週刊金曜日5月27日号


『週刊金曜日』の5/27号に、今国会で刑事訴訟法及び「盗聴法」の改正案に民進党と生活の党が賛成したことについて、つぎのような記事が出ていました。

 これまで主要野党はこぞって反対し、委員会最終日にも(略)法案の不備や危険性を訴えたにもかかわらず、民進党と生活の党は賛成し、あっさりと可決された。
 当日の質疑を含め、採決にいたるまでの言動は、結果として茶番劇だったと言われてもしかたないだろう。それは、同じ委員会で審議されてきたヘイト・スピーチ規制法案を通す見返りに、本法案に賛成するという取引があったからではないか。法案の危険性に警鐘を鳴らし続けてきた関東学院大学の足立昌勝名誉教授(刑法)はいう。
「基本的人権に強く関連する法案がこんな少ない時間(参院で二十数時間)で採決されたことに強く抗議したい。それに合意した民進党の有田(芳生)理事が、ヘイト・スピーチ規制法案さえ通過すれば良しとしていたとすれば、基本的に誤りである。私たちは、そんな国会議員はもういらない。今度の改選でぜひ落選してもらいたい」

(『週刊金曜日5/27』・「民進・生活が与党案に賛成」林克明・シャーナリスト)


この記事に対して、民進党の有田芳生議員とその周辺が猛反発、『週刊金曜日』に裏切られた、購読を停止するなどとTwitterで息巻いていました。有田議員らは、足立教授よりむしろ記事を載せた『週刊金曜日』に反発しているようでした。それに対して、『週刊金曜日』は、編集者が議員会館を訪れ、有田議員に反論を掲載することを申し出たそうです。

しかし、有田議員が今回の改正に賛成したのも、会期末間際になって、民進党や生活の党がそれまでの態度を一変して賛成にまわったのも、まぎれもない事実なのです。その唐突な展開に、ヘイト・スピーチ規制法の成立とバーターだったのではないかと穿った(?)見方をされたのはわからないでもないのです。

問われるべきは、国民の基本的な人権を侵害する警察権限の拡大に賛成したという事実でしょう。それは、バーター云々よりももっと重大な問題を含んでいると言えます。刑法の専門家である足立教授が怒り心頭なのもその点なのでしょう。

民進党は信用できない。何度も言いますが、今や自民党を勝たせるためだけに存在していると言っていい民進党ですが、今回の豹変劇を見て、私は、あらためてそう思いました。

今夜、安倍首相が来年4月に予定されていた消費税の引き上げを2年半延期することを表明しましたが、これによって「社会保障の充実」、なかでも高齢者の無年金や低年金への対策も、先送りされることが決定的になりました。無年金や低年金は高齢者の貧困問題に直結しており、それこそ待ったなしなのです。安倍首相が、選挙のために再延期を決めたのは、政治家として無責任の極みと言うしかありません。また、今は上がらなければそれで良しとする国民も無責任そのものです。

もっとも、この社会保障と税の一体改革を最初に打ち出したのは、民主党の野田政権なのです。それで、公約に反した消費税の引き上げに突き進み自滅したのでした。民主党政権が、「社会保障の充実」を増税の方便にして、「社会保障の充実」を今のように宙ぶらりんな状態にしたのです。安倍がこれほど無責任になれるのも、三党合意したとは言え、そもそも自分たちが発案したものではないからでしょう。

民進党は、消費税引き上げの再延長はアベノミクスの失敗で、それをみずから認めたようなものだと批判しています。でも、一方で、民進党も引き上げの延長を主張しているのです。民進党の批判は、誰が見ても天に唾するものでしょう。

有権者にとって、民進党というのは、もはや「あんな政党に投票したらバカを見る」という”反面教師”でしかないのです。それほどまでに民主党政権の失敗は致命的で、トラウマになっているのです。民進党が存在する限り、今のような与党への消極的な支持となし崩しの一強体制はこれからもつづくでしょう。こんな信用できない政党はもういらないのです。

追記:
上の記事を書いた林克明氏らによれば、『週刊金曜日』の編集部は、有田議員に対して次号でお詫びを出すことになったそうです。これもおかしな話です。誌上で議論をおこなうのではなく、文句を言われたからお詫びを出すというのは、言論機関として問題ありと言えるでしょう。雑誌の発行人として執筆者を守る姿勢さえないのです。これでは国会議員の圧力に屈したと言われても仕方ないでしょう。


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