去年の秋までスマホは二台続けてHUAWEIを使っていました。いづれも3年くらい使ったと思います。
しかし、二台目は何故か地面に落とすことが多くて、画面にかなり傷がついてしまいました。とは言え、使うのに支障をきたすほどではなかったのですが、去年の秋にふと思い付いて新しいスマホに買い替えることにしました。
新しく買ったのは、某国産メーカーのXというミドルレンジの機種で、今まで使っていたHUAWEIと比べると3倍くらい高いスマホです。
しかし、半年以上使ってみて、HUAWEIからXに替えたことを後悔しています。これだったら、HUAWEIの画面を修理して、ついでにバッテリーも新しく交換した方がよかったような気さえします。あるいは、最近、HUAWEIの代わりにハイスペックな割りに低価格なOPPOというメーカーのスマホが出ていますが、それでもよかったように思います。
そう言うと、ネトウヨまがいな連中から、個人情報を中国共産党に流されていいのかというお決まりな”反論”が返って来るのが常です。しかし、別に中国共産党でなくても、個人情報はGoogleにいいようにぬかれています。そして、スノーデンの話では、その個人情報をアメリカ国家安全保障局 (NSA)が勝手に覗いているのです。スマホを使っている限り、そこでやりとりされる個人情報は裸も同然なのです。そんなのは常識中の常識でしょう。
「ニッポン凄い!」の自演乙をいつまで続けていても、このように現実はどんどん先に、ニッポンがそんなに凄いわけではない方向に進んでいるのでした。日本のメディアは、「日本的ものづくりの大切さ」みたいな物語を捏造して、どうみてもお先真っ暗のような町工場の未来をさも希望があるかのように描くのが好きですが、でも、私たちの前にあるのは容赦ない、誤魔化しようのない現実です。
「中華製」というのは、中国製品をバカにする言葉ですが、いつの間にかバカにできない「中華製」の商品が私たちの前に溢れるようになっているのでした。日本人の多くは、未だ「中華製」は所詮コピーにすぎないと「格下」に見るような偏見に囚われていますが、しかし、私にはそれは負け惜しみのようにしか思えません。もとより技術移転というのはそんなものでしょう。日本製品だって昔はモノマネと言われていたのです。とりわけIT技術で管理された現代の工業製品の世界では、キャッチアップする速度も昔とは比べものにならないくらい速くなっているのです。もちろん、よく言われるようにイノベーション能力がこれからの中国の大きな課題ですが、少なくとも中国が安価でハイスペックな商品を造る段階まで達したのはたしかでしょう。
ひるがえって考えれば、そこに、いつまでも過去の栄光にすがり、武士は食わねど高楊枝で「ニッポン凄い!」を自演乙している日本人及び日本社会の問題点が浮かび上がってくるのでした。
外資系大手のカナディアン・ソーラー・ジャパンの社長である山本豊氏は、朝日のインタビュー記事で、「外資系企業で長く働いた経験から、日本メーカーに共通する弱点」を次のように指摘していました。
朝日新聞デジタル
存在感失った日本メーカー 外資系社長が語る「圧倒的に劣る3点」
ここで言う「神話」こそが「ニッポン凄い!」という自演乙にほかなりません。経済(名目GDP)成長率も先進国で最低であるにもかかわらず、急激な円安と物価高に見舞われている日本が、これから益々経済的に衰退して貧しくなっていくのは誰が見ても明らかでしょう。でも、日本のメディアは、インバウンドで日本経済が復活するかのような幻想をふりまいています。前も書きましたが、外国人観光客が日本に来るのは、日本が安い国だからです。安い国ニッポンを消費するためにやって来るのです。ただそれだけのことなのに、そこに日本再生のカギがあるかのように牽強付会するのでした。
一方で、中国のゼロコロナ政策を嘲笑うような報道も目立ちますが、私は逆に、ゼロコロナ政策に中国経済の”余裕”すら感じました。もちろん、一党独裁国家だから可能なのですが、もし日本だったらと考えても、あんなに徹底的に都市封鎖して経済活動を完全に止めることなどとてもできないでしょう。
案の定、日本は、弱毒化したとは言え、新規感染者がまだ毎日1万人以上出ているにもかかわらず、経済活動を再開しなければ国が終わるとでも言わんばかりに、昨日までの感染防止策もほとんど有名無実化するほど焦りまくっているのでした。マスクにしても、感染が落ち着いたのにどうして日本人はマスクを外さないのかと、まるでまだマスクをしているのはアホだとでも言いたげな新聞記事まで出るあり様です。しかし、そんな手のひら返しをした末に打ち出された経済活動再開の目玉が、日本のバーゲンセールとも言うべきインバウンドなのです。もうそれしかないのかと思ってしまいます。この前まで人流抑制とか言っていたのに、一転して人流頼みなのです。
