ダイヤモンドオンラインに、ノンフィクションライターの窪田順生氏が下記のような記事を書いていました。

ダイヤモンド・オンライン
ウクライナ侵攻5カ月目…日本人は「戦争報道のインチキさ」今こそ検証を

手前味噌ですが、私も同じことをこのブログでしつこいくらい書いています。

窪田氏は、冒頭、こう書いていました。

 侵攻直後は「ウクライナと共に!」と芸能人たちが呼びかけ、ワイドショーも毎日のように戦況を紹介し、スタジオで「どうすればロシア国民を目覚めさせられるか」なんて激論を交わしていた。今はニュースで触れる程度で、猛暑だ!値上げだ!という話に多くの時間を費やしている。

 作り手側が飽きてしまったのか、それとも視聴者が飽きて数字が稼げなくなったのかは定かではないが、「打倒プーチン!」と大騒ぎをしていたことがうそだったかのように、ウクライナ問題を扱うテンションが露骨に落ちてきているのだ。


「支援疲れ」と言えば聞こえはいいですが、要するに”支援ごっこ”に飽きてきたというのが本音かもしれません。

前の記事で触れた暴露系ユーチューバーのガーシーが、楽天の三木谷浩史社長が親しい経営者仲間とゴルフコンペしたあと、ウクライナ人モデルを集めてパーティをしていたとみずからのチャンネルで暴露したのですが、それに対して、三木谷氏自身がTwitterで過剰に反応して、結果的にパーティの存在をみずから認めてしまったというオチがありました。

もっとも、一方的なネットの話なので虚実は不明です。NHK党から立候補したガーシーの挑発(話題作り)に、三木谷氏がうっかり乗ってしまった、乗せられてしまったという側面もなきにしもあらずでしょう。ただ、下記のような三木谷氏の反応を見ると、ゴルフのコンペのあとにウクライナ人女性を集めてパーティをやったことはどうやら間違いないようです。


「戦争を忘れてあげようと思って」パーティしたという三木谷氏のツイートは、子どもの言い訳のようで笑ってしまいました。野暮を承知で言えば、楽天が子どもを含めたウクライナ人避難民たちを招待して交流をはかり激励した、というような話ではないのです。あくまでコンペの打ち上げの仲間内のパーティなのです。

日本在住のウクライナ人について、ウィキペディアには次のように書かれています。

日本に在留しているウクライナ人の数は2003年には最大の1,927人にまで急増したが、かつて主流だった興行ビザによる滞在は2005年の興行ビザ発給制限の影響で減少し、2006年の387人から2020年では29人にまで大幅に減った。 2021年6月時点の中長期在留者・特別永住者は1,860人となっている。


興行ビザが厳格化されるまでは、ダンサーやモデルなどの資格で来日してロシアンパブなどで働いていたウクライナ人たちも多かったのです。特に外国人の場合、モデルと言ってもピンキリで、ホステスやコンパニオンがそう呼ばれていることも多いのです。

私は、ここでも”支援ごっこ”という言葉を浮かべざるを得ませんでした。

日本のメディアには、自由で清く正しい民主国家・ウクライナVS世界で孤立した悪の帝国・ロシアという図式が所与のものとして存在しているかのようです。あるメディアは、上記のような二項対立を否定してロシア「擁護」の陰謀論にはまっている人間は、同時に新型コロナウイルスの陰謀論にもはまっているタイプが多いと書いていましたが、とうとうここまで来たかと思いました。こんなことを書くのは日本のメディアだけでしょう。同調圧力にもほどがあると言いたくなります。

でも、そこにも、おなじみの「日本、凄い!」の自演乙、自己愛が伏在しているのです。

 日本人が働く日本のマスコミは、どうしても「日本が世界の中心」という考えに基づいた自国ファーストの情報を流す。そして、「数字」が欲しいので、日本人の読者や視聴者が「いい気分」になる話を扱いがちになる。西側についた日本が世界の中心だと視聴者や読者に知らしめるには、ロシアという国がいかに狂っていて、非人道的な連中なのか、とおとしめるのが手っ取り早い。ナショナリズムが報道の客観性をゆがめてしまっているのだ。
(同上)


