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(2022年11月25日)

先日、九州から喪中の挨拶のはがきが届きました。それは、私が九州にいた頃に毎日のように通っていた焼き鳥屋の主人からでした。店は夫婦二人でやっていたのですが、そのはがきで、私たちが「ママ」と呼んでいた奥さんが今年亡くなっていたことを知ったのでした。

九州の会社に勤めていた際、営業所に転勤になり、営業所のある町で一人暮らしをしていたのですが、焼き鳥屋はその町にありました。

赴任したのは、新設の営業所だったので、オープンして間もなく営業所のメンバーと親睦会を開いたときに、地元で採用された事務の女の子の提案で初めて行ったのを覚えています。地元の若者たちに人気の店で、いつも夫婦でてんてこまいしていました。

以来、何故か、私は酒も飲めないのに、その焼き鳥屋に通いはじめたのでした。やがて、よほどのことがない限り、ほぼ毎日通うようになりました。そのため、店に行かないと「どうしたの?」と心配して電話がかかってくるほどでした。

コロナ禍前に帰省したときも店に行きましたが、そのときは夫婦とも元気でしたので、はがきが届いてびっくりしました。「ママ」の享年は74歳だったそうです。もうそんな年になっていたとは思ってもみませんでした。

また、はがきには、自分も来年80歳になるので、これを機会に店を畳むことにした、と書いていました。また、年始の挨拶も今年限りで遠慮したいとも書いていました。

何事にも時計の針が止まったままのような感覚の中にいる私は、ショックでした。そんなわけがないのですが、いつまでも何も変わらないように思っていたからです。

同じ町内に、当時の会社の先輩だった人が住んでいるので、電話してみました。その人は、親類の会社を手伝うために、私と入れ替わるように会社を辞めたので、会社にいた頃はほとんど交流はありませんでした。ところが、親戚の会社が営業所と同じ町内にあり、その人ものちに町に転居してきたことで、急速に親しくなったのでした。今でも帰省するたびに会っていますが、癌に侵されて何度も手術をしており、会うたびに「もうこれが最後かもしれないな」と言われるのです。それで、電話するのを一瞬ためらいましたが、しかし、喪中の挨拶が来てないので大丈夫だろうと思って、勇気を奮って電話したのでした。

電話の様子ではまだ元気な様子で安心しました。今年は前立腺癌の手術をしたそうです。その前に胃癌と膀胱癌の手術もしています。それでも、体調がいいと海に魚釣りに出かけている、と言っていました。

話を聞くと、焼き鳥屋の「ママ」は病死ではなく、店の階段を踏み外して転落し、それが原因で亡くなったのだそうです。そんなことがあるのかと思いました。

先輩だった人の親類の会社も、私が上京したあとに倒産して、その際、社長だった義兄がみずから命を絶ったという話も、以前会ったときに聞きました。

その人から見れば甥っ子になる社長の息子二人とは、年齢が近いということもあって一時よく遊んでいたので、彼らのことを訊いたら、何と二人とも癌で亡くなったということでした。それこそいいとこのボンボンで、何不自由のない生活をしていましたが、晩年は倒産と病気で苦労したそうです。

電話で話しているうちに、”黄昏”という言葉が頭に浮かんできました。そうやって、昔親しかった人が次々と亡くなると、何だかひとり取り残されていくような気持になるのでした。年を取るというのはこんな気持になることなのか、と思いました。

翌日、久し振りに奥多摩の山に行ったら、膝が痛くなったということもあるのですが、ふと喪中のはがきや電話したことなどが思い出されて歩く気がしなくなり、途中で下りてきました。こんなことも初めてでした。


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また、床屋政談ですが、22県市の首長と地方議会の議員らが対象となる台湾の統一地方選の投開票が26日に行われ、与党の民主進歩党(民進党)が大敗し、蔡英文総統が選挙結果を受けて辞職を表明する、というニュースがありました。

今回の統一地方選は、2024年1月に行われる総統選の前哨戦として注目されていたのですが、台北市長選では蒋介石のひ孫で野党の国民党の蒋万安氏が当選するなど、民進党は21の県・市長選でポストを減らしたのでした。

この選挙結果について、日本のメディアでは「親中派の野党・国民党が勝利」という見出しが躍っていますが、ホントにそうなのか。

8月のナンシー・ペロシアメリカ下院議長の電撃的な台湾訪問をきっかけに、一気に米中対立なるものが浮上し、日本でも防衛力の強化が叫ばれるようになりました。

既に、政府・与党は、2023年度から向こう5年間の中期防衛力整備計画(中期防)の総額を、40兆円超とする方向で調整に入ったそうです。これは、現行(2019~23年度)の27兆4700億円から1.5倍近くに跳ね上がる金額です。

台湾の民進党も、大陸の脅威を前面に出して対中政策を争点にしようとしたのですが、それが逆に裏目に出て、今回は蔡政権誕生を後押しした若い層の反応も鈍かったと言われています。

今回の選挙結果は、必ずしも「親中派の勝利」ではなく、アメリカが煽る米中対立に対する国民の懸念が反映されたと見ることができるように思います。米中対立に対して、台湾国民は冷静な判断を下したのではないか。

8月のナンシー・ペロシ下院議長の電撃的な台湾訪問は、きわめて不純な意図をもって行われたのは間違いありません。わざわざ米軍機を使って訪台し、中国を挑発したのです。それでは、中国も外交上「やるならやるぞ」という姿勢を見せるしかないでしょう。

ジョー・バイデンは、ウクライナ支援でも取り沙汰されていましたが、巨大軍需産業とのつながりが深い大統領として有名です。ウクライナ侵攻では、各国の軍需産業が莫大な利益を得ており、株価も爆上げしています。

唯一の超大国の座から転落したアメリカは、もはや世界の紛争地に自国軍を派遣する“世界の警察官”を担う力はありません。相次ぐ大幅利上げに見られるように、経済的にも未曽有のインフレに見舞われ苦境に陥っています。

トランプが共和党の大統領候補になることは「もうない」と言われていますが、しかし、トランプが主張した「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」は、民主・共和党を問わず、アメリカの本音でもあるのです。

そこで新たな戦略として打ち出されたのが、“ウクライナ方式”です。しかし、今回の選挙結果に見られるように、台湾の国民は、ウクライナの二の舞になることを拒否したのです。

アメリカと一緒になって徒に大陸を刺激する蔡政権にNOを突き付けることによって、戦争ではなく平和を求めたのだと思います。「親中」とか「媚中」とかではなく、ただ平和を希求しただけで、それが大陸に対して融和策を取る野党に票が集まる結果になったのです。

台湾と日本は立場が異なるので一概に比較はできませんが、日本の議会では、アメリカの戦略に正面から異を唱える政党が、共産党やれいわ新選組のような弱小政党を除いてありません。その選択肢の欠如が、アメリカの尻馬に乗った「防衛力の抜本的な強化」という同調圧力をさらに増幅させることになっているのはたしかでしょう。

‥‥‥

それは、今のワールドカップでも言えることです。国別の対抗戦であるワールドカップが、ナショナリズムとむすびつくのは仕方ないとは言え、しかし、同時に、ボール1個があれば誰でもできるサッカーは、競技人口がもっとも多いスポーツで、それゆえに「世界」と出会うことのできる唯一のスポーツでもある、と言われているのです。

主にヨーロッパ各国の選手やサッカー協会(連盟)がカタール開催を決定したFIFAに反発して、カタールの人権問題やFIFAの姿勢を批判しているのも、サッカーが単に偏狭なナショナリズムの発露の場だけではなく、「世界」と出会うことができるインターナショナルなスポーツだからなのです。

一方、FIFAのインファンティーノ会長が、ヨーロッパでカタールの人権問題に批判が集まっていることに対して、「私は欧州の人間だが、欧州の人間は道徳的な教えを説く以前に、世界中で3000年にわたりやってきたことについて今後3000年謝り続けるべき」「一方的に道徳的な教えを説こうとするのは単なる偽善だ」、と中東の金満国家のガスマネーに群がったFIFAの所業を棚に上げて、フランツ・ファノンばりの反論を行っていたのには唖然とするしかありませんでした。

また、FIFAは、ヨーロッパ7か国のキャプテンが、LGBTへの連帯を示す虹色のハートが描かれた腕章を巻いてプレーすることに対しても、イエローカードを出すと恫喝して中止させたのでした。

そんなFIFAの妨害にもめげずに、オーストラリアの選手たちはカタールの人権侵害を批判するメッセージを動画で発信していました。ドイツやイングランドの選手たちも試合前のセレモニーで抗議のポーズを取っていました。また、イランの選手たちは、自国政府の女性抑圧に抗議して、国家斉唱の際に無言を貫いたのでした。それに比べると、カタール大会の問題などどこ吹く風の日本代表の選手たちは、まるで甲子園に出場した高校生のように見えました。彼らの多くはヨーロッパのクラブに所属していますが、BTSと同じような「勝てば官軍」みたいな野蛮な(動物的な)考えしかないかのようでした。それは、サッカー協会もサポーターも同じです。もちろん、韓国も似たようなものです。文字通り、スポーツウォッシングと言うべきで、はなからサッカーを通して「世界」と出会う気もさらさらないし、そういうデリカシーとも無縁です。

そして、メディアは、災害復興プロジェクトから招待された応援団が、日の丸を背にスタンドでゴミ拾いをするパフォーマンスを取り上げて、「世界から称賛」などと、まるで”お約束事”のように「ニッポン凄い!」をアピールするのでした。と思ったら、案の定、疑惑の渦中にある秋葉賢也復興相が、みずからのTwitterで件の災害復興プロジェクトに触れていました。それによれば、「日本の力を信じる」なるスローガンを掲げ、災害に遭った高校生をカタール大会に招待した災害復興プロジェクトは、国家が多額の公金を出して後押ししたものだったのです。

莫大な放映権料を回収するために動員されたサッカー芸人たちが、朝から晩までテレビで痴呆的な”応援芸”を演じているのも、うんざりさせられるばかりでした。どのチャンネルに切り替えても同じような企画の番組ばかりで、口にしている台詞も同じです。

日本VSドイツに関して言えば、ドイツが今ひとつチグハグな感じがあったものの、サッカーにあのような番狂わせはつきものなのです。その一語に尽きるように思いました。「人権問題などに関わっているからだ」「ざあまみろ」という日本人サポーターの声が聞こえてきそうですが、たまたま運が日本の味方をしただけです。

ドイツ戦のヒーローとして、浅野拓磨や堂安律やGKの権田修一が上がっていますが、ヒーローと言うなら後半途中から出場してドリブルで流れを変えた三笘薫でしょう。その意味ではまともに解説していたのは、私の知る限り闘莉王だけだったと思いました。

ちなみに、今日対戦するコスタリカは、非武装中立を掲げる国で常備軍を廃止しています。アメリカの没落で南米のほとんどの国が左派政権になったということもあり、現在も非武装中立を堅持しているのでした。また、LGBTや移民政策なども、カタールや日本よりはるかに進んでいます。

世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数(男女平等格差指数)の2022年版でも、コスタリカは12位ですが日本は116位です。コスタリカは軍事費が少ないということもあって経済的にも豊かで、男女だけでなく国民の間の格差も日本より全然小さい幸福度の高い国なのです。サッカーはどうか知りませんが、日本が見習ってもいいような国なのです。少なくとも、ウクライナのアゾフ連隊のようなサポーターとは無縁な国のはずです。

サッカーはルールも簡単で、わかりやすく面白いスポーツなので、熱狂するのもわかりますが、しかし、サッカーの背後にある「世界」に目を向ける冷静さも忘れてはならないのです。「勝てば官軍」ではないのです。

追記:
コスタリカは後半の唯一のシュートが決勝点になった(それも吉田のクリアミスのボールを)という、如何にもサッカーらしいゲームでした。コスタリカVSスペインのときのスペインのように、日本は圧倒的にボールを支配しゲームをコントロールしていたにもかかわらず、スペインのような決定打が欠けていたのです。ニワカから見ても、海外でプレイしている選手が多いわりには、まだ個の力が足りないように思いました。いくら合掌してお題目を唱えても、浅野に2匹目のドジョウを求めるのは酷というものです。サッカーは偶然の要素が大きいスポーツですが、何だか運をドイツ戦で使い切っていたことにあとで気づかされたような試合でした。


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2022.11.27 Sun l 社会・メディア l top ▲
いつもの床屋政談ですが、更迭した寺田総務相のあとに就任した松本剛明新総務相に関しても、就任早々、共産党の赤旗が、政治資金パーティーで収容人数が400人の会場にもかかわらず、1000人分のパーティー券を販売した”疑惑”を報じたのでした。パーティーに出席しない人の購入分は、政治資金規正法では寄付に当たるのですが、松本総務相の資金管理団体は「寄付」と報告してないそうで、政治資金規正法違反の疑いがあるというものです。

普段なら赤旗を無視する大手メディアも、さっそく食いついて大きく報道しています。そのため、岸田首相も「本人から適切に説明すべきだ」と発言をせざるを得なくなったのでした。あきらかに岸田首相に、メディアの前で“弁明”させるように仕向けた“力”がはたらいているように思えてなりません。まるで次は松本新総務相だと言わんばかりです。

さらに追い打ちをかけるように、国会の予算委員会の大臣席で、何故か水を飲むためにマスクを外した写真ばかりが掲載されている秋葉賢也復興相についても、公設秘書2人に対して、選挙期間中、給料とは別に運動員としての報酬を支払っていたことを「フライデー」が報じ、公職選挙法違反の疑いが指摘されているのでした。秋葉復興相については、他に、次男を候補者のタスキをかけて街頭に立たせていたという、とんでもない”影武者”疑惑も持ち上がっています。まさに際限のないドミノ倒しの様相を呈していると言えるでしょう。

そして、きわめつけ、と言うかまるでトドメを刺すように、岸田首相についても、文春オンラインが、昨年の衆院選における選挙運動費用収支報告書で「宛名も但し書きも空白の白紙の領収書94枚を添付」していたことが判明し、これは「目的を記載した領収書を提出することを定めた公職選挙法に違反する疑いがある」と報じたのでした。私たちが若い頃は、文春は内調(内閣情報調査室)の広報誌とヤユされていました。それが今や「文春砲」などと言われて、やんやの喝采を浴びているのです。

言うまでもなく、その背後に、自民党内の権力闘争が伏在しているのは間違いないでしょう。衆参で絶対的な勢力を持ち、しかも、向こう3年間選挙がない「黄金の3年」だからこそ、選挙を気にせず思う存分権力闘争に注力できるという裏事情も忘れてはならないのです。

SAMEJIMA TIMESの鮫島浩氏によれば、岸田首相の足をひっぱっているのは、自民党の茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長、麻生太郎副総裁、それに、松野博一官房長官だそうです。それがホントなら、岸田首相はもはや四面楚歌と言っていいでしょう。岸田政権のダッチロールが取り沙汰されるのは当然です。

SAMEJIMA TIMES
倒閣カウンドダウン「岸田降ろし」が始まった!

