ウクライナ侵攻がロシアの侵略であることは論を俟ちません。そんなのは常識中の常識です。しかし、だからと言って、ロシア糾弾一色に塗り固められた報道が全てかと言えば、もちろん全てではないでしょう。まったく別の側面もあるはずです。

旧西側のメディアが伝えているように、ホントにウクライナが小春日和の下で平和で穏やかな日々を過ごしていた中に、突然、無法者のロシアがやって来て暴力を振るい家の中をメチャクチャにしたというような単純な話なのでしょうか。

2004年のオレンジ革命、2014年のマイダン革命とウクライナは国を二分する騒乱の渦中にありました。その中で、西欧流民主主義を隠れ蓑にしたしたウクライナ民族主義が台頭し、ロシア語話者に対する迫害もエスカレートしていったのでした。ロシアはその間隙を衝いて、ロシア系住民を保護するためという大義名分を掲げてクリミア半島に侵攻し併合したのです。

それは、ソビエト連邦やソ連崩壊時の独立国家共同体の理念を借用した行為であるとともに、国民向けには大ロシア主義=ロシア帝国再興の夢を振り撒く行為でもありました。

ただ、当時のウクライナは文字通り内憂外患の状態にあり、政治は腐敗しマフィアが跋扈し常に暴力が蔓延しており、欧州でいちばん貧しく遅れた国と言われていたのです。今回の侵攻で英雄視されているアゾフ大隊もそんな中で登場したネオナチの民兵組織で、国内の少数民族や社会主義者や労働運動家や性的マイノリティやロシア語話者に対する弾圧の先頭に立っていたのです。

でも、ロシアによるウクライナ侵攻によって、そういったウクライナのイメージはどこかに行ってしまったのでした。

欧米から供与された武器が闇市場に流れているのではないかという指摘もありますが、まったく荒唐無稽な話とは思えません。

今日、Yahoo!ニュースには次のような記事も出ていました。

Yahoo!ニュース
AFPBB News
ウクライナ侵攻で薬物製造拡大の恐れ 国連

国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、薬物に関する年次報告書で、ロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナ国内の「違法薬物の製造が拡大する恐れがあると警告した」そうです。

 年報によると、ウクライナで撤去されたアンフェタミン製造拠点の数は2019年の17か所から20年には79か所に増加した。20年に摘発された拠点数としては世界最多だった。

 侵攻が続けば、同国における合成麻薬の製造能力は拡大する可能性があるとしている。

 UNODCの専門家アンジェラ・メー(Angela Me)氏はAFPに対し、紛争地帯では「警察が見回ったり、製造拠点を摘発したりすることがなくなる」と説明した。
(上記記事より)


これなども、今まで私たちが抱いている「可哀そうなウクライナ」のイメージが覆される記事と言っていいかもしれません。

俄かに信じ難い話ですが、ゼレンスキー大統領が国民総動員体制を敷いて、最後の一人まで戦えと鼓舞している傍らで、「合成麻薬の製造能力が拡大する可能性がある」と言うのです。しかも、それを国連が警告しているのです。

日本のメディアの「可哀そうなウクライナ」一色の報道に日々接していると、文字通り脳天を撃ち抜かれたような気持になる記事ではないでしょうか。それともこれも陰謀論だと一蹴するのでしょうか。

また、『紙の爆弾』(7月号)には、こんな記事がありました。

ウクライナから避難民とともに日本に入国したペットについて、「農林水産省は入国に際し、180日間の隔離などの狂犬病の動物検疫を免除する特例を認めた」そうです。どうしてかと言えば、避難民が動物検疫所係留の管理費用を払うことができず、費用負担できなければ「殺処分になる」というメールを検疫所から受け取ったことに端を発して(でも、実際にはそういったメールは送信されてなかった)、テレビや超党派の動物愛護議員連盟が費用免除を訴えたからです。それで、農水省が「人道への配慮」により検疫免除の特例を認めたのでした。

しかし、ウクライナは、「毎年約1600件の狂犬病の症例が報告され」「狂犬病が動物と人間の間で広まっている欧州唯一の国」なのです。そのため、農水省の決定に対して、専門家の間から狂犬病のリスクを持ち込む「善意の暴走」という批判が起きているそうです。もっとも、記事によれば、動物検疫所に係留されているのは、犬5匹と猫2匹にすぎないそうです。

言葉は悪いですが、これもウクライナの”後進性”を示す一例と言えるでしょう。と同時に、「可哀そうなウクライナ」の感情だけが先走る日本人の薄っぺらなヒューマニズムを示す好例とも言えるかもしれません。

でも、そう言いながら、日本が受け入れている避難民は、今月の24日現在で1040人にすぎません。大騒ぎしているわりには、受け入れている避難民はきわめて少ないのです。善意のポーズだけなのです。

ウクライナ侵攻に反対を表明しているあるロシア人ユーチューバーは、最近、侵攻以来届いていた「クソリブ」がほどんど届かなくなり、それはそれで逆に悲しいことでもあると言っていました。どうしてかと言えば、「クソリブ」が届かなくなったのは日本人の間でウクライナ侵攻に対する関心が薄れてきたことを示しているからだと。熱しやすく醒めやすい日本人の性格をよく表した話だと思いました。

私たちは今回の戦争について、はたしてどれだけ知っているのでしょうか。というか、どれだけ知らされているのか。「可哀そう」の感情だけでなく、もっといろんな角度から知る必要があるでしょう。そして、ゼレンスキーのプロパガンダに抗して、「戦争で死ぬな」と言い続ける必要があるのです。
2022.06.27 Mon l ウクライナ侵攻 l top ▲