横浜市長選は、今日告示されましたが、選挙の争点について、下記の朝日の特集がわかりやすくまとめているように思いました。
朝日新聞デジタル
2021横浜市長選挙
たとえば、下記の記事で指摘されているように、横浜市が子どもの医療費の助成が東京23区に比べて遅れているという問題も、横浜の個人市民税が日本でいちばん高い(2021年5月現在)という話につながっているのです。
記事によれば、横浜市の法人市民税の税収は「東京23区の約14分の1しかない」のだそうです。つまり、「横浜市は、東京23区や大阪市に比べて上場企業数が少なく、法人市民税が乏しい」からです。それを日本一高い個人市民税で補っているのです。しかし、横浜市の財政を支える働き盛りの市民たち(主に青葉区や都筑区や緑区や港北区などに居住する、比較的所得が高い”新市民”たち)にも既に高齢化の波が押し寄せ始めています。だから、市の執行部や議会は、「それを補う増収策として、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致が必要だと説明してきた」のです。私は、これを「チンピラの論理」と呼んでいます。
同上
小児医療費、23区との格差なぜ 横浜市の懐事情を分析
また、横浜市は、「市の財政規模に対する借金残高などの割合を示す将来負担比率は19年度に140・4%と、京都市、広島市に次いで3番目に悪」く、財政再建も喫緊の課題です。IR誘致がその切り札みたいに言われているのですが、一方で、下記の記事にあるように、新市庁舎を筆頭に「大規模な公共施設やインフラ」を次々に手がけ、さらに今後も「巨大プロジェクトが目白押し」なのです。
みなとみらい自体が、30年経った今なお”負の遺産”として重荷になっている状況は何も変わっていません。また、「自治体労働者への攻撃だ」と誹りを受けるかもしれませんが、全国の自治体でトップクラスを誇る市職員の高給も無視することはできません。彼らも(連合神奈川を含めて)間違いなく財政を蝕む「村社会」の一員なのです。
なんだかワクチンで一発逆転の菅政権みたいに、IRで一発逆転を狙っているかのようです。ギャンブルでギャンブルしてどうするんだと思います。
IRという発想自体は、決して新しいものではありません。海外に目を向ければ競争相手はごまんと存在します。国内でも現在7地区が候補地として名乗りをあげており、このなかで3地区が選定されると言われています。
IRの主要な顧客は、言うまでもなく海外の富裕層です。ただ、今回のコロナ禍で見られたように、パンデミックや戦争や自然災害が発生すると、海外からの観光客は一瞬で途絶えてしまうのです。新型コロナウイルスは100年に1度の感染爆発だなどと言われますが、専門家の間では、これから数年単位、あるいは週十年単位で同じような感染爆発は起こり得るという話もあります。
もちろん、賭場ができれば、周辺に闇紳士たちが跋扈するようになるのはいつの時代も同じでしょう。そういった周辺地域の風紀の乱れを懸念する声が出るのも当然です。それに、神奈川県警は不祥事が多いことで有名で、かつて「犯罪のデパート」と呼ばれていたことも忘れてはならないのです。私は前に、横浜市立大出身の馳星周に横浜を舞台にしたピカレスク小説を書いて貰いたいと書いたことがありますが、神奈川県警の数々の不祥事を見ると、オシャレな街・住みたい街のイメージとは真逆の、横浜という街が持つ”特異な性格”を反映しているような気がしてならないのです。
Wikipedia
神奈川県警察の不祥事
IRが一発逆転をもたらすような打ち出の小鼓と考えるのは、あまりにもお気楽な考えと言わざるを得ません。と言うか、ハコモノを作り続けて財政を悪化させた上に、IRで一発逆転して借金をチャラにするみたいな発想は、まさに多重債務に陥ったギャンブル狂のそれと同じです。
市民生活に直結した問題は、子どもの医療費補助だけではありません。これはよく知られた話ですが、横浜市には学校給食がありません。なんと子どもたちから注文を受けて仕出し弁当を配っているのです。朝日の記事が指摘しているように、校舎も改修(補修)もされず古いものが多いのです。ないのは給食だけではありません。横浜には市立(公立)の幼稚園がありません。また、市立の保育園も現在民間に移管中です。でも、市立の大学や高校はあります。まったくおかしな話ですが、しかし、どうして市立の幼稚園がないのか、誰も(市役所も)わからないと言います。そんなバカなというような話が公然とまかり通っているのです。
はまれぽ.com
横浜市立の幼稚園がない理由は?