岸田首相は来年5月のG7広島サミットまで何とか総理大臣の椅子にしがみつくのではないか、と鮫島氏は言ってましたが、広島サミットを花道にするなどという、そんな予定調和の権力闘争なんてあるんだろうか、と思いました。その前に、一部で観測されているように、岸田首相が伝家の宝刀を抜いて、起死回生の解散総選挙に打って出る可能性だってあるかもしれません。そうなったら、選挙後には、鮫島氏が言う”増税大連立”構想が(もし事実なら)俄然現実味を帯びてくるでしょう。

「またぞろ国民そっちのけの権力闘争」というお定まりの声が聞こえてきそうですが、しかし、そこには、衆愚政治に踊らされ、何ががあっても自民党に白紙委任する日本の有権者の愚鈍な姿も二重映しになっているのです。愚鈍な有権者のお陰で、政治家たちは心置きなく高崎山のボス争いのような権力闘争に心を砕くことができるのです。

昔、「田舎の年寄り」が自民党を支えているという話がありました。「田舎の年寄り」というのは、日本の後進性を体現する、言うなれば”寓意像アレゴリー”としてそう言われたのでした。しかし、世代が変わって、都会生まれの若者が年寄りになっても、何も変わらなかったのです。相も変わらず国家はお上なのです。

みんながスマホを持つようなネットの時代になっても、昔、政治は二流でも経済は一流と言われたのが、経済までが二流になっても、国民の政治に対する意識は何も変わらず次の世代に引き継がれたのです。これは驚くべきことと言わねばなりません。

「批判するだけでは何も変わらない」と言う人がいますが、批判しないから、批判が足りないから何も変わらないのではないか。無党派層や投票に行かない無関心層を何とかすれば、政治が変わるようなことを言う人がいますが、そんな簡単な話なんだろうか、と思います。そういった政治にアパシーを抱いている人々が投票所に足を運ぶようになったら、逆に、むき出しの全体主義に覆われる怖れだってあるのではないか。彼らは必ずしもリベラルが願うような“賢明な人たち”だとは限らないのです。

昔、「デモクラティック・ファシズム」という言葉がありました。私は、二大政党制を理想視して、労働戦線の右翼的再編=連合の誕生と軌を一にして誕生した旧民主党の存在を考えるとき、(本来の意味とは多少異なりますが)その言葉を思い出さざるを得ないのです。左右の「限界系」を排した中道の道が左派リベラルが歩む道だというような「野党系」の講壇議会主義がありますが、今の立憲民主党を見るにつけ、”中道”を掲げて翼賛体制に突き進む、シャンタル・ムフの指摘を文字通り地で行っているように思えてなりません。私は、「立憲民主党が野党第一党である不幸」ということを口が酸っぱくなるくらい言ってきましたが、それは換言すれば、野党ならざる政党が野党である不幸なのです。

それにしても、立憲民主党に随伴する左派リベラルのお粗末さよ、と言いたくなります。彼らは、立憲民主党が目指しているのが自分たちが求めている政治とは真逆のものだということがどうしてわからないのか、と思います。連合に対しても然りです。

福島第一原子力発電所の事故をきっかけにあれほど盛り上がった反原発運動も、野田佳彦首相(当時)との面会で、風船の空気がぬけるようにいっきにしぼんでしまったのですが、その失敗を安保法制反対の国会前行動でも繰り返したのでした。誰がその足をひっぱってきたのか。

れいわ新選組の長谷川羽衣子氏が鮫島氏との対談で、アメリカのオキュパイ運動を例に出して、社会を変えるには、議会政党も社会運動の中から生まれ、社会運動と共振したものでなければダメなんだ、というようなことを言っていましたが、まったくそのとおりです。私も何度もくり返してきましたが、ギリシャのシリザでもスペインのポデモスでもイギリスのスコットランド国民党でもフランスの不服従のフランスでもイタリアの五つ星運動でもみんなそうです。選挙の結果には紆余曲折があり、必ずしもかつての勢いがあるとは言えませんが、しかし、少なくとも野党というからには、社会運動を背景にし社会運動と共振した政党でなければ野党の役割を果たせないのは自明です。

言うまでもないことですが、松下政経塾や官僚出身の議員や、秘書としてそういった議員から薫陶を受けた議員たちには、東浩紀などと同じように、上から政治のシステムを変えればいいというような、政治を技術論で捉える工学主義やエリート主義があります。その意味では、官僚機構に支えられた政権与党と同じなのです。だから、必然的に財政再建派にならざるを得ず、”増税政党”としての性格を帯びざるを得ないのです。おそらく彼らの頭の中は増税一択なのでしょう。福祉のため、財政再建のためという口実の下、今度は軍備増強のための増税に与するのは目に見えています。

昔、「田舎の年寄り」が支えると言われた政治が、世代を変わっても何も変わらず私たちの上に君臨しているのも、社会運動から生まれた真に変革を志向する政党がないからです。それは、右か左かではありません。上か下かなのです。そして、求められるべきは下を代弁する政党なのです。


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アマゾン


案の定と言うべきか、Twitter、メタに続いてアマゾンもリストラに着手するというニュースがありました。ほかの記事と合わせると、どうやらキンドルやエコーなどのデバイス部門やリテール部門、それに人事部門が削減の対象になるようです。

Yahoo!ニュース(11月18日)
AFP BB NEWS
米アマゾン、人員削減に着手

もっとも、記事にあるように、アマゾンの従業員は正社員だけで162万人もいるのですから、1万人といっても0.6%にすぎません。Twitterやメタに比べると、同じリストラでも全体に占める割合は微々たるものです。一方で、今年に入って時間給のアルバイトやパート6万人を、既にリストラしているという話もあります。

アメリカのアマゾンの業績については、下記の記事が詳しく伝えていました。

日経クロステック(10月31日)
米Amazonの2022年7~9月期決算は5割減益、AWSにも景気の逆風

記事によれば、直近の2022年7~9月期の売上高は「前年同月比15%増の1271億100万ドル(約18兆5900億円)でしたが、営業利益は48%減の25億2500万ドルで増収減益」だったそうです。

主力の通販事業は7%増加して534億8900万ドルです。増加した要因は、「2021年は6月に開催した有料会員向けのセールであるプライムデーを2022年は7月に実施した」からだそうです。と、例年どおり6月にプライムデーを実施していたら、もっと厳しい数字になったことをみずから認めているのでした。

もう1つの主力事業の(と言うか、いちばんドル箱の)ホスティングサービスのAWS (アマゾンウェブサービス)にも逆風が吹いており、「売上高は前年同期比27%増の205億3800万ドルと伸びたものの、(略)金融、住宅ローン、暗号通貨などの業界で需要が減少している」そうです。

しかも、エネルギーコストの上昇も重荷となっていて、「電気や天然ガスの価格が高騰し、『この数年で2倍になった。これはAWSにとって初めての経験だ』」という、オルサブスキーCFOの言葉も紹介されていました。

これは、7~9月期の話ですから、今はもっとコストの上昇に喘いでいるはずです。それが今回のリストラのひきがねになったのは間違いないでしょう。

デジタルと言っても、電気がないと“宝のもち腐れ”です。アマゾンのCEOが言うように、デジタルの時代も電気や天然ガスに依存せざるを得ず、近代文明を支えてきた“エネルギー革命”から自由ではないのです。デジタルの時代というと、まったく新しい文明が訪れたかのような幻想がありますが、所詮は今ある近代文明の枠内の話にすぎないのです。だからこのように、リストラ(人員整理)などという、古典的な(あまりに古典的な!)資本の矛盾からも逃れることができないのです。

私がネットをはじめた頃は、「無料経済」という言葉が流行っていました。それは結構衝撃的な言葉でした。しかし、厳密に言えば無料ではなかったのです。だから、「無料経済」という言葉も死語になったのかもしれません。

言うまでもなく、私たちが無料でサービスを利用できるのは広告があるからです。最初は、簡単なシステムでしたが、グーグルが登場してから、グーグルが私たちの個人情報を収集してそれを広告主に提供したり、より効果のある広告を出すために利用するようになったのです。つまり、ネットが「タダより怖いものはない」世界になったのでした。

アレクサに日常生活を覗き見られることで、個人の趣味や嗜好だけでなく、その家族の生活や人生にまつわる仔細な情報が抜き取られる怖さが一部で指摘されていましたが、多くの人たちはそこまで考えることはなく、ただ「便利だからいいじゃん」という受け止め方しかありませんでした。それは、マイナンバーカードなども同じです。考え方が新しいか古いかという、ほとんど意味もない言葉でみずからを合理化しているだけなのです。

とは言え、我が世の春を謳歌しているように見えるデジタルの時代であっても、過剰生産恐慌のような資本主義の宿痾と無関係でいられるわけではないのです。今、私たちが見ているのは、エネルギー価格の高騰によってサーバーの維持管理費の負担が大きくなったり、景気の減速で収益源である広告費が頭打ちになったりして、デジタル革命を牽引してきたプラットフォーマーが打撃を受けているという、資本主義社会ではおなじみの(あまりにもおなじみの!)光景にすぎません。

一方、共同通信は、アマゾンのリストラのニュースが流れた中で、それとは真逆の記事を掲載していました。

Yahoo!ニュース(11月18日)
KYODO
アマゾン、日本に長期投資 チャン社長「成長余地たくさん」

しかし、チャン社長の発言は、どう見ても、外交辞令、リップサービスだとしか思えません。その証拠に、記事は次のように書いていました。

 チャン氏は「成長余地はたくさんある」と強調した。一方で、世界的な景気減速懸念が強まる中、日本への短期的な投資や雇用の方針は「全世界の変動で、日本にどのような影響があるのかによって変わる」と述べるにとどめた。


では、アマゾンジャパンの売上げはどうなっているのか。

2021年の日本事業の売上高は230億7100万ドルで前年比12.8%増です(2020年の日本事業売上高は204億6100万ドルで前年比27.9%増)。1ドル110円で換算すると、2兆5378億1000万円です。

しかし、世界の売上高に占める日本事業の割合は4.9%にすぎません。2010年は14.7%でした。それ以後下がり続けてとうとう5%を切ってしまったのでした(2020年は5.3%)。また、欧米の伸び率はほぼ20%を超えていますが(アメリカだけが19.2%増)、主要国では日本の伸び率(12.8%増)だけが際立って低いのでした。だから、「成長の余地がある」という話なのか、と皮肉を言いたくなりました。

①日本事業シェア推移(%)
(売上げ金額は省略)
2010年 14.7
2011年 13.7
2012年 12.8
2013年 10.3
2014年  8.9
2015年  7.7
2016年  7.9
2017年  7.7
2018年  5.9
2019年  5.7
2020年  5.3
2021年  4.9

②主要国別シェア(%)
2021年の売上高(金額省略)
アメリカ 66.8
ドイツ 7.9
イギリス 6.8
日本 4.9
その他13.5

③主要国伸び率(%)
2021年売上高(金額省略)
アメリカ 19.2
ドイツ 26.3
イギリス 20.5
日本 12.8
その他 38.0


アマゾン全体の項目(業界用語で言うセグメント)別の売上高を見ると、以下のとおりです。

2021年度売上
4698億2200万ドル(前年比21.7%増)
51兆2015億800万円(1ドル=109円)
純利益
333億6400万ドル(56.4%増)
3兆6366億7600円(同)

①直販(オンラインストア)
2220億7500万ドル(12.5%増)
②実店舗(ホールフーズ)
170億7500万ドル(5.2%増)
③マーケットプレイス(手数料)
1033億6600億ドル(28.5%増)
④サブスクリプション(年会費等)
317億6800万ドル(26.0%増)
⑤AWS
662億200万ドル(37.1%増)
⑥広告
311億6000億ドル(前年項目なし)


伸び率がもっとも低いのが「実店舗」の5.2%増で、その次に低いのが「直販」の12.5%増です。ちなみに、「直販」の売上金額は、全体の47.3%を占めています。

こうして見ると、物販の効率がいかに悪いかがわかります。利益率が公表されていませんが、マーケットプレイスの手数料やプライム会員の年会費のようなサブスクに比べると、「直販」の利益率が桁違いに低いのは想像に難くありません。もちろん、「直販」が柱になることで、プライム会員やマーケットプライスなど利益率の高いビジネスが可能になっているのはたしかですが、そのためにあれだけの物流倉庫を抱え、そこで働く人員を揃え、莫大な物流経費を負担しているのです。