もっとも、そのインバウンドにしても、コロナ前の2019年度の訪日外国人観光客31,882,049人のうち、実に33%が中国からの観光客です。欧米の中でいちばん多いアメリカ人でさえ5%にすぎません。しかも、中国人観光客の個人消費額は欧米人の約5倍で、人数だけでなく落とすお金においても中国頼りなのです。中国から観光客がやって来ない限り、インバウンドの本格的な経済効果も見込めないのが現実なのです。
1千万人単位の国民に対していっせいに無料のPCR検査を行なう中国の凄さにも驚きましたが、その上海の街の様子や検査の行列に並ぶ市民の恰好などを見て感じるのは、日本以上に洗練された豊かな都市の光景です。一党独裁国家だからという理由だけでは説明がつかない、中国の底力を見せられた気がしました。
HUAWEIがあれだけ叩かれたのも、アメリカにとってHUAWEIが脅威だったからでしょう。個人情報云々は建前で、5GのインフラをHUAWEIに握られるのを何より怖れたからでしょう。
『週刊エコノミスト』の今週号(6/21号)に掲載されていた「ウクライナ危機の深層」と題する記事で、執筆者の滝澤伯文(たきざわおさふみ)氏は、ウクライナ侵攻をきっかけに今後、世界の「軸」はアジアに移ると書いていました。もちろん、それは中国が世界の「軸」になるという意味です。
アメリカがウクライナを支援する背景には「経済利権」維持の狙いがあり、バイデン政権の中枢やその周辺には、「経済・軍事における米国の覇権を死守し、基軸通貨ドルを維持したい『最強硬派』と、米国は総体的な優位を維持しながら、中国との共存もやむなしと考える『多極主義者』」が存在し対立しているそうです。
アメリカの尻馬に乗って核武装を唱え対抗意識を燃やす前に、まず日本人がやらなけばならないのは、好きか嫌いかではなく、虚心坦懐に現実を見ることでしょう。そうしないと、アジアの盟主として、世界を分割する覇権国家として、再び世界史の中心にその姿を現わした中国にホントの意味で対抗などできないでしょう。いつまでも現実から目をそむけて、負け犬の遠吠えみたいことを続けていても仕方ないのです。
関連記事:
日本は「買われる国」
「安くておいしい国」日本
しかし、二台目は何故か地面に落とすことが多くて、画面にかなり傷がついてしまいました。とは言え、使うのに支障をきたすほどではなかったのですが、去年の秋にふと思い付いて新しいスマホに買い替えることにしました。
新しく買ったのは、某国産メーカーのXというミドルレンジの機種で、今まで使っていたHUAWEIと比べると3倍くらい高いスマホです。
しかし、半年以上使ってみて、HUAWEIからXに替えたことを後悔しています。これだったら、HUAWEIの画面を修理して、ついでにバッテリーも新しく交換した方がよかったような気さえします。あるいは、最近、HUAWEIの代わりにハイスペックな割りに低価格なOPPOというメーカーのスマホが出ていますが、それでもよかったように思います。
そう言うと、ネトウヨまがいな連中から、個人情報を中国共産党に流されていいのかというお決まりな”反論”が返って来るのが常です。しかし、別に中国共産党でなくても、個人情報はGoogleにいいようにぬかれています。そして、スノーデンの話では、その個人情報をアメリカ国家安全保障局 (NSA)が勝手に覗いているのです。スマホを使っている限り、そこでやりとりされる個人情報は裸も同然なのです。そんなのは常識中の常識でしょう。
「ニッポン凄い!」の自演乙をいつまで続けていても、このように現実はどんどん先に、ニッポンがそんなに凄いわけではない方向に進んでいるのでした。日本のメディアは、「日本的ものづくりの大切さ」みたいな物語を捏造して、どうみてもお先真っ暗のような町工場の未来をさも希望があるかのように描くのが好きですが、でも、私たちの前にあるのは容赦ない、誤魔化しようのない現実です。
「中華製」というのは、中国製品をバカにする言葉ですが、いつの間にかバカにできない「中華製」の商品が私たちの前に溢れるようになっているのでした。日本人の多くは、未だ「中華製」は所詮コピーにすぎないと「格下」に見るような偏見に囚われていますが、しかし、私にはそれは負け惜しみのようにしか思えません。もとより技術移転というのはそんなものでしょう。日本製品だって昔はモノマネと言われていたのです。とりわけIT技術で管理された現代の工業製品の世界では、キャッチアップする速度も昔とは比べものにならないくらい速くなっているのです。もちろん、よく言われるようにイノベーション能力がこれからの中国の大きな課題ですが、少なくとも中国が安価でハイスペックな商品を造る段階まで達したのはたしかでしょう。
ひるがえって考えれば、そこに、いつまでも過去の栄光にすがり、武士は食わねど高楊枝で「ニッポン凄い!」を自演乙している日本人及び日本社会の問題点が浮かび上がってくるのでした。
外資系大手のカナディアン・ソーラー・ジャパンの社長である山本豊氏は、朝日のインタビュー記事で、「外資系企業で長く働いた経験から、日本メーカーに共通する弱点」を次のように指摘していました。
朝日新聞デジタル
存在感失った日本メーカー 外資系社長が語る「圧倒的に劣る3点」
