高橋源一郎は、人質事件のさなか、イスラム過激派による一連の事件に関して、朝日新聞の「論壇時評」でつぎのように書いていました。
朝日新聞デジタル
(論壇時評)熱狂の陰の孤独 「表現の自由」を叫ぶ前に
私は、何度もこの文章を読み返しましたが、読解力がないのか、なにが言いたいのかいまひとつよくわかりませんでした。半分くらいはわかりますが、半分はわかりません。
人質事件が公になると、この国は「自粛」の空気におおわれました。それは、具体的に言えば、「懸命に努力をしている」「全力で取り組んでいる」政府への批判を封印するということです。「自粛」は、マスコミはもちろん、野党も同様でした。共産党までもがその「自粛」の隊列に加わったのでした。
人質事件が最悪の結果に終わったとき、Yahoo!トピックスのトップに掲載されたのは、「首相が目に涙 後藤さん殺害か」というタイトルの記事でした。そして、今、Yahoo!トピックスのトップに掲載されているのは、「後藤さんに渡航中止要請3回」というタイトルの記事です。
首相が目に涙 後藤さん殺害か
後藤さんに渡航中止要請3回
この二つの記事、というよりYahoo!トピックスが独自に付けたこの二つのタイトルが、未だにこの国をおおっている「自粛」の空気をよく表しているように思います。
常岡浩介氏もTwitterでつぎのように書いていました。

常岡浩介容疑者
https://twitter.com/shamilsh
菅官房長官によれば、身代金は用意してなくて、犯人と交渉する気は「まったくなかった」そうです。
livedoor'NEWS
菅官房長官「身代金用意せず」、イスラム国との交渉を否定
菅官房長官の発言は、最初から人質を見捨てるつもりだったと言っているようなものです。これでは、安倍首相が中東訪問の際、テロリストを挑発するような発言をつづけたのは「不用意な発言」などではなく、やはり意図的な挑発ではなかったかと思ってしまいます。実際に、イスラム国は安倍首相の演説に反発して、中東訪問のさなか、人質の動画を投稿したのでした。
でも、このような安倍首相の発言や政府の対応を表立って批判することはタブーでした。民主党の細野政調会長が、「事件が収束したら政府の対応を検証する必要がある」と言ってましたが、「自粛」の隊列に加わった民主党や共産党など野党に「検証」などできるわけがないのです。
そして、今、二人の死を奇貨として、集団的自衛権行使=自衛隊派兵の進軍ラッパが高らかに鳴らされています。もちろん、この安倍首相の”居直り”に疑問を呈する声がマスコミに出ることはありません。
自民党のメディア戦略を担当する世耕弘成官房副長官がBSフジの番組のなかでさりげなく呟いた、「外務省が後藤さんに3回、シリアへの渡航をやめるよう要請していた」という発言。すると、それがまたたく間にトップニュースになって拡散するのでした。世耕官房副長官は、政府は「自己責任論」には立たないと言いながら、実際はそうやって「自己責任」をほのめかしているのです。
こうして政府の対応を免罪する「自粛」の空気は、翼賛の空気へ転化し進軍ラッパに接続されていくのでした。
高橋源一郎が言うように、「沈黙」は金なのか。むしろ「沈黙」は、「自粛」の空気に与することではないのか。今必要なのは、軋轢や誤爆を恐れずにものを言うことでしょう。人質事件であれ、フランスの襲撃事件であれ、「自粛」に抗するにはそれしかないのです。石を投げられてもものを言うこと。王様は裸だと言いつづけること。それがものを書く人間の責務ではないか、と言いたいです。
朝日新聞デジタル
(論壇時評)熱狂の陰の孤独 「表現の自由」を叫ぶ前に
私は、何度もこの文章を読み返しましたが、読解力がないのか、なにが言いたいのかいまひとつよくわかりませんでした。半分くらいはわかりますが、半分はわかりません。
人質事件が公になると、この国は「自粛」の空気におおわれました。それは、具体的に言えば、「懸命に努力をしている」「全力で取り組んでいる」政府への批判を封印するということです。「自粛」は、マスコミはもちろん、野党も同様でした。共産党までもがその「自粛」の隊列に加わったのでした。
人質事件が最悪の結果に終わったとき、Yahoo!トピックスのトップに掲載されたのは、「首相が目に涙 後藤さん殺害か」というタイトルの記事でした。そして、今、Yahoo!トピックスのトップに掲載されているのは、「後藤さんに渡航中止要請3回」というタイトルの記事です。
首相が目に涙 後藤さん殺害か
後藤さんに渡航中止要請3回
この二つの記事、というよりYahoo!トピックスが独自に付けたこの二つのタイトルが、未だにこの国をおおっている「自粛」の空気をよく表しているように思います。
常岡浩介氏もTwitterでつぎのように書いていました。

常岡浩介容疑者
https://twitter.com/shamilsh
菅官房長官によれば、身代金は用意してなくて、犯人と交渉する気は「まったくなかった」そうです。
livedoor'NEWS
菅官房長官「身代金用意せず」、イスラム国との交渉を否定
菅官房長官の発言は、最初から人質を見捨てるつもりだったと言っているようなものです。これでは、安倍首相が中東訪問の際、テロリストを挑発するような発言をつづけたのは「不用意な発言」などではなく、やはり意図的な挑発ではなかったかと思ってしまいます。実際に、イスラム国は安倍首相の演説に反発して、中東訪問のさなか、人質の動画を投稿したのでした。
でも、このような安倍首相の発言や政府の対応を表立って批判することはタブーでした。民主党の細野政調会長が、「事件が収束したら政府の対応を検証する必要がある」と言ってましたが、「自粛」の隊列に加わった民主党や共産党など野党に「検証」などできるわけがないのです。
そして、今、二人の死を奇貨として、集団的自衛権行使=自衛隊派兵の進軍ラッパが高らかに鳴らされています。もちろん、この安倍首相の”居直り”に疑問を呈する声がマスコミに出ることはありません。
自民党のメディア戦略を担当する世耕弘成官房副長官がBSフジの番組のなかでさりげなく呟いた、「外務省が後藤さんに3回、シリアへの渡航をやめるよう要請していた」という発言。すると、それがまたたく間にトップニュースになって拡散するのでした。世耕官房副長官は、政府は「自己責任論」には立たないと言いながら、実際はそうやって「自己責任」をほのめかしているのです。
こうして政府の対応を免罪する「自粛」の空気は、翼賛の空気へ転化し進軍ラッパに接続されていくのでした。
高橋源一郎が言うように、「沈黙」は金なのか。むしろ「沈黙」は、「自粛」の空気に与することではないのか。今必要なのは、軋轢や誤爆を恐れずにものを言うことでしょう。人質事件であれ、フランスの襲撃事件であれ、「自粛」に抗するにはそれしかないのです。石を投げられてもものを言うこと。王様は裸だと言いつづけること。それがものを書く人間の責務ではないか、と言いたいです。