アマゾンの看板であるEC事業は赤字で、アマゾン自体はドル箱であるAWSで「持っている」という話は昔からありますが、こうして見ると、あながち的外れではないように思います。

ネット通販をやっていた経験から言っても、ネット通販は言われるほどおいしい商売ではありません。もちろん、実店舗を構えるよりコストは安いですが、敷居が低い分、競争も激しいので売上げを維持するのは大変です。アマゾンのような既存の商品をメーカーや問屋から仕入れて小売する古典的なビジネスでは、利益率はたかが知れているのです。

ネットは金を掘る人間より金を掘る道具を売る人間の方が儲かるというネットの”鉄則”に従えば、マーケットプレイスの方がはるかにおいしいはずです。

楽天と比べてアマゾンはワンストップでいろんなものが買えるので、ユーザーには至極便利ですが、それもアマゾンだからできるとも言えるのです。だから、アマゾンに対抗するようなECサイトが出て来ないのです。ヨドバシカメラがドン・キ・ホーテのように戦いを挑んでいますが、売上高はまだアマゾンの10分の1にすぎません。

ネットが本格的に私たちの生活の中に入って来るようになっておよそ20年ですが、資本主義に陰りが見えるようになった現在、ネットビジネスも大きな曲がり角を迎えているのは間違いないでしょう。
2022.11.22 Tue l ネット l top ▲
朝日新聞


別に最近YouTubeの鮫島浩氏のチャンネルを観ているからではないのですが、朝日新聞のテイタラクをしみじみ感じることが多くなりました。

YouTube
SAMEJIMA TIMES

今更の感がありますが、やはり、貧すれば鈍すという言葉を思い出さざるを得ないのです。

昨日(11月20日)の朝日には、旧統一教会の問題に関連して、被害者救済を柱とした新法の概要が明らかになり、それに対して、野党や被害者救済に取り組んでいた弁護士や元信者らが「実効性が低い」と反発している、という記事が出ていました。

しかし、鮫島氏のYouTubeによれば、新法は今国会で成立することが水面下で野党(立憲と維新)と合意ができているというのです。寺田総務相の辞任は想定外だったけど、それも野党に手柄を与えるプレゼントになるのだと。

たしかに、ひと月で3人の大臣が辞任したのは“異常”ですが、そうまでして野党(立民)に花を持たせるのは、その背後に大きな合意があるからだと言うのです。それは、鮫島氏の言葉を借りれば「増税大連立」です。

鮫島氏は、財務省の仲介で自民党の宏池会と立憲民主党が“野ブタ”こと野田佳彦元首相を首班に、消費税増税を視野に「大連立」を組む話が進んでいると言うのですが、ホントでしょうか。

立憲民主党が民主党政権時代の三党合意に縛られているのはたしかでしょう。野田政権で副総理を務めた岡田克也氏と財務相を務めた安住淳氏が執行部に復帰したり、前代表の枝野幸男氏が、2021年10月の衆院選の(野党連立の)公約で掲げた「時限的な5%への消費税減税」を「間違いだった」「二度と減税は言わない」と発言するなど、立憲民主党が財政再建を一義とする“増税政党”としての本音を露わにしつつあるのは事実です。さらに、政府の税務調査会が、増税のアドバルーンを上げたりと、既に消費税増税の地ならしがはじまっているような気がしてなりません。

野田首班による「大連立」というのは俄かに信じられませんが、その背後に、自民党内の宏池会と清話会の対立も絡んでいるというのはわかるような気がします。閣僚の辞任ドミノの“異常事態”は、「支持率の低下」「野党の追及」だけでなく、むしろ、自民党内の権力闘争という視点から見た方がリアルな気がします。

でも、メディアには、そういった報道は一切ありません。財務省の思惑や党内の権力闘争など、はなから存在しないかのようで、“与野党対立”という定番の記事で埋められているだけです。それは朝日も例外なくではなく、この前まで同じ会社の記者だった鮫島氏とは際立った対象を見せているのでした。

それは、しつこいようですが、ワールドカップカタール大会の報道も同じです。カタールの人権問題に対してヨーロッパの選手団の間でさまざまな抗議の動きがありますが、そういった報道は申し訳程度にあるだけで、紙面の多くは「ニッポンがんばれ!」の翼賛記事で覆われているのでした。

大会関連の工事に従事した出稼ぎ労働者6500人が亡くなっていたとスクープしたのはイギリスのガーディアン紙で、それにカタール開催に批判的だったヨーロッパのサッカー界は即反応し、各メディアも追加取材に走ったのですが、それに比べると、日本のクオリティペーパーを自負する朝日の反応の鈍さは一目瞭然です。開会式の翼賛記事も「痛い」感じすらありました。

今の朝日新聞は、外にあっては権力のパシリを務め、内にあっては出世のために同僚の梯子を外すことしか考えてないような、下衆なサラリーマン根性が蔓延するようになっていると言われます。そんな公務員のような事なかれ主義を処世訓とする、風見鶏のような人間たちが経営陣を占めるようになった朝日新聞は、”朝日らしさ”をなくし、ジャーナリズムとして末路を歩みはじめているような気がしてなりません。それでは、ニューヨークタイムズのような紙からデジタルへの転換もうまくいかないでしょう。

ビデオニュースドットコムの神保哲生氏は、鮫島浩氏をゲストに迎えた下記の番組の「概要」で、朝日新聞について、次のように書いていました。

ビデオニュースドットコム
マル激トーク・オン・ディマンド (第1117回)
なぜ朝日新聞はこうまで叩かれるのか
ゲスト:鮫島浩氏


 鮫島氏の話を聞く限り、今や朝日新聞という組織はとてもではないが、リベラル言論の雄を引き受けられるだけの矜持は持ち合わせていないように見える。しかし、問題は朝日がいい加減なことをやれば、これまでリベラル派からやり込められ、リベラルに対して怨念を抱く保守派は嵩に懸かって攻勢に出る。そして、朝日がむしろ社内的な理由から記事の訂正や撤回に追い込まれることにより、リベラルな主張や考え方自体が間違っていたかのようにされてしまう。日本では今もって朝日新聞は、少なくとも一部の人たちにとってはリベラル言論の象徴的な存在なのだ。それは逆の見方をすれば、朝日はもはや組織内ではリベラルメディアの体をなしていないにもかかわらず、表面的にはリベラルの旗を上げ続けることによって、日本のリベラリズムの弱体化を招いているということにもなる。
(略)
 今となっては、朝日はリベラルだから叩かれるのではなく、実際にはリベラルとは真逆なことを数多くやっていながら、表面的にリベラルを気取るから叩かれるというのが、事の真相と言えるかもしれない。だとすれば、今朝日がすべきことは、言行を一致させるか、リベラルの旗を降ろすかの二択しかない。


たしかにその通りなのです。正直言って、20代の頃からの読者である私の中にも、朝日に対して「リベラル言論の象徴的な存在」のような幻想が未だ残っています。しかし、ほとほと嫌気がさしているのも事実です。

朝日の発行部数は、最盛期の半分まで落ちているそうですが、朝日を「リベラル言論の象徴的な存在」のように思っているコアな読者が離れたら、それこそ瓦解はいっきに進むでしょう。あとは不動産管理会社として細々と生きていくしかないのです。

(別にこれは朝日に限りませんが)朝日新聞は、政局でもワールドカップでも、そしてウクライナ侵攻でも、米中対立でも、伝えるべきことは何も伝えてないのではないか。ジャーナリズムの本分を忘れているのではないか。最近は特にその傾向がひどくなっているように思えてなりません。文字通り、堕ちるところまで堕ちたという気がしてならないのです。
2022.11.21 Mon l 社会・メディア l top ▲
明日(11月20日)開催されるFIFAワールドカップカタール大会の開会式のイベントに出演するために、BTSのジョングクが韓国を旅立った、というニュースがありました。彼は、大会の公式サウンドトラックも担当しているそうです。

カタール大会については、前の記事でも書きましたが、関連施設の建設に従事した出稼ぎ労働者が過酷な労働で6500人も亡くなったという話や、カタール政府のLGBTの迫害や女性に対する抑圧などに抗議して、ロッド・スチュワートやデュア・リパが出演を辞退しています。また、選手の間でもさまざまな抗議の動きがあります。そんな中、ジョングクはイベントで(まるでぬけがけのように)パフォーマンスを披露するのです。

折しも、今日の朝日新聞に、「BTSから考える『男らしさ』の新時代」という、元TBSアナウンサーの小島慶子のインタビュー記事が掲載されていました。聞き手は伊藤恵里奈という女性記者です。

朝日新聞デジタル(11月19日)
ジェンダーを考える 第6回
BTSから考える「男らしさ」の新時代 過ちを認め、学び、変化する

その中に次のような箇所がありました。

 ――BTSのデビューは13年。15年から16年ごろ、歌詞が「女性差別だ」と批判を受けました。例えば女性の外見を批評して「女は最高のギフト」としたほか、「食事を目で食べるっていうのか? 女みたいに」と女性を見下す表現がありました。

 当時、韓国ではフェミニズム運動の高まりを受けて、BTSだけでなく色々なK-POPアイドルの歌詞や言動が批判されました。

 BTSは時間はかかったものの、「女性蔑視の表現だった」と認めて、公式に謝罪しました。

 ――かつては、彼らも誤っていた、ということですね。

 そうです。その後は、ジェンダー問題の専門家の意見を交えながら、無意識のうちに内面化されてきた女性差別的な視点が出ないように、本気で学んだのです。


しかし、カタールはイスラム国家であるため、女性の権利は著しく制限され抑圧されています。もちろん、前の記事で書いたように、LGBTへの弾圧も日常的に行われています。カタールの法律では、同性愛の最高刑は死刑と規定されており、実際に死刑になった例もあると言われています。

BTSのどこが「女性蔑視」の誤りを認め、フェミニズムを「本気で学んだ」と言えるのでしょうか。歌詞についての”学び直し”も、所詮はビジネス上の損得勘定によるものにすぎなかったのではないか。まして、韓国は、日本以上に家父長制的な男尊女卑の考えが残る社会です。BTSもそんな風土で育った若者たちです。だから、何の疑いもなくあんな歌詞を書いたのでしょう。

その上、カタールは、出稼ぎ労働者に対する「カファラシステム」という事実上のドレイ制度さえ存在する国です。出稼ぎ労働者の多くはBTSと同じアジアから来た人たちです。BTSは、国連などでは立派な発言をしていますが、目の前の人権侵害に対しては一片のナイーブな感性さえ持ち合わせてないのか、と言いたくなります。

私は、『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』(朝日新聞出版)の中で、著者の朴裕河パクユハが、ベトナム戦争に参戦した韓国軍の兵士たちが「過去に日本やアメリカがしてきたことをベトナムでした」と書いていたのを思い出しました。念の為に言えば、それは、現地の女性に対する性暴力のことです。

経済的に発展して先進国の仲間入りをした今の韓国人たちは、発展途上のアジアの国の人々に対して、かつて日本人が自分たちを視ていたのと同じような目で視ているのではないか。そう思えてなりません。

朝日の記事で、小島慶子が開陳した“BTS論”は、どう見ても“買い被り”です。BTSは、ロッド・スチュワートやデュア・リパのような自分の言葉を持ってないのです。ただ持っているふりをしているだけです。「Love Myself」キャンペーンや国連でのスピーチも、世界進出のためのポーズだとしか思えません。それが、世界の市場を相手にする(せざるを得ない)K-POPと、「パラダイス鎖国」で完結するJ-POPの大きな違いなのです。

たしかに、世界的なイベントに呼ばれるだけでも凄いとは思いますが、それで無定見にホイホイ出かけていく姿を見て、(言い方は悪いですが)化けの皮がはがれたという気がしないでもありません。もしかしたら、(契約上)仕方なくジョングクひとりだけ行った、などと言ってまたぞろ詭弁を弄して言い訳するのかもしれませんが、私たちはもういい加減眉に唾して聞いた方がいいでしょう。
2022.11.19 Sat l 芸能・スポーツ l top ▲
ワールドカップボール


2022FIFAワールドカップ・カタール大会が11月20日に開幕します。大会が迫るにつれ、メディアは、グループリーグでスペイン・ドイツ・コスタリカと同じ「死の組」に入った日本は、果たして決勝トーナメントに勝ち進むことができるか(進めるわけがない)、勝機はどこにあるか(あるわけない)、という話題で連日(空しい)盛り上がりを見せています。というか、サッカー人気に陰りが出てきた中で、そうやって180億円とも200億円ともはたまた350億円とも言われる、放映権料(非公表)に見合うだけのテレビの視聴率を上げようと躍起になっているのでしょう。

しかし、今回のカタール大会においては、開催に疑問を持つ意見が多く、大会に際して、欧州のサッカー協会や選手たちから抗議の声があがっており、具体的に抗議の意思を示す流れも広がっているのでした。

と言うのも、カタール政府は、ワールドカップ開催に対して、約3000億ドル(43兆円)の巨費を投じて、スタジアムや宿泊施設、それに道路や鉄道などのインフラの工事が行ったのですが、イギリスのガーディアン紙によれば、開催が決定してからこの10年間で、工事に従事したインドやパキスタンやバングラデシュやフィリピンやネパールなどからやって来た出稼ぎ労働者6500人以上が、劣悪な労働環境の中で命を落とした、と言われているからです。

