安倍政権は、とうとう韓国に対して輸出管理の優遇対象国(ホワイト国)から外す決定を下し、日韓の関係は「戦後最悪」と言われるまで悪化しています。
日本政府は、ホワイト国から外す理由に「安全保障上の問題」をあげていますが、それはあくまで表向きの理由で、本音は元徴用工裁判に対する報復であるのは誰の目にもあきらかです。ニューヨークタイムズが言うように、安倍首相はトランプ大統領のやり方を真似ているのでしょう。
元徴用工について、日本のメディアは「労務動員」なる言い方をしていますが、それが「強制連行」という禁句を使わないための言い換えであるのは言うまでもありません。要するに、元徴用工の問題は、従軍慰安婦の問題と同様、日本帝国主義による侵略戦争の“負の遺産”にほかならないのです。それがこの問題のキモです。
日本政府は1965年の日韓請求権協定で解決したとの立場をとっていますが、それはあくまで国家間の問題であって、個人の請求権まで消滅したのではないと指摘する法曹関係者もいます。それどころか、下記の朝日新聞の記事によれば、日本政府も2000年以前は個人の請求権が存在するという立場をとっていたそうです。
ところが、2000年代に入ると姿勢が変化しはじめたのだそうです。おそらく、排外主義的なナショナリズムの高まりと第一次安倍政権の誕生などが関係しているのでしょう。そして、個人の請求権を認める韓国の裁判所の判決に対して、文在寅政権が適切な処置をとらなかったとして、先月、半導体材料の韓国向け輸出管理の厳格化を発表し、さらに今回のホワイト国からの除外決定へとエスカレートしていったのでした。
でも、韓国も請求権協定が結ばれた朴正煕政権の頃と違って三権分立の民主国家です。文在寅政権が適切な処置をとらなかったと言いますが、司法の決定に易々と政治が介入できるものではないでしょう。安倍政権の主張は、そんな民主主義のイロハを無視した無理難題と言えるのです。
メディアもまた、まるで独裁政権下の国営メディアのように、安倍政権の無理難題に同調して、ヘイトクライムまがいの過熱報道で国民を煽っています。そのため、過半数を優に超える国民が政府の対応を支持するという世論調査の結果も出ています。
また、「韓国を懲らしめよ」という声が多数のためか、野党の反応も、共産党を除いては極めて鈍く、おためごかしに批判めいたことを述べるにとどまっています。こういった光景も、先の戦争の前夜とよく似ています。
一方、韓国国内では、すぐ頭に血が上る国民性ゆえの過激なもの言いとは裏腹に、ここに至ってもまだ「日帝」にすがるような姿勢がいろんなところで見て取れるのでした。
今月の初め、解決策を探るために来日した韓国の国会議員の代表団が、自民党の二階俊博幹事長との面会がドタキャンされたことに対して、「我々は物乞い外交をしに来たのではない」と激怒したというニュースがありましたが、しかし、彼らの来日はどう見ても「物乞い」のようにしか見えませんでした。少なくとも多くの日本の国民の目にはそう映ったでしょう。
そもそも今まで自国経済の生命線である半導体の材料の供給を日本に依存していたことが大甘で、今になって国内で賄えるよう体制を整えるというのは滑稽ですらあります。小国の哀しさなのか、同じナショナリズムでも中国のそれとは雲泥の差です。御都合主義的なナショナリズムの底の浅さを日本から見事に突かれたという感じです。
安倍政権の「韓国を懲らしめよ」の姿勢は、ネトウヨたちを狂喜(狂気?)乱舞させ、彼らの妨害工作によってあいちトリエンナーレの 「表現の不自由展・その後」が中止になる事態まで招いたのですが(同時に、津田大介氏の腰の弱さに唖然としましたが)、このままエスカレートすれば日韓の安保協力体制にも亀裂が生じる可能性さえあるでしょう。
文在寅大統領は、日本政府の決定に対して、「日本は一線を越えた」と言ったそうですが、もしそれが本音なら(ホントに日本にすがる気持がないのなら)、日本のネトウヨが主張するように、国交断絶すればいいのだと思います。そうなれば、北朝鮮による拉致被害の解決も永遠に遠のくでしょうし、アメリカなき東アジアの新秩序に向けた、中国やロシアや北朝鮮からの脅威も益々高まるでしょう。「日本を懲らしめる」いい機会になるのは間違いないのです。そして、やがて日韓はナショナリズムの暴走のそのツケを払わされることになるでしょう。
少なくとも私は、今の政治と世論がタッグを組んだ愚劣な動員の光景を見るにつけ、左派リベラルのような「仲良くしましょう」式の(ほとんど意味のない)常套句を口にする気にはとてもなれないのです。
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『帝国の慰安婦』と日韓合意
日本政府は、ホワイト国から外す理由に「安全保障上の問題」をあげていますが、それはあくまで表向きの理由で、本音は元徴用工裁判に対する報復であるのは誰の目にもあきらかです。ニューヨークタイムズが言うように、安倍首相はトランプ大統領のやり方を真似ているのでしょう。
