熊本の地震から一週間がすぎました。当初、専門家たちは、15日の地震は大きな被害が出た益城町を走る活断層に限定した地震であるかのように言っていたのですが、一週間経ったら、活断層はつづいているとか、日本列島には二千の活断層があるのでいつどこで地震がおきてもおかしくないとか、さらに言うに事欠いて三つの地震が同時発生しているなどと、まるで野球の解説者のように、あと付けで発言を修正しています。これでは、「前震」と言われる最初の地震のあと、専門家の解説を信じて家に戻って犠牲になった人たちは浮かばれないでしょう。

昨夜も震度5強の余震がありましたが、震度5強を記録したのは、阿蘇の外輪山にある熊本県の産山村と産山村に隣接する大分県側の私の田舎でした。

田舎の友人に電話すると、毎日ヘルメットを枕元に置いて寝ているそうです。そして、「緊急地震速報」が発令されると、ヘルメットをかぶって押し入れに入っていると言ってました。同じヘルメットでも、テレビカメラの前に立つ記者やアナウンサーがこれみよがしにかぶっているヘルメットとは現実味が違うのです。友人の家は旧家で、家も古いのですが、壁の土がポロポロはがれていると言ってました。

一方、安倍首相は、17日午前、「被災者1人ひとりに食料や水が届くようにする。安心してください」と呼びかけたのだそうです。

 安倍首相は「被災者の皆様お1人おひとりに、必要な食料・水が届くようにしますので、どうかご安心いただきたい」と述べた。
 安倍首相は、食品・小売業者の協力を得て、「午前9時までに、15万食以上到着した。きょう中に、70万食を届ける」と強調した。
 そして、現在開かれている非常災害対策本部で、トイレや医薬品など、被災者のニーズに迅速に対応するための被災者生活支援チームを立ち上げるよう指示した。

FNNニュース
熊本大地震 安倍首相「1人ひとりに食料や水が届くようにする」


ところが、現地では食料が「底をついた」と悲鳴があがっているのです。

西日本新聞
「食料、底をついた」 足りぬ物資、避難者悲鳴 ガソリン不足も深刻化

別の報道では、県庁などに支援物資は山積みになっているけど、人手不足で仕分けや配布する人間がいないので、避難所に支援物資が届いてないのだそうです。

昨日、床屋に行ったら、そのニュースが話題に上り、「一体、どうなっているんだ?」「東日本大震災の教訓は生かされてないのか?」という怒りの声が多く聞かれました。なかには「日本は腐っている」と言う人もいました。

自衛隊が避難所に支援物資を運んだものの、誰が配布するのか指示がないために、そのまま持ち帰ったという話があります。ところが、そのあと同じ避難所に、政府から依頼された米軍のオスプレイが麗々しく支援物資を運んできたそうです。どうして米軍で、どうしてオスプレイなのか。言うまでもなく、そこにはオスプレイの実績づくりを目論む安倍政権の政治的な意図がはたらいているからでしょう。

支援物資がスムーズに配布されないのは、ひとえに役所(公務員)の問題にほかならないのです。つまり、当事者能力が欠如した前例主義や杓子定規な厳格主義や責任回避の事なかれ主義に縛られたお役所仕事だからです。それは、阪神大震災や東日本大地震の際も散々言われてきたことです。しかし、また同じ愚をくり返しているのです。

しかし、政治家たちは、そういった問題には見て見ぬふりをして、国民の身にふりかかった大災害をみずからの政治的パフォーマンスに利用することしか考えないのです。賞味期限切れで食品が大量に破棄され、それが社会問題になるような国で、地震の被害に遭った何万人もの人々が食べる物に事欠き、空腹を訴えているのです。一体、どこが「愛国」なのか。安倍らがやっていることは、むしろ亡国の極みではないのか、と言いたくなります。夢野久作が今に生きていたら、やはり、そう言うのではないでしょうか。まったく「腐っている」のです。

上記の西日本新聞の記事は、避難所の窮状をつぎのように伝えていました。

(略)「米・水・保存食 HELP」。熊本県御船町の老人総合福祉施設「グリーンヒルみふね」は、駐車場に白いラッカースプレーで大きな字を書いた。

 入所者や地域住民約200人がいるが、町から届いたのはペットボトルの水9箱だけ。吉本洋施設長(44)は「あと3日で食料が枯渇しそうだ」と語った。

 だが、町にも余裕はない。藤木正幸町長は16日夕、フェイスブック(FB)で「町には緊急物資が何一つ入ってきません。町民は水分補給もできずに飢えと戦っています」と訴えた。その後に届いた支援物資の食料も17日昼で底をついた。炊き出しのおにぎりは1人1日1~2個しか配れない状態という。

 FB上では、具体的な避難所名を書いて「指定避難所ではないため、物資が一切届きません」「中学校は水も止まり、食料もありません。救援物資を」といった書き込みが相次ぐ。

 各地の避難所には数百人が身を寄せ、配給のカップ麺やおにぎりを求める長蛇の列で2~3時間待ちのケースも珍しくない。

 同県西原村の西原中で1歳3カ月の息子と避難する園田唯代さん(25)は「おにぎり1個とアイス1個が配給されたが、子どもがおなかをすかせている」。別の女性(48)は「並んでも全員に行き渡らないまま、配給が終わってしまう。朝からパン2個しか食べていない」。この避難所は断水しており、トイレは地面を掘って、ブルーシートで囲んだだけという。
(略)
 同県南阿蘇村の特別養護老人ホーム「水生苑(すいせいえん)」では電気と水が止まり、情報源はラジオが頼り。食料は3日分備蓄していたが底をつく恐れがあり、16日から1日2食に減らした。関係者は「役場に支援をお願いしたが、避難者が多すぎて『自分たちでどうにかしてください』と言われた」。

 近くのスーパーやコンビニは閉まっており、往復100キロの店まで買い出しに行く必要がある。だが、発電機の燃料や、買い出しに使う車のガソリンは入手困難。停電で水のくみ上げもできず、入所者は次第に追い詰められている。

2016.04.19 Tue l 震災・原発事故 l top ▲