アムネスティの報告でも、中東特有の酷暑と長時間労働によって、多くの出稼ぎ労働者が犠牲になっていることを伝えています。

アムネスティ
カタール:酷暑と酷使で亡くなる移住労働者 悲嘆に暮れる母国の遺族

IOL(国際労働機関)も調査に乗り出して、2021年11月に報告書をまとめています。それによれば、カタール政府が運営する病院と救急サービスからワールドカップ関連の事案を収集した結果、2021年だけで50人の労働者が死亡し、500人以上が重傷を負い、さらに3万7600人が軽・中等の怪我を負っていると報告されています。

ロッド・スチュワートも、100万ドル(1億3000万円)でオファーされた開会式のイベントの出演を、カタールの人権問題を理由に断ったと言われています。また、デュア・リパも、「全人類に対する人権が認められるまで決してこの国を訪問しない」と公言し、出演を辞退したことをあきらかにしてます。挙句の果てには、カタール開催の際のFIFA会長であったゼップ・ブラッター前会長も、今になってカタールを開催地に選んだのは「間違い」だったと発言しているのでした。

カタールは、天然ガス資源に恵まれ、そのガスマネーにより中東でも屈指の金満国家です。気温が40度以上にも上がるような酷暑に見舞われるカタールは、とてもサッカーの大会に向いているとは思えませんが、FIFAが開催を決定したのは、ひとえに潤沢なガスマネーに期待したからでしょう。

カタールは人口290万人のうち、自国民は1割程度しかいなくて、あとは外国人で成り立っている国です。公務員も半分は外国人だそうです。でも、経済的には豊かな、それこそ成金のような国なので、外国から出稼ぎ労働者を積極的に受け入れています。というか、特権階級の10%の自国民の日々の生活のためには、現場仕事をする出稼ぎや移民の外国人労働者が必要不可欠なのです。

カタールに限らず中東には、出稼ぎ労働者を対象にした「カファラシステム」という制度があるそうです。「カファラシステム」というのは、雇用主が出稼ぎ労働者の「保証人」になる制度だと言われていますが、しかし、私たちが普段抱いている「保証人」のイメージとは違います。言うなれば、昔の「女郎屋」の主人と「女郎」のような関係で、雇用主が出稼ぎ労働者に対して在留資格の判断も含めて絶対的な権限を持ち、雇用主の許可がなければ、職場を変わることも帰国することもできないのです。そのため、雇用主による虐待や強制労働、人身売買の温床になっているという指摘があります。言うなれば、現代のドレイ制度です。その点では、日本の外国人技能実修生の制度とよく似ています。

また、カタールは厳格なイスラム国家ということもあって、同性愛などは法律で禁止されており、性的マイノリティの人間が内務省の予防保安局という組織に摘発され、拷問を受けるようなことが日常的に行われているそうです。カタールは、民主主義と相いれない警察国家でもあるのです。

先日も、大会アンバサダーを務める元カタール代表MFカリッド・サルマーンが、ドイツのテレビ局のインタビューで、性的マイノリティについて「彼らはここで我々のルールを受け入れなくてはいけない。同性愛はハラームだ。ハラーム(禁止)の意味を知っているだろう?」と発言し、さらに、同性愛が禁止の理由を問われると「私は敬虔なムスリムではないが、なぜこれがハラームなのかって?なぜなら、精神へのダメージになるからだ」と主張したというニュースがありました。

カタールW杯アンバサダーがLGBTへ衝撃発言…ドイツ代表も絶句「言葉を失ってしまう」

カタールで開催される今大会について、ヨーロッパ10カ国のサッカー協会が、共同でFIFAに対して、「カタールにおける移民労働者の人権問題改善のために行動を起こすよう求める書簡を出した」そうです。

ロイター
サッカー=欧州10協会、カタール人権問題でFIFAに要望

また、ヨーロッパ8か国のキャプテンが、LGBTへの連帯を示す虹色のハートが描かれた腕章を巻いてプレーすることを決定した、というニュースもありました。

欧州勢の主将がカタールW杯で差別反対を示す「OneLove」のキャプテンマーク着用へ

さらに抗議の声は広がっており、フランスではパリやマルセイユなど8都市が、パブリックビューイングを行わないと決定したり、大会に抗議して記事をいっさい掲載しないという新聞まで出ています。

デンマークの選手たちは、ユニフォームを黒にしてカタール政府に抗議する意志を表明しています。

オーストラリアの代表チームは、カタールの人権問題を非難するメッセージ動画を公開しています。その中で、彼らは「苦しんでいる移民労働者(の数)は単なる数字ではない」「性的少数者の権利を擁護する。カタールでは自らが選んだ人を愛することができない」と抗議の声を上げているのでした。

カタールにくすぶる人権問題 広がる抗議―W杯サッカー

オランダ代表の選手たちは、カタールで出稼ぎ労働者から直接話を聞いたそうで、「彼らは非常に過酷な条件下でスタジアム、インフラストラクチャ、ホテルなどの宿泊施設の建設に従事してきた。僕らはそこでのすべての活動を通じて、その問題を認識してきた。これらの条件を改善する必要があることは誰の目にも明らかだ」という声明を発表しているのでした。

オランダ代表がカタールの出稼ぎ労働者を支援! W杯の着用ユニフォームをオークションに

それに比べて、日本のサッカー協会や選手やサッカーファンの反応の鈍さには愕然とするしかありません。私は、ヨーロッパの8か国のキャプテンが、LGBTへの連帯を示す虹色のハートが描かれた腕章を巻いてプレーするというニュースを見て、「カッコいいいなあ」と思いましたが、日本の大半のサッカーファンはそういった感覚とは無縁のようです。ただ、勝つかどうかだけです。そのための痴呆的な熱狂を欲しているだけです。カタールの「カファラシステム」と日本の外国人技能実修生の制度がよく似ているので、むしろ“あっち側”ではないのかとさえ思ってしまうほどです。

スポーツライターの西村晃氏は、下記の記事の中で、日本の姿勢を「スポーツウォッシング」(スポーツでごまかす行為)ではないか、と書いていました。

集英社新書プラス
スポーツウォッシング 第6回
カタール・サッカーW杯に日本のメディアと選手は抗議の声をあげるのか?

西村氏は、カタール大会の問題について、日本サッカー協会に直接問い質すべく、取材依頼も兼ねたメールを送ったそうです。そして、その回答がメールで送られて来たそうですが、日本サッカー協会の回答について、西村氏は下記のように書いていました。(協会の回答文は、上記の西村氏の記事でお読みください)

  一読、なんとも無味乾燥で当たり障りのない文言が連なった文章、という印象は拭いがたい。カタールで建設作業等に従事した移民労働者の死亡補償と救済の要求、同国での人権抑圧状況への抗議など、W杯参加国競技団体や選手たちが積極的な行動を起こしている一方で、日本や日本人選手は何らかの意志表示を行うつもりはあるのか、あるとすればどのような行動を取るのか、という質問に対する具体的な回答はなにも記されていない。
(上記記事より)


国際的な人権規約に基づいて各国の人権状況を審査している国連の人権に関する委員会が、先日、日本の入管施設で5年間に3人の収容者が死亡したことに懸念を示し(2007年以降で言えば、18人が死亡し、うち自殺が6人)、日本政府に対して施設内の対応の改善をはかるよう勧告した、というニュースがありました。しかし、そういったニュースに対しても、外国人技能実修生の制度と同様、日本の世論はきわめて冷たく、不法滞在の外国人なのだからそれなりの扱いを受けるのは当然だ、という声が多いのが実情です。国連の勧告も、人権派に付け入るスキを与えるもの、という声すらあるくらいです。

日本の「スポーツウォッシング」(スポーツでごまかす行為)が、単なる”スポーツバカ”の話ではなく、巷の下衆な排外主義を隠蔽する役割を果たしていることも忘れてはならないのです。


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電通の正体


日曜日(11月13日)、テレビを点けたら、テレビ朝日で世界ラリー選手権(WRC)の第13戦、ラリージャパンの模様がハイライトで放送されていました。しかも、驚くべきことに、放送されたのは日曜日の21時から22時55分までのゴールデンタイムなのです。

ラリーの会場となったのは、愛知県の岡崎市・豊田市・新庄市・設楽町と、岐阜県の恵那市・中津川市にまたかる山間部で、言うまでもなくWRCに参戦し、しかも、豊田章男社長みずからがこのレースに人一倍入れ込んでいるトヨタ自動車の地元です。

レースは、11月10日(木)から13日(日)の日程で行われましたので、地元民にとってはレース中は生活道路が利用できず迷惑千万な話だったと思いますが、なにせ相手は地元では行政も配下に従える“領主”のような存在のトヨタ自動車なのです。黙って従うしかないのでしょう。

私は、テレビ朝日の放送に対して、玉川徹氏ではないですが、「当然これ、電通が入ってますからね」と言いたくなりました。いくら12年ぶりの日本開催とは言え、ラリーごときマイナーなモータースポーツをどうして地上波で放送するのか。しかも、日曜日のゴールデンタイムにです。常識的に考えても、電通とテレビ朝日の関係を勘繰らざるを得ません。

案の定、放送は前半はスタジオからお笑い芸人のEXITとヒロミの掛け合いによるラリーに関する初歩知識の紹介で時間を潰し、後半は、YouTubeで新車紹介を行っている自称「自動車評論家」とラリー経験者だとかいう俳優の哀川翔の二人が解説を務めていましたが、ライブではないハイライト(総集編)なので臨場感に欠け、スポーツニュースを延々見せられているような間延びした感は免れませんでした。どう考えても、ゴールデンタイムに放送するには無理があったように思いました。

海外では、広告代理店は「ハウスエージェンシー」と言って一業種一社が当たり前なのだそうです。しかし、日本では電通が同じ業種の会社でも複数担当しています。そのため、日本は、欧米のような「比較広告」がありません。タレントなどを使ったイメージ広告が主流です。

国鉄の分割民営化のとき、国鉄(当時)が電通に頼んでCI広告を大々的に打ったのですが、ウソかホントか、分割民営化に反対していた国労も電通に反対の意見広告を依頼していたという、笑えない話さえあるくらいです。

日本の広告宣伝費は、電通の資料によれば、2021年は6兆7998億円(前年比110.4%)でした。

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2021年 日本の広告費

広告宣伝費は、①新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディアの「マスコミ四媒体広告費」、②「インターネット広告費」、③イベントや展示や交通、折込などの「プロモーションメディア広告費」の3つに分類されるそうです。それぞれの広告費は、以下のとおりです。

①マスコミ四媒体広告費 2兆4,538億円(前年比108.9%)
②インターネット広告費 2兆7,052億円(前年比121.4%)
③プロモーションメディア広告費 1兆6,408億円(前年比97.9%)

もちろん、コロナ禍で広告費は大きく落ち込んでいますが、ただ、東京五輪関係の需要があったので、2019年(6兆9381億円)より1400億円弱の落ち込みでとどまっています。電通が、パンデミック下であろうが、是が非でも東京五輪を開催したかったのは想像に難くありません。

電通の2021年12月期の売上高は約5.2兆円、連結収益は前期比15.6%増の1兆855億9200万円です。ただ、これは海外事業も含めた数字です。

国内における売上高のシェアですが、各社によって会計が日本基準と国際基準を採用してバラつきがあるため比較が難しいそうですが、日本の会計基準に合わせると、電通のシェアは60%にのぼるという説もあります。

『新装版・電通の正体』(週刊金曜日取材班)には、2000年頃の話で、「テレビ広告費の三八パーセント(七五〇〇億円)、新聞広告費の二〇パーセント(一九八〇億円)を取り扱っている」と書いていましたので、その頃よりさらにシェアを伸ばしているのかもしれません。

テレビ広告の単価の基準となる視聴率の調査を一手に引き受けるビデオ・リサーチも、電通が設立し、一時は電通本社の中にオフィスがあったくらいですから、野球の試合で選手と審判を同じチームがやっているようなものです。

『電通の正体』によれば、電通のコミッション(手数料)は15~20%だそうです。一業種一社が原則の海外の広告会社のコミッションは5%前後ですから、ここにも一社が同じ業種の複数のクライアントを担当する日本の“商習慣”の弊害が出ているように思います。そして、それが電通の寡占につながったのは間違いないでしょう。

そんな中、一時、大手企業が広告のコストを下げるために、「ハウスエージェンシー」をつくる流れがありました。トヨタ自動車がデルフェス、ソニーがフロンテッジ、三菱電機がアイプラネットと自社の広告会社を設立したのでした。

と言うことは、トヨタにはデルフェスがあるのに、今回の第13戦・ジャパンラリーの放送が行われたのはどうしてなのかと思ったら、何のことはない、デルフェスは2021年1月1日付で社名を「トヨタ・コニック・プロ」に変更し、トヨタ自動車と電通が出資する持株会社「トヨタ・コニック・ホールディングス」の傘下に入っているのでした。ゲスの勘繰りを承知で言えば、今のようなトヨタと電通の関係は、2005年の愛知万博からはじまったのかもしれません。

で、どうしてテレビ朝日の放送に、電通を連想したかと言えば、『電通の正体』に書かれていた、電通と「ニュースステーション」の関係を思い出したからです。

電通は「ニュースステーション」の広告を一手に引き受けていたそうです。つまり、「ニュースステーション」の広告枠を買い取っていたのです。

(略)番組枠まで買い切ってしまえば、売れる番組にするために番組の内容まで左右する力を持つのは当然だ。
「電通も異例ともいえるテコ入れを行っている。電通ラ・テ局(ラジオ・テレビ局)のテレビ業務推進部は企画開発段階から特別スタッフを投入。視聴者のニーズや動向の分析からCMのはさみ方による視聴率シュミレーションまで実施、その結果に沿って基本構想がまとめられていった」(ジャーナリスト・坂本衛『久米宏』論)
  電通が、スポンサーを手当てし、視聴者の分析を行ない、基本構想までつくっていたというのだ。
(『電通の正体』


