たまたま本屋で、このブログでもおなじみのブレイディみかこと栗原康と大塚英志が揃って寄稿している『atプラス27』(太田出版)を見つけ、小躍りして買って帰ったら、今度はYahoo!トピックスに、ブレイディみかこ氏のブログの記事が掲載されていたので、二度びっくりしました。
太田出版
atプラス27(リニューアル特大号)
Yahoo!ニュース・個人
左派に熱狂する欧米のジェネレーションY:日本の若者に飛び火しない理由(ブレイディみかこ)
このブログでも何度も書いていますが、ヨーロッパでは、SNP(スコットランド独立党)やシリザ(ギリシャ)やポデモス(スペイン)など急進左派が躍進しています。また、イギリス労働党でも、昨年の党首選挙で、事前の予想を覆して最左派のジェレミー・コービンが当選しました。これらの急進左派は、既成の左派とは一線を画しており、反緊縮・反格差の15M運動などのような”直接行動”で台頭した、日本流に言えば新左翼(ニューレフト)とも言うべき存在です。もっとも、安保法制に反対して大学の正門を封鎖すれば、一般学生から総スカンを食い、「大学の自治」などどこ吹く風で、警察に告発されて逮捕される日本のそれとは、雲泥の差があると言えるでしょう。
何度もくり返しますが、ブレイディみかこ氏が言う「右か左ではなく上か下か」という視点で見れば、日本の左派リベラルは、間違っても「下」の運動ではないのです。グローバル資本主義の矛盾が露呈し、格差や貧困の問題が深刻化するにつれ、連合などに代表される労働運動は、ますます地べたの人々の現実から遠ざかるばかりです。それどころか、個々の現場では、正社員対非正規雇用(本工対下請工・臨時工)という二重三重の差別構造のなかで、むしろ地べたの人間と利害が対立するような存在にさえなっているのです。
25~29歳の独身者たちの可処分所得が他の世代のそれに比べて著しく伸びが低く(それどころかマイナスにさえなっており)、若者の生活水準がどんどん低下しているというヨーロッパやアメリカの現実は、日本とて例外ではないはずです。しかし、日本の若者たちは、ヨーロッパの若者たちのように、急進左派に熱狂することがなく、むしろ逆にヘイトなナショナリズムに取り込まれ「中国人や朝鮮人は日本から出ていけ!」などと叫んでいる有り様です。本来ならグローバル資本主義に拝跪するアベノミクスに対して、ラジカルな批判者になってもおかしくないのに、「愛国」を売りにするような政治家や安倍応援団のYahoo!ニュースなどに煽られて、嫌中憎韓のヘイトなナショナリズムに動員されているのです。それは、かつてドイツの地べたの若者たちがナチスに熱狂した光景とよく似ています。
どうしてなのか。地べたの若者がバカなのか。もちろんそれだけではないでしょう。言うまでもなく、地べたの若者たちを熱狂させるような急進左派が日本には存在しないからです。
今朝も地下鉄の入口で、いつものように共産党の女性が”辻立ち”していましたが、それはまるでひとりでお経を読んでいるかのような、やる気も迫力もないお定まりの演説でした。あれでは地べたの若者の胸奥には届かないでしょう。民進党やらも然りです。あんな政党のどこに若者を熱狂させるものがあると言えるでしょうか。日本には、公務員と大企業の正社員の既得権益を代弁するような政党があるだけで、地べたの人々の切実な問題をくみ上げるような「下」の政党がないのです。
ブレイディみかこ氏の記事で紹介されていた、日本で格差や貧困の問題に取り組んでいるエキタスの女性メンバーのつぎのようなことばが、なにより日本の現状を表しているように思います。
「日本は豊かですばらしい」と自演乙している間に、先進国で最悪と言われる格差社会になってしまったこの国で待ち望まれるのは、なによりグローバル資本主義の犠牲になって貧困への坂道を転がり落ちている地べたの人々の声をくみ上げ、当事者意識に目覚めさせるような運動です。でも、それは「右か左ではない上か下か」の運動なのです。
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Yahoo!ニュース・個人
