やっと雨が止んだので、おととい、山に行きました。雨続きで、結局10日以上間が空いてしまいました。

前日は横浜駅の構内が浸水するほどの大雨で、しかも明け方まで雨が残っていましたが、天気予報は「曇り」でしたので、天気予報を信じて、仕事明けに池袋から西武池袋線に乗り、飯能へ行きました。飯能からは西武秩父線に乗り換えて、東吾野で降りました。

いつものことですが、西武線は連絡が悪く、飯能駅で秩父線に乗るまで40分以上待たされました。仕方ないと言えば仕方ないのですが、朝の時間帯は上り(池袋方面)が優先なのです。

よく言われることですが、電車では行く山も限られてしまいます。私も若い頃は、深夜に車で行き、夜明けを待って山に入っていました。そうしないと「午前中に山頂に到着する」という日帰り登山の原則を守ることができないからです。原則に従えば、埼玉の場合はどうしても秩父の手前の山が中心になってしまいます。丹沢にも行きたいのですが、丹沢は駅からさらにバスで登山口まで行くケースが多いので、時間の都合を付けるのが大変なのです。

6時前に池袋から乗車したのですが、東吾野に着いて山に入ったのは8時半近くでした。

今回は、前に利用したコースを逆に登ることにしました。

どんよりとした空模様でしたが、その分気温も低くて、どことなく秋の気配も感じられました。秩父方面に行く電車の乗客は、半袖より長袖の人が多いくらいでした。

今回も山の中では誰にも会いませんでした。途中、二つ小さな山に立ち寄り、3時間弱で最終地点の鎌北湖に着きました。

登山道は雨が降ると川のようになるので、連日の雨で土が洗われて石や岩が剥き出しになっており、何度も足を取られそうになりました。それに、山肌から水が滲み出しているところも多く、滑りやすくて気を使いました。

と、案の定、ロープを掴んで濡れた坂を下っていたとき、アブに襲われ、それを払いのけようとして転倒してしまったのです。身体をひどく打ちましたが、幸いにも腕を擦りむいただけで、打撲や骨折はありませんでした。

左手の肘から手首にかけて一面擦りむいてしまいました。でも、私は買ったばかりのカメラの方が気になり、(「ああっ!カメラが!カメラが!」と心の中で叫びながら)血だらけの手で真っ先にカメラの損傷を確認しました。カメラは擦り傷ひとつなく無事でした。

救急セットを携行していましたので、傷口をアルコール消毒して抗生物質の軟膏を塗り、ガーゼを当てて包帯を巻きました。でも、包帯に血が滲んでいたので傍目には大袈裟に見えたようで、帰りの駅のホームのベンチで、たまたま隣に座った登山姿の初老の男性から「どうしたんですか?」と声をかけられました。

事情を説明すると、「それは災難でしたね」と言われました。「私も何度も転びそうになりましたよ」と言ってました。

男性は、八王子から山梨の山に行こうと思ったら、大月から先が運休になっていたので、予定を変更して八高線で埼玉に来たそうです。埼玉の山に登ったのは30年振りだと言っていました。

ひとりで山に行くのは、たしかに怪我や病気の際のリスクがあります。転落したり、具合が悪くなったりしても、誰も助けてくれないのです。

でも、それでもひとりで山に行くと、「やっぱり、ひとりがいいなあ」といつも思うのでした。イラストレーターの鈴木みきさんが『ひとり登山へ、ようこそ』(平凡社)で書いているように、「ひとりで山にいるときがいちばん山を感じられる」からです。「リーダーの後ろじゃ山は見えない」のです。

前回と比べると、そんなに息が上がるということはありませんでした。いくらか体力が付いたような気がします。段階を上げて、もっと標高差のある山にも登りたいのですが、先に書いたように、電車とバスでは時間的な制約があるため、なかなか思うように計画を立てられないのでした。

徐々にですが、自分のペースも掴めるようになっています。自分のペースを掴むことができると、余裕が持てるようになるので、山を歩くのがより楽しくなります。鈴木みきさん流の言い方をすれば、もっと「山を感じられる」ようになるのです。

私は、年齢的に無理が効かなくなったせいもあるのかもしれませんが、大学や高校の山岳部に象徴される、地図のコースタイムと競争しているような登山には違和感を覚えてなりません。何時間もかけて山頂に到達したのに、すぐにピストンで引き返すような登山って何なんだろうと思います。山に登る意味があるのかとさえ思います。最近は、この手のマラソンやトライアスロンと勘違いしているような(スポーツ)登山が多いのも事実でしょう。何度も言いますが、競争するなら会社や学校でやってくれと言いたいです。

登山ガイドの方の話では、ネットの「山行記録」などに書いているコースタイムは、所詮「オレってすごいだろう?」という自慢話なので、参考にできないものが多いのだそうです。中には如何にも速く歩いたように改ざんしたものさえあるのだとか。そもそも地図に記載されているコースタイムは、登山計画を立てる際に参考にするものであって、速いか遅いかの基準ではないのです。

ある登山愛好家のブログに、山岳ライターの小林千穂さんの講演を聴いた感想が書かれていましたが、小林さんは、講演の中で、山を楽しむためのポイントして、①登頂にこだわらないこと、②興味の幅を広げること、③天気予報の使い方、の三つを上げていたそうです。

登頂だけでなく、植物や昆虫、あるいは山の成り立ちや歴史などに興味を広げると、もっと山に行くのが楽しくなるはずです。むしろ、それが山の魅力でもあるのです。山に行くのは、ネットで自慢して、自己顕示欲を満足させるためだけにあるのではないでしょう。

帰りは、いつものように八高線で八王子まで行き、八王子から横浜線を利用しました。夕方の帰宅ラッシュの前だったので、競争に取り憑かれた人たちに遭遇することもなく、のんびりした気分で帰ることができました。


ユガテから鎌北湖1
旧武蔵国・虎秀村の鎮守の神を祭る吾那神社。この裏から登山道に入ります。登山道は旧飛脚道です。

ユガテから鎌北湖2
名前がわかりません。

ユガテから鎌北湖3

ユガテから鎌北湖5

ユガテから鎌北湖6

ユガテから鎌北湖7

ユガテから鎌北湖8
ユガテ

ユガテから鎌北湖9
雨で洗われ荒れた道

ユガテから鎌北湖10
急登(きゅうとう)

ユガテから鎌北湖11

ユガテから鎌北湖12

ユガテから鎌北湖13

ユガテから鎌北湖14

ユガテから鎌北湖15

ユガテから鎌北湖16

ユガテから鎌北湖17

ユガテから鎌北湖18
「雨乞塚」は、顔振峠や黒山にもあります(奥武蔵だけでなく、全国各地にあります)。昔の里人たちは、裏山の見晴らしのいい高台で雨乞いの行事を行ったのでしょう。

ユガテから鎌北湖19
「男坂」「女坂」もよく目にします。「男坂」はきつい登り、「女坂」はゆるい登りという意味です。

ユガテから鎌北湖20

ユガテから鎌北湖21

ユガテから鎌北湖22

ユガテから鎌北湖23

ユガテから鎌北湖24
ヤマアジサイ? あちこちに咲いていました。

ユガテから鎌北湖25
逆コースの入口

ユガテから鎌北湖26
鎌北湖の湖畔道路を歩いていたらうさぎに遭遇しました。野生なのか? それにしては人に馴れています。

ユガテから鎌北湖27
鎌北湖お決まりの写真
2019.09.06 Fri l l top ▲