その後の膝の具合ですが、多少の違和感は残っているものの痛みは完全に引いて、水も溜まらず結構調子がいい状態がつづいていました(過去形)。

先月、整形外科に行った際、ドクターから「ヒアルロン酸も打ち終わったので、今後どうするか。あとワンクール(週1回で計5回)打つかどうかですが、どうしますか?」と訊かれました。

「先生、私が決めるんですか?」
「一応区切りが付いたので、このあとどうするか意向を訊きたいんですよ」

たしかに、水もあまり溜まらなくなったし、違和感が残っているとは言え、痛みもほとんど消えました。恐らく多くの患者は、このあたりでフェードアウトして、整骨院にリハビリに行ったりするのでしょう。私も、このままフェードアウトしてもいいような気がしないでもありません。ドクターも暗に「フェードアウトしていいですよ」と仄めかしているんじゃないかと思いました。

しかし、一瞬迷ったものの、私が下した結論は、ヒアルロン酸をあとワンクール打ってもらうという選択でした。もちろん、あまり効果がないヒアルロン酸を打っても仕方ないと言えば仕方ないのです。しかし、痛みが取れたとは言え、まだ違和感が残っているので病院と縁が切れるのに一抹の不安がありました。それに、湿布薬も、当然ながら病院で処方してもらった方が安く手に入ります。そんな打算もはたらいたのでした。

そして、そのあと、4回(4週)病院に通いましたが、水を抜くことはなく、ヒアルロン酸の注射と湿布薬の処方をくり返しただけでした。

ところが、先週のことです。膝痛とは反対の左足の踵の骨が出っ張っているところが痛くなったのです。その前から少し痛みを感じていたので、「また靴擦れなのか」と思っていました。と言うのも、同じところの痛みは今までも何度かあったからです。しかし一方で、最近、靴をあたらしくしたわけではないのに、どうして急に靴擦れになったんだろうという疑問もありました。

しかも、痛みは日が経つに連れ増すばかりでした。そして、とうとう歩くのもままならなくなったのでした。つま先が上がり脛が伸びた状態になると強い痛みに襲われるようになったのです。また、階段を下る際も、踵に衝撃が加わるからなのか、痛みがひどく、一段一段足を下ろすたびに試練を課せられているような感じでした。骨が出っ張っている部分を指で押すと、頭頂まで貫くような強烈な痛みが走ります。しかし、痛みの部分を見ても赤くなっているだけで、水ぶくれやタコやマメができているわけではありません。どうも靴擦れではないような気がします。

こういうのを疼痛と言うらしいのですが、しかし、疼痛のチャンピオンである尿管結石の痛みを何度も経験している身から言えば、同じ疼痛でも尿管結石のそれとは若干違います。尿管結石は普段の呼吸に合わせたようなズキズキという痛みですが、今回の痛みは運動して呼吸が上がったときのようなテンポの速い痛みです。

それで、膝の診察のついでに、踵も診てもらうことにしました。近所の整形外科は自宅から500メートルも離れてないですが、そこまで歩いて行くのもひと苦労で、100メートル歩くのに10分くらいかかるのです。車椅子があったらどんなに楽だろうと思ったくらいでした。さらに、左足をかばって歩くので、右足の膝にも痛みが出て来る始末でした。

185センチの大男が苦悶の表情を浮かべて両足を引き摺りながら前からやって来るので、舗道ですれ違う人たちは車道に出て私をよけていました。子ども連れの母子は、お母さんが「こっちに来なさい」と子どもの袖を引っ張っていました。すれ違ったあと、うしろを振り返ると、子どもが立ち止まって不思議なものでも見るようにじっと私の方を見ていました。もしかしたら、私のことをフランケンシュタインのように見ていたのかもしれません。

診察室に入って左足のことを話すと、ドクターは「ああ、あとでレントゲンを撮って確認しますが、おそらくアキレス腱で骨が引っ張られて炎症を起こしているんだと思いますよ」と言って、紙に図を描いて説明してくれました。「整形外科に通っているのにまた足が痛くなるなんて、どうなっているんだと思いますよね」と言って笑っていました。