ちなみに、当時、「ニュースステーション」の担当者だった電通社員は、のちにテレビ朝日の副社長に就任したそうです。

業界には「電通金太郎アメ説」というのがあるのだとか。それは、葬式から五輪まで、日本のイベントの裏側に必ず電通の影があることをヤユした言い方です。もうひとつ、「石を投げれば有名人の子息に当たる」という、コネ入社をヤユした言葉もあるそうです。

テレビ朝日と言えば、長寿番組の「朝まで生テレビ!」や(既に終了した)「サンデープロジェクト」の司会を務める田原総一郎が有名ですが、2004年、彼の妻の葬儀が築地本願寺で営まれた際、葬儀委員長を務めたのが電通の成田豊前社長(当時、のちに電通グループ会長、最高顧問に就任)だったそうです。

「葬式から五輪まで」と、イベントと名のつくものなら、片っ端から手がける電通が、有名人の結婚式や葬式を仕切ることは珍しくない。(略)
現在の電通本社は汐留にあるが、かつては築地にあったことから、「築地本願寺で大物の葬式が多いのは、電通本社が近いから」と冗談で言う関係者もいるほどだ。
(同上)


安倍晋三元首相の国葬には電通は直接関与してなかったみたいですが、関与したかどうかというより、玉川徹氏が電通の名前を出したこと自体が、既に地雷を踏む行為だったと言えるのです。ただ、玉川氏も、テレビ業界では(特にテレビ朝日では)電通がタブーであるのはよくわかっていたはずですので、あえて意図的に(反骨精神で)地雷を踏んだのではないか、という憶測も捨て去ることはできません。

テレビ業界における電通の力を物語る例として、(ちょっと古いですが)TBSの「水戸黄門」があります。私も記憶がありますが、「水戸黄門」の脚本のクレジットは「葉村彰子」という名前になっていました。しかし、「葉村彰子」などという脚本家はいなくて、脚本を書いていたのは、電通が株を持つ(株)C・A・Lという制作会社だったそうです。C・A・Lが「一話完結」「最後に印籠を出す」というマンネリパターンをつくり、長寿番組に育てたのです。また、NHKの番組を制作するNHKエンタープライズという会社がありますが、NHKエンタープライズもNHKと電通が共同で出資した会社だそうです。

もちろん、電通は、元役員(専務のち顧問)の高橋治之容疑者が主導した”汚職”でクローズアップされたオリンピックにも大きく関わっています。あの”汚職”と言われているものも、組織委員会の理事だった高橋治之容疑者が、オリパラ特別処置法(東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法)の規定で、「みなし公務員」だったので(たまたま)受託収賄罪が適用されただけです。高橋自身も言っているように、ああいった”コミッション(手数料)ビジネス”は普段電通がやっていることなのです。

オリンピックがアマチュア規定を外し商業主義の門戸を開いたことで、オリンピックと深く関わるようになった電通は、五輪選手は五輪スポンサー企業のCMしか出ることはできないという縛りを設け、五輪選手の肖像権の管理をJOCで行うようにして、五輪開催とは別に、五輪選手を金づるにするシステムをつくったのでした。

  電通はオリンピックマークを企業が商業的に使い、その収益をオリンピック員会に集めるシステムも考え出した。だがオリンピックマークでは国際オリンピック委員会(IOC)の規定に抵触してしまう。そこで電通はおなじみとなった「がんばれ! ニッポン!」ブランドを作り出した。
(同上)


電通は、政治にも大きく関わるようになっています。小泉政権の「自民党をぶっ壊す」「聖域なき構造改革」のようなキャッチフレーズを生み出したのも電通だと言われています。そういったワン・フレーズ・ポリティックスで小泉人気を演出したのでした。現在、日本の政治をおおっている世も末のような衆愚政治が小泉政権からはじまったことを考えれば、日本の政治のタガを外したのは電通だとも言えるのです。

玉川徹氏が地雷を踏んだ電通タブーについて、『電通の正体』は「あとがき」で次のように書いていました。

  日本にはマスコミタブー、つまりテレビ・新聞・雑誌などの報道機関が、取材の結果知りえた事実を報道することを忌避する、そもそも取材することを忌避するという自己矛盾を起こす取材対象がいくつかある。天皇制、被差別部落、芸能界、組織暴力団、創価学会、作家、警察などが思いつくだろう。これらに並んで記者や編集者の口にのぼるのが、日本最大の広告会社・電通という東証一部上場企業だ。電通と並びメガ・エージェンシーと呼ばれる業界第二位の博報堂については、タブーという認識は業界にほとんどないから、広告会社がタブーなのではなく電通がタブーということになる。
(同上)


昔、『噂の真相』も、「タブーなきスキャンダリズム」と謳っていました。どうしてタブーがないのかと言えば、『週刊金曜日』もそうですが、広告収入に依存してないからです。広告収入に依存しなければタブーがなくなるのです。その代わり、『週刊金曜日』が自嘲するように、薄っぺらなわりに定価が高い雑誌になってしまうのです。

玉川徹氏を執拗に叩いていた、週刊誌やスポーツ新聞があざとく見えたのも電通タブーゆえです。彼らは「電通サマのお名前を出すなど言語道断」とでも言いたげでした。その報道は、大衆リンチを煽り玉川氏の存在を抹殺しよう(テレビから追放しよう)としているかのように見えました。どこも経営的に青息吐息なので、そうやって下僕のように(!)「電通サマ」に忠誠を誓ったのでしょう。彼らにとって、「言論の自由」は所詮、「猫に小判」「豚に真珠」でしかないのです。

そもそも電通に関する本も極端に少ないし、ましてや電通を特集する雑誌など皆無です。週刊文春や週刊新潮も、電通を扱うことはありません。あり得ないのです。上を見てもわかるように、電通のシェアを調べようと思ってもほとんど情報がなく、あのように曖昧な書き方をするしかないのです。

電通は、戦前に設立された「日本電報通信社」という広告と情報を兼ねた通信社が母体です。その中で、広告部門が独立して電通になり、情報部門が今の時事通信社になったのでした。ネットの出現で、日本の広告業界は大きく揺さぶられていますが、電通が圧倒的なシェアで君臨する日本の広告業界は、このように今なおブラックボックスと化しているのでした。


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菅弔辞と玉川徹バッシング
2022.11.16 Wed l 社会・メディア l top ▲
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最近、マイクロプラスチックによる海洋汚染の問題をよく目にするようになりました。付け焼刃の知識ですが、マイクロプラスチックは、一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチックの2種類に分けられるそうです。

一次プラスチックというのは、プラスチック製品に使用される「レジンペレット」と呼ばれるプラスチック粒や、製品の原材料として製造された小さなビーズ状のプラスチックのことで、たとえば、古い角質を削って肌をスベスベにする洗顔料や歯磨き粉などの原料であるスクラブ剤などに使われています。それらは、生活排水と一緒に下水道を通って海へ流れ出るのです。

マイクロプラスチックは、5ミリメートル以下のプラスチックのことを指すそうですが、微小なプラスチックは下水処理施設の装置も通りぬけてしまうので、いったん海に流れ出たマイクロプラスチックを回収するのは難しいのだとか。

二次マイクロプラスチックというのは、投棄されたビニール袋(レジ袋)やペットボトルなどのようなプラスチック製品が、紫外線によって劣化したり波に洗われて破砕され小さくなったものです。

自然界のプラスチックが分解されるには、100~200年、あるいはそれ以上もかかると言われており、その間に海洋生物の体内に取り込まれて、さらに食物連鎖で海藻や魚や貝などを介して人体に入ることになります。プラスチックに使われている有害性の添加物は、マイクロ化しても残留するそうで、人体に対する影響も懸念されているのでした。

また、マイクロプラスチックが、サンゴに取り込まれることによって、サンゴと共生する植物プランクトン(褐虫藻)が減少し、海の生態系のバランスが崩れる影響も指摘されています。

人体に対する影響では、消化器官の中に取り込まれるマイクロプラスチックは、一日程度体内に留まるだけで、便と一緒に排出されるのでそれほどの問題にはならないそうですが、他の器官に吸収されると影響は避けられないそうです。特に肺に入ると呼吸器系の疾患を生じると言われています。また、血液にも混入して体内の隅々にまで運ばれるそうで、それで人体に影響がないと言えばウソになるでしょう。

そのために、日本でもレジ袋の有料化がはじまりましたが、使い捨てプラスチック製品を減らすことは自然環境を守るための世界的な課題になっているのでした。

そこで、目に止まったのは下記の記事です。

GIZMODO(ギズモード)
ポリエステルの服は、着ているだけで大量のマイクロプラスチックを放出している…

記事によれば、「アクリル、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維でできた衣服を洗濯すると、何十万ものマイクロプラスチック繊維が引きはがされ」生活排水とともに海に排出されるそうです。しかし、問題は洗濯だけではないのです。

また、研究チームは4つの衣服の複製を着たボランティアたちに、日常生活と同じような動きをしてもらった結果、わずか20分で1gあたり最大400個のマイクロファイバーが空気中に放出されることがわかりました。つまり、ポリエステル製の服を着て通常の生活を3時間20分続ければ、4,000個のマイクロファイバーが放出され、洗濯時に水を流すのと同じくらいの汚染が生じるというわけです。もっと大きなスケールで考えると、平均的な人は洗濯によって毎年約3億個のポリエステル繊維を放出し、ポリエステル製の衣服を着るとその3倍の繊維を放出してしまうらしい(略)。
(上記記事より)


登山用のウエアは、速乾性と透湿性にすぐれているという理由で、ポリエステルやポリウレタンが多く用いられています。

ただ、パタゴニアに代表されるように、「SDGs」「自然に優しい」を謳い文句に、同じポリエステルでも「リサイクル・ポリエステル」を使っているケースが多く、最近は他のメーカーもそれに追随しています。

しかし、リサイクルであろうが何であろうが、そもそもポリエステルを3時間20分着ているだけで4000個のマイクロファイバー(プラスチック繊維)を自然界に放出している(飛散させている)のです。

記事にあるように、「洗濯してもダメ、着てもダメ。いったいどうすれば…」と思ってしまいますが、少なくともアウトドア=自然が好き=自然を大切する気持がある、というのは幻想でしかないのです。欺瞞だと言ってもいいくらいです。

都岳連のハセツネカップの自然破壊はきわめて悪質ですが、でも、私たちも山の中にマイクロプラスチックをばらまきながら山に登っているという点では同罪かもしれません。

マイクロプラスチックを体内に取り込んでいるのは、海洋生物だけでなく、山に生息する野生動物も同じなのです。

高機能を謳い文句に数万円の大金をはたいて買ったウエアで、ハイカーたちがマイクロプラスチックを山中にばらまいているという現実。それで「山っていいなあ」とひとりよがりな自己満足に浸っているのです。

また、車のタイヤが地面と摩擦する際に飛び散るゴム片にも、多くのマイクロプラスチックが含まれているそうです。今のタイヤは、昔のような天然ゴムではなく合成ゴムです。合成ゴムというのは、石油を原料とするポリマー(高分子化合物)で、海に流入するマイクロプラスチックのうち、タイヤのゴム片によるものが28%を占めているという説さえあるそうです。最近はマイカー登山が当たり前になっていますが、林道を通って登山口まで車で行くのも、山中にマイクロプラスチックをばらまいていることになるのです。もちろん、沢もマイクロプラスチックで汚染されます。

こう言うと、「じゃあ、どうすればいいんだ?」と言うに決まっていますが、そう開き直る前に、自称「自然を愛する」ハイカーたちは、自分たちが自然に対して傲慢で欺瞞な存在であることをまず自覚すべきなのです。「そんなこと言ってたらきりがないじゃないか」と言われるかもしれませんが、たしかにきりがないのです。それくらい深刻なのです。

言うまでもなく、再び感染拡大がはじまっている新型コロナウイルスも、鳥インフルエンザも、自然界からのシッペ返しに他なりません。デジタル社会だ、5Gだ、AIだ、シンギュラリティだ、などと言っても、新型コロナウイルスによるパンデミックが示しているように、人間は自然に勝てないのです。人間が自然に対して傲慢である限り、これからもシッペ返しは続くでしょう。

登山もまた、「自然保護」とは対極にある行為なのです。だったら、せめてマイカーで行くのをやめたり、保護活動のために入山料を払ったりして、少しでも「自然保護」に協力すべきでしょう。

著名な登山家の一部も、身過ぎ世過ぎのためか、登山用品のメーカーと契約して、マイクロプラスチックの問題などどこ吹く風で、ポリエステルで作られた高級登山ウェアの宣伝に一役買っています。それは、今やカタログ雑誌と化した登山雑誌も同じです。そして、彼らは、エベレストやヒマラヤをプラスチックのゴミ捨て場にしているのです(下記記事参照)。

AFPBB News
エベレスト山頂もマイクロプラスチック汚染、登山具に由来か 研究

ポリエステルのような化繊より、メリノウールなどの天然繊維の方が「環境に優しい」と言われています。人寄せパンダの有名登山家や、節操のない俄かハイカーに過ぎないユーチューバーの商品レビューや、広告代理店と組んだ登山雑誌の特集などに惑わされるのではなく、できる限り天然素材のウエアに変えるのも選択肢のひとつでしょう。