旧西側陣営の主要メンバーとしてウクライナを支援して、「可哀そうなウクライナ」の人たちから涙ながらに感謝される日本。でも、実際に受け入れた避難民は千人ちょっとにすぎません。しかも、中には早速外国人パブで働きはじめた避難民がいて、それは人道支援の主旨と違うと行政が指導したというニュースもありました。

これでは、給付金詐欺と同じように、外国人パブで人気のウクライナ人ホステスを入国させるために、人道支援を隠れ蓑にしたケースもないとは限らないでしょう。「ウクライナの美女が中国に避難するのを歓迎」という投稿が載った中国のSNSを日本のメディアはやり玉に上げていましたが、その前に我が身を振り返ってみた方がいいかもしれません。

一方、昨日、朝日新聞に次のような記事が出ていました。

朝日新聞デジタル
「ジャベリンなかった」最前線、報道と落差 愛国か命か、揺れる兵士

これは今までの翼賛的な戦争報道と一線を画す記事で、「支援疲れ」の中でやっと出てきた記事と言えるのかもしれません。

 命じられた任務は、想像以上に過酷だった。部隊が前進する際に最前線の状況を確認し、ロシア軍の地雷などがあれば破壊。軍用車両が来れば爆発物で吹き飛ばす――。ロシア軍の進軍を防ぎつつ自陣を確保する、いわば「先遣隊」のような役割だった。

 だが、ほぼ実現することはなかった。「なぜなら、ずっと劣勢で、ウクライナ軍は押し返され続けてきたからです」

 とにかく、武器が足りなかった。メディアは、ウクライナ軍が欧米諸国から対戦車ミサイル「ジャベリン」や「NLAW」などの提供を受け、大きな戦果を上げていると報じている。

 だが男性は、「ジャベリンもNLAWも、見たことなんてない」と不満を口にした。「どこにあるのでしょうか?」。そう尋ねると、「政府や政治家に聞いてくれ」と批判した。


愛国心から軍に入った兵士。でも、今、前線から離れることを望んでいるそうです。しかし、軍人だから脱走するわけにはいかないと言います。

 ゼレンスキー大統領は、「勇気や知恵は輸入できない。我々の英雄が携えているものだ」などと述べて兵士らを鼓舞するが、男性は「そういう言葉を口にするのが大統領の仕事だから」とだけつぶやいた。

 「現場で戦っている兵士は決してあきらめていない」とも男性は言う。一方で、本当の戦況を知らされていないようにも思う。「もう疲れた。こんな状況で、人生を失いたくない」


戦争にプロパガンダは付き物です。もちろん、プロパガンダはロシアの専売特許ではないのです。当然、ウクライナもロシアと同じように、もしかしたらロシア以上にプロパガンダを発信しています。でも、”支援ごっこ”の日本人は、そんな当たり前のことすら理解してないように見えます。

何度も言っていますが、私たちは記事の兵士が抱いているような「厭戦」と連帯すべきなのです。ウクライナ・ロシアを問わず「戦争で死になくない」と考えている人々と連帯すべきなのです。そして、「戦争で死ぬな」と呼びかけるべきなのです。そんな素朴実感的なヒューマニズムが何より大事なのです。それしか戦争を止める道はないのです。

今、街頭で選挙演説している政治家や、そんな政治家に向かって手を振っている有権者に、ホントの平和主義者なんていません。彼らは無定見に国家の論理に拝跪しているだけです。先の大戦前、東条英機の自宅に、「早く戦争をやれ!」「戦争が恐いのか」「卑怯者!」「非国民め!」などというような手紙を段ボール箱に何箱も書いて送った国民と同じ心性を共有する、国家の論理で動員された人々がいるだけです。
2022.07.05 Tue l ウクライナ侵攻 l top ▲