沢尻エリカの逮捕が、安倍政権の「桜を見る会」の疑惑隠しでないかという見方に対して、安倍応援団からは「バカバカしい陰謀論」「頭の中がお花畑」などと、一笑に付すような批判がありますが、共産党から資料請求されたその日に、1万5千人分の招待者名簿を内閣府の大型シュレッダーで裁断して破棄したという安倍政権の姿勢を考えるとき、果たしてホントに「バカバカしい陰謀論」なんだろうかという疑問を抱かざるをえません。

実際に、沢尻逮捕には、やっつけ仕事のような杜撰さが目に付きます。沢尻エリカが渋谷のクラブのイベントで覚せい剤かコカインを入手するという「情報」に基づき、(TBSに捜査情報を流した上で)強制捜査に着手したと言われていますが、帰宅した彼女を調べても薬物は出て来なかったのです。しかも、尿検査の結果も陰性(シロ)でした。MDMAは、沢尻エリカ自身が「あそこにあります」とみずからゲロして出て来たにすぎないのです。覚せい剤かコカインと踏んでいたので、MDMAは捜査当局には想定外だったという報道もありました。

こうした流れを見ると、拙速な感は否めません。何か月も前から内偵捜査をしていたにしては、あまりにも杜撰です。むしろ、「桜を見る会」の疑惑が浮上したので、あわてて強制捜査に着手したと考えた方が納得がいきます。

カルロス・ゴーン逮捕の際、海外メディアから散々指摘されていましたが、日本は推定無罪ではなく“推定有罪”の国なので、逮捕すればなんとでもなるのです。まして、芸能人であれば、なおさらでしょう。”推定有罪“どころか、メディアによって市中引き回しの刑が下されるので、捜査当局にとって芸能人は実に都合のいい生贄の羊なのです。

安倍政権は、益々ロシアのプーチン政権に似てきました。それが、マフィア化した政治と呼ぶゆえんですが、そこには安倍首相個人のキャラクターが影響しているような気がしてなりません。

前も紹介しましたが、共同通信社の福田派の番記者だった野上忠興氏が書いた『安倍晋三 沈黙の仮面』(小学館)に、次のようなエピソードが書かれていました。

 夏休みの最終日、兄弟の行動は対照的だった。兄は宿題が終わってないと涙顔になった。だが、晋三は違った。
 「『宿題みんな済んだね?』と聞くと、晋ちゃんは『うん、済んだ』と言う。寝たあとに確かめると、ノートは真っ白。それでも次の日は『行ってきまーす』と元気よく家を出ます。それが安倍晋三でした。たいした度胸だった。(略)」
 ウメ(引用者:二人の兄弟の乳母)は「たいした度胸」と評したが、小学校の級友達に聞いて回っても、宿題を忘れたり遅刻をしたりして「またか」と先生に叱られたとき、安倍は「へこむ」ことはなかったという。ウメに聞いたエピソードも耳に残る。


安倍政権が憲政史上最長の長期政権になったのも、夫婦ともども平気で嘘を言う厚顔無恥な(犯罪者気質の)性格が逆に功を奏したということはあるのではないでしょうか。もちろん、安倍政権をここまでのさばらせた一番の要因が、民主党政権のトラウマにあるのは言うまでもありません。立憲民主党や国民民主党が存在する限り、自公政権に対する消極的支持が今後も続くのは間違いないでしょう。

市民団体が安倍晋三首相を公職選挙法&政治資金規正法違反の疑いで刑事告発したことに対して、立憲民主党の国会議員たちが刑事告発は国会の真相究明に水を差すものだと批判していましたが、私は、よく言うよと思いました。

彼らの国会での質問は、ほとんどが週刊誌ネタにすぎません。それでよく真相究明だなんて言えるもんだと思います。そもそも立憲民主党や国民民主党の議員たちは、「赤旗」が疑惑を取り上げるまで、「桜を見る会」をおかしいとは思ってなかったのです。共産党が騒ぎはじめて、はじめて自分たちも便乗して騒ぎはじめたのです。何度も言いますが、彼らに野党の役割を期待すること自体が間違っているのです。それこそ「お花畑」と言わざるをえません。

沢尻エリカは、エイベックスに囲われていただけあって、典型的な(ある意味イタい)ヤンキーであることがわかりましたが、しかし、それでも私は、巨悪の身代わりにされた(?)彼女に対しては同情を禁じ得ません。
2019.11.28 Thu l 社会・メディア l top ▲