誤解を怖れずに言えば、たとえば山菜取りで山に入って道に迷った高齢者でも、致命的な怪我を負わずに食糧や水さえ持っていれば、数日でも生き延びることができるのです。山菜取りが目的の高齢者は、必ずしも速乾性と透湿性にすぐれた高価な登山用のウエアを着ているわけではありません。アンダーウエアだって普通の綿の下着でしょう。厳冬期だったら別でしょうが、厳冬期以外の私たちが普段登る山のレベルでは、人寄せパンダの登山家や登山雑誌がすすめるような高価な登山ウエアは、言われるほど必要ではないのです。それより予備の食料と水(それとライトと雨合羽と山用のマッチ)を持って行く方がよほど大事です。

それにしても、「自然を大事にしましょう!」という掛け声だけは盛んですが、どうして日本の山はマイカー規制と入山料の徴収が進まないのか、不思議でなりません。
2022.11.13 Sun l l top ▲
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イーロン・マスクに440億ドル(約6兆5千億円)で買収されたTwitter社では、世界の従業員7500人の半分にあたる3700人に解雇が通告されたとして、大きなニュースになっています。

イーロン・マスクによれば、Twitter社は一日あたり約400万ドル(約5億9千万円)の赤字だそうです。

もちろん、アメリカのレイオフと日本のリストラを同列に論じることはできませんが、いづれにしても大ナタを振るったことはたしかでしょう。

Twitterが世界で7500人しか従業員がいなかったということも驚きでした。あれだけ世界中でサービスを展開していながら、僅かこれだけの従業員しかいなかったのです。しかも、イーロン・マスクによれば、半分は余剰人員だったということになります。

イーロン・マスクが言うように、一日に約400万ドルの赤字を垂れ流していたことが事実であれば、Twitter社の株主たちがイーロン・マスクに訴訟してまで買収を求めた理由が、今になればわかるのでした。しかも、売上げの大半は広告費で、広告頼りの危うい状態から抜け出せなかったのです。

ここに来て、ネット広告の市場が縮小しており、プラットホーマーはどこも四苦八苦しています。FacebookやInstagramを傘下におさめるメタも、今週中にも数千人規模に上る大規模解雇を始める予定だというニュースがありました。(追記:11月9日、メタは、全従業員の約13%にあたる1万1千人超を削減すると発表しました)

ネットの覇者であるGoogleも例外ではありません。Googleも広告に依存した体質から未だに脱皮できてないのです。Googleの持ち株会社のAlphabetは、10月25日に2022年第3四半期(2022年7月~9月)の決算を発表したのですが、それによれば、売上高が前年同期比6%増の690億9200万ドルだったにもかかわらず、純利益は27%減の139億1000万ドルと大幅な減益でした。中でもYouTubeの広告収入が2%減で、YouTube広告の売上高を開示するようになった2019年第4四半期以来初めての減収になったそうです。

子どもたちの「なりたい職業」の第1位はユーチューバーだそうですが、今後、ユーチューバーに対する広告費の分配も見直されるかもしれません。そのたびに「あこがれの職業」であるユーチューバーたちに「激震が走る」ことでしょう。

そもそも今回のTwitterの騒動を見てもわかるとおり、ユーチューバーという職業がいつまで存在できるかもわからないのです。デジタルの世界の10年は、もしかしたら従来の世界の50年にも、それ以上にも匹敵するかもしれません。時間の概念が異なると言ってもオーバーではないくらい、有為転変のスピードが速いのです。

IT化が進めば進むほど、雇用が削減されるのは理の当然です。IT化によって、どんな職種がなくなるか、どんな人たちが仕事を失うか、というような雑誌の特集をよく目にしますが、多くの人たちはそんな過酷な現実を強いられ、「労働力の流動化」なるバーゲンセールの商品台に乗せられて叩き売られるのです。岸田政権は、”成長分野”に「労働移動」するために「学び直し(リスキリング)」が必要だなどと、電通から吹き込まれたような借り物の用語を使って「新しい資本主義」の生き方を国民に説いていますが、日本のどこに”成長分野”があるというのでしょうか。岸田首相自身が所信表明演説で吐露したように、「新しい資本主義」と言ってもインバウンドの”爆買い”が頼りなのです。

さらに、Twitter社のレイオフから見えるものはそれだけではありません。社員が数千人の企業によって、「言論の自由」が担保されていたという、悪夢のような現実を私たちは改めて見せつけられたのです。

メディアが盛んに報じていますが、Twitterの「言論の自由」は、新しい経営者の手の平の上で弄ばれているのです。「言論の自由」はそんなものじゃない、「言論の自由」は守られるべきだ、とのたまう人たちもいますが、それはトンチンカンなお門違いな主張にしか見えません。

Twitterのサービスが開始された当初、Twitterで新しい社会運動がはじまるなどと言っていた左派リベラルも多くいました。一企業のCEOの匙加減でどうにでもなる「言論の自由」で社会運動もないでしょう。ITの時代に対して、労働者が為す術もないのと同じように、左派リベラルも為す術がないのです。

そもそも、140文字で何が表現できるというのでしょうか。「おまえの母さん、デベソ」と言い合っているようなものでしょう。デジタルネイティブの若者たちは、長い文章だとそれだけで拒否反応を示して、彼らの間では長い文章を書くこと自体が”害”みたいな風潮があるみたいですが、それで何を伝えられるというのでしょうか。丸山眞男が言う「タコツボ」とはちょっと意味合いが違いますが、彼らはタコツボの中で、最初からコミュニケーションを拒否しているようにしか思えません。

誰かの台詞ではないですが、革命はとどのつまり胃袋の問題なのです。大事なのは、右か左かではなく上か下かなのです。しつこいほどくり返しますが、現在いま、求められているのは”下”の政治です。”下”に依拠する政治なのです。「ツイッターデモ」も、元首相と同じように「やってる感」を出しているにすぎません。

日本は、先進国のふりどころか、そのうち「日本、凄い!」と自演乙することさえできなくなるでしょう。あれだけバカにしていた中国も、気が付いたら、”アジアの盟主”として、文字通り巨像のように私たちの前にそびえ立つまでになっていたのです。前も書きましたが、若者たちも中国発のファストファッション(SHEIN)に、「安い」「カッコいい」と言って群がるようになっています。そのうち”韓流”だけでなく、”華流”もブームになるでしょう。

とりとめのない話になりましたが、下記は2010年、Twitterが日本でサービスを開始してまだ間がないときに書いた記事です。ついでにご笑読いただければ幸いです。


関連記事:
ツイッター賛美論(2010.05.25)
2022.11.07 Mon l ネット l top ▲
Yahoo!ニュースにも転載されていましたが、「bizSPA!フレッシュ」に、下記のような記事が掲載されていました。

bizSPA!フレッシュ
週刊SPA!編集部
生魚の異臭が…東京屈指の“高級住宅街”で地上げトラブル「バブル期並みの悪質さ」

タイトルにもあるように、何だかバブルの頃を彷彿をするような話ですが、たしかに都心は至るところに地上げの跡があり、バブル時代に戻ったかのような光景も多く見られます。

大阪は東京ほどではないみたいですが、東京の都心では中古マンションも高止まりした状態が続いています。東京五輪が終わったら不動産バブルが弾けると言われていましたが、そうはなりませんでした。少なくとも価格面では「堅調」、それも「高止まり」の傾向さえあるのです。

もっとも、これは東京の都心や大阪の郊外の一部に限った話で、地方では価格は下降傾向にあると言われています。そのため、地方と東京・大阪の都市部の不動産価格がいっそう乖離しているのでした。

どうして都心の不動産価格がバルブ期並みに高騰しているのか。ひとつは、言うまでも金融緩和、それも「異次元」の金融緩和の影響です。「異次元」の金融緩和によって、東京都心部の駅前はどこも大規模な再開発が行われています。それは、バブル期もなかったような大掛かりなもので、渋谷の駅前が100年に一度の再開発と言われていますが、決してオーバーとは言えないほどです。しかも、100年に一度のような大規模開発は渋谷だけではないのです。

私は、横浜市の東急東横線沿線の街に10数年住んでいますが、引っ越してきた当初、駅の周辺の路地の奥には、昔ながらの古いアパートが点在していました。また、駅から少し離れると畑も残っていましたし、幹線道路沿いには、地元の小さな会社や商店などがありました。川魚問屋なんていうのもありました。さらに、このあたりは交通の便もいいので、大手企業の社宅や独身寮なども多くありました。

しかし、5~6年前くらいからことごとく壊されて、その跡地の多くにはマンションが建っています。しばらくぶりに前を通ると、風景が一変しているので驚くことがよくあります。

要するに、「異次元」の金融緩和で不動産業界にお札がばら撒かれているからでしょう。ただ、この30年給料が上がってないことを見てもわかるとおり、どんどん刷られたお札が一般庶民にまわって来ることはないのです。せいぜいが住宅ローンの金利が安くなり審査に通りやすくなるくらいです。

また、前に書いたように、日本には2000兆円という途方もない個人金融資産があります。その恩恵に浴する人たちとまったく縁もない人たちの間での格差も広がるばかりです。「マタイの法則」ではないですが、「富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる」のです。そういった格差社会の現実が、不動産価格の「高止まり」にも反映されているのです。

もうひとつ忘れてならないのは、円安です。これはずっと以前より言われていたことですが、日本の不動産が中国本土の富裕層やアジア各地の華僑たちによって投資目的で買い漁られている現実があります。まして、今のように急激な円安になったことにより、彼らの需要がいっそう増して、上記のようなバブル期と見まごうような地上げを招いているのでした。

マンションに縁もゆかりもないネトウヨが、中国は遅れた国、三流国みたいに言っている間に、金満生活を謳歌する中国人の求めに応じて日本の不動産屋がなりふり構わず地上げに狂奔するようになっているのです。しかも、その資金をアベノミクスの名のもと、日本の金融当局が提供しているのです。

記事では、地上げの直接の要因として次のような指摘がありました。

「本来なら立ち退き料として住宅なら賃料の6~18か月分、事務所や店舗なら60~240か月分ほどの補塡を行い、退去期限は立ち退きに合意してから3か月~1年が一般的です。所有権が移ってまだ2か月余りでこの事態とは、悪質さを際立たせます」

「本物件を購入したのは、賃借人を退去させてマンションなどの用地としてデベロッパーに売却して利益を得るのが目的と思われます。土地建物の取得の際に3億円を金利4.5%で借り入れたとすると、彼らの支払う利息は月に100万円強。できるだけ早く立ち退きを完了させないと利益が毎日減少していくので、荒っぽくもなる。」

「賃借人は借地借家法で守られており、賃貸人がいくらお金を積んでも法的には立ち退かせることはできません。だから、悪質な行為に及ぶ例があるのです。賃借人を守るための借地借家法が、かえって地上げ屋を生むとはなんとも皮肉ですね」

(週刊SPA!編集部・生魚の異臭が…東京屈指の“高級住宅街”で地上げトラブル「バブル期並みの悪質さ」)


しかし、その背後に、“安い国ニッポン”の構図があることも忘れてはならないのです。

「異次元」の金融緩和で我が世の春を謳歌しているのは、不動産業界だけではありません。法人税が軽減されたことも相俟って、企業の内部留保は516兆4750億円(2021年)にものぼっているそうです。

法人税減税は、2011年38.54%だったのが、2013年に37%、そして、2018年には29.74%に引き下げられています。しかも、法人税をまともに納税しているのは、全企業の3割ほどにすぎないのだとか。納税するほど利益が出てないということもありますが、もうひとつは、大企業に対して、「資本金1億円以上の外形標準課税」や「受取配当金益金不算入制度」などのような減税や免税処置があるからです。「資本金1億円以上の外形標準課税」では、資本金1億円以上の大企業より、外形標準課税の対象外の資本金1億円以下の企業の方が、平均税率が高くなるという逆進性も生じており、大企業優遇は税制面から見てもあきらかなのです。

その一方で、消費税は、1988年12月に消費税法が成立して、1989年4月に3%でスタート、1997年4月5%、2014年4月8%、2018年10月10%と引き上げられています。

実際に1989年に消費税が導入されてから34年間で、国と地方を合わせた消費税の総額が476兆円であるのに対して、法人税の減税分が324兆円、所得税と住民税の減税が289兆円だったそうです。これが、消費税の増税分が法人税や所得税・住民税の減税の穴埋めに使われたのではないか、と言う根拠になっているのでした。

2012年、野田内閣が、民主党政権成立時の公約を反古にして、自民党と公明党の間で、「税と社会保障の一体改革」の三党合意を交わして、消費税増税に舵を切り、民主党政権は自滅したのですが、そのときに、野田内閣が提出して成立した法案は、消費税率を2014年に8%、15年に10%に引き上げるというものでした。

ちなみに、三党合意の社会保障の部分では、以下の3点が確認されていました。

①今後の公的年金制度、今後の高齢者医療制度にかかる改革については、あらかじめその内容等について三党間で合意に向けて協議する。
②低所得高齢者・障害者等への福祉的な給付に係る法案は、消費税率引上げまでに成立させる。
③交付国債関連の規定は削除する。交付国債に代わる基礎年金国庫負担の財源については、別途、政府が所要の法的措置を講ずる。

しかし、三党合意とは裏腹に、社会保障の改革はおろか、社会保障費の増大に対して、税収による補填は僅かな伸びしかなく、その多くは保険料の引き上げで賄っているのが現実です。

日本共産党の関連団体と言われる民商(民主商工会)のサイトによれば、消費税導入以前の1988年と消費税が10%になった2020年を比較すると、国民健康保険料(1人平均)は5万6372円から9万233円に引き上げられ、医療費は1割負担が3割負担に、国民年金の保険料(月額)は7700円が1万6610円と2倍以上も上がっているそうです。また、年金の支給開始年齢の繰り下げもはじまっています。所得に対するいわゆる「租税公課」の割合は、4割を優に超えており、重税国家と言っても過言ではないのです。

