだろうか、とどうしても思ってしまうのでした。
2020.02.06 Thu l 新型コロナウイルス l top ▲
武蔵小杉駅05:19~06:01立川駅06:12~07:30奥多摩駅07:38~07:44境橋バス停07:50~12:25御前山12:37~15:20境橋バス停15:35~15:45奥多摩駅

※登り3時間55分 下り2時間40分
※山行時間6時間35分
※標高差:1059m
※歩行距離11キロ
※歩数31,154歩

御前山(1405m)に行きました。奥多摩三山にこだわったわけではないのですが(奥多摩三山で、御前山だけ登ってなかった)、奥多摩でそれなりの標高があり、日帰りが可能な山を考えたら御前山しか浮かばなかったのです。

実は、昨日行く予定にしていました。夜、準備をして寝たのですが、何故か朝起きるのがおっくうになり、再び寝てしまったのです。

それで、今日に予定を変更したのでした。早朝5時前に家を出て、東横線の始発電車に乗りました。今回はいつもと違って、武蔵小杉から南武線に乗って立川経由で行くことにしました。

始発電車であるにもかかわらずホームには結構な人が電車を待っていました。武蔵小杉からの南武線も、8割くらい座席が埋まっていました。

立川からは青梅線に乗り換えて終点の奥多摩まで行きます。車内放送で、到着ホームの反対側から10分後に「奥多摩行き」が出発しますと案内していました。しかし、反対側のホームに停まっていたのは「青梅行き」でした。ただ、ホームの電光掲示板には、10分後の「奥多摩行き」も表示されています。でも、肝心の電車がどこにも停まっていません。「青梅行き」のあとに到着するのかと思いましたが、「青梅行き」はいっこうに出発する様子はなく、「奥多摩行き」の発車時刻がせまるばかりです。

なんだか狐に摘ままれたような感じで、私は焦りはじめました。それで、開店準備をしていた立ち食い蕎麦店の女性に、「このホームから奥多摩行きが出る予定なんですが、電車が停まってないんです。今、停まっているのは青梅行きですし、奥多摩行きはどこから出るんですかね?」と尋ねました。すると、女性は、「この電車が、途中で奥多摩行きに分かれるんじゃないですかね。そういうのがよくありますよ」と言うのです。そこで、私は、以前乗ったホリデー快速おくたま号を思い出したのでした。あのときも、拝島(だったか?)でおくたま号とあきかわ号に分離されたのです。私は、車両の行先表示を確認しながら、小走りでホームを移動しました。すると、途中から電車の表示が「奥多摩行き」に変っていたのでした。

奥多摩駅には思ったより早く着きました。当初、8時3分に駅に着いて、駅前から8時5分発のバスに乗る予定でしたが、電車が着いたのは7時15分でした。そして、駅前に出ると7時38分発のバスがあることがわかりました。既にバス停には、一般客に混ざって登山の恰好をした人が数人並んでいました。

これだったら、当初の予定より30分早く山に入ることができます。今の時期は日没が早く、自分の脚力では一抹の不安がありましたので、ありがたい誤算でした。

青梅街道を10分くらい走り、境橋という橋の真ん中にある停留所でバスを降りました。降りたのは、私だけでした。境橋は、前後をトンネルに挟まれており、橋の下はバンジージャンプにうってつけのような深い渓谷が広がっていました。あとで調べたら、橋の下を流れているのは、昨秋の台風19号で武蔵小杉のタワーマンションにブランド価値下落の深刻な被害をもたらした多摩川の上流でした。私は、登山用の地図アプリに従って、奥多摩駅方向のトンネルの手間から林道に入りました。

御前山は、小河内ダムからサス沢山・惣岳山経由で登り、今回の栃寄コースを下るのが一般的です。ただ、小河内ダムからのルートは急登で知られており、私にはヌカザス尾根のトラウマがありますので、今回はできるなら避けたいと思いました。それで、山行時間は長くなりますが、栃寄コースを登ってそのまま下ることにしました。それともうひとつは、北向きの栃寄コースは、まだ先日の雪が残っているようなので、雪道を歩きたいという気持もありました。

ただ、栃寄コースも台風19号の被害が残っており、沢沿いの登山道は未だ通行止めになっています。そのため、上の登山口まで1時間近く舗装された林道を歩かなければなりません。御前山の栃寄コースの多くは、「体験の森」という都民の森(こちらは奥多摩都民の森で、三頭山の方は檜原都民の森です)になっており、標高650メートルの栃寄の集落には宿泊施設があり、また御前山の中腹には散策コースが整備されています。ちなみに、「体験の森」のサイトを見ると、女性を対象にした初心者向けの登山講習や御前山登山、それにこの時期限定のスノーハイキングなどの催しも行われているようです。