レントゲンを撮るとドクターの説明どおり、アキレス腱とつながっている踵の骨(踵骨)が引っ張られて、膝と同じように骨棘(こつきょく)が生じており、そのために周辺の皮膚に炎症が起きているということでした。治療法は対症療法しかなく、膝とまったく同じで、鎮痛消炎剤の湿布薬を貼り痛み止めの内服薬を飲んで痛みが収まるのを待つしかないそうです。

「よくあることなんですか?」
「結構ありますよ。先週も同じ症状の患者さんが来られましたよ」
「どのくらいで痛みが消えますか?」
「2~3日すれば大概収まりますよ。1週間分の薬を処方すれば、ほとんどの患者さんはそれ1回きりで来なくなりますね」

原因はアキレス腱の使いすぎだそうです。しかし、当然ながら現在、私はまったく運動をしていません。「何か日常生活で思い当たることはないですか?」と訊かれたのですが、なにもないのです。

すると、まるで私の心のなかを見透かしているかのように、ドクターは次のような話をはじめたのでした。

「前に来た患者さんはロードバイクをしている方で、走っている途中でタイヤがパンクしたらしいのです。それでしゃがんでパンクの修理をしたそうですが、その際、地べたにお尻を付けて座るのではなく、両足の踵を上げた状態でじゃがんで修理をしたらしく、それが原因で痛みが出たみたいです。日常のちょっとしたことでも原因になったりするのです。なにか似たようなことはありませんでしたか?」

その話を訊いて、私はドキッとしました。ロードバイクの話で、先日買ったエアロバイクのことが思い出されたのでした。しかし、エアロバイクのことはドクターには言わずに、「うーん、なんだろう?」と首を捻ってとぼけたのでした。

私の部屋は、いつの間にかトレーニング器具が増えてスポーツジムみたいになっているのですが、最近は負荷をかけてエアロバイクを漕いでいました。私は何事においてもやりすぎるきらいがあり、エアロバイクで自分を追い詰める真似事をしたことで、どうやら天誅が下ったみたいです。

ドクターは特に病名を言いませんでしたが、ネットで調べると「アキレス腱付着部症」と言うのだそうです。この「アキレス腱付着部症」は、ランニングする人やバスケットボールのようなジャンプする競技の選手に多いと書いていました。ちなみに、痛みの方はドクターの言うとおり3日くらい経ったらほとんど消えました。ただ、左足をかばっていたためでしょう、右の膝にまた「注射器水1本分」の水が溜まっていたそうで、案の定、それ以来膝の調子がよくありません。

そこで、では、今まで同じような痛みに襲われていたのはどうしてなのか?と考えてみました。このブログでも六ツ石山に登った際、靴擦れが生じた話を書いていますが、ほとんどは今回のように痛みがひどくなることはなく、スリ傷用の塗り薬とバンドエイドを貼っていたら自然と消えました。

つまり、六ツ石山が典型なのですが、急登でアキレス腱が伸び骨が引っ張られたために、一時的に痛みが出たのでしょう。「アキレス腱が痛くなるほどの急登」というのはこういうことだったんだ、と初めて合点がいったのでした。ブログではノースフェイスの靴が靴擦れの原因ではないかと書いたように記憶しますが(そのために靴を買い替えたのですが)、靴は関係なかったのです。

私の場合、このように勝手な思い込みで間違った対策を講じて、あとで後悔することがホントに多いのです。素人の浅知恵とはよく言ったものだとつくづく思います。

こうして膝や踵などの痛みを経験したことで、多少なりとも正しい知識を身に付けることができた気がします。それは、文字通り怪我の功名というべきかもしれません。同時に、今まで如何に間違った考えを持っていたかということを痛感させられたのでした。
2021.08.22 Sun l 健康・ダイエット l top ▲