ちなみに、横浜市は、住民税と国民健康保険料がバカ高いので有名ですが(それと職員の給与が高いのでも有名)、私のような独り者のその日暮らしでも、介護保険料と合わせた国民健康保険料は(年間10回分割で)毎月3万円近く引き落とされています。引っ越してきた当初から比べたら、2倍どころか3倍くらい上がっています。だからと言って、もちろん収入が3倍上がっているわけではないのです。毎年春先に国民健康保険料と住民税の確定金額のお知らせが届くと、目の前が真っ白になって血の気が引くくらいです。

これでは、「税と社会保障の一体改革」という三党合意は何だったのかと言わざるを得ません。自公もひどいけど、旧民主党はそれに輪をかけて無責任でひどいのです。

さらに、ここにきて政府の税制調査会のメンバーから、消費税増税の声も漏れ伝わるようになっています。立憲民主党も、新しい執行部に野田政権で副総理を務めた岡田克也氏や財務相を務めた安住淳氏が入ったことで、(自民党に歩調を合わせて)増税路線の布陣を敷いたんじゃないかという指摘があります。また、前代表の枝野幸男氏が、2021年10月末の衆院選の公約で、新型コロナウイルス禍への対応として「時限的な5%への消費税減税」を掲げていたことを「間違いだった」「二度と減税は言わない」と発言したことが物議を醸しているのでした。

まったく懲りないというか、こういう野党が存在する限り、自公政権は左団扇でしょう。そして、日本はとどまるところを知らず安い国として凋落し食い散らかされるのです。ましてや、国防費の増大や敵基地先制攻撃など、片腹痛いと言わねばなりません。そういう妄想と現実をはき違えたオタクのような発想も、国の経済を疲弊させ、さらに凋落を加速させるだけでしょう。

追記:(11/09)
元朝日の記者の鮫島浩氏は、8日、自身のYouTubeチャンネルで、「野田佳彦首班で大連立!宏池会と立憲民主党を財務省がつなぐ『消費税増税内閣』急浮上!!」という動画を上げていました(下記参照)。上で見たように、野田佳彦は旧民主党政権の獅子身中の虫だったのですが、松下政経塾出身の彼がとんでもないヌエ、食わせものであることは今さら論を俟ちません。3年間選挙がないことをチャンスとばかりに、与野党一致で増税に突き進むシナリオが水面下で進んでいると言うのです。もし事実なら、まさに立憲民主党の正体見たり枯れ尾花みたいな話でしょう。今まで「立憲民主党が野党第一党である不幸」をくり返し言って来ましたが、もういい加減、引導を渡すしかないのです。

SAMEJIMA TIMES
youtu.be/Hkg9jvjfftY
2022.11.06 Sun l 社会・メディア l top ▲
ピストルと荊冠


2013年12月19日、「餃子の王将」を運営する「王将フードサービス」の社長・大東(おおひがし)隆行氏が、銃撃されて殺害された事件に関して、10月28日、福岡刑務所に服役中の田中幸雄容疑者が、殺人の容疑で京都府警に逮捕されました。これにより、「餃子の王将」社長射殺事件」は、事件から9年目にしてようやく「実行犯の逮捕」という新たな局面を迎えたのでした。

田中幸雄容疑者は、北九州の小倉に本部を置く工藤会の二次団体石田組の幹部です。どう見てもヒットマンとしか思えず、「王将フードサービス」と北九州のヤクザ組織との間をつないだのは誰なのか、関心が集まっているのでした。

工藤会は、2012年の改正暴対法によって、「特定危険指定暴力団」に指定された全国で唯一の暴力団で、それこそ泣く子も黙るような武闘派の組織として知られています。

私も子どもの頃、「小倉は怖い」という話を母親から聞いたことがあります。母方の祖母は福岡の若松か戸畑だったかの出身で、母親も祖父の仕事の関係で北九州で生まれたのですが、親戚を訪ねて行ったのか、私が中学生の頃、母親が叔母とともに北九州に出かけたことがありました。

そして、帰って来て、父親と話をしているのを私は横で聞いていたのですが、小倉駅で電車を待っていたとき、駅にヤクザみたいな男たちがたむろしていて怖かった、小倉があんな怖いところとは知らなかった、と言っていました。

もちろん、工藤会なんて名前は知る由もありませんが、私は何故かそのときの話を今も忘れずに覚えているのでした。後年、赴任先の街でたまたま入ったスナックに小倉出身の女性がいて、その話をしたら、彼女も小倉はヤクザが跋扈する怖い街だ、と言っていました。

実際に工藤会は、暴力団排除の運動をしていた市民を襲撃するなど、一般市民や企業を標的にした数々の暴力事件を起こしています。工藤会に“及び腰”と言われた福岡県警も、改正暴対法や警察庁の後押しなどもあって、2014年に16年前の元漁協組合長殺害容疑でトップの野村悟総裁とナンバー2の田上不美夫会長の逮捕に踏み切り、組織の壊滅に向けた“頂上作戦”を開始したのでした。

ちなみに、大東社長が射殺された翌月(2014年1月)には、16年前に殺害された元漁協組合長の実弟で、兄のあとに漁協組合長を務めていた人物が、同じように早朝、ゴミ出しするために家を出たときに何者かにようって射殺されています。その捜査の過程で、16年前の兄の事件で、野村悟総裁と田上不美夫会長の関与(指示)が判明したので逮捕したと言われています。でも、何だかあわてて逮捕したような感じもしないでもありません。

尚、殺害された漁協組合長の兄弟に関しても、その後も孫の歯科医や息子の会社の女性従業員が襲われ刺傷するなど、執拗な攻撃が加えられているのでした。福岡県警はどこで何をしていたのかというような話なのです。

工藤会が行った事件については、ウィキペディアに詳しく書かれていますが、90年代後半以降の主な事件を列記するだけでも下記のようになります。

工藤会が博徒として結成されたのは戦前ですが、工藤会が暴力団として狂暴化したのは1960年代に山口組との抗争を経てからだと言われています。しかも、抗争相手の山口組系の組織とは、のちに稲川会の会長の仲介で合併しているのでした。工藤会は、カタギであろうが誰であろうが見境がなく、野村総裁の局部を大きくする手術をした病院の看護婦や、暴力団担当の元刑事まで襲われているのでした。それで怯んだのか、福岡県警が工藤会に“及び腰”だったのは誰が見てもあきらかでした。

1988年
・みかじめ料の要求を断った健康センターに殺鼠剤を撒布。150人が中毒症状。
1988年
・在福岡中華人民共和国総領事館を散弾銃で攻撃。
1988年
・福岡県警元暴力団担当警部宅を放火。
1994年
・パチンコ店や区役所出張所など17件前後銃撃。
1998年
・港湾利権への介入を断られた報復で北九州元漁協組合長を射殺。
2000年以後
・暴力団事務所撤去の運動に取り組んでいた商店を車で襲撃。
・暴力追放を公約に掲げて当選した中間市長の後援市議を襲撃。
・警察官舎敷地内の乗用車に爆弾を仕掛ける。
・九州電力の松尾新吾会長宅に爆発物を投擲。
・西部ガスの田中優次社長宅への手榴弾投擲、及び同社関連会社と同社役員の親族宅を銃撃。
・暴力団追放運動の先頭に立つクラブに手榴弾を投擲。
・安倍晋三の下関市の自宅と後援会事務所に火炎瓶を投擲。
・大林組従業員ら3名を路上で銃撃。
・トヨタ自動車九州の小倉工場に爆発物を投擲。
・工藤会追放運動を推進していた自治会長宅を銃撃。
・工藤会追放運動を推進していた建設会社役員を射殺。
・中間市の黒瀬建設社長を銃撃。
・清水建設従業員を銃撃。
・元工藤会担当県警警部を銃撃。
他にみかじめ料を断ったパチンコ店や飲食店などを襲撃多数。
(Wikipedia参照)

この中で、今回逮捕された田中幸雄容疑者が関係したのは、2008年1月に、大林組従業員ら3名が乗っている車を銃撃した事件です。しかし、動機は不明で、判決文でもそう書かれています。田中容疑者が口が堅いと言われるのも、そのあたりから来ているのでしょう。田中容疑者は、同事件の実行犯として逮捕され、懲役10年の判決を受けて福岡刑務所に服役していました。ただ、同事件でも、逮捕されたのは事件発生から10年後でした。

田中容疑者は、福岡の大牟田出身で、地元の高校から田中康夫の『なんとなく、クリスタル』の主人公が通った、原宿の表参道の先にあるキリスト教系のオシャレな大学に進学。大学を中退したあといくつかの会社に勤め、30代半ばまではカタギのサラリーマンだったそうです。そして、仕事上のトラブルに巻き込まれたときに、工藤会に助けて貰ったことでヤクザの道に入ったと言われています。

また、北九州元漁協組合長を射殺した事件等で、殺人や組織犯罪処罰法違反などの罪に問われたトップの野村悟総裁とナンバー2の田上不美夫会長に対して、福岡地裁は2021年8月に、それぞれ死刑と無期懲役を言い渡しています。その際、退廷する野村総裁は、裁判長に向かって「あんた後悔するよ」と捨て台詞を吐いたそうです。

田中幸雄容疑者に関しては、当初から捜査線上にのぼっていたと言われていますが、逮捕に至るまで9年の歳月を要したのはどうしてなのか。事件の背後に、私たちがうかがい知れない”闇”が存在していたような気がしてなりません。

キャスターの辛坊治郎氏は、事件が起きてすぐに京都府警から事情聴取されていたそうで(実際は情報提供を求められただけのようですが)、ラジオ番組で事件の不可解さについて、次のように語っていました。

Yahoo!ニュース
ニッポン放送
「王将」社長射殺事件 辛坊治郎が事情聴取を受けていた「容疑者とは言われませんでしたが……」

それにしても、謎だらけの事件です。今回逮捕された暴力団幹部が事件に関わっていたという見方はかなり初期の段階からありました。殺害現場近くでたばこの吸い殻が発見され、 DNA型鑑定が出ていたんですよ。なぜ、そんなはっきりとした証拠があるにもかかわらず、そのルートを洗っていかなかったのだろうと不思議です。
(略)
いずれにしても、容疑者がもっと早く逮捕されていてもおかしくない事件です。ここまで時間がかかったことに、何かものすごく深い闇のようなものを感じています。
(上記記事より)


事件の背景については、東証一部上場(移行)を前にして会社が設置した第三者委員会が、2016年3月に公表した調査報告書に注目が集まっています。調査報告書は、下記の毎日新聞の記事に書いているとおり、当初は東証一部上場(13年7月)後の13年11月に公表されるはずでした。しかし、何故か公表されず、役員たちにも報告書の内容が共有されなかったそうです。そして、その1ヶ月後の12月に大東社長が殺害されたのでした。調査報告書が公表されたのは、さらにそこから3年4か月後でした。このように調査報告書のの公表ひとつをめぐっても、実に不可解なのです。

調査報告書によれば、創業家と福岡の企業グループとの間で、取締役会にも通さない不適切な取引きが行われ、それは1995年から2005年までの10年間に総額260億円にものぼり、そのうち170億円が回収不能になっているというのです。その多くは不動産取引で、企業グループから市場価格とかけ離れた不当に高い金額で購入し、大きな売却損を出して処分するということをくり返していたのです。調査報告書は、「福岡の企業グループは反社ではない」と書いていましたが、やり口は反社のそれと同じです。

そのため、「王将フードサービス」は業績不振に陥り、三代目の社長だった創業者の加藤朝雄氏の長男と、財務担当の専務だった次男が事実上のクーデーターで退陣し、創業者の義弟の大東氏が社長に就任したのでした。

「王将フードサービス」は東証一部上場をめざしていましたが、取締役会にもはからない不適切な取引きによって、「企業経営の健全性」や「企業のコーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制の有効性」といった上場要件(審査基準)を満たせず、早急な企業体質の改善が求められていました。そのため、大東社長がみずから表に立って、福岡の企業グループとの関係を精算しようとした矢先に殺害されたのでした。

そのあたりの経緯について、毎日新聞が具体的に書いていました。

毎日新聞
王将社長射殺 不適切取引相手の企業グループ  関係者を参考人聴取

  00年4月に社長に就任した大東さんは当初、企業グループとの債権回収の交渉を、創業者の親族に任せていた。しかし経営危機に直面し、03年7月ごろからは自身が直接交渉。14件については清算を終えたが、企業グループとの関係を解消しきれなかったという。

  これらの内容は、同社が東証移行を前に設置した再発防止委員会が13年11月にまとめた報告書に記されたが、公表はされなかった。大東さんが殺害されたのは、その1カ月後だった。
(上記記事より)


記事によれば、京都府警の捜査本部は、田中容疑者の逮捕に伴って、不適切な取引きをしていた「企業グループを経営していた70代の男性から、参考人として任意で事情を聴いたことが判明した」そうです。

しかし、ここに至っても、メディアは「福岡の企業グループ」という言い方をするだけで、社名等いっさいあきらかにせず、奥歯にものがはさまったような言い方に終始しているのでした。それは、安倍元首相銃撃事件のあと、旧統一教会のことを「ある宗教団体」とか「特定の宗教団体」と言っていたのと似ています。

一方で、リテラが、2015年に具体的に企業名や経営者の名前を出して記事にしており、翌年にも第三者委員会の調査報告書の発表を受けて、その記事を再掲しています。

リテラ
「餃子の王将」が調査報告書でひた隠しにする260億円不正取引の相手は“部落解放同盟のドン”の弟だった!