元徴用工について、日本のメディアは「労務動員」なる言い方をしていますが、それが「強制連行」という禁句を使わないための言い換えであるのは言うまでもありません。要するに、元徴用工の問題は、従軍慰安婦の問題と同様、日本帝国主義による侵略戦争の“負の遺産”にほかならないのです。それがこの問題のキモです。
日本政府は1965年の日韓請求権協定で解決したとの立場をとっていますが、それはあくまで国家間の問題であって、個人の請求権まで消滅したのではないと指摘する法曹関係者もいます。それどころか、下記の朝日新聞の記事によれば、日本政府も2000年以前は個人の請求権が存在するという立場をとっていたそうです。
請求権を互いに放棄する条項は1951年のサンフランシスコ講和条約(サ条約)にもある。後に原爆被害者が「条約により米国に賠償請求できなくなった」として日本政府に補償を求めて提訴すると、政府は「自国民の損害について、相手国の責任を追及する『外交保護権』を放棄したもの。個人が直接賠償を求める権利に影響はなく、国に補償の義務はない」と主張した。
90年代には、韓国人の戦争被害者が日本で提訴し始めたが、政府は従来と矛盾する解釈は取れず、「個人請求権は消滅していない」との国会答弁を続け、訴訟でも「請求権協定で解決済み」とは抗弁しなかった。
朝日新聞デジタル
元徴用工の「個人請求権」なぜ残る 弁護士ら声明で指摘
ところが、2000年代に入ると姿勢が変化しはじめたのだそうです。おそらく、排外主義的なナショナリズムの高まりと第一次安倍政権の誕生などが関係しているのでしょう。そして、個人の請求権を認める韓国の裁判所の判決に対して、文在寅政権が適切な処置をとらなかったとして、先月、半導体材料の韓国向け輸出管理の厳格化を発表し、さらに今回のホワイト国からの除外決定へとエスカレートしていったのでした。
でも、韓国も請求権協定が結ばれた朴正煕政権の頃と違って三権分立の民主国家です。文在寅政権が適切な処置をとらなかったと言いますが、司法の決定に易々と政治が介入できるものではないでしょう。安倍政権の主張は、そんな民主主義のイロハを無視した無理難題と言えるのです。
メディアもまた、まるで独裁政権下の国営メディアのように、安倍政権の無理難題に同調して、ヘイトクライムまがいの過熱報道で国民を煽っています。そのため、過半数を優に超える国民が政府の対応を支持するという世論調査の結果も出ています。
また、「韓国を懲らしめよ」という声が多数のためか、野党の反応も、共産党を除いては極めて鈍く、おためごかしに批判めいたことを述べるにとどまっています。こういった光景も、先の戦争の前夜とよく似ています。
一方、韓国国内では、すぐ頭に血が上る国民性ゆえの過激なもの言いとは裏腹に、ここに至ってもまだ「日帝」にすがるような姿勢がいろんなところで見て取れるのでした。
今月の初め、解決策を探るために来日した韓国の国会議員の代表団が、自民党の二階俊博幹事長との面会がドタキャンされたことに対して、「我々は物乞い外交をしに来たのではない」と激怒したというニュースがありましたが、しかし、彼らの来日はどう見ても「物乞い」のようにしか見えませんでした。少なくとも多くの日本の国民の目にはそう映ったでしょう。
そもそも今まで自国経済の生命線である半導体の材料の供給を日本に依存していたことが大甘で、今になって国内で賄えるよう体制を整えるというのは滑稽ですらあります。小国の哀しさなのか、同じナショナリズムでも中国のそれとは雲泥の差です。御都合主義的なナショナリズムの底の浅さを日本から見事に突かれたという感じです。
安倍政権の「韓国を懲らしめよ」の姿勢は、ネトウヨたちを狂喜(狂気?)乱舞させ、彼らの妨害工作によってあいちトリエンナーレの 「表現の不自由展・その後」が中止になる事態まで招いたのですが(同時に、津田大介氏の腰の弱さに唖然としましたが)、このままエスカレートすれば日韓の安保協力体制にも亀裂が生じる可能性さえあるでしょう。
文在寅大統領は、日本政府の決定に対して、「日本は一線を越えた」と言ったそうですが、もしそれが本音なら(ホントに日本にすがる気持がないのなら)、日本のネトウヨが主張するように、国交断絶すればいいのだと思います。そうなれば、北朝鮮による拉致被害の解決も永遠に遠のくでしょうし、アメリカなき東アジアの新秩序に向けた、中国やロシアや北朝鮮からの脅威も益々高まるでしょう。「日本を懲らしめる」いい機会になるのは間違いないのです。そして、やがて日韓はナショナリズムの暴走のそのツケを払わされることになるでしょう。
少なくとも私は、今の政治と世論がタッグを組んだ愚劣な動員の光景を見るにつけ、左派リベラルのような「仲良くしましょう」式の(ほとんど意味のない)常套句を口にする気にはとてもなれないのです。
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