また、人口377.9万人(7/1現在)の大都市でありながら保健所は市内に1つしかなく、それがコロナ対策の遅れにつながったという指摘があります。65歳以上の高齢者 92.2万人(令和2年現在)のうち半数が一人暮らしという深刻な高齢化の問題もあります。一人暮らしが多いということは、一人分の年金しかないので、それだけ貧困に陥る割合が高いのです。
関連記事:
寿町(2011/8/7)
70歳以上の市内在住の高齢者を対象に、非課税所帯で一人月4000円(生活保護所帯は3200円)、その他所得に応じて7000円~20500円の自己負担で、市内のバスや市営地下鉄が”乗り放題”になる(ただし、みなとみらい線や相鉄線は対象外)敬老パス(シルバーパス)という制度がありますが、それについても対象年齢の引き上げや自己負担額の引き上げが検討されています。
横浜の場合、東京23区と違って、電車や地下鉄の交通網が発達してないので、駅から遠い地区も多く、移動手段はバスに限られるケースも多いのです。市内を歩くとわかりますが、駅から遠い丘の上にまるで「限界集落」のように取り残された地域もめずらくありません。高齢者が外出する場合、市内を循環するバスはなくてはならないものです。しかも、高齢になると病院通いは必須です。そんな高齢者、特に低所得の高齢者にとっては”命綱”とも言うべき敬老パス(シルバーパス)も、財政悪化を理由に見直しが始まっているのです。
高齢者のささやかな”命綱”にさえ手をつけようとする一方で、次々と計画される桁違いの巨大プロジェクトや全国トップレベルの市職員の給与などは半ば聖域化されており、見直しを求めるような声はあまり聞かれません。
IRに関しては市民の70%だかが「反対」と言われていますが、オリンピック開催反対と同じで、どこまで本心なのか、私は懐疑的です。市民と言っても、ネットの書き込みに見られるように、「村社会」に従属しているような意識しかなく、市民税や国民健康保険料など負担が増すばかりの市政に対する不満も、”生活保護叩き”と同様”敬老パス叩き”のようなものに向けられているのが現実です。そして、財政再建のためにはIRは必要だとか、IRが誘致されれば横浜のブランド価値が上がるのでマンションの資産価値も上がるなどという、「チンピラの論理」で思考停止している(させられている)市民も多いのです。
朝日新聞デジタル
2021横浜市長選挙
たとえば、下記の記事で指摘されているように、横浜市が子どもの医療費の助成が東京23区に比べて遅れているという問題も、横浜の個人市民税が日本でいちばん高い(2021年5月現在)という話につながっているのです。
記事によれば、横浜市の法人市民税の税収は「東京23区の約14分の1しかない」のだそうです。つまり、「横浜市は、東京23区や大阪市に比べて上場企業数が少なく、法人市民税が乏しい」からです。それを日本一高い個人市民税で補っているのです。しかし、横浜市の財政を支える働き盛りの市民たち(主に青葉区や都筑区や緑区や港北区などに居住する、比較的所得が高い”新市民”たち)にも既に高齢化の波が押し寄せ始めています。だから、市の執行部や議会は、「それを補う増収策として、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致が必要だと説明してきた」のです。私は、これを「チンピラの論理」と呼んでいます。
同上
小児医療費、23区との格差なぜ 横浜市の懐事情を分析
また、横浜市は、「市の財政規模に対する借金残高などの割合を示す将来負担比率は19年度に140・4%と、京都市、広島市に次いで3番目に悪」く、財政再建も喫緊の課題です。IR誘致がその切り札みたいに言われているのですが、一方で、下記の記事にあるように、新市庁舎を筆頭に「大規模な公共施設やインフラ」を次々に手がけ、さらに今後も「巨大プロジェクトが目白押し」なのです。
市が誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)は民間事業者による開発・運営だが、建設予定地の山下ふ頭周辺は、道路整備などの公費負担が見込まれる。
同じ横浜港に面したみなとみらい21地区では、バレエやオペラ中心の劇場新設が検討され、用地費を除く建設費などは約480億円と試算されている。
郊外部の米軍上瀬谷通信施設跡地では、27年の国際園芸博覧会の会場建設費に約320億円、新交通システム整備に約700億円、土地区画整理事業に約600億円が見込まれ、一部は市費が投じられる。
同上
庁舎に劇場構想…ハコモノ新設、突出の横浜 財政は悪化
みなとみらい自体が、30年経った今なお”負の遺産”として重荷になっている状況は何も変わっていません。また、「自治体労働者への攻撃だ」と誹りを受けるかもしれませんが、全国の自治体でトップクラスを誇る市職員の高給も無視することはできません。彼らも(連合神奈川を含めて)間違いなく財政を蝕む「村社会」の一員なのです。
