毎年書いていることですが、年の瀬はどうしてこんなに淋しい気持になるんだろうと思います。年を取ると、よけいその気持が強くなります。しかも、そこには少なからず侘しさも伴っているのです。

クリスマスの時期になると、最近はどこもイルミネーションばやりですが、カップルや家族連れなどがさも楽し気に嬌声をあげている前を通るのは、苦痛で仕方ありません。そのため、気が付いたら、いつの間にかイルミネーションを避け、遠回りして歩くようになっている自分がいました。

イブの日、野暮用で渋谷へ行ったら、革命的非モテ同盟という集団(と言っても十数人)のデモに遭遇しました。

革命的非モテ同盟
https://kakuhidou.fumizuki.net/

「クリスマス粉砕!」「恋愛資本主義反対!」「街中でイチャつくのはテロ行為。テロとの戦いを貫徹するぞ!」「セックスの回数で人間を差別するな!」「セックスなんかいくらやったって無駄だ!」(サイトより)などというスローガンを掲げてデモをしていましたが、立ち止まってデモが通り過ぎるのを見遣りながら、心のなかで拍手喝さいを送っている自分がいました。

でも、考えてみたら、「非モテ」も若い人の話なのです。年を取るのは、「非モテ」以前の話です。

私たちが若い頃はちょうどバブルの真っ只中でしたので、クリスマスは恋人とディナーを楽しみ、都心のホテルで一夜をすごすのが定番でした。

当時、私は六本木にある会社に勤めていたのですが、イブの夜、仕事を終え駅へ向かう途中、あるレストランの前を通りかかった際に目にした光景を今でもよく覚えています。その店は半地下になっていて、通りから店内が見渡せるのですが、見ると、壁際の席に女性が、反対の通路側に男性がお行儀よく一列に並んで座っているのでした。まるでおやつの前に勢ぞろいさせられた幼稚園児のようでした。しかし、当時の私もまた同じようなことをしていたのです。

赤坂プリンスホテルは「赤プリ」なんて呼ばれ、イブの夜をすごすカップルにとってはあこがれのホテルでしたが、煌々と灯る客室の明かりを見上げながら、あのそれぞれの部屋でみんないっせいにセックスをしているのかと思うと、なんだかホテルの灯りも妖しく揺れて見えたものです。

でも、今は昔、私は背を丸め、白髪交じりの頭をうつむけて、これからイブの夜を楽しむカップルや家族連れとは逆方向に家路を急いでいるのでした。

クリスマスが終わると、学校も冬休みになり、電車もいっきに空いてきます。それにつれ、キャリーバックを持った乗客の姿も目に付くようになりました。

一方で(これも毎年書いていることですが)、人身事故で電車が遅れることも多くなります。

おせっかいなテレビが、年末年始を一人ですごしている人間のアパートをアポなし訪問して、どうして一人ですごしているのか事情を訊く番組がありますが(私だったら水をかけて追い払うけど)、私もいつの間にか、そんな「一人正月」の人間になっていたのです。

でも、今、イルミネーションの前で嬌声をあげている若者たちも、そのうちイルミネーションを避けて歩くようになるでしょう。そうやって時はめぐって行くのです。

年は取りたくないものだと思います。しかし、容赦なく年は取って行くのです。それもあとで考えれば、あっという間なのでした。
2017.12.26 Tue l 日常・その他 l top ▲