オミクロン株「BA.5」の感染は拡大する一方です。WHO(世界保健機関)の最新レポートによれば、先週1週間の日本の新規感染者は96万9068人で世界で最多だったそうです。また、昨日(7/27)の国内での新規感染者も20万人を越えた、というニュースもありました。

それでも政府は行動制限を行わない姿勢を崩していません。政府がやったことは、抗原検査キットを医療機関に配ったくらいです。

NHKが発表している病床使用率は、7月20日時点で全国平均が37%、酸素吸入などが必要な重症病床の使用率は19%です。政府の無作為は、こういった数字を根拠にしているのかもしれません。

しかし、この数字は、毎週木曜日に1週間分を集計して翌日の金曜日に発表したものです。つまり、あくまで1週間前の20日時点の数字にすぎないのです。20日以後この1週間で、東京都の新規感染者数は3万人を越すなど、ほとんどの自治体で新規感染者数が「過去最高」を更新しているのです。明日(7/29)発表される最新データが、これよりはるかに高い数値を叩き出すのは火を見るよりあきらかでしょう。

実際に昨日(27日)のデータでは、大阪府の病床使用率が52.0%です。東京都も50.5%、沖縄に至っては87.8%(重症病床使用率43.5%)です。

一方、厚労省が発表した7月20日現在の自宅療養者は全国で61万2023人にものぼっているそうです。何度もくり返しますが、これも20日時点の話なので、この1週間でさらに増えていることは安易に想像できます。

病院の外来が一日に診察するキャパを超え診察を断っている、というニュースが連日伝えられています。そのため、発症しても病院で診察を受けることができないのです。でも、病床使用率は「まだ余裕がある」というのです。これもおかしな話と言えるでしょう。

現在は感染しても、病院どころかホテル療養も難しいと言われています。専門的な診断を受けることもなく、保健所との電話のやり取りで「軽症」と判断され、自宅療養を余儀なくされるのです。しかも、保健所の受付もキャパを越えたため、電話ではなくFAXに切り替えたなどという話さえあります。

感染した人の中には、「軽症」と言われても症状が想像以上にきつく、2~3日食事もできず重症化するのではないかという不安に襲われたと話す人も多いのです。

もちろん、医療従事者も感染の蔓延と無縁ではありません。感染したり濃厚接触者になったりして休まざるを得ないケースも多いのです。先の病床使用率が低い”矛盾”も、人員の配置ができずベットを使いたくても使えないケースも多いのではないかと思います。

すると、政府は、科学的知見を無視して、濃厚接触者の待機機関を従来の7日から原則5日(最短3日)に短縮すると方針転換したのでした。要するに、「早く職場に出て来い」ということです。泥縄式とはこのことでしょう。でも、日本医師会が会見を開いて注意を喚起したように、7日間は他人を感染させる可能性があるのです。これでは、政府みずから感染を拡大させる要因を作っているようなものでしょう。

医療が逼迫した状況がある一方で、夏休みに入った街には人々が繰り出し、繁華街は感染拡大がウソのように人でごった返しているのでした。その別世界のような光景にも驚かざるを得ません。それは、文字通り「水は低い方に流れる」光景と言うべきでしょう。彼らは、政治の無作為を口実に、「自分だけは大丈夫」「所詮は風邪と同じ」と言い聞かせて、楽な方、欲望の赴く方に身を預けるだけで、それ以上のことは考えることができないのでしょう。政治の方も、旧統一教会との関係を黒塗りしたり、見せしめのために死刑を執行することには熱心ですが、肝心な感染拡大に対しては、「経済をまわすため」というお題目を唱えてサボタージュするだけなのです。どっちもどっちという気がしてなりません。

しかし、感染者や濃厚接触者が集中して発生したため、郵便局の窓口が閉鎖されたとか電車やバスが運休されたとかいう話も出ています。皮肉なことに、政府の無作為によって社会インフラがみずから崩壊しつつあるのです。

夜の飲み屋街でも、人出が減り飲食店が再び苦境に立たされているという話も出ています。感染の拡大を怖れ、外での飲食を控える人が多くなっているからです。政府は感染源は飲食ではなく家庭が多いと言うのですが、実際に感染した人の話を聞いても、飲食が原因だったという人も多いのです。

この季節でこれほど感染が拡大しているのですから、秋冬になったらどうなるのだろうと考えてしまいます。今の「BA.5」に比べて3倍も感染力が強いと言われる新しい変異株「BA.2.75」の市中感染も、既に東京や大阪などで確認されています。第8波の感染爆発も当然のように予定(予想ではなく予定)されているのです。それが、秋冬にずれ込んだらと考えると戦慄さえ覚えます。

もちろん、「BA.2.75」は最終型ではありません。重症化率が低くなり「弱毒化」されたからと言って、新型コロナウイルスが終わりに近づいたという保障はどこにもないのです。次々と登場する変異株の中には、免疫をすり抜ける新種も含まれているという話もあるくらいです。

新型コロナウイルスとの戦いがはじまってまだ3年も経ってないのです。いつ終わるのか、誰もわからないのです。

にもかかわらず、政府が根拠のない”楽観論”を振り撒き、「経済をまわす」ことを優先する背景には、深刻度を増す世界経済の状況も無関係ではないように思います。

アメリカのFRBが2ヶ月続けて利上げを行なったのも、資本主義世界の危機の表われだとしか思えません。それくらいインフレが深刻なのでしょう。アメリカは、インフレ(物価高)と不況の股裂き状態にあり、その泥沼(=スタグフレーション)から抜け出す手立てもなく苦境に喘いでいるのです。それが属国・日本に及ぼす影響は想像を絶するものがあるでしょう。

感染対策を二の次にして「経済をまわす」という日本政府のかたくなな方針も、換言すれば、感染対策を二の次にせざるを得ないということなのかもしれません。ウイズコロナなんて呑気な話ではないのかもしれないのです。
2022.07.28 Thu l 新型コロナウイルス l top ▲