「日本メーカーは、日本流の品質管理、日本流の生産計画が一番いいという『神話』で動いている。アジアの拠点に日本からマネジメント層を送り込み、日本流のやり方でやるんだ、アジアの人は安い労働力として使うんだという、そういう上から目線。それではなかなかうまくいかない。客観的に見ると、日本の製造業は生産計画、品質管理、すべての面でかなり遅れている。データの取り方、使い方が昭和のやり方のまま。こと量産でコストを落とすことの真剣さは完全に中国に負けている」
ここで言う「神話」こそが「ニッポン凄い!」という自演乙にほかなりません。経済(名目GDP)成長率も先進国で最低であるにもかかわらず、急激な円安と物価高に見舞われている日本が、これから益々経済的に衰退して貧しくなっていくのは誰が見ても明らかでしょう。でも、日本のメディアは、インバウンドで日本経済が復活するかのような幻想をふりまいています。前も書きましたが、外国人観光客が日本に来るのは、日本が安い国だからです。安い国ニッポンを消費するためにやって来るのです。ただそれだけのことなのに、そこに日本再生のカギがあるかのように牽強付会するのでした。
一方で、中国のゼロコロナ政策を嘲笑うような報道も目立ちますが、私は逆に、ゼロコロナ政策に中国経済の”余裕”すら感じました。もちろん、一党独裁国家だから可能なのですが、もし日本だったらと考えても、あんなに徹底的に都市封鎖して経済活動を完全に止めることなどとてもできないでしょう。
案の定、日本は、弱毒化したとは言え、新規感染者がまだ毎日1万人以上出ているにもかかわらず、経済活動を再開しなければ国が終わるとでも言わんばかりに、昨日までの感染防止策もほとんど有名無実化するほど焦りまくっているのでした。マスクにしても、感染が落ち着いたのにどうして日本人はマスクを外さないのかと、まるでまだマスクをしているのはアホだとでも言いたげな新聞記事まで出るあり様です。しかし、そんな手のひら返しをした末に打ち出された経済活動再開の目玉が、日本のバーゲンセールとも言うべきインバウンドなのです。もうそれしかないのかと思ってしまいます。この前まで人流抑制とか言っていたのに、一転して人流頼みなのです。
もっとも、そのインバウンドにしても、コロナ前の2019年度の訪日外国人観光客31,882,049人のうち、実に33%が中国からの観光客です。欧米の中でいちばん多いアメリカ人でさえ5%にすぎません。しかも、中国人観光客の個人消費額は欧米人の約5倍で、人数だけでなく落とすお金においても中国頼りなのです。中国から観光客がやって来ない限り、インバウンドの本格的な経済効果も見込めないのが現実なのです。
1千万人単位の国民に対していっせいに無料のPCR検査を行なう中国の凄さにも驚きましたが、その上海の街の様子や検査の行列に並ぶ市民の恰好などを見て感じるのは、日本以上に洗練された豊かな都市の光景です。一党独裁国家だからという理由だけでは説明がつかない、中国の底力を見せられた気がしました。
HUAWEIがあれだけ叩かれたのも、アメリカにとってHUAWEIが脅威だったからでしょう。個人情報云々は建前で、5GのインフラをHUAWEIに握られるのを何より怖れたからでしょう。
『週刊エコノミスト』の今週号(6/21号)に掲載されていた「ウクライナ危機の深層」と題する記事で、執筆者の滝澤伯文(たきざわおさふみ)氏は、ウクライナ侵攻をきっかけに今後、世界の「軸」はアジアに移ると書いていました。もちろん、それは中国が世界の「軸」になるという意味です。
アメリカがウクライナを支援する背景には「経済利権」維持の狙いがあり、バイデン政権の中枢やその周辺には、「経済・軍事における米国の覇権を死守し、基軸通貨ドルを維持したい『最強硬派』と、米国は総体的な優位を維持しながら、中国との共存もやむなしと考える『多極主義者』」が存在し対立しているそうです。
米国の政権中枢部は、中国とも協調すべきとする多極主義者たちのほうが多数派であり、仏独など大陸欧州も同様だ。国内総生産(GDP)で中国に抜かれても、米欧の優位性はまだしばらく続くという考え方だ。
とはいえ、資本主義経済の優劣は人口が決め手になる。すなわち、経済では中国が勝者となり、白人優位が終わり、清王朝の最盛期だった18世紀前半以来世界の軸が300年ぶりに欧米からアジアにシフトする。究極的には、これを容認するかしないかが最強硬派多極主義者の違いだ。両者の暗闘の帰越はウクライナでの戦況さえ左右しかねない。
(『週刊エコノミスト』6/21号・「ウクライナ危機の深層」)
アメリカの尻馬に乗って核武装を唱え対抗意識を燃やす前に、まず日本人がやらなけばならないのは、好きか嫌いかではなく、虚心坦懐に現実を見ることでしょう。そうしないと、アジアの盟主として、世界を分割する覇権国家として、再び世界史の中心にその姿を現わした中国にホントの意味で対抗などできないでしょう。いつまでも現実から目をそむけて、負け犬の遠吠えみたいことを続けていても仕方ないのです。
関連記事:
日本は「買われる国」
「安くておいしい国」日本