「部落解放同盟のドン」というのは、1982年から1996年5月に肝不全で亡くなるまで部落解放同盟の4代目の中央執行委員長を務めた上杉佐一郎氏で、その「弟」というのは、上杉佐一郎氏の異母弟の上杉昌也氏です。

同和対策事業特別措置法が10年の時限立法として制定されたのが1969年で、その後何度が延長され(法律の名称も変わって)、終了したのが2002年です。33年間で約15兆円の国家予算が費やされたと言われています。

部落解放同盟が、最も活発に活動していたのもその期間です。

上杉昌也氏自身は部落解放運動には直接関係してなかったようですが、彼の事業に「部落解放同盟のドン」と言われた上杉佐一郎氏の威光がはたらいていたのは想像に難くありません。同対法の終了と関係あるのか、事業の多くは2006年から2011年にかけて破綻しています。

警察の捜査が遅々として進まなかったのも、大手メディアが未だに奥歯にものがはさまったような言い方に終始しているのも、「同和タブー」があるからではないか。そう思えてなりません。

創業者の加藤朝雄氏が、1967年12月に「餃子の王将」を創業したのは京都四条大宮ですが、福岡(飯塚市)出身だった加藤氏は、同郷の上杉兄弟と1977年頃知り合ったと言われています。そして、全国展開する上での資金300億円は上杉佐一郎氏が調達した、と言われているのです。

私は、田中幸雄容疑者の逮捕を受けて、部落解放同盟を舞台にした「飛鳥会事件」を扱った、角岡伸彦氏の『ピストルと荊冠』(講談社)を本棚の奥から引っ張り出して読み返したのですが、何だか両者は共通したものがあるような気がしてなりませんでした。と同時に、未だに「同和タブー」が生きていることに、あらためて驚きを禁じ得なかったのでした。

『ピストルと荊冠』は、「<被差別>と<暴力>で大阪を背負った男」とサブタイトルが付けられているように、山口組の直参組織である金田組の組員でありながら、40年にわたり部落解放同盟の支部長を務め、同和対策事業特別措置法による事業で利権をむさぼってきた小西邦彦(故人)の半生を取り上げた本です。

彼は、同和対策事業で同和地区に建てられた解放会館を根城に、運動団体(部落解放同盟)と財団法人(飛鳥会)と社会福祉法人(ともしび福祉会)のトップを務め、同会館に派遣された市役所職員や三和銀行の職員をあごのように使って、文字通り巨万の富を築いて金満生活を送っていたのでした。また、その一部は所属する金田組に上納されていました。

親しい親分がピストルを隠すために三和銀行の貸金庫が利用できるように便宜をはかったり、山口組の内部抗争の煽りを受けて、解放会館の近くに建てた自社ビルに銃弾が撃ち込まれる、ということもありました。また、山口組4代目組長の竹中正久が跡目争いで射殺された現場になった愛人のマンションは、小西の名義でした。

また、みずからが運営する財団法人の職員として知り合いの組から派遣された元組員を採用したり、知り合いの山口組系の元組長ら3人が社団法人大阪市人権協会の下部組織である飛鳥人権協会の職員であるように装い、3人とその家族分の健康保険証7枚を取得する便宜をはかっていました。3人は、何と1977年から1992年まで健康保険証の更新を続けていたそうです。どうしてそんなことができたのかと言えば、小西が飛鳥人権協会の顧問だったからです。現職のヤクザが人権協会の顧問を務めていたという冗談みたいな話が、当時の大阪では公然とまかり通っていたのです。小西邦彦はのちに詐欺の疑いでも逮捕されています。

同和対策事業関連の予算は、3分の2は国が補助して残りの3分の1は自治体が負担するようになっていましたが、大阪市は同和対策事業特別措置法が続いた33年間で、同和関連事業に6千億円を注いでいます。そのうち「3割強」が建設関連予算だったと言われ、その大半は、部落解放同盟大阪府連が設立した大阪府同和建設協会に加盟する業者が請け負っていました。

小西は、飛鳥地区における業者の選定や工事費の上前をはねることで「少なく見積もっても数億円」を懐に入れた、と『ピストルと荊冠』は書いていました。また、西中島の新御堂筋の高架下を、中高齢者雇用対策ならびに老人福祉対策の一環として駐車場として利用したいという小西の申し出に対して、大阪府は同和対策事業の枠外で市開発公社に占有許可を出し、小西がトップを務める飛鳥会に管理委託させたのでした。それにより、西中島駐車場も小西の懐を潤すことになります。

  駐車場の売上げは一日平均六十万円あった。一年間で二億二千万円である。そのうち地代や人件費を差し引いた七千五百万円が小西の懐に入った。
(『ピストルと荊冠』)


同書によれば、18年間で「少なくとも六億円を着服している」そうです。

もちろん、同和対策を利用した土地転がしで億単位の利益も得ていました。本ではそのカラクリについて、不動産業者が次にように証言しています。

「小西が支部長になってから、ここに道ができる、ここには住宅が建つという具合に(地区内の事業計画が)わかるようになった。最初に小西は地区内の土地を千七百万円で買(こ)うた。それを転売したら三千万円くらいで売れた。そこからあいつは金の味を覚えたわけや。
(同上)


解放会館ができた当初、同館には7名の大阪市の職員が常駐していたそうです。小西は、その人事権を握っているだけでなく、本庁の人事や採用にも影響力を持っていたと言われています。実際に、小西の実兄や甥、姪の夫など身内が大阪市に採用されているのでした。

もちろん、それらの収入は申告していません。「同和」というだけで何のお咎めもなかったのです。それどころか、彼の「人脈は、部落解放運動、行政、政界、警察、国税、銀行、建設業界など各界に広がり、絶大な影響力を持つに至った」(同上)のでした。

彼の金満ぶりについて、『ピストルと荊冠』は次のように書いていました。

  支部長に就任して間もないころは、廃車寸前の高級国産車のトヨタ・クラウンを知り合いから二十万円で購入し、乗り回していた。
(略)
  金回りがよくなると、クラウンをアメリカの大型高級車・リンカーンコンチネンタルに乗り換え、専属の運転手を据えた。
  住居は、一九五〇年代はバラックに、一九六〇年代後半には同対事業によって完成したばかりの3DKの団地型の市営住宅(五十平方メートル)に住んだ。一九七〇年代には奈良市内に自宅を建築したが、その後、妹に譲っている。
  一九八〇年代初めに飛鳥会事務所で働いていた事務員との間に二人の娘をもうけると、同じく奈良市内に三億円をかけ、五百五十平方メートルの敷地に地上三階地下一階の豪邸を建てた。電気代だけで月に一ヶ月二十万円もかかったという。

(略)大人になった長男が「車が欲しい」と言うと、「ん、車? ほな買おうか」と千二百万円のベンツを買い与えた。長男は(引用者:障害があって)運転ができないため、運転手兼介助者は、小西の伝手で大阪市に採用された男が務めた。


私も若い頃、浄土真宗の集まりで、部落解放同盟の末端の活動家たちと話をしたことがありますが、彼らは旧統一教会の信者と同じで、純粋に真面目に解放運動に身をささげていました。そのとき会った小学校の若い女性教師は、狭山事件の裁判の抗議のために、同和地区の子どもたちが「狭山差別裁判糾弾」のゼッケンをつけて登校する、いわゆる”ゼッケン登校”について、「子どもたちの気持がわかりますか?」と涙ながらに語っていました。しかし、「裏切られた革命」ではないですが、上の方はこのようにデタラメを究め腐敗していたのです。もちろん、「飛鳥会事件」はその一例にすぎません。

同対法が終了したのが2002年で、小西邦彦が業務上横領と詐欺の疑いで大阪府警に逮捕されたのが2006年です。小西だけでなく、多くの同和団体に捜査が入り、摘発されています。それは、裏を返せば、それまで同和団体が同対法の下でお目こぼしを受けていた、野放しだったとも言えるのです。

しかし、小西邦彦が一方的に同和対策を食いものにしたとは言えないのです。著者の角岡伸彦氏も、同書で次のように書いていました。

  小西は、運動団体と財団法人、社会福祉法人のトップを長年務めてきた。小西の一声で公共事業が進展し、様々なトラブルが解決した。人脈は、部落解放運動、行政、政界、警察、国税、銀行、建設業界など各界に広がり、絶大な影響力を持つに至った。
(同上)


言うなれば、持ちつ持たれつだったのです。

話を戻せば、「餃子の王将」も”鬼の研修”などに象徴されるように、従業員にとって「ブラック」な会社だったという声もあります。私もYouTubeにアップされていた、大東氏が社長で現社長の渡邊直人氏が常務だった頃の店長研修の動画を観ましたが、たしかにそう言われても仕方ないように思いました。実際に、2013年には、「餃子の王将」はブラック企業大賞にノミネートされているのでした。

そんな会社の創業家と、「差別解消」や「人権尊重」を謳い、一時は三里塚闘争にも動員をかけるほど新左翼にも接近したりと、きわめてラジカルな運動を展開していた部落解放同盟の幹部が親密な関係を持ち、莫大な金銭を伴う不適切な取り引きを行っていたのです。その構図は「飛鳥会事件」とよく似ています。

社長射殺事件では、それまで何度が商売に失敗している創業者が、どうして部落解放運動のドンと言われた上杉佐一郎の一族と関係を持つに至ったのか。そして、どうして上杉佐一郎氏の力で、300億円の資金を調達して、商売を成功に導くことができたのか。それが事件のポイントのように思います。

「王将」は、上記の第三者委員会が公表した調査報告書で示されているように、上杉兄弟との関係を絶つことができなかったのは事実なのです。さらに、そこに九州一の武闘派のヤクザ組織工藤会が絡んできたのです。創業家と上杉兄弟と工藤会がどういう関係にあったのか、まだ多くの”謎”が残っているのでした。もっとも、”謎”にしたのは工藤会に腰が引けていた警察だという声もあります。初動捜査の遅れなどと言われていますが、たしかに、どの事件も”謎”だらけで、容疑者の逮捕までえらく時間がかかっているのでした。

田中容疑者の逮捕を受けて、産経新聞は、匿名ながら次のような記事を載せていました。警察から得た情報なのか、上杉兄弟と「餃子の王将」との関係について、結構踏み込んだ内容が書かれていました。

産経ニュース
㊦背景に200億の「代償」?  事件つなぐキーマンX

  平成5年6月に死去した王将の創業者、加藤朝雄氏の社葬に、友人代表として参列するXの姿があった。福岡県を中心にゴルフ場経営や不動産業を手掛けていたXは、王将の取引先で作る親睦団体「王将友の会」の設立にも尽力。王将が全国に店舗を拡大していく際、トラブルの解決に暗躍していた。

  Xの兄はある同和団体の「ドン」と呼ばれ、X自身も「政財界や芸能界に顔が広かった」(知人)という。28年3月、王将フードサービスが公表した不適切取引に関する第三者委員会の報告書などによると、同じ福岡県出身の朝雄氏と昭和52年ごろに知り合い、交流を始めた。

  王将は全国チェーンへと急成長を遂げたが、各方面に影響力を持つXの水面下での動きが支えになったことは否定できない。各地の出店を支援し、平成元年に大阪・ミナミの店舗で起きた失火では、建物の所有者が死亡した問題の解決も仲介したとされる。
(上記記事)


また、上記のリテラの記事でも取り上げられている一橋文哉氏の『餃子の王将  社長射殺事件  最終増補版』(角川文庫)では、同氏について、「U氏」というイニシャルでその人物像を次のように書いていました。長くなりますが、その箇所を紹介します。尚、本が書かれたのが2014年で、加筆修正されて文庫に収められたのが2016年ですので、一橋氏は、実行犯について、中国人ヒットマンの存在をほのめかしていました。(文中事実誤認の部分もありますが、そのまま掲載します)

  U氏は「王将」創業者・加藤朝雄氏と同じ福岡県出身で、京都市内で不動産関係会社・K社を経営している。
  K社はバブル経済全盛期に、旧住宅金融専門会社(住専)の大手「総合住金」から百三十二億円の融資を受け、完全に焦げつかせたことで知られる会社だ。「総合住金」多額融資先の第四位にランクされ、一時は「問題企業」として金融業界からマークされていた。さらに、京都・闇社会の「フィクサー」とも「スポンサー」とも言われた山段芳春さんだんよしはる会長(九九年三月に死亡)率いるノンバンク「キュート・ファイナンス」からも二百数十億円を借り入れ、これも焦げつかせたという不動産業界では、“いわく付きの人物”である。
  何しろ、その人脈ときたら、戦後最大の経済犯罪である住銀・イトマン事件の主犯として知られる許永中きょえいちゅう・元被告(韓国移送後に仮釈放)はじめ、山口組や会津小鉄あいずこてつ(ママ)など暴力団幹部や、その系列の企業舎弟、政治団体代表ら多彩で、そうした闇社会との交流を活かして、さまざまなアンダーグランドの仕事を請け負い、やり遂げてきた人間なのだ。
  U氏はもともとは、京都市に拠点を置く同和系団体の中心人物(故人)の実弟(ママ)という立場だった。そして、山口組三代目田岡一雄たおかかずお組長が亡くなった後、その遺志を継いで美空みそらひばりをはじめ大物歌手や芸能人の「タニマチ」として応援してきたことでも知られている。
(一橋文哉『餃子の王将  社長射殺事件  最終増補版』・角川文庫)


事件の解明はやっと入口に立ったばかりです。ただ、事件の解明とは別に、ここでも、「飛鳥会事件」であきらかになったような、部落解放運動の腐敗や堕落が垣間見えるのでした。

部落解放同盟と対立する日本共産党は、同和対策事業特別措置法を「毒まんじゅう」と言っていました。当時は「何と反動的な見方なんだ」と思っていましたが、今にして思えば、当たらずといえども遠からじという気がしないでもありません。


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