境橋から「体験の森」の宿泊施設までは、奥多摩特有の九十九折の急坂が続きます。2.5キロくらいあり、歩いて40〜50分かかります。ちょうど出勤時間帯だったので、従業員が乗っているとおぼしき車が次々とうなり音を上げながら横を過ぎて行きました。雪が降ったり凍結したときは大変だろうなと思いました。

宿泊施設の手前と奥に駐車場があり、登山者の車も停めることができるようになっていましたが、1台も停まっていませんでした。駐車場まで車で来れば、1時間近く山行時間を短縮できるのです。それになりより、九十九折の林道をテクテク歩かなくてもいいので、体力も温存できます。

丹沢などでも、車だとかなり上の方まで行くことができますので、電車やバスを利用する人たちとは条件が違います。それで、塔の岳や丹沢山を何時間でピストンしたなどと言われても鼻白むばかりです。ヤマレコなどに巣食う自己顕示欲満載のコースタイム至上主義者は、このタイプが多いのです。

登山道に入ると、程なく雪道になりました。栃寄コースも急登とは無縁ではなく、斜度の大きい樹林帯を登って行かなければなりません。

途中の行きも帰りも、誰にも会いませんでした。山頂でひとり会っただけでした。文字通りの単独行で、聞こえて来るのは、ザクザクという雪を踏みしめる自分の靴の音だけでした。息を弾ませて登りながら、さまざまな思いが去来しました。私の場合、山に行くのは”自己処罰”のような一面もあります。なんだか懺悔しながら登っているような感じです。細い登山道の横は急斜面です。足を滑らせて下に落ちたらどうなるんだろうと思ったりしました。

一応、山岳保険には入っていますし、登山届もネットで提出していますが、家族がいないので、緊急連絡先は自分のメールアドレスにしています。ネットの登山届では、登山届を提出したときと下山したときに、緊急連絡先に自動的にメールが発信されるシステムになっていますので、友人や知人を緊急連絡先に指定すると、山に行くたびに「只今、登山届が提出されました」「只今、下山通知を確認しました」と連絡が行くことになります。それでは受ける方も迷惑でしょうし、それにいくら親しい間柄とは言え自分の行動がいちいち知られるのは、私の性分では耐えられません。

緊急連絡先が自分だと、山に行ったきり帰って来なくても「捜索願い」を出す人間がいないのです。これでは、登山届を出す意味がないような気がしないでもありません。捜索に入るのは、かなり時間が経ってからでしょうから、捜索と言っても遺体を収容するくらいでしょう。

ひとりで山に行くのはリスクが大きく、警察なども、ひとりで山に行くのはやめましょうと呼び掛けています。それでも、やっぱりひとりがいいなあと思います。誰にも会わないのは最高です。

2時間以上雪道を登ったので、さすがに疲れました。ホウホウの体で山頂に着いたら、中年の男性がひとりでベンチに座って昼食を食べていました。男性は、小河内ダムから登って来たそうで、やはり、誰にも会わなかったと言ってました。と言うことは、今日、御前山に登ったのは二人だけかもしれません。来るときのバスには他に数人の登山者が乗っていましたので、彼らは小河内ダムから御前山に登るのではないかと思っていたのですが、違ったみたいです。山頂で男性と話をしていたら、雪がチラつきはじめました。

男性も下りは栃寄コースを歩くそうですが、食事のあと片付けをしている男性に、「お先に」と言って山頂をあとにしました。下りもアイゼンのおかげでトラブルもなく歩くことができました。ただ、カチカチに凍結している箇所は、アイゼンの刃が刺さらないので慎重に歩きました。

境橋に着いてバスの時刻表を見たら、次のバスは10分後でした。登りと下りの林道が地味にきつかったけど、いつもの自分のペースで雪道を堪能することができました。暖かくなったら、今度は小河内ダムからも登ってみたいと思いました。

と今、写真を整理しようとしたら、カメラにメモリーカードが入ってないことに気付きました。メモリカードを外したまま入れるのを忘れていたのでした。いつものように200枚くらい撮りましたが(途中、電池交換するくらい撮った)、すべて無駄骨でした。そう言えば、メモリーカードがどうのという警告が出ていましたが、まったく気に留めることもなく撮影していました。なんというミスでしょう。そのため、今回は(証拠の?)写真がありません。
2020.02.04 Tue l l top ▲