左派に熱狂する欧米のジェネレーションY:日本の若者に飛び火しない理由(ブレイディみかこ)
このブログでも何度も書いていますが、ヨーロッパでは、SNP(スコットランド独立党)やシリザ(ギリシャ)やポデモス(スペイン)など急進左派が躍進しています。また、イギリス労働党でも、昨年の党首選挙で、事前の予想を覆して最左派のジェレミー・コービンが当選しました。これらの急進左派は、既成の左派とは一線を画しており、反緊縮・反格差の15M運動などのような”直接行動”で台頭した、日本流に言えば新左翼(ニューレフト)とも言うべき存在です。もっとも、安保法制に反対して大学の正門を封鎖すれば、一般学生から総スカンを食い、「大学の自治」などどこ吹く風で、警察に告発されて逮捕される日本のそれとは、雲泥の差があると言えるでしょう。
何度もくり返しますが、ブレイディみかこ氏が言う「右か左ではなく上か下か」という視点で見れば、日本の左派リベラルは、間違っても「下」の運動ではないのです。グローバル資本主義の矛盾が露呈し、格差や貧困の問題が深刻化するにつれ、連合などに代表される労働運動は、ますます地べたの人々の現実から遠ざかるばかりです。それどころか、個々の現場では、正社員対非正規雇用(本工対下請工・臨時工)という二重三重の差別構造のなかで、むしろ地べたの人間と利害が対立するような存在にさえなっているのです。
25~29歳の独身者たちの可処分所得が他の世代のそれに比べて著しく伸びが低く(それどころかマイナスにさえなっており)、若者の生活水準がどんどん低下しているというヨーロッパやアメリカの現実は、日本とて例外ではないはずです。しかし、日本の若者たちは、ヨーロッパの若者たちのように、急進左派に熱狂することがなく、むしろ逆にヘイトなナショナリズムに取り込まれ「中国人や朝鮮人は日本から出ていけ!」などと叫んでいる有り様です。本来ならグローバル資本主義に拝跪するアベノミクスに対して、ラジカルな批判者になってもおかしくないのに、「愛国」を売りにするような政治家や安倍応援団のYahoo!ニュースなどに煽られて、嫌中憎韓のヘイトなナショナリズムに動員されているのです。それは、かつてドイツの地べたの若者たちがナチスに熱狂した光景とよく似ています。
どうしてなのか。地べたの若者がバカなのか。もちろんそれだけではないでしょう。言うまでもなく、地べたの若者たちを熱狂させるような急進左派が日本には存在しないからです。
今朝も地下鉄の入口で、いつものように共産党の女性が”辻立ち”していましたが、それはまるでひとりでお経を読んでいるかのような、やる気も迫力もないお定まりの演説でした。あれでは地べたの若者の胸奥には届かないでしょう。民進党やらも然りです。あんな政党のどこに若者を熱狂させるものがあると言えるでしょうか。日本には、公務員と大企業の正社員の既得権益を代弁するような政党があるだけで、地べたの人々の切実な問題をくみ上げるような「下」の政党がないのです。
ブレイディみかこ氏の記事で紹介されていた、日本で格差や貧困の問題に取り組んでいるエキタスの女性メンバーのつぎのようなことばが、なにより日本の現状を表しているように思います。
「『考えたくない』んだと思うんです。考えたら、先を考えたらもう終わってしまうんです。本当は中流じゃなくて貧困なんですけど、貧困っていう現実に向かい合うと終わっちゃうから・・・・。(略)労働問題とかを自分のこととして考えることをすごく嫌がるんです。だから、友達と話をするときに、そういう話題を出せない」
「日本は豊かですばらしい」と自演乙している間に、先進国で最悪と言われる格差社会になってしまったこの国で待ち望まれるのは、なによりグローバル資本主義の犠牲になって貧困への坂道を転がり落ちている地べたの人々の声をくみ上げ、当事者意識に目覚めさせるような運動です。でも、それは「右か左ではない上か下か」の運動なのです。
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