なんだかワクチンで一発逆転の菅政権みたいに、IRで一発逆転を狙っているかのようです。ギャンブルでギャンブルしてどうするんだと思います。
IRという発想自体は、決して新しいものではありません。海外に目を向ければ競争相手はごまんと存在します。国内でも現在7地区が候補地として名乗りをあげており、このなかで3地区が選定されると言われています。
IRの主要な顧客は、言うまでもなく海外の富裕層です。ただ、今回のコロナ禍で見られたように、パンデミックや戦争や自然災害が発生すると、海外からの観光客は一瞬で途絶えてしまうのです。新型コロナウイルスは100年に1度の感染爆発だなどと言われますが、専門家の間では、これから数年単位、あるいは週十年単位で同じような感染爆発は起こり得るという話もあります。
もちろん、賭場ができれば、周辺に闇紳士たちが跋扈するようになるのはいつの時代も同じでしょう。そういった周辺地域の風紀の乱れを懸念する声が出るのも当然です。それに、神奈川県警は不祥事が多いことで有名で、かつて「犯罪のデパート」と呼ばれていたことも忘れてはならないのです。私は前に、横浜市立大出身の馳星周に横浜を舞台にしたピカレスク小説を書いて貰いたいと書いたことがありますが、神奈川県警の数々の不祥事を見ると、オシャレな街・住みたい街のイメージとは真逆の、横浜という街が持つ”特異な性格”を反映しているような気がしてならないのです。
Wikipedia
神奈川県警察の不祥事
IRが一発逆転をもたらすような打ち出の小鼓と考えるのは、あまりにもお気楽な考えと言わざるを得ません。と言うか、ハコモノを作り続けて財政を悪化させた上に、IRで一発逆転して借金をチャラにするみたいな発想は、まさに多重債務に陥ったギャンブル狂のそれと同じです。
市民生活に直結した問題は、子どもの医療費補助だけではありません。これはよく知られた話ですが、横浜市には学校給食がありません。なんと子どもたちから注文を受けて仕出し弁当を配っているのです。朝日の記事が指摘しているように、校舎も改修(補修)もされず古いものが多いのです。ないのは給食だけではありません。横浜には市立(公立)の幼稚園がありません。また、市立の保育園も現在民間に移管中です。でも、市立の大学や高校はあります。まったくおかしな話ですが、しかし、どうして市立の幼稚園がないのか、誰も(市役所も)わからないと言います。そんなバカなというような話が公然とまかり通っているのです。
はまれぽ.com
横浜市立の幼稚園がない理由は?
また、人口377.9万人(7/1現在)の大都市でありながら保健所は市内に1つしかなく、それがコロナ対策の遅れにつながったという指摘があります。65歳以上の高齢者 92.2万人(令和2年現在)のうち半数が一人暮らしという深刻な高齢化の問題もあります。一人暮らしが多いということは、一人分の年金しかないので、それだけ貧困に陥る割合が高いのです。
関連記事:
寿町(2011/8/7)
70歳以上の市内在住の高齢者を対象に、非課税所帯で一人月4000円(生活保護所帯は3200円)、その他所得に応じて7000円~20500円の自己負担で、市内のバスや市営地下鉄が”乗り放題”になる(ただし、みなとみらい線や相鉄線は対象外)敬老パス(シルバーパス)という制度がありますが、それについても対象年齢の引き上げや自己負担額の引き上げが検討されています。
横浜の場合、東京23区と違って、電車や地下鉄の交通網が発達してないので、駅から遠い地区も多く、移動手段はバスに限られるケースも多いのです。市内を歩くとわかりますが、駅から遠い丘の上にまるで「限界集落」のように取り残された地域もめずらくありません。高齢者が外出する場合、市内を循環するバスはなくてはならないものです。しかも、高齢になると病院通いは必須です。そんな高齢者、特に低所得の高齢者にとっては”命綱”とも言うべき敬老パス(シルバーパス)も、財政悪化を理由に見直しが始まっているのです。
高齢者のささやかな”命綱”にさえ手をつけようとする一方で、次々と計画される桁違いの巨大プロジェクトや全国トップレベルの市職員の給与などは半ば聖域化されており、見直しを求めるような声はあまり聞かれません。
IRに関しては市民の70%だかが「反対」と言われていますが、オリンピック開催反対と同じで、どこまで本心なのか、私は懐疑的です。市民と言っても、ネットの書き込みに見られるように、「村社会」に従属しているような意識しかなく、市民税や国民健康保険料など負担が増すばかりの市政に対する不満も、”生活保護叩き”と同様”敬老パス叩き”のようなものに向けられているのが現実です。そして、財政再建のためにはIRは必要だとか、IRが誘致されれば横浜のブランド価値が上がるのでマンションの資産価値も上がるなどという、「チンピラの論理」で思考停止している(させられている)市民も多いのです。