茨城の常磐道で発生したあおり運転で、「ガラケー女」に間違われてネットで身元を晒され被害を受けた女性が、先日、フェイスブックで身元を晒した愛知県豊田市の市議の男性を刑事告発したという報道がありました。女性が記者会見で言明した法的処置について、その後の報道がないのでどうなったのだろうと前に書きましたが、事態は進展していたのです。

男性は和解を申し出たそうですが、被害女性は拒否したとのことです。そのためかどうか、後日、男性は責任を取って(?)市議を辞職したという報道もありました。

いい歳して、しかも市議会議員という公的な立場にありながら、やっていることはそこらのガキと同じなのです。彼を市会議員に選んだ豊田市の有権者の見識も「ご立派」としか言いようがありません。もしかしたら、男性は次の選挙で再び当選する自信があるので辞職したのかもしれない、と穿った見方さえしたくなりました。

テレビに出ていた男性を見ると、スーツの襟に日の丸のバッチと拉致被害者救出のブルーリボンのバッチが付けられていました。ブルーリボンも、今や極右の証明のようになっていますので、彼もまた、ネトウヨのひとりなのでしょう。市議会議員がネトウヨになったのか、ネトウヨが市議会議員になったのかわかりませんが、なんだか日本の劣化を象徴するような光景に見えました。

朝日新聞が、引きこもりに関して、47都道府県と20の政令指定市にアンケート調査した結果によれば、引きこもりでいちばん多かったのは40代だそうです。また、ヘイトなブログに煽られて、朝鮮学校への補助金支給を求める声明に名を連ねた弁護士に対して懲戒請求をおこない、逆に不当な請求で名誉を傷つけられたとして訴えられたネトウヨも、40代がいちばん多かったそうです。私が常々言っているとおり、この二つのデータのかなりの部分は重なっているように思えてなりません。

あいちトリエンナーレの「表現の不自由展」への電凸も、こういった中高年のネトウヨが中心になって引き起こされた公算が大きいのです。“思想戦”と呼ぶにはあまりにお粗末と言うしかありません。既存メディアは、そんな「ネット世論」に迎合して、彼らの行為をさも「もうひとつの市民の声」であるかの如く大きく見せることに手を貸したのでした。

安倍首相の「戦後レジームからの脱却」をめざす「愛国」主義も、内閣の顔ぶれを見てもわかるとおり、結局、なんとか会議やなんとか教会やなんとか科学に行き着くのでした。「日本を、取り戻す」と言っても、所詮はその程度なのです。このようなカルトに支えられた「愛国」主義に対して、民族主義の立場から危機感が示されてもよさそうですが、そういった話も聞きません。ここにも日本の劣化が象徴されているように思えてなりません。
2019.11.09 Sat l 社会・メディア l top ▲